ここは駒王学園の旧校舎。
ここに部室を構えるオカルト研究部、通称オカ研はの部活動は主に夜に始まる。
しかし、オカ研とは仮の姿であり、その実態はリアス・グレモリーとその眷属の隠れ蓑のようなものである。
そして彼ら彼女らは今宵も駒王町の夜をかける。
……と、本来なら行きたい所だが、今彼らには一つの悩みがあるのだ。
その悩みというのが、オカ研の副部長である姫島朱乃についてである。
実は最近、彼女の様子がどうもおかしいのだ。それもかなーり深刻なレベルで、である。
まず、少し前まで笑顔だった彼女表情が最近は惚けたようになることが多くなったのだ。
最近部活に入ったばかりの者も、入学当時から部活に入っていた者も含めて初めて見る表情だった。
そして次に、彼女が入れてくれる紅茶の味が変なのだ。
彼女の紅茶に関する知識はオカ研の中でも一番と言っても過言ではない。
そんな彼女の入れる紅茶を飲むのはオカ研部員達の楽しみの一つなのだ。
それがどうしたことか、今日の紅茶の味はムラがあったのだ。
濃すぎる物や薄いの物と、いつもの彼女ならありえないミスだった。
勿論それでも美味しいのだが、いつもの紅茶の味を知る部員からすれば物足りないと感じるのは当然だろう。
そして何より……
「っ!はぁ………っ!はぁ………」
これだ。
少し前から何かを思い出したように顔を赤くしたと思ったらため息をついてまだお見つめ続けると言った行動を繰り返していたのだ。
こんな彼女を見たのはリアスだって初めてだろう。
オカ研のメンバーは離れた所から見守っていたが、かなり心配だった。
the大和撫子を体現した彼女からは考えられない行動を見たのだから当然と言えば当然だが…
「部長……一体朱乃さんどうしちゃったんですか? さっきから話しかけても生返事だし……」
そういう癖っ毛の茶髪の彼の名は『兵藤一誠』少し前まで普通の人間だったが、とある経緯からリアスの眷属となった駒王学園二年生である。
学園一の変態と称されている彼だが、根は優しい青年なので仲間である朱乃のことが心配なのだろう。
「まぁ、心当たりがないわけじゃないんだけどね…」
「…まさかとは思いますが、恋の悩み…でしょうかね?」
そう呟いたのは、この学園で風牙と並んでイケメン王子の名を持つ金髪の青年『木場祐斗』だ。
「はぁぁぁあ!恋だぁ!朱乃さんに限ってそんな話があるわけねぇだろうがぁぁあ!変なこと言うんじゃねぇぞ木場ぁぁあ!」
「いやいや!なんで君が怒るんだい!?」
あらゆる男を虜にしてきた彼女だが、その逆がないとは限らない。彼女だって女の子なんだがらそういう事があっても不思議ではないはずなのだが、一誠は真っ先にそれを否定した。
朱乃のおっぱゲフンゲフン!…基の美貌が何処の馬の骨ともわからない野郎に取られるのが我慢できないのである。
なんとも性欲に忠実な男だろうか。まぁそれが彼の良いところなのだが…
「部長!?朱乃さんに限ってそんなことないですよね!?」
「うーん……実は祐斗の言うことってあながち間違いでもないのよねぇ…」
「なん…だと!?」
まるで雷にでも打たれたかのような衝撃が身体中を巡った。よほどショックだったのか、一誠は次の瞬間その場に泡を吐きながら倒れたのだった。
「一誠さん!?」
「はぁ……全く一誠ったら。小猫、一誠をソファに寝かせてあげて。アーシアは看病をお願い」
「……了解」
「は、はいっ」
先程からお菓子を頬張っていたこの学園のアイドルと言われる小柄な少女『搭城小猫』はその小柄な体格からは考えられない程軽々しく一誠を片手で持ち上げ、そのまま勢いよくソファに向け放り投げた。
その際に骨が折れたような鈍い嫌な音がしたが、そこは一誠の後に部員なった金髪美少女、『アーシア・アルジェント』の能力でなんとでもなるので小猫は大して気にしない。
もっとも、アーシア本人は金切り声を上げながら涙目で一誠を看病していたが、それでも気にしない。
先輩に対して中々ひどい扱いであるが、一誠は普段から除き行為をするような変態なのでこのくらいの扱いの方が丁度いいのかもしれない。
「僕の言うことがあながち間違いじゃないって……やっぱり好きな人が?」
「そうね。まだ本人は自覚してないようだけれど、それも時間の問題ね。それにあの姿はまさに……」
「恋に悩める乙女、ですよね」
「えぇ、全くね……」
窓の外を見つめながら物思いに老けているその姿はまさに恋に悩める乙女そのものだ。
今彼女の頭の中は、道外風牙のことで一杯になっているのだろう。
