またしても一日空いてしまって申し訳ございませんでした。
あまりにもリアルが忙しすぎる……修正が必要だ。
それではアビドス編第二話、お楽しみください。
「クソ!まだやれる……!!」
「ダメだ、退け!もうこれ以上は無駄だ!」
「帰ろう、帰ればまた来られるから。」
連邦捜査部シャーレの支援により弾薬を補給したアビドス高校は、襲来したヘルメット団から母校を防衛することに成功。
そして、前線で戦っていた生徒達はシャーレの客人をもてなす為に、校舎へと戻ったのだった。
「皆さんお疲れ様でした!」
対策委員会の部屋に、戦闘を終えた生徒達が帰ってきた。
そんな彼女達に、私と共に部屋に残ってサポートをしていた生徒が労いの言葉をかける。
「先生が弾薬を持ってきて下さったおかげで、久々に全力を出せました〜!」
「ん、予備の弾薬があるだけで、こんなにも余裕ができるとは思わなかった。」
数日間砂漠を彷徨いながら運んだ弾薬は、しっかりと彼女達の役に立ったようだ。
"みんなの役に立てたようで良かった。"
「はい、本当にありがとうございます。これでアビドスも暫くは安泰です。」
「……そういえばまだ私たちの自己紹介がまだでしたね。」
そう言うと、赤い眼鏡をかけた生徒が自己紹介を始める。
「私は一年生の奥空アヤネです。先日手紙を送らせていただいたのも私です。」
続けて、黒髪のツインテールの少女が。
「黒見セリカよ。」
次に、なにかこう、全部が大きすぎる少女が。
「十六夜ノノミです!よろしくお願いします⭐︎」
その次に、私を助けてくれた少女が。
「砂狼シロコ。よろしく、先生。」
そしてあっちが……と、シロコが目線を動かす。
「……小鳥遊ホシノだよ。」
やはりまだ、警戒されている。どうしたものだろうか……。
"私は連邦捜査部シャーレの顧問先生をしている、鴉飛レン。みんなこれからよろしくね!"
全員から歓迎されている……とは言えないが、まあ良しとしよう。信頼はこれから得ていけばいい。
そんなことより、気になることがなる。
何故この学校は不良の集団に襲われるようになってしまったのか。
不良生徒による事件は各自治区で発生しているが、ここまで大規模な襲撃は聞いたことがない。
"ところで、なんでこの学校はあんな不良に絡まれるようになったの?"
その疑問に、アヤネが答える。
「それが……よく分からないんです。」
「前にも襲撃されることはあったんですが、いずれも少数による小競り合いのようなもので……。」
「大人数で、しかも戦車や装甲車まで持ち出して攻めて来るようになったのはここ最近からなんです。」
「特に何かをした覚えは無いんですが……。」
原因は不明。
となると、あの不良達は放っておくとまたこの学校へと攻めて来るだろう。
ならば、今──。
「じゃあさ、補給もできたんだし、このタイミングでこっちから仕掛けない?」
「今回の襲撃は勝ち筋でも見えてたつもりなのかもしれないけど、奴らは全力でここを潰しにきた。」
「でもその戦力もさっきの戦闘で大半が削れた。奴らが一番消耗してる今こそ、泣きを入れたあとのもう一発を叩き込むチャンスなんじゃない?」
言おうとしたことを、ホシノが全て代弁してくれた。相当に頭が切れるようだ。
「い、今から行くんですか……?」
「うん。むしろ先生の補給が届いた今しかチャンスはないよ。」
「ヘルメット団の前哨基地はここから30kmくらいだし、今から出発すれば十分間に合うと思う。」
「あちらも反撃されるなんて夢にも思ってないでしょうし、行くなら今しかありませんね。」
「それは……そうですが……。」
アヤネ以外の皆が闘志を燃やす中、彼女はこちらに意思を問うように見てくる。
少数による敵拠点への突入となるが……先程の戦闘を見るに、問題はなさそうだ。
であるならば、私の返答は。
"もう一仕事、頑張ろうか。"
こうして、アビドス廃校対策委員会によるヘルメット団追撃作戦が開始された。
私達のほぼ全ての戦力を投入したアビドス襲撃作戦は失敗に終わった。
戦車や装甲車も、"依頼主"から供与されたものは全て投入した、というのにだ。
リーダーは次の戦い、次の次の戦い、次の次の次の戦いに備えると言っていたが、最早私達にそんな戦力なんて残っちゃいない。
対して向こうは……何故だかは知らないが、弾薬の補給を行っていた。
弾切れになった今のタイミングで制圧するという話だったが……。
奴らが弾を補給できたのは、ひょっとして戦闘の時にチラッと見えた見慣れない奴と関係があるのか?
