621先生概念   作:脳を焼かれた一般AC乗り

4 / 10
なんとかプロローグ編最終話を書き上げました。

感想を送ってくださった方々、本当にありがとうございます。
全て目を通していますが、温かい感想ばかりで本当に心が躍ります!
次回からは多分アビドス編……かもしくは閑話で何かを投稿するのでこれからも621先生概念をよろしくお願いします!

それでは本編へどうぞ。




Constant Moderato

 

 

 

「うーん……これが一体なんなのか、まったくわかりませんね。これでは壊そうにも……。」

 

 シャーレ地下室。

薄暗い部屋の中央に、彼女はいた。

腰まで伸びた艶やかな黒髪、先端につれて紅く染まる獣耳、そして何より特徴的な、狐の面。

 

"君が狐坂ワカモ?"

 

確認の問いを投げかけると、彼女は目にも止まらぬ素早い動きで銃を構えた。まるで、少しでも動けば撃つ、そう言っているようだった。

そんな彼女から目線を外さず、私は階段を降りていく。

 

「止まりなさい。」

 

銃口がこちらの動きに合わせて追従しているのが見える。というよりむしろ、私の目と銃口が一直線になっているとでも言うべきか。

確実に頭に当てるという自信と、こちらに向ける殺意が見て取れる。私にヘイローがないことは彼女も承知の上、にも関わらずその銃口は向けられたままだ。

私は素直に彼女の指示に従い、その場に立ち止まった。周囲の電子機器の淡い光が彼女の面と私の顔を照らしている。

 

「……あら?」

 

突如として彼女の殺気が消え去った。依然として銃口はこちらに向いたままだが、その先は私の頭より下の方を向いている。

 

"どうしたの?"

 

時間が経てば経つほど、銃口がどんどん下に下がっていく。そして銃口の代わりに、彼女の視線がこちらに向く。

 

「あら、あららら……。」

 

ついに銃口が真下を向いた。

最早私に敵意はないと見える。

そして面の上からでもわかるほどに、彼女が動揺し始める。

 

「し、し……。」

 

「失礼いたしましたー!!」

 

ピューンという効果音が幻聴で聞こえてくるほどに素早い動きで、彼女は逃げ出した。いや待て、地下室への出入り口ってここの階段だけだったはず。一体どこからどうやって逃げ出したというんだ……。

困惑している私の後ろから声をかけられた。

リンも地下室に来たようだ。

 

「お待たせしました。」

 

未だ困惑している私に疑問を持ったのか、どうかしたのかと聞かれたが、とりあえず何もなかったことにしておいた。

 

「ここに、彼女の残したものが保管されています。」

 

するとリンは、先ほどまでワカモが手にしていた端末を手に取った。一応、傷一つなく無事なようだ。

受け取ってください、と言われリンから端末を手渡される。

 

「これこそ、彼女が先生に残した物。」

 

「シッテムの箱です。」

 

どこかで聞いたような名前だ。

しかし何故だろう。全くと言っていいほど思い出せない。言葉としては覚えているが、それが何なのかを思い出せないような、そういう感覚だ。

 

「実をいうと、このタブレット端末は製造会社もOSもシステム構造も、動く仕組みの全てが不明の、正体がわからない物なのです。」

 

「彼女はこのシッテムの箱は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました。」

 

この端末一つで、あの巨大な建物にアクセスし、制御権を回復させる。まるであのカーラのような端末だ。彼女もまた、こうしたハッキングが得意だった。

 

「私たちは起動すらできませんでしたが、先生ならこれを起動させられるのでしょうか。それとも……。」

 

"私に任せて。"

 

未だこの端末が何なのかを思い出せない。

しかし、先ほどから頭にチラつく言葉がある。

無関係のようで、きっとそうではない。

おそらくこれは──。

 

「……では、私はここまでです。ここから先は、全て先生にかかっています。」

 

そう言うとリンは邪魔にならないようにと、少し離れた場所に移動してくれた。

準備は整った、この端末を起動しよう。

 

