光が、戦場を飛び交っていた。
赤の炎が白い氷を撃ち溶かし、土色の砂弾が黄色い雷を撃ち落していた。
その光弾を放っているのは、空を飛び続けている二人。
「
「
一方は黒髪の少女。もう一方は赤みがかった茶髪の男子。
レベッカ・ハルバートンと白百合・葉月だ。
二人は互いに曲線の軌道を描きながら時折光の弾丸を放ちあい、お互いを攻撃しあっていた。
「埒が明かないわね」
「そらお互い様だ!」
そういうと、葉月は杖をレベッカに向ける。
「
葉月がそう叫ぶと、葉月の周りから人型の流体をしたものが八体現れた。
それらは葉月の姿を形取り、それぞれが武器を持っていた。
「風の中位精霊の八体同時召喚ッ……」
「
それらはレベッカに向かって突撃をしていった。
だがレベッカも既に、それに対する方法は打っていた。
「
レベッカの周りに現れた八体の槍状の手を持つ蜥蜴も、レベッカの指示で、葉月の風の分身に向かっていった。
それらは空中でぶつかり合い、爆発を起こし、やがては消えていった。
後に残ったのは少しの爆煙だけだった。
「……埒が明かないな」
「お互い様でしょ?」
くるり、と剣を回してレベッカは言う。
葉月は苦笑し、杖を構えなおす。
「お前、契約系の魔法使えるだろ」
「Tes.そういう貴方はどうなのかしらね」
「試してみるか?」
「別に、いいわ」
そういって、レベッカは剣を葉月に向ける。
「
「
次の瞬間、氷と雷がぶつかり合い、爆発を起こした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
葉月とレベッカの戦いの様子を、武蔵にてネシンバラが見ていた。
が、その手は表示枠を操作していた。
「ああクソ! 白百合君もっとゆっくり動いてくれ! 描写が間に合わない!!」
「クククこの同人眼鏡。今日は随分と張り切って書くじゃない」
「当然だよ! 不知火君に引き続いて白百合君まで僕にネタ振ってくれたんだからね!」
「小生思いますに。あの二人は別にネタを振るために戦ったわけではないと思うのですが」
「ははは! それにしても白百合君はノリノリだね!」
『うむ。しかし先ほどから口にしているのは何だ?
そういうネンジに答えるようにナルゼが魔術陣越しに話す。
『魔術にああいう詠唱は無いわよ』
『そもそもハヅッちが魔術を習得しているって話は聞いてないし。ジンヤん何か知ってる?』
『まあね』
神耶は自分の表示枠を開いて言う。
『葉月は、
「待って不知火君! その設定話すのはもうちょい後にして! 今描写で手が回らない!!」
「お前の都合で世界は動いてるのかよ!!」
全員からのツッコミを受けても平然と同人の描写を続けるネシンバラ。
そんなネシンバラを他所に、神耶は言う。
『昔はもっと平凡的にいたんだよ。古代魔法使役士が。でも、その力が余りに大きいからってことで、力を捨てたり封印したり、あとはまあ。殺されたりで』
『本っ当にそこの眼鏡が考えそうで好きそうなシナリオね』
『で。今の世の中、古代魔法使役士って滅茶苦茶少ないんだよね。この世界に十人いるかいないか』
「で。それが葉月とあのK.P.A.Italiaの黒髪娘ってわけね」
と、椅子に座って紅茶を飲む喜美が言う。
「でも、そんなに少なくなったなら、どうして一箇所でまとまって生活しようとは思わないの? 子孫繁栄は必須じゃない? 子作りは大事よ! エロスの原点よ!!」
『んー。あのさ。これツッコンだら負け?』
『負けだと思うわ』
「フフ、何よ。ノリ悪いわね」
『まあ話戻すとね。纏まって生活はしていたらしいんだ。でも、そのうちに身内で争いが始まってね』
「原因は?」
『よくあること。意見の不一致。古代魔法使役士は、僕たちよりも遥かに優れた魔法があるのに、隠れて暮らさなきゃいけないのはおかしい、って具合にね』