そんなことを考えながら基地の中を歩いていると、何人かの仲間が部屋に集まって話し込んでいるのを見つけた。
基地の防衛をしていたやつらのようだが……。
「おい、何やってんだ?」
何か様子がおかしい。
こちらの声に反応しない。
皆で一心不乱に何かを話し込んでいる。
「おい、聞いてんのか……待て、なんだよそれ。」
近づいてみると、全員の手や口に赤く光る何かが付着している。
まさかこいつら、こんな得体の知れない物を食ったのか?
「何食ってんだ!今すぐ捨てて手を洗ってうがいしてこい!!」
その声にようやく反応を示したようで、全員の視線が私に向く。
だがヘルメット越しに見えたその目は全てが虚で、ほのかに赤く光っていた。
「……おぃ……これ、食ってみろよ……すっげえふわふわすんだぜ……?えへへ……。」
「だっ、誰が食うかそんなもん!さっさと吐き出せ!」
私達カタカタヘルメット団は、もとはここらにいた、自分で言うのもあれだが唯のチンピラ連中だ。
まともなインフラもほとんど残っちゃいないような場所に、居場所のないやつらが集まってできたコミュニティだから、常日頃水や食い物に困っていた。
だから、ほんのわずかに手元に残っていた銃と弾で略奪を繰り返し、命を繋いできた。
しかしその日常は、"依頼主"からの接触によって変わることとなった。
依頼主は前金としてかなりの額を振り込んでくれたらしく、私達は食い物なんかで困ることは無くなった。
アビドスの連中には災難だろうが、私達にとっちゃ救済だった。
だが、未だに飢えていた頃の癖でその辺の食べられそうな物を口にするようなやつらがいる。
そして、そういうやつらが、今目の前にいる。
「食ってぇ……みろってぇ?なぁ……。」
だから、こんなことになっている。
「だから食わねえっての!お前らいい加減に……。」
その時だ。
入り口の方からデカい爆発音が聞こえたのは。
すぐに別の仲間からの報告が来て、状況を把握した。
アビドスの連中が攻めてきた。
「どうしてアイツらがここに……!?」
銃のチェックをした後、部屋を出て戦場へと急行する。
部屋を出る時、扉は閉めておいた。
今のアイツらは戦力になりそうもない。
それでも、アイツらは私達の大切な仲間だ。
どうか見つかりませんように、そう願って、重い扉を閉めてきた。
"最後の一人が逃げ出した。これで仕事は終わりだよ、みんな!"
カタカタヘルメット団のアジトを制圧した彼女達に帰投するよう伝える。これでもうアビドス高校が襲撃されることはないだろう。
『先生、ちょっと伝えたいことが。』
シロコから通信が入る。
私の気のせいならいいんだけど、と彼女は続ける。
『ヘルメット団が使ってた銃、少し綺麗すぎると思う。』
『手入れはしてるだろうけど……やっぱり綺麗すぎる。』
『多分、この銃は新品だと思う。』
すると、その通信に割り込んでくるように新しい通信が入る。
『それ、おじさんも思ってたんだよね〜。』
『そもそもあいつらが戦車や装甲車なんかをあんなに持ってるわけがないしね。』
"つまり……ヘルメット団に協力している存在がいるってこと?"
単なる地域の暴力組織による襲撃だと考えていたが……そもそもそんな組織があの数の兵器を持ち出せるのが異常だったのだ。
ルビコンに居たせいで感覚が麻痺している。
「で、でもなんで……!」
『じゃあ、これからも襲撃されるかもしれないってことか。』
『どうしましょう……』
皆の雰囲気が暗くなる。
ようやく希望の光見えてきたというのに、それを嘲笑うかのように厚い雲がその光を遮った。
『もう!せっかく借金返済に全力出せると思ったのに!』
……は?
"え、借金って何……?"
