するとコカビエルは、一誠の方へと振り向くき驚きの提案をした。
「小僧。限界まで赤龍帝の力を上げて、誰かに譲渡しろ」
これにはその場にいる全員が驚愕し、リアスは怒りを露わにした。
「私達にチャンスでも与えるというの!?ふざけないで!」
そんなリアスをコカビエルは嘲笑った。
「ハハハ、ふざけているのはお前達の方だ。お前達ごときが俺を倒せると思っているのか?」
その言葉を聞き、一誠はブーステッド・ギアの力を最大まで引き上げ、リアスに譲渡した。
すると、リアスの魔力は先程までとは比べ物にならないくらいまで跳ね上がった。
「カッハハハハ! いいぞその魔力の波!最上級悪魔の魔力だぞ!リアス・グレモリー!お前も兄に負けず劣らず才に恵まれているようだな!」
そう高笑いをするコカビエルをよそに、リアス自身も滅びの魔力の塊を最大まで貯める。
「消し飛びなさいッ!!」
そしてリアスは滅びの魔力をコカビエルに放つ。
「面白い!面白いぞ魔王の妹!サーゼクスの妹ォ!!」
が、コカビエルは滅びの魔力を弾き返されてしまう。
「部長ぉぉお!」
『よそ見している場合か?』
リアスを心配していた一誠だったが、アスモダイが剣で切り掛かってくる。
「危ねぇ!」
が、武がその攻撃を青龍刀で防ぎ、胡座が矢を放ち牽制する。
「はぁ、はぁ」
「くっ」
しかし、二人はかなり息が上がっていた。
「武!胡座!お前ら何で鎧纏わねぇんだよ!」
一誠はそう言うが、二人は苦い顔をしていた。
「悪い一誠。俺達……今鎧を纏えねぇんだ」
「はっ!?」
武の言葉に訳がわからないと思った一誠だったが、胡座が訳を話す。
「それが、あのアスモダイが持っている魔導具のせいで鎧を召喚出来ないんだ」
『あぁ、この『魂封じの宝玉』があれば、半径100m以内の魔戒騎士は鎧を召喚できないんだよ』
アスモダイはそう言うと、懐から青白い光を放つ宝玉を一誠達に見せた。
『これがある限り、お前達には勝ち目はない。因みに、コイツはソウルメタル製の武器でなければ破壊は不可能だ』
何とも厄介なことをしてくれるが、警戒するべきはアスモダイだけではない。
まだコカビエルがいるのだ。
「雷よ!」
コカビエルと戦闘を行っていた朱乃は得意の雷で攻撃するが、全く効いていなかった。
するとコカビエルは、朱乃を見て憎たらしい笑みを浮かべた。
「俺の邪魔をするか?『バラキエル』の力を宿す者よ」
「っ!私を…『あの者』と一緒にするな!!」
『バラギエル』と言う名前を聞いた途端、朱乃はいつもの冷静さを感じさせない程怒りを露わにした。
「ハハハ!全く愉快な眷属を持っているな?リアス・グレモリーよ!赤龍帝、禁手に至った聖剣計画の成れ果て、そしてバラキエルの力を宿す娘!お前も兄に負けず劣らずのゲテモノ好きのようだ!」
そう言いながらコカビエルはリアス達を嘲笑うが、リアスはそれに対して怒りを露わにする。
「兄の、我らが魔王への暴言は許さない!!そして何よりも…私の下僕への侮辱は万死に値するわ!!」
リアスがそう叫ぶと、聖魔剣を手にしている祐斗と、デュランダルを手にしたゼノヴィアが二人がかりでコカビエルに切り掛かった。
『おいおい、俺も忘れんなっての』
が、そこに武と胡座との戦闘を離脱したアスモダイが割り込み、二人の剣をなんと片腕で受け止めた。
「なっ!?」
「バカな!?」
流石に聖魔剣とデュランダルの同時攻撃を受け切られるとは思わなかった為か、二人は少し動揺していた。
「おい、誰が割り込んで良いと言った?」
『うるさい。魔戒騎士だけ相手にするのは飽きたんだよ!』
そう言うとアスモダイは、祐斗とゼノヴィアの腹を蹴って遠くに飛ばした。
蹴り飛ばされた二人は嗚咽していたが、すぐに再び臨戦態勢に入る。
それを見たアスモダイは呆れたように言う。
『全く、本当にしつこい連中だ。特に青髪の女、仕えるべき主人はもういないと言うのに健気なことだ』
アスモダイのその発言に、ゼノヴィアの動きが止まった。
「…どういう事?」
そしてリアスがその発言の真意を問う。
『…そうか、お前達若い悪魔や人間は知らないのか。なら教えてやる。…… 先の三つ巴の戦争で死んだのは四大魔王だけじゃない。神も同じく死んだんだよ』
『っ!?』
アスモダイのとんでもないカミングアウトに、リアス達は勿論、ゼノヴィアも驚愕する。
しかし、武と胡座は特に驚いてはいなかった。
「嘘を吐くな!…神が、神が死ぬなど!!」
ゼノヴィアはアスモダイの発言を否定するが、今度はコカビエルが口を開く。