『あー。ゴメン。なんか葉月には悪いけど。ひょっとしてネシンバラの小説から葉月は出てきたんじゃないの?』
『有り得そー』
皆葉月のこと心配なのかなー、と心の中で神耶は思った。
思っただけにした。
『まあそんなわけで。いまや超少数のレアな一族になっちゃったわけ』
「そういや葉月。お父さんいたわよね? 小さい頃に一度会ったきりだけど」
『ああうん。生きてるよ。今も何処かで』
「まさか、父親が何らかの理由で一族を皆殺しにし始めたんじゃ……」
『ネシンバラ? いくら冗談でもそれ以上言ったら――――』
チュン、とネシンバラの足元に小さな焦げ跡がついた。
『ぶっ殺すよ?』
「う、撃ってから言わないでくれよ!!」
慌ててその場から二歩ほど後ろに下がるネシンバラ。
神耶はそれっきり表示枠を閉じた。
「ククク同人眼鏡? アンタ神耶怒らせるとマジ怖いわよ」
「クッ! 僕はただ可能性の話を――――」
ダダダダダッ、と今度はネシンバラの周りを撃ちぬくように焦げ跡がついた。
「――――しないことにしたよ!」
「クククだから言ったじゃない。浅間からの砲撃が来なかっただけマシだと思いなさい」
『何でそこで私が出るんですか――!!』
新たな表示枠から浅間が抗議をしているが、喜美は無視した。
「そんなことよりホラ。愚弟達がそろそろホライゾンのところに到着よ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
トーリたちは遂にK.P.A.Italiaの艦がある広場まで来ていた。
だが、ホライゾンを乗せた審問艦が見えない。
「まだか点蔵! 皆、拝気も限界に近いぞ!」
「あの艦を抜ければ、目の前で御座るよ!」
点蔵が指差すその先には、『栄光丸』があった。
しかし、その行く手にガリレオ以下K.P.A.Italiaの戦士団が立ちはだかった。
「くっ! ここに来て足止めで御座るか!」
「これは、K.P.A.Italiaの正規戦士団。先ほどの相手とは格が違うぞ?」
そういうと、ガリレオは後ろに下がる。
K.P.A.Italiaの戦士団は槍をこちらに向けた。
一方武蔵側も、防御術で前面を固め、点蔵は短刀をノリキは拳を構えた。
合図は無く、ただただお互いに全力でぶつかり合いに走った。
遅れて、トーリがやってきた。
「おおっ! アイツら中々やるなあ」
「そりゃ、年季と経験が違うからなあ」
感心するトーリに頭上から声がする。
K.P.A.Italia教皇総長、インノケンティウスだ。
手には、あのガリレオが持っていた大罪武装、
「おっさんそれって!」
『聖下と呼べよ小僧。いかにも! 〝淫蕩〟を司る大罪武装『淫蕩の御身』だ!』
そういうと、『淫蕩の御身』の平面部分が開放された。
それを現れた表示枠に打ち付けるように教皇総長は表示枠を叩く。
直後、鈍い鐘のような音がした。
すると、武蔵勢の武装が次々と分解されていった。
『『淫蕩の御身』これは攻撃力を持たない大罪武装だが、超過駆動したときには。半径3キロ圏内のこの『淫蕩の御身』が認識した敵対勢力の武装を完全に〝骨抜き〟にする!』
「くっ、武装が駄目でも!」
そういうと、警護隊の一人が殴りつける。
が、何かに弾かれるように後ろに下がった。
「これは……!」
「〝骨抜き〟にされたのは、武器だけじゃない!」
「拳も、蹴りも! 攻撃の意図があれば、相手に触れた瞬間に、勢いを失うで御座るよ!!」
と、今度は勢いを盛り返してきたK.P.A.Italiaが突撃してきた。
幸い、防御術は破られていないが、拝気も限界に近い今、持ちこたえることが出来ない。
一人、また一人と倒れていく。
「諦めろ! もうお前達の負けだ!」
「ここで姫が自害をしても、貴様らにも損は無いはずだ! 戻れ! あるべき場所へ!!」
K.P.A.Italiaの戦士団が武蔵に対して警告を促した。