『あっ……。』
自分の失言に気がついたのか、セリカからの通信が途切れる。
『バレちゃったか……まぁ、隠すようなことじゃないし、帰ったら詳しく話そっか。』
『先生にも聞きたいことがあるしね。』
……どうやらこの学校の問題は、自分の想像を超えているようだ。
"みんなお疲れ様。"
ヘルメット団のアジトから帰ってきた四人に声をかける。
"早速なんだけど、借金について
「その前に、先生。」
話を聞こうとすると、ホシノから止められた。
先に質問に答えろということらしい。
ホシノはまた、睨むような顔でこちらを見ている。
「先生、一体何者なの?」
予想外の質問に返答が思いつかない。
今の私は連邦捜査部シャーレの顧問をしている先生だ。
であるから、それ以上の答えを出すことはできない。
だが彼女の求めている答えはそれでないことは明白だ、もしそうなら自己紹介した時にその疑問は解決されている筈。
"質問の意味が……わからないな。"
「とぼけないでよ。それとも質問を変えてほうがいいかな?」
「お前は一体何をしてきたんだ。」
ホシノが銃を構える。
その銃口は、しっかりと私の方を向いている。
より一層彼女の顔は険しくなり、少しでも動いたり、質問に答えなければ殺すと目で語ってくる。
「ヘイローも持ってないのに、瞬き一つしてない。撃たれたら死ぬんだよ?それくらい知ってるはずだよね。」
「ちょ、ホシノ先輩!」
「銃を下ろしてください!先生はキヴォトスの外から来た人なんですよ!?」
「ホシノ先輩……!」
「ホシノ先輩!ダメです!」
「みんなは黙ってて!!」
後輩達の制止を一喝し、引き金に指をかける。
……答えないと、駄目か。
"分かった。"
セリカちゃんに起こされて委員会の部屋に連れてこられた時、凄まじい恐怖を感じた。
シロコちゃん、ノノミちゃん、アヤネちゃん、そしてその中に混じっている見知らぬ大人が一人。
私はそいつに恐怖を抱いた。
今までに会ったどの大人よりも、危険。
人を利用してきた悪い大人は何人も見てきたが、目の前の大人はそうじゃない。
人を犠牲に……いや。
大勢の人を殺してきた、大人だ。
雰囲気を取り繕っているのか、そういう感じがしないが、私の勘が痛いほどにそう告げている。
こいつは今すぐアビドスから消さなければならない。
じゃないと、このアビドス……キヴォトスでさえも、この大人に壊されてしまう。
しかし運が悪く、ヘルメット団が襲撃を仕掛けて来ている状況だった。
アヤネちゃんを一人で置いていくのは気が引けたけど、目の前の大人のことは一旦放っておいて、また後に話を聴くことにした。
その後ヘルメット団を追い出し、ついでにアジトも制圧した。
ようやく、この大人を問い質すことができる。
さあ、話せ、お前が何をしてきたか。
"……私はある場所で、傭兵として働いてたんだ。"
"敵も味方も入れ替わるような場所で、仕事をしてた。"
"私、死にかけていたところをとある人に助けてもらってね。その人に言われて、傭兵の仕事に就いたんだ。"
"仕事は危険なものばっかりだったけど……でも、そんな場所で初めて友達ができた。"
"楽しかったな……。"
"……。"
"…………。"
"………………でも全部、壊してしまった。"
"私は……命の恩人も……友達も……仲間も……みんなみんな、みぃんな。殺した。"
"……これが、私がしてきたことだよ。"
私の求めていた答えは返ってきた。
やっぱり、この大人は人殺しだった。
具体的な数は言わなかったけど、きっと本人も覚えていないほど殺している。
……でも、何故だろう。
悪い大人じゃ、ない気がする。
この人は大切な人達を殺したと言ったけれど、きっと違う。
守れなかったんだ。
自分の選択のせいで、大切な人を守れなかった。
だから、自分が殺したも同然だって。
私と同じだ。
私も、あの時、ああしておけばと、何度も後悔した。
何度も何度も、何度も後悔した。
力だけはあるくせに、何にも守れやしない。
だから大切なものを何もかも失った。
「そっか……そうだったんだね、先生。」
この人に同情はする、けれどまだ信頼はしない。
万が一、この人がアビドスに危害を加えるようなら私が殺す。
でも、もしかしたらこの人なら。
私と同じ経験をしたこの大人なら。
「先生、これからよろしくね。」
"……じゃあ、今度はこっちから。"
"借金してるの、君達?"
