621先生概念   作:脳を焼かれた一般AC乗り

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ルビコォォォォォォン!!!!!!
軽い気持ちで投稿したものが意外に伸びてて本当に心が躍っています。
感謝感激です。

それではコーラルガンギマリ621先生概念 プロローグ編第2話Alert、お楽しみください。



Alert

 

 

 

 

「な、なにこれ!?」

 

あまりの惨状に、私に続いて車から降りたユウカが悲鳴を上げる。

時々、近くからパシッパシッと音が聞こえるので、ここまで流れ弾が飛んできているのだろう。

爆発、銃声、破裂……

ありとあらゆる破壊の音色に加え、風によって運ばれた硝煙の香りが空間を支配している。

戦場、戦場の空間だ。ここは。

 

「先生!危険です!」

 

背中をグイ、と引っ張られ、物陰に連れてこられる。すると先ほどまで自分のいた場所に銃弾が飛んできたのが見えた。

今の私はただの人間。1発でも喰らえば死ぬ可能性が高い。

ACに乗っているわけでも、彼女たちのように身体が頑丈なわけでもない。

もう私は、独立傭兵ではないのだ。

 

「どうして私たちが不良と戦わなきゃいけないの!」

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すには、あの部室の奪還が必要ですから……。」

 

「それは聞いたけど……!私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!なんで私が……!」

 

不満が爆発しているユウカと、それを宥めるチナツ。周囲を確認すると、ハスミもスズミも車外へ出て物陰に隠れているようだ。

 

パスッ

 

着弾音がすぐ近くから聞こえた。

建物や地面に当たったような音ではない。

まるで何か柔らかいものに当たったような。

 

「いっ、痛い!痛いってば!あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!」

 

標的はユウカだったようだ。

数発の銃弾を受けたユウカは、痛そうに弾が当たった場所を押さえている。

 

「伏せてください、ユウカ。それに、ホローポイント弾は違法指定されてはいません。」

 

「うちの学校ではこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!」

 

銃弾を喰らって生きているだけでも幸運だというのに、ユウカは傷跡の心配をしている。

やはりこの星の住人、特に生徒は身体が頑丈なんてレベルではない。

 

「今は先生が一緒なので、その点に気をつけましょう。先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です。」

 

「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので……。私たちとは違って、弾丸一つでも生命の危機に晒される可能性があります。その点ご注意を!」

 

「分かってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください!私たちが戦っている間は、この安全な場所にいてくださいね!」

 

安全な場所。

つまり私は後方待機。

今目の前では、命こそ張ってはいないものの、4人の少女たちが銃を握り、引き金を引いている。

そんな中、大の大人の私は黙って後ろで縮こまっているしか出来ることがない。

なんて情けないことだろうか。

もしここに、ACがあれば──いや。

私はもう、独立傭兵レイヴンではない。

AC乗りの、あの人生はもう終わったんだ。

過去の自分を選択肢にするな。

今の自分にできることを選択しろ。

ならば。

 

 

 

"みんな、今から私が指揮をしたいんだけどいいかな。"

 

「え、えぇっ!?戦術指揮をされるんですか?」

 

"まぁ、先生だしね。"

 

"それに、こんないたいけな少女たちに前線張らせといて、大人の私が何もしないんじゃ情けなくて仕方ない。"

 

"だからみんな、よろしくね。"

 

「分かりました。これから先生の指揮に従います。」

 

「生徒が先生の言葉に従うのは自然のこと、ですね。よろしくお願いします。」

 

その言葉に、どこか懐かしさのようなものを感じた。

指示されたことに、ただひたすらに従う。

そういう選択を、彼女たちはしている。

まるでかつての私のよう。

ウォルター、あなたもこういう気持ちだったのですか。

 

"……よし。"

 

ずっと前線で戦っていた私に、指揮が取れるのか。いや、取る。取ってみせる。

ルビコンであなたがしてくれたように。

私も彼女たちに。

 