ダンッ、と倒れた警護隊の面々は地面に拳を打ち付ける。
「クソッ! どうにかならないのか!」
「どうにかしたいと、そう思ってるのか?」
ふと、そんな言葉が掛けられた。
見ると、そこには、葵・トーリが立っていた。
彼は、全員を見つめながら、もう一度問うた。
「なあ、どうにかしたいってそう思ってくれてるのか? ホライゾンを救いたいと、そう、思って」
返事は、すぐに来た。
「そんなの、当たり前だ!」
「目の前で、理不尽な死に抱かれているのなら。極東の人間は必ず救いたいと思う!」
「ああ。死ねばいいなどとそんな言葉を信じるように生きてきた覚えは無い!」
それは、傷つき、倒れながらも、確固たる決心を持った全員の心の声だった。
トーリは、全員を見渡す。
「そうか……皆、そうなんだな」
「Jud.!」
全員が頷き、トーリへと返す。
その中には、自分のクラスメイトたちもいた。
皆、一様に目には闘志を燃やしていた。
「……そっか」
そういうと、トーリは何か嬉しそうに目を伏せた。
そして、
「じゃあ浅間! やっぱ頼むわ! 俺の契約を認可してくれ!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
武蔵でトーリからの通神を聞いていた浅間は戸惑う。
「……本気ですか?」
だが、表示枠の向こうの彼はいつもの調子で、
『頼むわ』
両手を合わせて頼んできた。
逡巡した浅間だったが、ため息を一つつくとともに、手元の表示枠を操作し始めた。
「忘れないでください。もしものときは、浅間神社が最大限のバックアップをしますから」
『……機嫌悪い?』
「当たり前です!」
機嫌が悪くならないはずがない。
何故なら、彼の契約は、とそこまで考えて浅間は止めた。
(もう、決まったから使う。なんですよね)
もう一度ため息をついた。
「まったく。昔から聞かないんですから」
『悪ぃ。昔から迷惑かけてっからなー。浅間には。今度葉月に関する情報で手打ちな?』
「馬鹿は全部終わってから言ってください」
ふと、笑みがこぼれてきた。
こんなときなのに、と心の中で彼に感謝した。
「まあでも。それも全部、昔から分かってましたけどね」
そういうと、浅間はトーリの契約の認可の表示枠を押す。
「浅間神社契約者葵・トーリ担当、浅間・智。葵・トーリ本人からの上位契約の申請と、その内容を認可。神社に上奏します」
『よー!』
ポンッ、とハナミが一度拍手を打つ。
すると、武蔵から一筋の光が大地を伝って伸び始めた。
「要請された加護は、芸能神ウズメ系ミツワの加護を提要した、契約者の全能力の伝播と分配」
これで、トーリは自分の持つ全ての能力を、自分と共に戦う者たちに分け与えることが出来るようになった。
武蔵からの光が来るとトーリは手を振るう。
そこには、いくつもの『不可能』と書かれた表示が出ていた。
トーリはそれらに自分の能力を乗せ、全員へと伝播させる。
が、向こうの隊長は分からなかったらしい。
何故なら、
「不可能の伝播をしたところで、何も得られないだろうが!」
すると、再び戦士団が構えだした。
「潰れろ極東!」
だが、今度はトーリが叫んだ。
「構えろよ、俺たち!!」
バチィン、と弾かれた。
ただし、それはK.P.A.Italiaの戦士団の槍だった。
それを可能にしたのは、
「防御術だと!? とっくに排気を使い果たしていたはずだろ!!」
だが、その後ろでトーリが両腕を前にやりピースサインを作っていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
武蔵艦上では、ヨシナオ王が立ち上がっていた。
「王になりたいといった理由はこれか!!」
「これ、とは?」
ヨシナオの妻が訊ねる。
