境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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2013年5月7日。改定。


境界線上の決意者達

とある親子の話しをしよう。

その親子は、生まれながらに特別な力を持っていた。

父親はその莫大とも言える力で、数々の奇跡を起こしている。

息子もその恩恵を受け継ぎ、将来が有望とされた。

 

そんな親子に、母親は居ない。

 

息子を産んで、すぐに亡くなってしまった。

息子は自分を責めた。

 

〝自分が生まれたから、母親は死んだ〟

 

だが、父親はそんな息子を叱咤した。

 

〝命懸けでお前を産んだんだ! 死ぬときまで、お前の幸せを願っていたんだ!〟

 

泣きじゃくりながらも、息子は何度も頷いた。

 

やがてその子供に、友人が出来た。

 

一人は、良く言えば明るく。悪く言えば――――そう。馬鹿だった。

何をするにも騒動を起こし、その子や周りの友人に叱られ。それでも最後には皆笑っているという、なんとも不思議な雰囲気を持つ少年。

 

一人は、その少年の姉。一見マトモそうに見えるが、やはり血は争えないのか。時折、弟以上のトンでもない発言をしたりしている。

 

一人は、神社の子だった。面倒見がよく、精神年齢で言えば同じ年の子達よりも上だろう。控えめで、その子供をよく気にかけていた。

 

一人は、異族の子だった。九本の見事な尻尾と耳。だが、周りはそれを気にせず、ともに遊ぶ。最初は、少女かと思ったが、意外なことに。少年だった。

 

そして、最後の一人は普通の少女。

どこか一線を引いている雰囲気すらある少女。しかし、馬鹿をやらかす少年の前では、歳相応の少女の姿であった――――その少年限定で、毒舌をかますことが毎日だったが。

 

だが、そんな幼少時代もあっという間に過ぎる。

あるとき、馬鹿な少年が言った。

 

〝俺は王様になる!〟

 

それは、一人の普通の少女が発端だった。

少女には、「夢」と呼べるものを持っていなかった。

だから少年はそういった。

ここにいる全員の夢を叶えられるような――――そして、その少女が夢を持てるような国を作る王になると。

誰もが無理だと思った。が、誰もそれを口に出さなかった。その少女でさえ、何も言わず、ただ静かに微笑んでいた。

と、それに呼応するかのように、少年の友人である子が言った。

 

〝お前王様になんの?〟

〝おう、なる! ぜってーに、なる!!〟

〝そっか――――なら。お前を守る『剣』になってやるよ〟

 

そう、言った。

夢を支えよう。そのために、少年を守るための力をつける。そう言った。

それに続くように、少女のような少年も言う。

 

〝じゃあ僕は、いざとなったら皆を守れる『盾』になろうかな〟

 

王になるには当然敵もいる。だから、その敵から皆を守る力をつける。そういった。

少年はいつものように笑い、頼んだぜ、と言った。

 

それからすぐ後だった。

少年が重傷を負い、少女が、この世からいなくなったのは。

その子は嘆いた。自分ではどうにも出来なかったのか。力がなかったのか。

少女のような少年も悲しんだが、その子ほどではなかった。

時折、神社の少女が来たりしていたが、あまり意味がなかった。

 

だがそんな時、その子の父親がいった。

 

〝約束、したんだろう?〟

 

それは、少年との約束。

王を支え、守るための剣となる。

その子は頷いた。

 

〝なら。一緒に行こう〟

〝……何処へ?〟

〝他の王様のところへ〟

 

おそらく、その子は今まで泣いていた顔から一気にキョトンとしたような顔になったんだろう。父親が笑う。

 

〝王様を守るための勉強だ〟

〝べん、きょう?〟

〝Jud.お前には少し早いが、問題はないさ〟

 

そういって、荷造りをしてこいという父親。

その言葉に、若干の不安を覚えた。

 

〝武蔵を、出ていくの?〟

〝少しの間、な。その間、お前は一人だ〟

 

一人。その言葉が、死を目の当たりにした子供にどれだけ響いただろうか。

だが、父親は優しくその頭に手を乗せる。

 

〝何。ずっとじゃないさ――――三人の王様のところにいって、見てくるんだ〟

〝……? 何を〟

〝その王の生き方を。在り方を。全て〟

〝見てきて、どうするの?〟

〝お前が剣となると誓った王様に教えてやればいい。『こんな王も、世の中にはいるんだ』ってね――――誰彼構わず言っちゃダメだぞ?〟

〝うん。Jud.〟

 

いつしか、その子供からは涙が乾いていた。

代わりにあったのは、決意と、覚悟と、ほんの少しの寂寥感。

 

(……泣いていられない。だって。一番泣きたいアイツは、今ここにいないんだから)

 

だから、自分は泣かない。泣いては、いられないんだ。

次に会うときは、お互い。ちゃんと笑って再開しようと。そう思った。

 

親子はすぐに荷造りをし、武蔵の教導院――――アリアダスト教導院に事の次第を知らせる。

去り際に、その子は一度だけ、振り返る。

それは、いつも自分のところに来てくれていた神社の少女。

 

……泣かせるだろうなあ。

 

全部終わって、またここに帰ってきたら謝ろう。

こうして。二人の親子は去っていった。

 

 

 

 

 

それから、十年後。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

空。青い空。

その空に浮かぶ、巨大な都市。

それは、一つの都市のように見えて、実はいくつもの艦が繋がって出来ていた。

 

右舷一番艦〝品川〟

右舷二番艦〝多摩〟

右舷三番艦〝高尾〟

中央前艦〝武蔵野〟

中央後艦〝奥多摩〟

左舷一番艦〝浅草〟

左舷二番艦〝村山〟

左舷三番艦〝青梅〟

 

全八艦。これら総じて『武蔵』という。

 

時は、聖譜暦1648年。俗に、『末世』と呼ばれる、世界終焉を迎える年。

そんな終わりを迎えようとしている年に、ここ極東『武蔵』から始まる物語。

そんな中、中央後艦『奥多摩』にある学生の学舎、武蔵アリアダスト教導院に一人の人影があった。

 

教導院の制服に身を包み、されど一般制服とは明らかに違う飾りをつけたその男。

彼は、歌を聴くように目を閉じていたがやがて、その眼を開ける。

 

 

 

 

 

「……そろそろ終わりにするか」

 




どうもKoyという名のKyoです。

ふっ。やってしまった……やってしまったよ。

もう、ゴールしても、いいよね……

これを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

では。
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