"……我々は望む、七つの嘆きを。"

"……我々は覚えている、ジェリコの古則を。"

 

『接続パスワード承認。現在の接続情報は鴉飛レン、確認できました。』

 

『「シッテムの箱」へようこそ、鴉飛レン先生。』

 

『生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。』

 

その瞬間、吸い込まれるような感覚が私の全身に行き渡った。

そして──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"どこだろう、ここ。"

 

壁の壊れた教室に、いくつかの机と椅子が並べてある。壊れた壁の向こうには青い空と海の風景がどこまでも広がっている。時折心地の良い潮風が通っていく。

そんな教室にある机の一つに幼い少女が1人、机に突っ伏して寝ていた。くぅくぅと寝言を立て、気持ちよさそうに眠っている。

 

「むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクのほうが……。」

 

美味しい食べ物の夢でも見ているのだろうか。

よく見ると口元に涎が垂れているのが見える。

 

「えへっ……まだたくさんありますよぉ……。」

 

本当に気持ちよさそうだ。

小動物のような可愛らしい寝顔に、思わず見惚れてしまう。しかしこの顔、どこかで見たことがあるような……。

 

"うっ!?"

 

また、あの頭痛がした。

 

"どうして、また頭痛が……。"

 

"連邦生徒会長"という言葉を聞いた時と同じ頭痛が襲いかかっている。しかし今回はその言葉を聞いたわけではない。何故、どうして。

痛みに締め付けれる頭で原因を考える。

"連邦生徒会長"、そして目の前の少女の顔。

一体、何の関連性が……。

 

ガタッ

痛みに耐えきれず、ついにフラつき机に体を打ちつけた。未だ痛みが止まない頭と、机で打った箇所を押さえながら起き上がる。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

"だ、大丈夫だよ……なんとか。"

 

いつの間にか起きていた少女が、心配そうな目でこちらを見ている。

 

"ごめん、やっぱりちょっと無理かも、この椅子使っていい?"

 

「ふぇえ!?大丈夫ですか先生ー!?」

 

その後しばらく少女に心配されたり、痛みが飛んでいくおまじないをかけてもらったりして数分程休憩した。

 

"そろそろ大丈夫……ごめんね、急に入ってきて心配させちゃって。"

 

「えっと、大丈夫ですか?本当に……」

 

"うん、もう大丈夫。"

 

少女の目を見てはっきりと答える。今度は頭痛が来なかった。

 

「え、えっと……つかぬことをお聞きしますが……」

 

「この空間に入ってきたっていうことは、あなたが鴉飛レン先生、ってことですよね?」

 

"そうだよ。"

 

驚き、焦り、時計を確認し、困惑している。

何度か深呼吸をし、自分を落ち着かせてから、少女が口を開く。

 

「えっと、まずは自己紹介から!」

 

「私はアロナ!この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」

 

「やっと会うことができました!私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました!」

 

"ごめんね、居眠りしちゃうくらい待たせちゃって。"

 

「あ、あぅぅ……。」

 

恥ずかしそうな申し訳ないような声を出し、アロナは頬を赤らめた。

 

"これからよろしくね、アロナ。"

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

 それからアロナは、自身のバージョンが古く声の調整が必要だが、これから色々な面で私をサポートすると話した。

人工知能アロナ。今までに自分が接してきた人工知能といえば、RaDのチャティ、オールマインドくらいだっただろうか。声は彼らの方がよく出来ていたが、アロナは彼らよりもはっきりとした感情表現を行っている。まるで本物の少女みたいだ。

 

 次にアロナは、生体認証を行うのでこちらに来てください、と言った。少し恥ずかしいとも言っていたが、何が恥ずかしいのだろうか。とになく言われるままに、彼女の方へと近づいた。

 

「さあ、この私の指に、先生の指を当ててください。」

 

ああ、なるほど。

確かにこれは少し恥ずかしい。

 

「うふふ。まるで指切りして約束するみたいでしょう?」

 

まるで緊張感のない会話。

本当にこれが、キヴォトスを救うために必要なことなのだろうか。

 

「うーん、どれどれ……?」

 

アロナは目を瞑り、集中している。

それなりに技術の進んでいるこの惑星でも、指紋認証には時間がかかってしまうらしい。

 

「よくわからないかも……。」

 

え?

