境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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相対上の討論者

 

K.P.A.Italiaの艦内では、ガリレオとインノケンティウスが二回戦目の相対を表示枠越しに見ていた。

 

「ほう。中々に強いなこの少年は。上手くもある」

「Tes.そうでなければ、あんなガキ一人に疲労符などつけるわけが無い」

「どういう意味かね? 元少年」

 

Tes.とインノケンティウスが頷く。

 

「ただ力だけの奴なら技と謀略でどうとでもなる。ただ技だけの奴なら力でねじ伏せる――――――だがコイツはその両方の才覚を持ち、尚且つ頭も回る。そんな奴に、魔法の力が加わってみろ」

「成程。君の懸念は最もだ。君もそう思うだろう?」

「……Tes.」

 

そういうのは、インノケンティウスの左隣にいる少女だった。

ガリレオは、ふと頭を掻く。

 

「ああいや。すまなかった。君も古代魔法使役士なのであったな」

「いえ。ガリレオ様が気にするようなことではないです」

「……そういってもらえると、ありがたいな」

 

そう言っている内に、二回戦目が終わった。

 

「ま、疲労符つけて人狼系種族とこれだけ渡り合えただけ賞賛ものだな」

「これで一勝一敗。次で決まりますね」

「最後は――――――ほう」

 

見ると、葵・トーリが本多・正純と相対をしようとしていた。

 

「はっ! これはもう決まったな。片や政治の本多と言われた家の者。片や聖連により付けられた字名(アーバンネーム)が『不可能男(インポッシブル)』という男」

「これで。姫ホライゾンの引責自害は決まりましたね」

 

そういう傍ら、トーリが発言をした。

 

 

 

 

 

『やっぱホライゾン救いに行くの――――――止めね?』

 

 

 

 

 

その瞬間、インノケンティウスは水の入った瓶を持ったまま呆然とし。

 

とある西国無双は頬にご飯粒をつけながら表示枠を見つめ。

 

とある西国無双の妻は夫の頬についたご飯粒を取って食べた。

 

そして、全国の人間が口を揃えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

一瞬、ああ馬鹿ってこんなんなんだなー、ということを正純は頭の中で考えていたが、我に返ってトーリにツッコミを入れる。

 

「おい待て馬鹿! それは私の台詞だろう!」

「えー、なんでー?」

「な、なんでって……」

 

言葉に詰まると、後ろにいる神耶が笑った。

と、正純の後ろからやってきたネイトと葉月。葉月もまた笑っていた。

 

「あっはっはっはっは! お、お前こういう場面でっ、ククッ、ナイス!」

「あーははははは、すごいねトーリ!」

「ああ! 俺総長兼生徒会長だからな!」

「うん。で。それ誰の入れ知恵?」

 

と、神耶が訊ねるとトーリは否定する。

 

「お、おおおおおお前! い、いい話だったのに落としやがったな!」

「で。誰の入れ知恵?」

「お、おおお俺に決まってんだろ!」

「あー、はいはい。Jud.Jud.そういうことにしてあげるね」

「く、くそぅ! その目は信じてない目だな! そうだな!」

 

トーリは制服の内側から教科書を取り出しバンッ、と床にたたきつけた。

正純は、事態が分からず、とりあえず自分の横を通り過ぎようとしている葉月に聞く。

 

「なあ白百合。これは一体……」

「んあ? 分からないか正純。確かに、先生が始める前にお互いの立場でって言った。けどよ。どっちがどっちって言ってないだろ?」

「そ、それはそうだが……」

「だからアイツは先攻を選んだ。そして、だ」

 

葉月は、正純を指す。

 

「これでお前は。ホライゾンを救出する論を述べなくちゃならなくなった」

「……っ、そういうことか」

「アイツは、まあ昔から馬鹿でな。自分が何も出来ないってのを分かってる。だがその分、誰にどれを任せればいいかがよく分かってる。人を見てるって言うのかな。こういうの」

「それで、私を選んだと?」

「お前に任せれば、絶対に道を付けてくれる。そう考えてんだよ。あの馬鹿は」

 

