おまけ編なので文字数が少ないのは許して……許して……。
シャーレを奪還し、サンクトゥムタワーを復させた後、私はこの奪還作戦に参加した.....というより半ば強制的に参加させられてしまった各学園の生徒達と、ここまで案内をしてくれたリンに“報酬"を支払うため、シャーレへ向かう道中に見つけたスイーツ店へと訪れていた。
「ほ、本当にいいんですか?先生。」
申し訳無さそうに、しかし目はスイーツに釘付けになっているユウカが確認を求める。むしろその場に居合わせたという理由だけで連れていった挙句、怪我まで(といっても、軽い擦り傷程度だが)負わせてしまった私の方が申し訳ないくらいなので、遠慮なく好きなのを選んでいいと伝える。
「えっと、じゃあ私はこのイチゴパフェを。」
「モンブランケーキを一つ。」
「では、私はコーヒーを。」
皆各々好きな物を注文する中、ハスミだけが何も頼んでいない。
激しく苦悩しているようだが、なぜかメニュー表から目を逸らしている。一体なぜ?
"ハスミも好きな物を頼んでいいんだよ?遠慮しないで!
「い、いえ。大丈夫です、私は...
"あ、これとかどう?季節限定メロンパフェだって!
そこまで言うと、ハスミが完全に沈黙する。
しかしその目は先ほどとは違い、メニュー表に印刷されたパフェの写真へと向けられている。
「本当に、いいんですね?」
大丈夫だよ、と返す。
その瞬間、ハスミが、バン!と音を立ててメニュー表を奪い取り、目についたものを次々と読み上げる。
「このメロンパフェと特製プリンとチョコクレープとそれから......!!」
その場にいた全員が目をまん丸にする。
注文を受けている店員のロボットも、液晶に表示された絵文字から相当に驚いているのが見て取れる。
忙しそうに店員が戻って行ったのを見て、少しばかり憐憫の気持ちを抱いた。
....よく考えれば、支払いは私がするのだから人の心配をしている場合ではないのではなかろうか。
若干の後悔をしつつも、ハスミの満足気な表情を見ると、まぁいいか、と思えた。
『トリニティ総合学園の……パーティーは……"エデン条約"に向け……』
ふと、店内のテレビから流れているニュースの声が耳に入る。
"エデン条約……。"
エデン条約。まだ噂話程度にしか聞いたことはないが、トリニティとゲヘナの間で何かしらの条約が結ばれるという。
トリニティとゲヘナは双方共にキヴォトスのマンモス校だから、この仕事をしていく上でエデン条約は必ず関わることになるだろう。
"ねぇ、ちょっといいかな。"
せっかくトリニティとゲヘナの生徒がいるんだ、話を聞いておこう。
"エデン条約のことについて聞きたいんだけど……"
その瞬間、先ほどまでの和気藹々としていた雰囲気がガラッと変わる。特に、ハスミとチナツの二名の様子が。そういえば、二人はどちらも風紀委員だったか。
「エデン条約……ですか。」
リンによると、エデン条約とは近々トリニティとゲヘナ間で結ばれる"不可侵条約"であるとのこと。
「詳しい話は、そちらのお二方にお任せいたします。」
会話のバトンが渡され、ハスミとチナツ両名によるエデン条約についての説明が始まった。
「……トリニティ総合学園とゲヘナ学園は、長年敵対関係にあります。」
「歴史上、何度も両学園による紛争が起こっており、全面戦争へと突入する可能性がありました。」
「そこで、トリニティとゲヘナから共に構成員を出し合い、エデン条約機構を設立。それにより両自治区の紛争解決を行う……というのが、エデン条約のおおまかな内容です。」
あの時のハスミの呟きは、こういう事だったのかと納得した。
しかし今は、他学園の生徒や連邦生徒会がいる前ではあるが、ハスミやスズミとチナツが喧嘩になるといったことは起こっていない。
3人とも、公私を分けられる人物であるか、もしくは、それほど憎み合ってはいないようだ。
「元は連邦生徒会長が考案したものだったのですが、彼女の失踪により、全てが水の泡になる可能性すらありました。」
「ですがすんでのところで、トリニティの生徒会であるティーパーティーの一人、桐藤ナギサさんが尽力してくださったため何とか持ち直しているというのが現状です。」
また頭痛が襲いかかるが、流石に何度も経験した為か、この痛みにも慣れてきた。
「……ですが最近、新たな問題が発生してきておりまして。」
ハスミが困ったような顔をしながら話し始める。
「ここ最近、精神状態が不安定な生徒がトリニティで多発しているのです。」
とは言っても、スケバンなどの不良生徒たちが大半なのですが、とハスミはつけ加える。
「それについては自警団の方からも報告が。」
「先日、夜警に出ていた自警団員からの報告で、廃墟に集まった不良たちが何やら怪しい密会のようなものをしていたようで……。」
「後日、同団員が確認しに行った際にはもぬけの殻だったそうですが、不良たちが座っていた場所などに赤い粉のようなものが散らばっていたようです。」
「この粉が精神状態の不安定な生徒たちと関係があるのかは……今のところ全くわかっていません。」
何故それを自分たちに言わなかった、と言いたそうなハスミに、近々お話しする予定でしたが偶々今日この場になってしまいました、とスズミが答える。
「……とにかく、エデン条約は締結されるよう進めてはいますが、障害が未だ多く残っているということです。」
「それに、トリニティには裏……。」
何かを言いかけたハスミが口をつぐむ。
チナツがそれを問い詰めようとした時、先ほど注文したスイーツがテーブルに運ばれた。
"とりあえず、食べようか。"
それからは、皆で美味しくスイーツを頂き、何気ない会話を楽しんだり、大量のスイーツを平らげたハスミに驚愕したり、支払った後の自分の財布の中身に絶望したりして、お開きとなった。
キヴォトスに不穏な空気が流れ始めてきたところで、次回からはアビドス編に突入します。
621先生はシロコの匂いを嗅ぎ、間接キスをかましてしまうのか、果たして──。
話は変わりますが、アニメ10話の予告編でカイザー理事がゴリアテに乗ってるのがACみたいで椅子から転げ落ちるくらい笑いました。運営さん、AC6コラボ待ってます。