境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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王と剣と盾

 

『栄光丸』は武蔵を視認した。

飛び立つ体勢を整える武蔵。だが、

 

「いいか! 輸送艦が武蔵に着く前に何としても武蔵を撃沈させるんだ!」

「Tes.!」

「武蔵に姫が着く前に、流体砲を放つぞ! 後はどうとでもなる!」

「随分適当だな!」

「適当で結構だ! 元々俺はそういう性格だろ!」

 

そういって、『栄光丸』の指揮を執っている男は笑う。

それにつられて周りの人間も笑った。

 

瞬間、『栄光丸』に衝撃が走る。

 

「クッ! 何だ!!」

「武蔵の輸送艦が突撃を仕掛けてきました!!」

「怯むな! 進め!」

「Tes.!!」

 

乗組員はブースターを全開にして、武蔵に突撃を仕掛けた。

 

だが、それを輸送艦が阻むようにして突撃を仕掛けてくる。

 

そして、

 

「ッ、輸送艦の上に誰かいるぞ!」

 

と、映像が映し出された。

 

そこにいたのは、

 

「本多、二代……」

 

彼女は背に『悲嘆の怠惰』を持ちながら、自身の得物である蜻蛉切を構える。

 

『結べ、蜻蛉切!』

 

その瞬間、『栄光丸』に亀裂が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

蜻蛉切による割断は確かに成功した。

だがそれでも、『栄光丸』全体には及ばず、横の装甲版に一直線の亀裂を走らせただけだった。

 

それは、蜻蛉切の性能にもあった。

蜻蛉切の割断範囲は三十メートルが限界。

それを艦相手にやろうと思うのなら、激突しながらということだ。

 

さらには、相手が巨大すぎることも起因していた。

 

それにより、蜻蛉切にきっちり映しきれていなかったのだ。

 

だが、二代はそれでも槍を構える。

 

「艦を寄せろ! もう一度!!」

「隊長! これ以上の割断は無理です!!」

 

部下の隊員に言われ、二代は唇を噛む。

いや、元々無理なのは承知だったのだろう。

 

と、二代の隣から一人の少年が飛び出した。

葉月だ。

 

「対艦射撃ターイム! 魔法の射手(サギタ・マギカ) 連弾・光の37矢(セリエス・ルーキス)!!」

 

光の弾丸が『栄光丸』へと向かう。

その全ては直撃するが、それでも『栄光丸』の進行は止まらなかった。

 

「マジかよ。なら、白き雷(フルグラティオー・アルビカンス)!」

 

今度は白い雷が『栄光丸』に襲い掛かるが、それでも威力不足のようだ。

 

「ぐああ! もうマジで中にいる人間とか気にしないでぶっ放していいか!?」

『おいおい葉月。ぶっ放すのは浅間の仕事だろ。取っちゃ駄目だぜ』

『ちょっとトーリ君! 人を乱射魔みたいに言わないでくださいよ! 私のは禊をしているだけなんですから!』

『クククこの乱射巫女。その禊は一体何を対象にしているのかしらねえ。自分の欲望?』

『ち、違いますよ!』

 

あっちこっちで表示枠が現れたが、葉月は全部まとめて砕き割った。

 

「あーくそ! ぶっ放していいなら俺やるぞ!?」

『白百合君の火力でどこまでいける?』

「あ? 多分この程度の艦なら、今の残存魔力で……半壊はいけるだろ」

『それだけ単身で出来るから本当にどうかしてるけど、駄目だね。彼らは自爆特攻上等の覚悟で来てるから。壊れながらでも来るよ。一気に全壊しなきゃ』

「マジかよ……まったく。肝心なところで俺使えねー」

『大丈夫。手は打ってあるよ』

「どんな」

 

Jud.とネシンバラは眼鏡を上げる。

 

『アリアダスト君の『悲嘆の怠惰』による砲撃さ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

『栄光丸』は武蔵の右舷一番艦〝品川〟に突撃を仕掛けた。

だが、武蔵はそれを左舷一番艦〝浅草〟からアンカー付きのロープを出して『栄光丸』の進路を強引にずらした。

 

それでも、『栄光丸』の主力のほうが上だった。〝品川〟にやや擦れるようにして、しかしその勢いがやや失われ、後退していった。

 

その隙に、輸送艦は武蔵へと到着した。

 

輸送艦のロープから、トーリとホライゾンは、中央前艦〝武蔵野〟へと降り立つ。

ホライゾンのその手には二代の手から渡された『悲嘆の怠惰』があった。

 

と、『悲嘆の怠惰』から仮想砲塔が伸びた。

 

「大罪武装『悲嘆の怠惰』」

 

すると、砲塔から黒紫の砲弾が放たれた。

『悲嘆の怠惰』その超過駆動による掻き毟りの砲撃だ。

 

だが、『栄光丸』も同時に流体砲を発射した。

 

二つの砲撃が空中でぶつかり合った。

 

しかし、

 

『トーリ君! 『悲嘆の怠惰』が押されています!!』

 

浅間からの通神を聞かずとも、トーリとホライゾンは徐々に後ろに押されていった。

 

「んじゃ、押し返し!」

「……疑問しますが。何故ホライゾンの尻を捏ね始めるのですか?」

『危険なんですってばー!!』

 

浅間が叫ぶがトーリは通常営業。

と、ここでホライゾンの前に一つの表示枠が現れた。

 

『出力60%・第三セキュリティ『魂の駆動』お願いします』

 

ホライゾンは疑問に思った。何故なら、

 

「自動人形であるホライゾンの魂の起動方法など、聞いたことはありませんが」

 

その後ろからトーリが囁く。

 

「だったら俺たちの負けってことだぜ。ホライゾン」

「負け……」

 

ホライゾンはその言葉を聞いて、あることを思い出した。

 

それは、自分の父である松平・元信が三河と共に消える前のこと。

 

艦から手を振る父に、自分も手を振り返した。

その表情は、とても嬉しそうで。しかし、どことなく、後ろめたさが感じられた。

 

もし、もしあの時。父が消えることが分かっていれば、もっと別のことが出来たのではないか?