私の質問にアヤネが困ったような表情をする。
「えっと……どこから話しましょうか?」
"まずは金額から教えてほしいな。"
「現在のアビドス高校の借金は、九億六千二百三十五万です。」
「これを返済できないと学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らないといけなくなるのですが……実際に返済できる可能性は、ほぼ0%に近いです。」
「そのせいでほとんどの生徒が諦めてこの学校と街を去ってしまいました……。」
今は利子を払うので精一杯だもんね、とホシノが付け加える。
約十億の借金の利子だ、そうなるのも無理はない。だが、彼女達は学生であるというのに毎月銀行に金を納めている。
利子とはいえ、その額は普通の学生が払えるものではないだろう。彼女達の努力が垣間見えた。
「このアビドスで起こっている問題の殆どがこの借金のせいです。」
"借金の原因は、数十年前の砂嵐のせいってことか。"
「はい。この土地柄、砂嵐が起こるのは珍しくはないのですが、その時の砂嵐はそれを遥かに上回る規模の物だったそうで……。」
アヤネが奥の棚から古い地図を取り出す。
「見てください。これがその砂嵐が発生する前のアビドス自治区の地図で、今画面に映ってるのが現在のアビドス自治区の地図です。」
地図とパソコンの画面を見比べると、その差がはっきりとわかる。地図の方は紙の端にまでびっしりと建物と思われるものが描かれているが、画面の方ではその殆どが表示されていない。
砂嵐の被害が如何に悲惨だったかを思い知らされる。
「復興等に多額の資金を投入しましたが、何度も発生した砂嵐のせいでついに資金も底をついてしまい……。」
"それで、借金をしてしまったと。"
「そうです。さらに、このような学校に大金を融資してくれる銀行がなかなか見つからなかったので、悪徳銀行に頼るしかなかったんです……。」
アヤネが次に表示した画面に、この学校が借金をしている相手が映される。
"カイザーローン……"
キヴォトスに来てから何度か"カイザー"と名のつく企業を目にしたことがある。きっとこのカイザーローンも、そうした企業の一つなのだろう。
企業、企業か。
どこにでもいるらしいな、欲に塗れた企業というのは。
こんな学校からも金を巻き上げようとする欲深さに、ルビコンに残っていた僅かなコーラルを狙って争っていたベイラムやアーキバスと似たような物を感じる。
"……成程、君達の事情はわかったよ。"
"このまま帰るなんて無慈悲なことはしない。"
"一緒に頑張ろう、みんな。"
この子達が安心して、普通の人生を送れるように。
「ちょっと待ってよ!」
そこに、セリカからの怒声が響く。
納得がいかないという表情をしている。
「さっき来たばっかの大人が、どうして私達を助けようとするの!絶対裏があるでしょ!それにこの学校の問題はずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更大人が突っ込んでくるなんて……!」
「認めない、私は認めない!!」
そう叫んだセリカは、勢いよく部屋を飛び出していった。
気がつけば、この学校に来た時から随分と短針が進んでいる。
"時間、結構経っちゃったね。"
そう呟くと、皆が時計に注目する。
その中で一人、アヤネだけが何かに気がついたようだ。
「みなさん、昨日もこの時間にセリカちゃんが帰ってませんでしたか……?」
「言われてみれば……。」
「確かにそうですね。」
「ひょっとしてなにかあるんじゃないの〜?」
"じゃあ、追跡任務始めちゃう?"
「賛成!」
──アビドス廃校対策委員会+αによる、セリカ追跡劇が、今始まる──
621先生概念第二話、どんな具合でしたでしょうか。
最後の方でホシノが先生ならもしかしたらアビドスの危機をなんとかしてくれるんじゃないかと思っていますが、ここからどうやって一人で黒服の所に行く展開に繋げればいいか不安になってきました。
ホシノ絶対一人でなんでも抱え込むタイプじゃん、絶対すぐ誰かを頼るような子じゃないじゃんと一人で解釈違い起こしてグニャってます。
ちなみに次回はラーメン屋とあの例のbgmを引っ提げて登場する便利屋が出て来ます。多分。
追記:621先生の身の上話をするだけして借金の話をするのを忘れていたので追加しました。大変申し訳ございませんでした。