『飯綱使い』
飯綱とは、狐の霊の一種であり、これを使役する者を『飯綱使い』と呼ぶ。
多くは管狐と呼ばれる小さな狐を何匹も使役するが、神耶は違った。
神耶は、武神の拳を弾くと、錫杖を構える。
「おいで」
一言。神耶が呟くと、辺り一面に表示枠が現れた。
そこから出てきたのは、青・白・黒の三匹の大狐と額に文字をを宿した二十七匹の子狐たち。
赤の大狐と「柳」の文字を宿した子狐もその群れに加わり、四匹の大狐を筆頭に二十八匹の子狐がその後ろに並ぶ。
すると、神耶が光に包まれる。
直後、現れたのは、いつもの男子制服を着ている神耶ではなく、蒼い着物を纏った一見すると女性のように見える服装だった。
「四聖二十八宿。その名を宿した飯綱達」
そして神耶の足元に陣が浮かんだ。
八角形の形をした、それぞれの部位に文字が刻まれていた。
『
それは、八卦の陣だった。
八卦は徐々に大きくなっていき、最後には武蔵全体を包み込んだ。
武神は戸惑いながらも、神耶に向かって短銃の一発を放つ。
その人を撃ちぬくにはあまりも巨大な弾丸は、しかし神耶に届かず陣の光に触れた瞬間勢いを失う。
「僕の守りたいものを守るこの結界。そんなんじゃ壊れないよ」
だけど、と神耶は自ら八卦陣の外に出た。
「特別サービスだね。僕自身は、今最高に気分がいいんだ。だから相手をしてあげるよ」
その後ろを、飯綱たちが付き従う。
「世にも珍しい飯綱と八卦の合わせ技。とっくりとご堪能あれ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「真喜子先輩。不知火君の術式は知ってたんですか?」
「八卦の術は知らなかったわ。飯綱は知ってたけどね」
よく配膳とか手伝わせてるし、とオリオトライは山要に言う。
その目は、己が教え子である神耶に向けられている。
「そういえば真喜子先輩。神耶君からすっごいアプローチ受けてますよね?」
「あはは。まーね」
「生徒からでも羨ましいです……」
「……そーでもないわよ」
「そうですか?」
「そうよ」
そういって笑うオリオトライ。
「……頑張れ頑張れ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
武神の振りかぶる一刀を、神耶は避けずに錫杖にて受けきった。
「『柳宿』能力は膂力の超向上」
そして、それを払うと武神を殴りつける。
武神はそのまま後退していく。
「今の僕なら小山くらいなら持ち上げられるよ」
『柳』の文字を宿した子狐は神耶に寄り添う。
「青龍七星士」
神耶が声をかけると、青の大狐とそれに付き従う七匹の子狐が来た。
「アレの足止めを、お願い!」
刹那、大小八匹の狐達は武神へと向かう。
武神は狐達を払う動きをするが、如何せん大きさが違いすぎる故、様々な場所から高速で飛び回り、体当たりを仕掛けてくる狐達を捕らえようとするのは無理があった。
武神は、術者である神耶を狙おうと短銃を向けるが、その先に神耶はおらず、
「捕らえた」
既に、自分の懐に入っていた。
「狐火術式、『妖炎狐舞』!」
直後、錫杖の先端から青白い狐火が大量に吹き出た。
武神は慌ててそれを避けるが、短銃は間に合わずに炎に絡め取られた。
その瞬間、短銃はあっという間に解け、金属の融解物となった。
武神は即座に短銃を捨て、代わりに流体刀を構え向かってきた。
神耶も錫杖を構える。
と、神耶のそばに一匹の子狐がやってきた。
その額には「翼」と書かれていた。
「南方朱雀・『
すると、神耶の持つ錫杖が光をまとって姿を変えた。
それは、白いハリセンだった。
その直後、神耶の隣に表示枠が開いた。
『いや不知火君! せっかく君が僕のためにいいネタ提供してくれているのにここでハリセンは無いでしょハリセンは!!』
『クククこの同人作家。自分の欲望に忠実ねぇ。ねえ浅間?』
『な、何で私に振るんですか!? 私巫女ですよ? 欲望はないですよー?』
「皆うっさい」
神耶は表示枠を一箇所に集めて肘鉄で叩き割った。
「これちゃんと『鉄扇』って名前あるんだから」
そういって神耶はハリセン、『鉄扇』を振るう。
振るわれた軌道からは、煌々と輝く炎が溢れ出ていた。
「一度振るえばその軌跡には炎が生まれる。朱雀をよく体現してるでしょ。この子」
そういって「翼」と書かれた狐を撫でる神耶。
その炎は武神に向かうが、翼を使い上手く避けていた。
だが、