「戦後、残されたのは神を失った天使、魔王全員と上級悪魔の大半を失った悪魔、そして、幹部以外のほとんどを失った堕天使。どこの勢力も人間に頼らねば種の存続ができなくなったのだ」
「うそだ…そんなの、うそだ…」
真実を聞いたゼノヴィアは、デュランダルを手放し、その場にへたり込んだ。
「しかし、そんなことはどうでもいい。俺が耐え難いのは、神と魔王が死んだ以上、戦争継続は無意味だと判断したことだッ!!耐え難い!耐え難いんだよォ!!一度振り上げた拳を収めろだと!?あのまま戦いが続いていたら俺達が勝てたハズだァ!!アザゼルの野郎も二度目の戦争は無いと宣言する始末だ!……フザけるなァ!!」
コカビエルは、先程までの余裕のある雰囲気は無くなった様に怒りをあらわにした。
「主は…本当に主はいないのですか?なら…私たちが授かる主の愛は…」
アーシアも、おぼつかない足取りのままコカビエルに問い、アスモダイがそれに応えた。
『そんなもん無いんだよ、金髪シスター。まぁ『システム』さえ機能していれば神への祈りも祝福も悪魔祓いも、ある程度動作はするらしいし、そう考えれば『ミカエル』は良くやってるみたいだな。まぁそもそも、神が死んでなければそこの金髪イケメンの持つ聖魔剣が生まれるはずないしな。それも神が死んだからこその奇跡って奴なんだろうな』
「っ!……」ドサッ
「アーシア!しっかりしろ!」
それを聞いたアーシアは気を失い、一誠が倒れた彼女を受け止めた。
そしてコカビエルは今回の目的を明かした。
「俺はこれを機に戦争を起こす。貴様らグレモリー眷属と魔戒騎士の首を橋頭堡にし、サーゼクスやミカエル、そしてメラシアに我ら堕天使の力を思い知らせてやるのだ!!」
すると、アスモダイは剣を手にしながら、ゼノヴィアの目の前に立つ。
『別に良いけどさぁ。殺す前に俺にも色々楽しませろよな。…さてと…』
そして、アスモダイはゼノヴィアの首元に剣先を向ける。
『取り敢えずお前は要らないや。狂信者とかめんどくさそうだし』
そう言うと、アスモダイは剣を振り下ろす。
しかし、ゼノヴィアは絶望感からか避けようとすらしなかった。
「っ!ゼノヴィア!避けろ!」
一誠がそう叫ぶが、ゼノヴィアには届かなかった。
(もういい…主亡き世界なんて私は…)
ガギィィィィン!
何かがぶつかるような音がしたので、ゼノヴィアが目を開けて見てみると、そこには…弓で剣を防ぐ胡座がいた。
「何で…?」
何故自分を助けたのか。理解できなかったゼノヴィアだったが、胡座はその問いに答える。
「何で?理由なんて無いよ。…ただ助けたいから助けた。…それだけの事だ!」
そう叫ぶ胡座だったが、アスモダイはその首根っこを掴んだ。
『ったく、魔戒騎士ってのは本当に面倒だな。口を開けば人助け人助けうるせぇんだよ!餌でしかない家畜を護るなんて馬鹿でしかないんだよ!』
そう言うと、今度は胡座の首に剣先を向ける。
『もういい。お前はこのまま切り殺してやる!』
そして、胡座の首に剣を振り下ろした。
「胡座!」
『っ!』
助けに行こうとする一誠や祐斗だったが、距離があり間に合いそうにも無く、胡座の首は切り落とされる……筈だった。
ザシュッ!
辺りには、肉を切り落としたような音が響いたが、それは胡座の物ではなかった。
『…あ?』
切り落とされたのは……胡座を掴んでいたアスモダイの腕だった。
ドゴォオ!!
『ゴハッ!?』
そして次の瞬間、何かがアスモダイの腹に思いっきり蹴りを入れ、アスモダイを吹き飛ばした。
何が起こったのか分からなかったリアス達だったが、朱乃だけは誰がアスモダイの腕を切り落とし、腹を蹴ったのかを理解できた。
そして、皆がアスモダイが先ほどまで立っていた場所に目をやると、そこには一人の男が立っていた。
「……申し訳ありません。少しばかり時間が掛かってしまいましたが、ここからは私が引き受けます」
彼の顔を見た者達は、朱乃以外は衝撃を受けた。
何故なら、彼はこの場にいて良い人間では無いはずだからだ。
そして、朱乃は嬉しさからか彼の名を呼んだ。
自分にとってこの世で唯一愛した男の名を…
「風牙くん!!」
道外風牙、ただいまを持って参戦である。
ザルバ『誰にだって、隠したいことの一つや二つあるもんだ。俺にだって隠したいことはあるしな』
次回、異形
風牙、遂にあれを見せるのか…皆んなが朱乃みたいに受け入れるとは限らないぞ…
と言うわけで、遂に風牙くん現着です!
いやぁ、ここまで来るのにかなり時間がかかってしまって申し訳ない。その分、次回は風牙くんをたっぷり活躍させます。