ハイスクール牙狼《GARO》   作:エルドラス

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怨念

「…話は分かったよ。正直言うと、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だけどね」

 

祐斗は嘆息しながらコーヒーに口をつけた。

 

「随分な言い様だね。そちらが『はぐれ』だったら、問答無用で斬り捨てているところだ」

 

そう睨み合う祐斗とゼノヴィア。そんなギスギスした空気に他の客もこちらを見ていた。

 

「二人とも、此処はファミレスだよ。他のお客さんもいるんだから睨み合うのはやめた方がいい」

 

胡座の言葉にも一理ありと思った二人は睨み合いを一度やめる。

 

「やはり『聖剣計画』の事を恨みに持っているのね?」

 

「…当然だよ」

 

イリナの言葉に祐斗が目を細めながら冷たい声で答えた。

 

「でもね木場君。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる使い手が誕生したの」

 

「だが、計画失敗と断じて被験者のほぼ全員を始末するのが許されると思っているのか?」

 

そう言うと祐斗はイリナに憎悪の眼差しを向ける。

 

神に仕える信徒が非道過ぎる『聖剣計画』に手を染めていたと言う事実に、イリナが反応に困るのも無理なかった。

 

胡座とて、聖剣計画の事を聞いた時は眉間に皺を寄せ、嫌悪していたほどだ。

 

「その事件は私達の間でも最大級に嫌悪されたものだ。処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された。今では堕天使側の住人さ」

 

「堕天使側に?その者の名は?」

 

その言葉に興味を持った祐斗が問いただす。

 

「…バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

 

「皆殺しの大司教ね。随分と物騒な名前じゃないの…」

 

「…堕天使を追えばその者にたどり着くわけか。なら僕も情報を提供した方がいいかな。…先日、エクスカリバーを持った者に襲撃された。その際、神父を一人殺害していたよ。やられたのはそちらの者だろうね」

 

その言葉に全員が驚愕する。

 

「相手はフリード・セルゼン。この名に覚えは?」

 

その名前に、一誠と小猫が驚愕し、ゼノヴィアとイリナは目を細めた。が、会ったことの無い武と胡座は誰それ?状態だった。

 

「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王直属のエクソシスト。十三歳でエクソシストになった天才。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

 

「だが奴は余りにもやりすぎた。同胞すらも手にかけたのだからね。フリードは信仰心なんてものは最初から持って無かった。あったのは化け物の敵対意識と殺意、そして異常なまでの戦闘執着。異端にかけられるのも時間の問題だった」

 

二人は後から一誠にフリードの事を聞いたが、直接会ったわけじゃない二人からしても以上としか言えない性格をしていた。

 

「そうか…フリードは奪った聖剣を使って私達の同胞を手にかけていたか。処理班すら始末できなかったツケを私たちが支払う事になるとはね…とりあえず、エクスカリバー破壊の共同戦線と行こうか」

 

そう忌々しそうにゼノヴィアは言った後、メモ用紙とペンを取り出し紙に文字を書き一誠達に渡した。

 

「何かあったらそこへ連絡をくれ」

 

「サンキュー、じゃあ俺たちの方も…」

 

「あっ、イッセー君の電話番号もおば様からいただいているわ」

 

イリナがそう微笑みながら言う。

 

「マジかよ!母さん勝手なことを!」

 

「可哀想」

 

「では、そう言うことで。…そうだ。楠神胡座、奢ってくれてありがとう。この恩は必ず返す」

 

「食事ありがとうね胡座くん!」

 

そう二人は礼を言って、テーブルから立ち去る。

 

「…イッセー君。どうして、こんなことを?」

 

「そうだな…まぁ、同じ眷属で仲間だしさ、それに俺もお前に助けられた事もあったし、借りを返すって程じゃないけど、今回はお前の力になろうと思ってさ」

 

 

「…僕が下手に動けば部長に迷惑がかかるから…それもあるんだよね?」

 

その一誠の言葉に祐斗はそう言い返す。

 

「勿論あのまま暴走してやられちまったら、部長が悲しむ。まぁ今回が俺の独断で決めたことも結果オーライになっちまったけど、教会の関係者と協力体制が取れたんだしさ」

 

一誠のその言葉を聞いてもまだ納得していなかった祐斗だったが、小猫が祐斗に近づき口を開く。

 

「…祐斗先輩。私は、先輩がいなくなるのは…寂しいです。…お手伝いします。だから…いなくならないでください」

 

「小猫ちゃん…」

 

「勿論、俺達も手伝うぜ」

 

「一緒にテーブルを囲んだ仲ですしね」

 