「無駄だよ」
神耶は錫杖を一回鳴らす。すると、武神の逃げた先に神耶がもう一人現れた。
その神耶は再び『鉄扇』を振るい、炎を起こした。
武神はそれに気づいたが遅く、左腕を切り離した。
武神は自分を襲った神耶を見るが、そこには神耶の姿は無く、「井」と書かれた狐がいた。
「南方朱雀・『
武神は再び神耶を見る。
神耶は笑っていた。
「さて。あんまり長々やる気は無いから。ソッコで終わらせようか」
そういって、神耶は『鉄扇』状態を解いた錫杖を掲げる。
そこからは小さな八卦が生まれていた。
それは、発光をし始め、徐々にその光の強さが増していく。
「逃げるか、合一を解くかしたほうがいいよ。じゃないと本当に死ぬから」
いつの間にか、神耶の背後には二十八匹全ての狐が列を成していた。
武神は、敵わぬと思ったのか三征西班牙の陣へと去ろうとした。
が、神耶の方が速かった。
「上手く避けてね。殺すのは、トーリの望むところじゃないから」
そういって、神耶は錫杖を振り下ろす。
「『金剛八卦霊華陣』!!」
直後に八卦は広がり、武神を包み込む。
その中からは青い流体の糸が伸びていく。
その糸が武神に絡みつくと、その部分から崩壊を始めていった。
武神は慌ててその陣から出ようとするが、その間に翼の一部をもがれた。
武神が陣から出る頃には、頭部や胴体以外がほぼ崩壊していた。
「……これ、にて。本日の公演は終了。またの御観覧、お楽しみに」
ふっ、と神耶の身が空中に投げ出された。
後ろに控えていた狐達もいなくなり、神耶はただ虚空を落下していった。
(あ、ヤバッ。調子乗って力使いすぎた……)
神耶は薄れていく意識の中、ふと、自分が何かに抱えられるのを感じる。
目を開けると、そこにはナイトとナルゼがいた。
「お疲れジンヤん♪」
「まったく。トンでもない隠し玉、持っていたものね。私達の苦労が台無しじゃない」
「はは……ゴメンね。でも、あんまり表に出したくないからさ」
そういって、錫杖を抱える神耶。
ナイトとナルゼも、そんな神耶を見て笑う。
「アンタさ。他の狐達の力もあるんじゃないの?」
「Jud.でもあんまり使いたくないなぁ」
「なんで?」
「だってさ、武蔵には朱雀がいるじゃん」
そう笑顔で言う神耶。
二人は笑いながら魔術陣を開く。
「だ、そうよ。直政」
『あーはいはい。つーか神耶。変なこと言ってっとハッ倒すさね』
『神耶。気にしなくていいですのよ? ただ単に照れてるだけですので』
「ん。Jud.」
そういって、目を閉じる神耶。
「後は任せたよ。皆」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一方、中央広場。
葉月が迫撃砲をいなしつつ、前進をしていた武蔵だったが、途中の増援により分断されてしまっていた。
現在は敵の攻撃を耐える一方だ。
「おおー! 俺、今まさに総ウケー!」
「防御の気が散るから黙ってろ!!」
「うるせー!」
「お前だよ!!」
木の上に登って、トーリが叫ぶと全員からツッコミが来る。
トーリは、木の下で肩を上下させている葉月に声をかける。
「おーい葉月! 大丈夫かー? 点蔵にジュースパシらせるか?」
「トーリ殿!? この状況で自分武蔵に戻ったら総攻撃食らうで御座るよ!? しかも理由がジュースパシリって!!」
「ああ大丈夫大丈夫。皆分かってくれるって。共通認識だし」
「最悪で御座るな本当に!!」
「いや別にいいんだけどさ。疲労符のことを忘れてただけだ」
そういって、味方の防御陣の中で休む葉月。
すると、トーリがまた叫びだした。
「おーたーすーけープリーズ! おっまわーりさーん!」
「馬鹿が! この状況で助けが来るものか!!」
と、律儀に敵も反応を返す。
が、トーリはいつもと同じように笑うだけだった。
「そいつが来るんだな! 見てみろ! デリック最強伝説を!!」
トーリが指差すその先には、遠くから飛来する物体があった。
武蔵の重武神『地摺朱雀』だった。
だが、向こうの隊長は慌てた様子も無く、隊全員に術式防盾の展開を命じた。
それを見た葉月は鼻で笑う。
「ハッ! 無駄だよ。正面からいくら防御しようと――――」
言うが早いか、大勢の三征西班牙とK.P.A.Italiaの生徒が吹っ飛ばされた。
「武蔵の銀狼に敵うはずねえんだから」
直後、敵を飛び越えてやってきたネイトはトーリの前に立つ。