"こちら先生。通信は聞こえてるよね。"

 

"今から作戦を開始するよ。"

 

作戦はこうだ。

ユウカに前線の突破を、スズミとハスミはその援護を、チナツは負傷者のサポートを。

なんとありきたりな戦法だろうか。

これが不良相手だからいいものの、これから先、こんな戦法で通用していけるのだろうか。

とにかく、今はサンクトゥムタワーの奪還が目標だ。

一刻も早くタワーを奪取しなければ。

 

"ユウカ、遮蔽を使って前に進んで。"

 

"奥の壁に敵が数人隠れているはずだから、体を出してきたらスズミは援護射撃して。"

 

スズミの援護射撃と、ユウカの突撃により、徐々に前線に穴が開く。

その穴を確実に広げていき、突破する。

数の上では圧倒的不利だが、電撃的な侵攻に練度不足の雑兵連中が対応できるはずがない。

 

"ハスミ、奥で一人様子を窺ってるのがいる。頭を狙って。"

 

「あだーッ!?」

 

不良の額に弾丸が直撃する。正確な射撃だ。ユウカはともかく、他の3人は戦闘経験が豊富な雰囲気がある。風紀委員会はどうやら、戦闘も行っている集団のようだ。

 

"まだ物陰に隠れてるのがいるかもしれない。不測の事態を予測しながら進んで。"

 

『不測の事態を予測しろ』というのは、あの人の台詞だったな。そのほとんどをあの人と私はいなしてきたが、果たして今の私と彼女達ではどうだろうか。

 

「作戦は順調です、先生!」

 

ユウカからの通信が入る。痛い痛いと言いながらも彼女が前線を突き進んでくれるおかげで、順調に敵地へと侵入できている。このままいけば、しかし何かが引っ掛かる。

なんだこの違和感は。

 

─なんなら巡航戦車まで持ち出してきてるみたいだよ?─

 

そうか、戦車!戦車がいない。

ここまで暴れ回ったんだ、間違いなくこちらへと向かってきているはずだ。

 

 

 

"全員、敵の戦車がそろそろ出てくるかもしれな

 

 

 

無線越しに聞こえる爆発音。遅れて、こちらにもその音が届く。

砲撃による爆発音。

 

"大丈夫!?"

 

無線への応答がない。

無線機が壊れたか、或いは。

 

"応答して!"

 

電子音すら聞こえない。

ただひたすら、無音。

 

"待ってて、みんな!"

 

気がつけば私は無線機に叫んで、物陰から飛び出していた。

不測の事態を見落としていた。

その結果がこれだ。

結果を変えることはできない。だから、次の選択をしなければいけない。だが何を選択すれば。

ありとあらゆる手段が頭を駆け巡っていく。しかしそのどれもが滑稽な考えばかりだ。

 

戦車を私が撃破する

馬鹿か私は。ACに乗っていないのにできるわけがないだろう。

 

囮になって逃げる時間を作る

1秒でも稼げればいいが、1秒でどうやって彼女達を逃す。無理だ。

 

敵に対話を試みる

ただの喧嘩にすら銃を持ち出すんだ、あんな不良達がまともに対話に応じるはずがないだろう。

 

考えろ、考えろ、考えろ。

時間は少しだって残っちゃいないんだ。1秒でも、コンマ1秒でも早く考え、選択しなければ、間に合わない。

 

「止まれ!」

 

声の方を向くと、不良生徒数人がこちらに銃を向けていた。こちらは武器を1つも持っていないのに対し、向こうは何丁ものアサルトライフルがこちらに狙いをつけている。

数秒の緊張の後、不良の一人が何かに気がついたように銃口を下ろす。

 

「おいお前、ヘイローがないな。キヴォトスの外から来たやつか?」

 

「私らだって人殺しになりたいわけじゃない。今この場から出ていけば何もしない。」

 

どうやら、不良生徒にも一定の倫理観はあるようだ。命拾いをした。だが、彼女達には悪いが、私はなんとしてでも彼女達を退けてシャーレの部室へと向かわなければいけない。

 