そういって、葉月は梅組メンバーに合流する。

ネイトも正純に頑張れというように視線をよこす。

 

(……そういわれても)

 

と、正純は心の中で思う。

ホライゾンを救うことで、どうなる。

 

確かに、救うための論はある。昨夜、自分が書き起こし、空で言えるくらいに読み直した。

だが、

 

(救うことで、必ず戦争になるんだぞ)

 

戦争。

誰もが回避したいと望み、おそらく極東、武蔵には縁遠いモノでもあっただろうものだ。

 

それを、この場で起こすか否かを決めろという。

 

「よーし。んじゃ立場分かったし、始めっか」

「……Jud.」

 

だが、先にトーリが発言をしたため最早立ち位置が逆になった。

 

葉月と神耶はその様子を梅組の皆と一緒に見ていた。

 

「どう思う?」

「んー。入れ知恵は無いと思うがな。トーリは正純なら出来るって分かってるから、こういうことを言うんだろうし」

「そっか。ねえ葉月」

「何だ?」

 

神耶は葉月を見る。

 

「封印、解いたの?」

「完全解除の一歩手前で、な。これなら聖連にもバレずに済むし。他の馬鹿共にも気づかれないだろ。危ないとすれば英国のアイツだが。ここからなら遠く離れて気づかない」

「怒られないといいね」

「大丈夫大丈夫。アイツはそんな奴じゃないし」

 

へらへらと笑いながら葉月は言う。

その笑いはまるでトーリのようだった。

 

「じゃあ僕も出し惜しみしてる場合じゃないね」

「いいのか?」

「Jud.だって、トーリが戦うって決めてるんだから。そして、今まさに戦ってるんだからさ」

「……そっか」

 

葉月はそういってトーリを見る。

神耶は抱える錫杖を強く抱えた。

その際、遊環がシャンと鳴った。

 

「ねえ葉月」

「ん?」

「トーリは、昔の約束覚えてるかな?」

「Jud.絶対にな」

「そっか」

「ああ」

「なら僕達は」

「それを果たそうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

正純は悩んでいた。

確かに、彼女を救うことで得られる利点もある。

 

それは極東全体の利点でもある。

 

だが、トーリの言葉―――正確には、自分の父親である正信が書いたカンニングペーパーだが―――に詰まってしまった。

 

聖連に対しての大義名分。それの提示。

つまり、ホライゾンを自害させようとしている聖連が悪であるという理由を述べること。

 

(だが、あるのだろうか。そんな正義が……)

 

そう考えていると、トーリからの言葉が続く。

 

「あるのか! 姫を救う大義名分が! 未熟なお前に言えるのか!!」

 

そういわれた瞬間、思わずポケットに入れたもの(・・)に手が伸びた。

そんな正純の動作に、一人気づく者がいた。

 

鈴だ。

 

「どうしたの鈴?」

「あ、あの、ね。音が、したの。紙、紙の音」

「紙? …………正純もカンペを持ってきてたの?」

 

すると、正純はゆっくりとポケットからその紙を出して広げる。

そこには、ホライゾンを救うための、今言われた聖連が悪だと言える理由が書き起こされていた。

だが、正純はそれを読むのを躊躇う。

 

(コレが通じると、どうして言える……。これは、未熟者の意見だ……っ)

 

もういっそ、自分の負けを認めてしまおうかと思ったそのとき、

 

ビリリリリリリリッ、と紙を破く音が聞こえた。

 

見ると、トーリが手にしたカンニングペーパーを破り捨てていた。

 

「なっ……」

「セージュン! お前が! 今ここで自分の言葉を言わなくてどうする!」

 

と、トーリは珍しく激高していた。

 

「だ、だけど……」

「だけどじゃねえよ! いいか! お前は、お・ま・え・は! 今俺たちの中で唯一権限持ってる人間。俺たちの代表なんだ! そのお前が、自分の言葉を言わなくてどうするよ!!」

「っ……」

 