「感謝の言葉を望んでもよろしくて?」
「んー」
トーリはそのままネイトの頭をやや乱暴に撫でた。
「よしよしよーしステイ、ステイ!」
「犬じゃありません!」
「クックック……」
「葉月も地味に笑わないでくださいません!?」
「ま、確かに。騎士だもんな。ネイトは」
トーリがそういうと、ネイトは言う。
「道をつけますわ。我が王。貴方の喪失を、貴方が望めるように」
「ああ。頼むわ」
「んじゃ。俺も行かねえとな」
「おいおい大丈夫かよ葉月。あんま無茶すると俺が浅間に怒られるんだけどよ」
「あー平気平気。それに――――――来ちまったしな」
そういう葉月は空を指差す。
そこには、あのレベッカが身一つで空を飛んでいた。
「んー。んー?」
「あ、あの我が王? 何を?」
「ひょっとしてトーリ殿。あの女性の下着を見ようとしているで御座るな?」
「ば、バッカ点蔵! こういうのは黙ってればいいんだよ!!」
そういうトーリたちをレベッカは黙って見下ろし、
「ねえ武蔵勢。何でこの馬鹿、地上歩いているの?」
『うっわ言われた! ついに言われちゃいましたよ私達!?』
「とうとう真正面から言われたか……」
「思えば何でコイツを上にしたんだろうなー本当」
「お、オメェらな! こんな素敵な総長兼生徒会長はいねえぞ!!」
「今までの自分の所業を反省してから言え!!」
レベッカは無視して武蔵の防御の上を飛び、葉月の前に立つ。
「葉月!」
「いい。で、何か用か?」
「ここに来て、まだ封印解いてないの? ふざけてるの? それともやる気ないだけかしら?」
「別に。俺のはお前と違って時間掛かるんでね」
「そう。ならいいわ」
そういって、踵を返すレベッカ。
「私がここで全部倒せばいい話」
次の瞬間、葉月がレベッカに杖を振り下ろした。
しかし、レベッカも手に持った剣で応戦した。
「へえ。やる気?」
「ああ。ここにいる全員に手を出す気ならな」
そういうと、葉月はトーリを振り返る。
「トーリ! こっから先は俺はいねえぞ! 大丈夫か!?」
「おお! 安心しろよ葉月!」
「ハッ! 一番安心出来ねえ台詞だな」
キンッ、とレベッカの剣を弾く葉月。
「そんなに見たいんなら見せてやるよ。俺の、魔法使いとしての本分をな」
そういう葉月の立つ地面には幾何学模様の陣が光とともに現れた。
「俺に解放させたこと。後悔させてやるよ」
「そうかしら。後悔するのは貴方たちよ。武蔵」
レベッカは再び空へと飛んだ。
すると、葉月も同じように空を飛んだ。
「は、葉月殿!?」
「点蔵! 皆! そこの馬鹿を、ホライゾンのところまで頼む!」
葉月はトーリに笑う。
「王の剣。白百合・葉月。王と俺の敵を、倒しに行ってくるぜ」
「ああ。任せたぜ。俺たちの魔法使い!」
「Jud.!!」
そのまま葉月はレベッカの飛んでいった方向に飛ぶ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
レベッカと葉月が止まった場所は、お互いの本拠地からはなり離れた場所だった。
「ここなら邪魔も被害もないわ」
「おーおー。ありがたいね。ならこちらも遠慮なくぶっ放せるわけだ」
そういうと、葉月は杖を両手で持つ。
すると、封印されていたかのように巻きついていた白い帯がゆるりと外れていく。
そこから現れたのは、木の杖だった。
「……大魔導師の血筋」
「おい」
ゴォ、と葉月の周りで風が渦巻き始めた。
それを見たレベッカは剣を構える。
「もうごちゃごちゃ言うのは止めようや。ここまで来たらもう一つだろ」
「……ええ。そうね」
「武蔵アリアダスト教導院。白百合・葉月」
「K.P.A.Italiaパドヴァ教導院。レベッカ・ハルバートン」
と、お互いに何かを高速言語で呟く。
そして、
「
「
どうもKyoです。
Q.なんでネギま?
A.これでネタが増えるから。
ぶっちゃけ。このホライゾンの世界にネギまのネタとか本当に話が進みやすいんですよ。
主に自爆関係の台詞で。誰とは言いませんが。
武装解除の魔法はどうするかって?
使ったらヤバイことになりますので。ええ。
尚、今回のこれを見ても何も言わずに、お気に召さなかったらすっぱり切ることをお勧めします。
だってこれ読む人選ぶから……私が書いてるから……
最後に。これを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。
それでは。