リアスはそれが悪いことだとは思わないし、むしろ良いこととで、それを邪魔するのは主人であっても許されないことだと思っている。
しかし、今彼女は種族の違いというものに悩んでいるのだ。
こうなったらと、リアスは今一度朱乃と二人きりで話すことを決めた。
「祐斗、皆を外に連れて頂戴。少し朱乃と話したいから」
「はい、分かりました」
そう言われた祐斗はリアスと朱乃以外のメンバーを自分も含めて一度部室から出した。
「…さて、大丈夫かしら?恋に悩める乙女さん」
「……リアス」
まだ表情は暗いままだが、朱乃はまともな反応を示した。そしてリアスは彼女の隣に腰掛けた。
「ねぇ朱乃、あの時私が言ったこと覚えてる?」
「……ええ」
忘れられるわけがない。あの時の言葉で朱乃は自分の立場を再び理解したのだがら。
「でも貴女、それでも彼のことを考えてるんだから…彼のこと、好きなんでしょ?」
「そんな、彼はただの友人ですわ…」
「……それじゃあ私が彼との関係を絶ちなさい、って言ったら『それは絶対にイヤッ!』っ!」
「……あ…ご、ごめんなさいリアス。私……」
「…ふふふっ。こんな朱乃を見るのは初めてね」
リアスにとって、ここまで感情を表に出す朱乃を初めて見たので、それがとても嬉しかった。
「……好き、なんでしょ?彼のことが…」
先と同じ問いをリアスはぶつける。
「……そんなの…そんなの分からないわよ。でも…風牙くんといるとすごく落ち着くの。でも逆に、風牙くんがいないととても寂しくて…屋上での時間が終わった後も風牙くんが頭から離れなくて…ずっと風牙くんといたい…そう、思ってしまうの」
「それを好きって言わないで、他になんて言うの?」
「……」
「ねぇ朱乃。なにも私は彼と会うなって言ってる訳じゃないの。むしろ応援したいくらいよ? でもね、もし彼との関係を保ちたいのなら、いずれは真実を伝えなきゃいけない。その時彼は……果たして貴女を受け入れてくれるかしら?」
彼女の言うことはもっともだ。
確かにいずれは己の正体を明かさねばならない。自分が悪魔という超常的な存在だということを。
しかし、人間は臆病な種族だ。自分達とは異質な存在を忌避し、迫害する。同じ人間同士でさえ、彼らはそうしてきた。
心優しい風牙でも、もしかすれば拒絶してしまうかも知れない。恐怖の言葉を浴びせるかも知れない。そんな想像はしたくはないが、しかし避けては通れない道であるのもまた事実だ。
それがとてつもなく怖い。
彼に拒絶されたくないと、心の底から思っている。
もし拒絶されたらと思うと、とても……
「私は……どうしたらいいの……?」
弱々しく、悲しげに朱乃はそう呟いた。
朱乃は一人の女性として、かつてない程に苦しんでいる。
主人たるリアスから見ればそれは喜ばしいことであり、同時に哀しくもあった。
それは彼女が心から愛する人に出会い、想いを確かなものにしようとしているからだ。
だが種族の壁はあまりにも巨大で、簡単には超えられるものではない。
いくら愛が大きいとしてもこればかりは一人で決められることではないのだ。
そんな彼女を見て、リアスはもてる限りの優しさを込めながら彼女をそっと抱きしめる。
彼女の暖かさと優しさが、朱乃に安心を与えていった。
「風牙くんは、貴女を拒絶するような人だと思う?」
「……違う、と思いたいわ」
「なら伝えるべきだと私は思う。丁度街で配らせた召喚魔法陣も持ってるみたいだし、ありのままを伝えてきなさい」
ありのままを伝える。正直、やりたくはない。
出来ることなら、ひた隠しにしていつも通りにあの幸せな時を過ごしたい。
だがそれをずっと続けたいのであれば、風牙と共に居ることを選ぶのであれば、リアスの言う通り真実を告げるべきなのだ。
彼に対していつまでも隠し事は出来ない。
覚悟は出来たか、と言われれば嘘になる。やはり拒絶されてしまうという恐怖心が勝ってしまう。
それでも彼に、道外風牙という人間に伝えなければならないのだ。
リアスは腕を解き、問い掛ける。
「行ける?」
「…………ええ」
たった一言、それでいて決意の宿った答えと共に、朱乃はまばゆい閃光に包まれた。
自分の全てを、伝える為に。
そしてこの日が、二人の運命を大きく変える日となるのだった。
ザルバ『真実を伝える。それは辛いことかもしれないが、それを乗り越えた先に得られるものもあるのかもしれないな』
次回、邂逅
ついにお互いがお互いの真実を知る時が来た。
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