いや、え?

大変なことになったかもしれない。

認識に時間がかかるどころか、その認識すらできていない。これで本当にサンクトゥムタワーの制御権を回復させられるのか……。

 

「まぁ、これでいいですかね?確認、終わりました!」

 

"そっか、お疲れ様。"

 

不安しか残らないが、とりあえず認証は終わったようだ。

さて、認証が終わったならばここに来た目的を果たさなければならない。

 

"アロナ、もう一仕事頼みたいんだけどいいかな?"

 

認証を終え、満足気なアロナに事情を話す。

途中首を傾げていたりしたが、もう気にしないことにした。きっとこの子ならやってくれるだろう。

 

「なるほど……連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでキヴォトスのタワーを制御する手段がなくなった……」

 

再び頭痛が襲いかかる。

やはり"連邦生徒会長"という言葉に反応している。彼女とこの頭痛に、一体何の関連性があるのだろうか。

 

「せ、先生!?大丈夫ですか?」

 

急に頭を押さえた私にアロナが声をかける。

どうしたものか。これから先、この単語を聞くたびに頭痛に悩まされるとなると、今後の活動に支障が出る。

先程アロナの顔を見た時にも起こったが、この子が何か知っているかもしれない。

とりあえずアロナには、"連邦生徒会長"という単語を使わないようにと頼んだ。

 

"……アロナ、このシッテムの箱を渡してくれた彼女のことについてなんだけど、何か知ってたりしない?"

 

「私はキヴォトスの情報の多くを知ってはいますが……彼女についてはほとんど知りません。彼女がどうしていなくなったのかも……。お役に立てず、すみません。」

 

 困ったような顔をしている。

キヴォトスの情報の大半を握り、サンクトゥムタワーの制御もできるというアロナでさえ、連邦生徒会長については何も情報を持っていない。

なぜそこまでしてキヴォトスを去る必要があった?

 

 頭を捻る私を見て、アロナは次の言葉を言っていた。

 

「ですが、サンクトゥムタワーの問題は何とか解決できそうです!」

 

連邦生徒会長については、またいつか調べるとしよう。今はサンクトゥムタワーの件が最優先だ。

 

"じゃあ、お願い。"

 

"サンクトゥムタワーを復旧して。"

 

少々お待ちください!と元気よく返事をしたアロナはそれからしばらくの後、サンクトゥムタワーの制御権を回収したと言った。

 

「今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります。」

 

「今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!」

 

キヴォトスの運営に必要不可欠なサンクトゥムタワー。その権限が今、私の手にある。つまり私は今、キヴォトスを支配していると言っても過言ではないのだ。

……だが。

 

"アロナ、連邦生徒会に制御権を渡して。"

 

「……大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても?」

 

"……破綻しているものの迎える結末は目に見えているからね。"

 

破綻した計画の、妥当な末路。

身に余るものを持った者は皆、凄惨な最後を迎えた。きっとそれはルビコンだけではなく、ここキヴォトスでも同様のはずだ。

だから私は、制御権を連邦生徒会に渡す選択をする。

元からそのつもりではあったが。

 

「分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」

 

すると次第に、今度は全身が吸い出されるような感覚がしだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"ん……。"

 

 次に意識が覚醒した時、私は再びシャーレの地下室にいた。アロナがサンクトゥムタワーの権限を復旧させたおかげか、地下室の電気がついている。

 

「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これからは、彼女がいた頃と同じように、行政管理を進められますね。」

 

「お疲れ様でした、先生。キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。」

 