"ごめん、そのお願いは聞けないかな。"

 

「なんだと?」

 

"私はこの先の建物に用事があるんだ。なんとしてでもそこへ行かなきゃいけない。"

 

「おいおい、話を聞いていなかったのか?それともなんだ。」

 

不良の一人は一呼吸置いたあと、ドスの利いた声を張り上げる。

 

 

 

「死にたいのか!!!お前は!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前線の仲間からの応援要請があり、数人でそこへ向かっていた時、見知らぬ人間がこちらへ走ってくるのが見えた。

銃を構え、止まれと叫ぶ。するとそいつは素直に立ち止まった。こんなところに銃も持たず、何をしにきたのだろうか。頭の方に視線をやると、ヘイローがない。つまり目の前のやつは、キヴォトスの外から来たやつだってことがわかる。

私だって人殺しをしたいわけじゃない。

今すぐ引き返してくれれば、私としてはそれでいい。

無関係のやつが巻き込まれて死ぬっていうのも寝覚めが悪くなるしな。

 

"ごめん、そのお願いは聞けないかな。"

 

……は?

なんだこいつは。

目の前に銃を持ったやつが何人もいるのに、こいつは一歩たりとも退こうとしない。

引き返せば何もしない、というのにだ。

 

"私はこの先の建物に用事があるんだ。なんとしてでもそこへ行かなきゃいけない。"

 

この先の建物……

そこには今、あの"ワカモ"がいる。

今私たちが暴れられているのはそいつのおかげではあるが、正直言って、私はあいつと関わり合いたくはない。

あいつはやばすぎる、私の本能がそう感じているのだ。

そんなところにこいつが行けば、まず間違いなくやられるだろう。

こちらも、なんとしてでも引き返してもらわなきゃいけなくなった。

 

「死にたいのか!!!お前は!!!」

 

脅しをかける。

頼む、ここで引き返してくれ。

どこの誰だかは知らないが、こうして会話している相手が死ぬのは気分が悪いなんてもんじゃない。

 

頼む、引き返せ。

 

"……。"

 

"不良生徒の指導も、仕事の内か……。"

 

"銃を下ろして。"

 

こいつ、正気か。

仲間達も動揺している。撃つぞ撃つぞと怯えながら脅すやつ、手が震えているやつ、今にも引き金を引きそうなやつ。

かくいう私も、さっきから狙いがブレまくっている。

なんだこいつは、どうして退かないんだ。

 

「撃つぞ!!!!!」

 

バン、と銃声が聞こえる。まさか本当に撃ったのか。そう思い隣を見ると、白目を向いた仲間が崩れ落ちている最中だった。

 

「後ろだ、後ろ!」

 

振り返ると、黒の制服に身を包んだデカい女がいた。あの制服は──

 

「正義実現委員会……羽川ハスミか!?」

 

トリニティ総合学園の風紀委員会、正義実現委員会のNo.2じゃないか。こんなやつを相手にしていたのか、前線のやつらは。

 

「先生、伏せてください!」

 

そう言い放つと、2発目、3発目、4発目といった調子で、仲間が次々と倒れていく。

 

「ま、待て!」

 

バン、という無情な音と共に、私の意識は途絶えた。

先生と言ったか。お前、いや、あんたは何者なんだ。

どうしてそんなに──

 

 

 

優しい目が、できるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"ごめん、ハスミ。"

 

不良生徒に足止めを食らっていたところを、ハスミに助けられた。指揮を取ると自分が言い出したのに、私のミスを、彼女達に尻拭いさせてしまっている。

失望されただろう。

 

「いえ、先生のせいではありません。不測の事態を予測できなかった私たちの失態です。」

 

……どうして。

どうして私を責めないんだ。

ただ私が先生である、それだけの理由で、会って数時間も経っていないような人間に信頼を置く。

 

