621先生概念   作:脳を焼かれた一般AC乗り

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お久しぶりです、なんとか投稿できました。
これだけ期間が空いておいて量がいつもの半分なのはお許しください……

今回は便利屋戦と、621先生の過去にちょっと触れます。
それではアビドス編4話、お楽しみください。


恩知らずの決戦

 

 

 アビドスでの長い一日が終わり、一夜が明けた。

 昨日は色々な事が起こりすぎた日だったので、今日は対策委員会の皆と今後の話でもしてゆっくりしたいと考えていたのだが──。

 

「校舎より南15kmの地点付近で大規模な兵力を確認!」

「まさか、ヘルメット団が?」

「ち、違います!ヘルメット団ではありません!」

「傭兵です!おそらく日雇いの傭兵かと!」

 

 どうやら、そうはいかないらしい。

 ……傭兵か、懐かしい響きだ。銃撃戦が日常なのだからそういう職業が存在するのも当然か。

 

「へえー、傭兵かぁ。結構高いはずだけど。」

 

 傭兵を雇うということはつまり、金をやるから命を張って戦え、ということ。半端な金では依頼を受けて貰えないだろう。

 そんな傭兵を大勢雇っている相手とは何者か。

 心当たりが一つある。便利屋68だ。

 彼女達はアビドス襲撃の依頼を受け、万全を期す為に大勢の傭兵を雇った。そのせいで、ラーメン一杯分の金しか手元に残らなかった。

 

「これ以上接近されるのは危険です!先生、出動命令を!」

 

 私の推測が合っているかどうかは、現場についてから考えるとしよう。

 

"仕事の時間だよ、みんな!"

 

 

 

 

 

 

 

 

『前方に傭兵を率いている集団を確認!』

 

 私の推測は当たったようだ。

 

「あれ……ラーメン屋さんの……?」

 

 アビドスの生徒達と対峙し、苦悩の声を上げるアル。恩を仇で返され激怒するセリカ。アルとは対照的に、仕事だと割り切るムツキとカヨコ。

 

「誰の差金?……いや、答えるわけないか。」

 

 シロコが銃を構え、引き金に指をかける。

 それを見たアルも覚悟が決まったのか、鋭い目つきでこちらを睨む。

 

「もちろんそれは企業秘密よ。」

「総員、攻げ"ちょっとまった。"

 

 今にも戦闘が始まりそうなのを制止し、アビドスと便利屋の間に割り込む。

 

"便利屋と傭兵の子達に提案がある。"

 

「先生!?」

「ん。先生、何する気?」

 

"もしここで私達に寝返ってくれるなら……そうだな、依頼主の倍の報酬を君達に支払うことを約束しよう。"

 

 一同が驚愕する。思ってもいなかったような提案だったようで、便利屋や傭兵、アビドスの生徒までもが目を見開いていた。

 

"アビドスはシャーレの支援が到着したとはいえ、まだ弾薬も補給物資も心もとなくてね。今ここで争って数少ない物資を浪費するわけにはいかない。"

"便利屋のみんなは、大勢の傭兵を雇う為に文字通り一文なしになってしまっている。"

"ここで戦って報酬を受け取るか。それとも、ここから立ち去って倍の報酬を受け取るか。どっちがいいかな。"

 

 一通り話し終えると、傭兵の子達が騒がしくなる。最後尾では既に何人かが帰り始めている。そんな傭兵をアルは必死に引き留めようとするも、一人、また一人と傭兵達はこの場を離れていく。

 結局、残ったのは便利屋68だけだった。

 

「アルちゃん白目剥いてる〜!写真撮っちゃお。」

「ちょっと、撮らないでよ!」

 

 アルとムツキが戯れ合うのを横目に、私はアビドスの生徒達と共に校舎へと帰った。

 

 

 

 

 

「ちょっと待ちなさい!このまま逃すわけないでしょう!」

 

 帰れなかった。

 

「このまま金を貰って引き下がるなんてアウトローじゃないわ!」

「アビドス高校!私達と戦いなさい!」

 

 金さえ貰えば何でもするのではなかったか。

 そう思ったが、彼女達──というか彼女、陸八魔アルという生徒は、金の為ではなく自分の理想の為に仕事をしているのだと考えると、ここで引き下がらないのに納得した。

 アウトローというのがいまいちよく理解できないが、確かに、金だけ貰って逃げ仰るというのは格好良くはない。

 信念を背負った者の行動は止めることができないということは、私自身が体現している。

 ならば最早、戦う他ない。

 

"みんな、準備はいい?"

 

 その問いに、アビドスの生徒達全員が首を縦に振る。それを合図に両陣営の撃鉄が落とされ、鉛玉の嵐が吹き荒れた。

 

 

 

「うわあああああっ!!」

 

 絶叫と共にハルカの散弾銃が何発も砲火を閃かせる。それら何十発ものペレットがホシノめがけて飛び込んでいく。だがその全てが、すんでのところで展開された盾によって防がれた。

 それでもハルカは突き進んでいき、敵の銃弾のみならず、盾に跳ね返された自分の散弾が当たろうと止まりはしない。

 ついにホシノの目前にまで迫り、銃床で殴りつけようと大きく腕を振りかぶった。しかしその瞬間、ハルカは盾で押し飛ばされた。

 咳き込むハルカだが、すぐに立ち直り再びホシノへ向かって走り出す。その様を見たホシノは若干引いていた。

 

 そんなホシノを援護する為、物陰から小銃を撃ち続けるシロコとセリカ。そこへ、握り拳程の物体が投げ込まれる。手投弾だ。

 

"二人とも伏せて!"