「…参ったね、小猫ちゃんや君達二人にそう言われたら僕も無茶はできないよ。わかった、今回は皆んなの好意に甘えさせてもらおうかな。皆んなのおかげで真の敵も分かったからね。でもやるからには、絶対エクスカリバーを倒す」

 

「…よかったです」

 

その祐斗の様子を見て安心したか、小猫も小さく微笑んだ。

 

「よーし!!俺らエクスカリバー破壊団結成だ!頑張って奪われたエクスカリバーと、フリードのクソ野郎をぶっ飛ばそうぜ!!」

 

「……あのー、さっきから俺が蚊帳の外みたいなんですけど、いや別にこのまま俺はいなかった扱いでいいよ?会長怖いし…まぁ木場とエクスカリバーに何の関係があるから気になるけど…」

 

「…少し話そうか」

 

祐斗はそう言うと、自分の過去を語った。

 

カトリック教会が秘密裏に計画した『聖剣計画』集められたのは剣に関する才能と神器を所有した少年少女達。

 

彼ら彼女らは来る日も来る日も非人道的な実験ばかりを強いられていた。

 

自由を奪われ『人間』として扱われず、祐斗達は『生』すらも無い。

 

彼らは、ただ生きて『神』に愛される事を信じていたのに、待っていたのは…『処分』という残酷な結末だった。

 

そして、その地獄から辛うじて逃げ仰た祐斗はリアスに出会い、『騎士』の駒でリアスの眷属になったのである。

 

「僕は同志たちの無念を晴らす為に、彼らの死を無駄にしない為に、エクスカリバーよりも強いと言う事を証明しなくてはいけないんだ」

 

リアス自身は、その力を復讐意外に使って欲しかったのだろうが、祐斗自身がそれを許せなかったのだ。

 

「…ぅうううぅ」

 

と、皆が沈黙していた中、匙が急に泣き出したかと思うと、祐斗の手を取った。

 

「木場!!辛かっただろうなぁ!!キツかっただろうっ!!ちくしょう!!この世に神も仏もいないってか!俺はぁああぁぁあ!!今非常にお前に同情しているっ!!あぁ、酷い話さ!!その施設の指導者やエクスカリバーに恨みを持つ理由もわかる!わかるぞ!!」

 

匙は先程までヘタレた発言しかしていなかった男とは思えない熱量で話し始めた。

 

「俺はイケメンなお前が正直いけすかなかったが、そう言う話なら別だっ!!俺も協力するぞ!ああ、やってやるさ!!会長のしごきをあえて受けようっ!!だがそれよりもまずは俺たちでエクスカリバーの撃破だ!!俺も頑張るからさ!お前も頑張って生きろよ!!絶対に救ってくれたリアス先輩を裏切るなよ!!」

 

先程まで彼の事をヘタレと思っていた武と胡座は匙に対する評価を改めた。

 

「よし、良い機会だ!ちょっと俺の話を聞いてくれ!俺にはある目標があるんだ!それは…ソーナ会長とできちゃった結婚することだ!!」

 

訂正、評価は駄々下がりとなった。

 

「匙!聞け!俺の目標は部長の乳を揉み、吸う事だ!!」

 

「え、お前まで何頭おかしいこと言ってんの?」

 

「武さん、イッセー先輩はずっと前からこんな感じですよ」

 

もはや呆れて物も言えなかった。

 

「お、お前、解っているのか!?上級悪魔のご主人様のお乳に触れることが、どれほど大きな目標かということを!?」

 

「いや、できる!実際、俺は部長の胸を揉んだ事がある!!」

 

匙は驚愕の眼差しで、震えている一誠の手を見つめていた。

 

「な、なんだと!?そんな事が可能なのか!?嘘じゃないよな!?」

 

「嘘じゃない。確かに遠いが…追いつけないほどの距離じゃない!!」

 

「…吸う場所は乳首なんだよな?」

 

「ばっかやろう!おっぱいで吸えるところといったら乳首だろうが!匙、俺たちは確かにダメな『兵士』かもしれない。だが!二人なら何処までも飛べる!何処までも戦える!何処までもやれる!いつか、デキちゃった結婚だってできるかもしれない!!」

 

「うん、うん!!」

 

すっかり自分達の世界へと入り込んでしまった二人を尻目に祐斗は苦笑いを、小猫はジト目を浮かべ、武と胡座は…

 

「…俺達、組む相手間違えたかな?」

 

「…もう後悔しても遅い気がするよ」

 

少し遅めの後悔を体験していた。




ザルバ『怒りに身を任せれば必ず足元をすくわれる。己の怒りで己を殺すかもしれないからな』

次回、魔界

次は風牙sideの物語だぜ…多分

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