「とにかく、今は時間がありません。先生の無事を確認した今、サンクトゥムタワーへの侵攻を急ぐべきです。」

 

いや、今はそんなこと考えてる場合じゃないか。

ハスミの言う通りだ。今すぐにでもサンクトゥムタワーを奪取しなければ、防衛体制が強固になり、さらに攻略が難しくなる。

 

"……状況はどうなってるの。"

 

「至近弾を受けたユウカの手当てをチナツが行っています。スズミと私は離れていたので、この通り無傷です。」

 

"そっか……ありがとう。"

 

ユウカの負傷と、彼女の手当てにチナツが。

チナツは最初から正面戦力に数えてはいなかったが、これで4人中2人が行動不可になってしまった。

つまりあと2人で攻略しなければいけなくなってしまった。たった2人で、戦車含め不良集団を突破しなければいけない。

どうすればこの2人で突破できるのだろうか。

彼女達の力を見くびっているわけではない、が。戦車を含めてしまうと2対多では圧倒的に不利すぎる。

どうする──いや、そうか。

 

こんなときこそ笑うんだったな。

 

『もしもし、先生。』

 

リンからの通信が入る。

 

『今、この騒ぎを起こした生徒の正体が判明しました。』

 

『狐坂ワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。似たような前科がいくつもある危険な人物なので、気を付けてください。』

 

『それと、ヴァルキューレの応援部隊が到着しました。すでに戦闘を始めているようです。』

 

"ありがとう、リンちゃん。"

 

笑える状況になってきた。

 

『先生、いい加減にしていただけると助か

 

"ハスミ、スズミを呼んできてもらえる?"

 

「わかりました。何か作戦を思いついたのですか?」

 

その問いに、笑顔で答える。

反抗作戦に取り掛かろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

応援要請を受けたのか、戦車がその場で旋回しだした。キュラキュラと履帯を動かし、壁にぶつからない様に動いている。

クルセイダーMk.I。うちの学校の戦車もこれと同じものだ。一体どこから入手したのだろうか。治安が荒れに荒れている現状では、そのルートすら特定することができない。なんと嘆かわしいことだろうか。

 

"ハスミ、その角から出てきたタイミングだよ。"

 

「わかりました、先生。」

 

先生とハスミさんの通信が聞こえる。

戦車が前進し始めた。あともう少しで、狙撃地点へと足を踏み入れるだろう。

 

"3"

 

「2」

 

「1」

 

「これで決めます……!」

 

ハスミさんの号砲が、戦車の履帯を弾き飛ばした。アーマーピアッシング弾──ハスミさんの使う銃、M1917エンフィールド用の、特殊徹甲弾。装甲に守られた目標を遠距離から狙撃し、沈黙させる。末恐ろしい銃弾だ。

 

「な、なんだ!?何が起こった!」

 

戦車のハッチから、不良が上半身を曝け出す。

突如履帯が切断され、走行出来なくなったことに焦ったのか、あちこちをキョロキョロと見回している。

ここからが私の出番だ。

 

「スズミ、突入します。」

 

付近の建物の窓から勢いよく飛び出し、戦車に飛び乗る。不良がこちらに気づき、急いで拳銃を取り出そうとしている。

けど、もう遅い。

 

「腰を抜かさせてあげましょう。」

 

ピンを抜いた閃光弾を、拳と共に不良に叩き込む。情けない声を上げた不良は、閃光弾と共に車内へ滑り落ちていく。

 

 

 

車内で閃光弾が爆発した戦車は、穴という穴から光と轟音を漏らした。

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。素敵だ……。

一番最初に投稿したものに誤字の箇所を指摘して下さった方がいて本当に感謝しているのですが、その箇所を訂正しようとしたらボタンひとつで訂正されたのでハーメルンの技術に驚愕しています。(???:ハーメルンの技術は世界一ィィィ!!!)

それと次回の更新は明日から平日になるのでひょっとしたら明日中に投稿ができないかもしれません。大変申し訳ございません。イグアス、対処を。
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