 

 その声が届く前、閃光と耳の痛くなる轟音と共に二人が吹き飛ばされた。

 

「いったた……シロコ先輩、大丈夫?」

「ん……ちょっと油断しただけ。大丈夫。」

 

 そこへ容赦なく降り注ぐ幾十もの銃弾。

 咄嗟に身を隠したが、再び手投弾が足元へと転がり込む。今度はそれを察知できたようで、すぐに遮蔽の向こうへと放り投げ、投げられた手投弾は地に着く前に炸裂した。

 

「お仕置きの時間ですよ……っ!!」

 

 猛獣のような唸り声をあげて、ガトリングの銃身が回転しだし、けたたましい銃声と共に何百という弾が放たれていく。それを見たムツキは咄嗟に身を隠すが、そこへ次々と銃弾が突っ込んでいく。コンクリートの壁に、着弾点を中心とするヒビがいくつも入る。

 そのノノミを遠くから狙う閃光が目に入る。

 

"ノノミ、危ない!!"

 

 瞬時に横に回避したノノミの耳元を鉛玉が掠めていった。なんとか間に合ったと安堵する前に、その弾丸が地面に着弾し、爆発した。

 鉛を覆う銅製のジャケットの破片が、ノノミの背後から襲いかかり、服を切り裂いていく。

 ──不足の事態が矢継ぎ早に起こっている。

 ここは一度引くべきか。いや、そもそも引くことができるのか。

 

 

 

「捕まえた。」

 

 突如背後から迫る手に口を塞がれ、拘束される。

 

「じっとしててね、先生。」

 

 拘束する手の力がさらに強くなる。

 

「アビドスの連中は社長達に任せるとして……。」

「先生。いや、貴方に質問がある。」

 

 こうして、騒がしい戦場のすぐ後ろで、静かな戦いが始まった。

 

「2年前、とある生徒──今の連邦生徒会長について、一つの噂話が広まっていた。」

「内容は、その生徒がヘイローのない人間を居候させているっていうもの。」

「その人物の特徴は、透き通るような白髪に、ルビーのように深紅に染まった瞳。」

「この話はキヴォトスでも一部の生徒達の間だけで流行ったもので、連邦生徒会長が就任するのを良しとしない生徒によって流されたものだと思われていた。」

「そう、思われていたんだけどね。」

 

 ぐるっと体を回され、じっと目を見つめられる。紅いカヨコの目と、コーラルに侵された私の目が、互いを見つめ合う。

 こんな状況で思うことではないのは分かっているが、彼女の瞳はとても美しいものだった。

 身も心もコーラルに毒され、その瞳が宝石のように光る私の目よりも、ずっと美しいと感じた。

 

「ヘイローがなくて、ルビーのように深紅に染まった瞳。」

「二つも、当てはまってるね。」

 

 カヨコは私の口を抑えていた手を離し、私の髪を手で触れた。

 

「髪は真っ黒だけど……染めたのかな。」

 

 生徒達に正体を隠すつもりはない。このまま彼女に、私の過去を話してもいい。

 ……だが口を開けないほどに、頭が痛い。脳の中心から痛みが広がっては狭まるというような頭痛が、私の行動を阻害する。急速に痛みが増していくので、遂には立つのすら危うくなっていく。

 

「っ!?ちょっと、大丈夫?」

 

 声にもならない呻めきばかりが喉を通って外に出ていく。地面が視界に垂直になって見えるので、きっとその場に倒れたのだろう。

 そして私は脳が爆発するような激痛を感じたのを最後に、視界が暗転したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!!」

「……い、せん……」

「……んせい!」

 

 

 

「先生!!!!!!」

 

 耳をつんざくような声で目が覚める。

 瞼を開けると、アビドスの生徒達が目に入った。上半身だけ起こすと、白いベッドの上で寝かされていて、病室に運ばれたのだと気づいた。

 

「先生、私本当に心配したのよ……!!」

 

 涙を目尻に残したまま、セリカが私を見つめている。アヤネやシロコ、ノノミ、そしてホシノは、心底安堵したような表情でこちらを見ている。

 

「心配したんですよ、私達……!」

「先生に何事も無くて……本当に、よかったです。」

「ん、先生は私達を泣かせた心配を取るべき。」

 

"あはは……ごめんね。"

 

 それから、あの後の話について聞いた。

 

 

 

「えっ、それ本当なの、カヨコ!?」

「先生が……倒れた!?」

 

 戦闘の途中でカヨコからの通信を聞いたアルは、ムツキとハルカに戦闘中止の旨を告げ、「今日はこの辺にしておいてあげるわ!」と捨て台詞を残して帰っていったという。

 カヨコが呼んだのであろう救急車に乗せられた私はアビドス郊外の病院へと運ばれたらしい。幸い、命に別状はなかったのだとか。

 

「便利屋68……あいつら、許せない!」

 

 私の無事を喜ぶ顔から一転、皆の顔が険しくなる。きっと便利屋が私を気絶させたのだと思っているのだろう。

 

"みんな、便利屋の子達を恨まないで。"

"私が勝手に倒れちゃっただけだから。"

 

 貧血だからと理由をつける。

 その言葉に皆の表情が少し和らいだ。

 

"とりあえず気分転換に、どこかにご飯食べに行こうか。"

 

 病室を退院した後、私達はアビドスの町を歩き始めた。

 

 

 






読んでくださり感謝感激です。
いつも本当にありがとうございます。素敵だ……

遂にブルアカのアニメとカズサ、アビドスのショート動画が終わってしまいましたね……俺はこれからどう生きていけばいいんでしょうか。

次回は銀行強盗しに行きます。ファウストさん、楽しみですね。

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