そう言うとリンは深々と頭を下げてきた。

アロナが権限を復旧させたのであって、私は特に何もしていないので複雑な気持ちだったが、彼女からの感謝を受け取った。

……シッテムの箱の中でアロナがドヤ顔をしているような気がする。

 続けてリンは、先程の不良生徒や停学中の生徒達はこれから追跡して討伐するので問題はないと言ってくれた。なんとも頼もしい。

 

「ああそれと。先生、私についてきてください。連邦捜査部『シャーレ』をご紹介いたします。」

 

リンに連れて行かれた部屋の前には、何かの裏紙に『空室 近々始業予定』と書かれた紙がテープで貼り付けられていた。

 

「ここがシャーレの部室です。」

 

「長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることになりましたね。」

 

ドアノブに手をかけ、扉を開ける。

中にはワークデスクや書類の収められた棚、資材の入った段ボール、そしてラックにかけられた銃が数丁。キヴォトスらしい職場だ。

 

「ここで、先生の仕事を始めると良いでしょう。」

 

仕事、仕事か。

そういえば仕事って何をすればいいんだろうか。

ルビコンにいた頃は……ウォルターやエアと……あとその他諸々が持ってきてくれたのをこなしてたっけ……。

思えば仕事を選択してはいたものの、仕事そのものを自分で持ってきたことはなかったな。

 

"私はこれから何をすればいいのかな?"

 

リンは少し黙ったあと、困ったように言う。

 

「……シャーレは権限だけはありますが、目標のない組織なので、特に何かをやらなきゃいけない……という強制力は存在しません。」

 

「キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なく、先生が希望する生徒たちを部員として加入させることも可能です……。」

 

「……面白いですよね。連邦捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては、彼女も特には触れていませんでした。」

 

「つまり、何でも先生がやりたいことをやって良い……ということですね。」

 

なるほど、やはり自分で仕事を持ってこなくてはいけないらしい。経験はないが、先生になると選択した以上、やるしかないだろう。

幸い、何でもやって良いとのこと。

 

「……本人に聞いてみたくても、彼女は相変わらず行方不明のまま。私たちは彼女を探すのに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちで起きる問題に対応できるほどの余力がありません。」

 

「今も連邦生徒会に寄せられる様々な苦情……。支援物資の要請、環境改善、落第生への特別授業、部の支援要請などなど……。」

 

仕事の具体例を挙げた後、彼女はまた悪い顔をしてこう続けた。

 

「もしかしたら、時間が有り余っている『シャーレ』なら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね。」

 

「その辺りに関する書類は先生の机に

 

"よし、じゃあシャーレ初仕事は近所のスイーツ店への募金活動だ!"

 

「……はい?」

 

何でもやりたいことをしていい。

ならば、まずはシャーレ奪還のために働いてくれた子達と私を案内してくれたリンに報酬を与えることにしよう。

リンがまた騒がしくなったが、何とか話を押し通し、子供5人、大人1人の総勢6名がシャーレ近辺のスイーツ店へと押し寄せることになった。

 

 

 

621先生概念 プロローグ編 完

 

 

 





そういえば皆様はブルアカのアニメ9話はもう見られましたか。
私は過去ホシノ成分が多すぎて毎秒スタッガーしてました。感謝。
あとym先輩の声優さんがアニメで決まっててもう本当になんていうんですか、最高ってこういうことですかね?(語彙力崩壊)
そして狙ったかのように今週水曜からアビドス編3章の追加エピソードと水着セリカが来ますし、ほんと運営さん、私を殺しにきてませんか?

実はブルアカ始めて2ヶ月目くらいなのでまだ把握しきれていないことも多いんですが、ひょっとしたらアニメ最終回あたりの時期でアビドス関連、特にホシノの別衣装とか来るんじゃないかと戦々恐々としているので今回の水着セリカは見送った方がいいのかと悩みに悩みまくっています。イグアス、対処を。

あとがきの長文、失礼しました。
今回の話も楽しんでいただけたなら……素敵だ。ミルクトゥースも喜んでいます。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。