「今あの馬鹿は、武蔵の副王として。武蔵の全権限の四分の一を所有している。それはつまり、武蔵が保持する流体燃料の四分の一を自由に出来るということだよ。しかも」
現在、武蔵は莫大な流体貯蔵庫となっている。
それを鑑みれば、四分の一であっても膨大な量だ。
「彼と共に戦う者は、無尽蔵とも言える流体を地脈経由で受け取れる。つまり、永遠に術式を使い続けることが出来るのだよ」
だが、
「これだけの伝播。何かの代償があってもおかしくないぞ……ッ!」
それは、中央広場で戦っているネイトも同じ疑問を抱いたようだ。
それには、浅間が答えた。
「加護の条件は、契約者が奉納として『喜』の感情、つまり嬉しさを持つこと。もし悲しみの感情を得たならば、奉納は失敗と見なされ、その全能力を禊ぎ、消失する」
つまり、
「今後悲しい感情を持ったら――――――貴方は死にます。トーリ君」
その言葉に、全員が沈黙した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
防御に集中している人間も、トーリを横目に見た。
当のトーリは、やや困ったなといった顔で頭を掻いていた。
と、表示枠を操作した。その先は、葉月だった。
「なあ葉月。怒ってる?」
『いや? ただ、決断したんだなって』
「ああ。俺は何も出来ねえ。皆が出来ることも、出来ねえからな」
『……そうか。うお! くっそアブねえな!』
「あー。まだ駄目だった?」
『あ!? いやいや超ヨユー! オラァ!
何か攻撃を放ち始めたので、トーリは表示枠を閉じようとした。
が、その前に葉月から一言あった。
『トーリ! 嬉しいぜ! お前が戦う意思を見せてくれてよ!』
そういって、表示枠が切れた。
トーリは、は、と短く息を吐く。
そして、全員に聞こえるように声を上げた。
「安心しろ! 俺葵・トーリは、不可能の力と共に、ここにいるぜ!」
直後、流体供給が全員に流れ込んだ。
「俺が! お前らの〝不可能〟を受け止めてやる!」
だから、
「だからお前らは! 〝可能〟の力を持って行け!!」
その言葉に、全員の心に火が着いた。
「「「Judgement.!!」」」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ハッ! 吹けよ風!
まるで嵐のような暴風がレベッカを襲う。
が、レベッカも負けじと魔法の射手を放つが、葉月に同じように弾かれた。
と、レベッカはここにきて葉月の変化に気づいた。
「魔力が、上がってる!?」
「Jud.! ようやく気づいたかよ!!」
すると、葉月は杖を掲げた。
「集え! 俺と契約した精霊八柱!!」
瞬間、大規模な爆発でも起こったかのような光が当たりを包む。
「くっ!」
あまりの光量に、思わず目を覆うレベッカだったが、それも一瞬で済んだ。
そこには、
「いやー。ようやく呼んでくれましたねー。葉月!」
「あれ? 私達だけ?」
「残りは向こうに召喚したよ。大変そうだからな」
銀髪碧眼の少女と、緑髪金目の少女がいた。
「さあ。第二ラウンドと行こうか! 今度は契約した精霊も込みだがな!」
そう葉月は言う。
「契約精霊の、具現化!?」
「Jud.! 来いよレベッカ・ハルバートン!」
すると、レベッカの背後から氷の人型と、黒い人型が現れた。
「いいわ。相手してあげる。今度こそ、お前を潰す!」
「かかってこいやぁ、俺の敵!!」
どうもKyoです。
連日投稿辛いです。
おまけに新キャラっぽいのも登場させざるを得なくなった……ッ
まあ女の子なんで許してください(何
このトーリ契約シーン、泣いたのって私だけでしょうか?
次回はいよいよ葉月とレベッカの対決に終止符が打たれ…………たらいいなぁ。
最後に。これを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。
それでは。