正純は唇を噛む。

ふと、自分の後ろから声がした。

 

『まさずみ』

「え、まさか……っ!」

 

正純はそのまま声のするほうを振り向く。

 

そこには、桶を持ったアデーレがいた。

 

「あ、すみません。ひょっとして取り込み中でした? 総長から言われて持ってきたんですけど」

「ああ。ありがとなアデーレ。そこに置いてくれ」

「あ、はい」

 

アデーレは桶を正純の足元に置く。

すると、桶の中から黒い生物が桶の淵に乗った。

 

それは、下水処理を担当している黒藻の獣と呼ばれる生物だった。

 

「あれって。確か黒藻の獣、だよね」

「だな。下水処理の。人に懐く、なんて話は聞いたこと無いけどよ」

「ああ。アイツら。自分が汚れてるって思ってるから、中々人に近づかないんさね。アタシもたまに見かけるけどね―――あんなふうに名前を呼ぶなんて、初めてみたよ」

 

正純はしゃがむと黒藻の獣に話しかける。

 

「どうしたんだお前ら。今日は?」

『まさずみ たすけて』

「……? 何を?」

『ほらいぞん』

 

そう言われて、正純ははっとする。

彼らは基本、人との接触を持たない。それは遠慮というものなのだろう。

だが、自分はよく行く―――金が無くて飢えて倒れているとも言うが―――青雷亭(ブルーサンダー)という軽食屋がある。

そこで、ホライゾンは働いている。

 

そのときに、ホライゾンはよく黒藻の獣に水をやったりしていた。

 

自分も、母親の墓参りでホライゾンに会ったときに、彼らと少し話をした。

 

黒藻の獣は続ける。

 

『ほらいぞん いってたの』

『まさずみ せいじか せいじか ひと たすける』

『ぜいきん ひきかえ』

 

そういうと、黒藻の獣は何かを出した。

正純はそれを手に取る。

 

それは、下水処理の工程で濾過されなかった不純物の塊だろう。日を受けてきらきらと輝いていた。

 

『ぜいきん ひきかえ?』

『これじゃ たりない?』

「いや、それは……」

 

と、一匹の黒藻の獣が桶から落ちかけた。

正純は慌てて手に持った紙で受け止めた。

 

『ありがと』

「……気にするな」

『かみ よごした よめなくした』

「いや、いいんだ。読もうと思えば読めるし、な」

 

そういうと、正純は紙をクシャクシャと丸め、桶の中に入れた。

 

「ありがとな。もう大丈夫だ」

『?』

「何故なら。私の意志は、もうそちらを向いたからな」

 

正純は黒藻の獣たちに笑い、トーリと再び向き直った。

その顔は、何かを吹っ切ったような、清々しい表情だった。

 

「……いい顔になったね。正純」

「だな――――――こっからだぜ。本番は」

 

正純は、深呼吸をして言った。

 

「答えるよ。ホライゾンを救いに行く理由、大義名分はある。それは――――――彼女が三河の君主として責任を取る必要はないということだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

―――葉月。調子いいね

 

―――もうそろそろ、といった具合

 

―――……なら

 

―――待ちましょう。葉月が呼ぶ、その時まで

 

―――ええ。我らの主が王に仕えるその時に

 

―――僕らは解放されるんだね

 

―――ふふっ。早くしてくださいよ。葉月。そろそろ待つにも飽きましたから

 




どうもKyoです。

この、黒藻の獣と正純のアニメシーンを見て涙腺緩んだ、っていうかちょい泣いた私はどうかしてるんでしょうか。

そしてまたしても終わらなかった臨時生徒総会。次回は教皇総長とか絡んで、二代出してあの6ページぶち抜き絵のシーンまで何とかしたいです。

あと、ちょっとお知らせ。

よくよく考えると、第一話の内容がこれから書く内容と矛盾点を生み出してしまいそうなので書き換えます。

最後に。これを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

それでは。

ちなみに私は境ホラで一番誰が好きといわれたら黒藻の獣を推します。
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