そう考えると、ホライゾンは止まらなく、しかし、

 

「安心しろホライゾン!」

 

そんな思考から、トーリが引き釣り戻してくれた。

 

「俺、葵・トーリがここにいるぜ!!」

 

その声は力強く、その瞬間、自分の中で何かが決壊した。

その声は、悲痛さを表しているようだった。

 

何年も声を上げていないかのように、たどたどしく、それでいて悲しみが伝わってくる。

その瞬間、莫大量の表示枠が出現した。

そして、『悲嘆の怠惰』の砲撃が徐々に色を変えていき、その色は金色になった。

 

「――――あ、ぁ」

「歌えよ、ホライゾン」

 

未だに涙を流すホライゾンに、トーリは言う。

 

「通すための歌を!」

 

ホライゾンは、涙に濡れたその顔で、しかしはっきりと歌った。

自分の中にある、一番懐かしいと感じる歌を。

 

「――――通りませ 通りませ」

 

『通し道歌』

幼い頃、ホライゾンがよく歌っていた童謡だ。

 

ホライゾンが歌い始めると、不安定になっていた流体が徐々に安定した動きをし始め、『栄光丸』を呑み込んでいった。

 

やがてそれは『栄光丸』を全て飲み込んで、金色の砲撃は止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

『栄光丸』を撃沈させた直後、梅組全員が〝武蔵野〟上にいる二人の下へと駆けつけた。

そこには、お互いに抱きしめあうホライゾンとトーリがいた。

 

「フフ、ホライゾンが愚弟と一緒になれば、私の義妹ってことね」

「まずは大罪武装の収集が先だがな」

 

喜美が少し嬉しそうに話す傍ら正純が言う。

 

「まずは『悲嘆の怠惰』か。ホライゾンの『焦がれの全域』含めて二個」

「先は長いね」

 

葉月と神耶がそういう。

 

トーリはホライゾンの肩に手を回したまま、こちらに来た。

 

「よっ。無事に終わったみたいだな」

「ああ。ありがとな葉月。神耶も」

「それを言うなら皆、でしょ」

「だな――――ありがとう。皆」

「Jud.!」

 

トーリが皆を見渡して礼を言う。

梅組全員は笑ってそれに返事をする。

 

しかし、

 

 

 

 

 

 

『正面、未確認飛来してきます。推定数――――二万』

 

 

 

 

 

 

突如、〝武蔵〟からの通神が入った。

 

「二万だって!?」

「どこにそんな数の敵勢がいるんだよ!!」

 

すると、浅間が右目を押さえ左の義眼〝木葉〟で正面を見る。

 

「浅間。何か見えるか?」

「駄目です! 感知が出来ません」

「葉月!」

 

神耶が叫ぶと、葉月は一歩踏み出し、そして、

 

「こそこそ隠れてんじゃ、ねえ!!」

 

右手を突き出すようにして前に出し、衝撃波のようなものを出した。

それは、魔力を圧縮して放った拡散砲に似た魔力砲撃だった。

 

本来なら何も無い空間を薙ぐだけだが、武蔵の前方一キロの付近で何かにぶつかり弾けた。

それは、神耶が先ほど追い払った、空を埋め尽くすほどにいる影の軍勢だった。

 

「白百合君アレが何か知ってる!?」

「お前絶対知ってる前提で話してるだろ。まあ知ってるけど」

 

葉月は目の前の軍勢から目を放さずに言う。

 

「『精霊師団(エレメンタリア・レギオン)』俺たち古代魔法使役士(エンシェント・マギ)が使う精霊の軍団だ。おそらくレベッカ・ハルバートンが出したんだろ」

「対策は!?」

「物理で殴る」

「分かりやすいね! じゃあ白百合君頼むよ!」

「そうしたいんだがなあ。アレだけの軍勢を倒すとなると、今の残存魔力だと厳しいな。つうか向こうはあんだけの軍勢作り出すだけの魔力なんかほとんど残って――――」

 

と、そこまで言った葉月ははっ、としたよな顔になる。

 

「まさかアイツ。自分の『魔道石』を取り込んだのか」

「ネシンバラがなんか自分の世界に入ったから聞くけど、何それ?」

「こっちでいう外燃拝気みたいなものだ。自分の魔力を外に貯蔵しておくんだ――――だが、それを自分の中に戻すことは滅多にしない」

「何故?」

「外燃拝気と違って、人工の『魔道石』は劣化していくんだ。その劣化したものを自分の体に再び取り込むと、異物として判断され拒絶反応が出る。無論、魔力はいくらか回復するが。そんな方法は取りえないし、普通は作った端から魔力を爆弾みたいに使用するのが普通だ」

「じゃああの子は自分の中に取り込んだの?」

「Jud.おそらくな」

 

バシンッ、と葉月は自分の手に拳を叩きつける。

 

「クソッ! もうちょい魔力があれば一掃できるが――――」

「出来ますよ」

 

と、どこからかそんな声がした。

それは、葉月の後ろにいきなり現れた、茶髪の少女だった。

 

「誰?」

「俺の契約精霊。まあ、仲間だ。ルーキス。どういうことだ?」

「はい」

 

そういうと、ルーキスと呼ばれた少女はゆっくりと葉月に近づき、その額に軽く触れた。

 

その瞬間、葉月の体が薄く光りだした。

 

「これは……?」

「はい。葉月様の魔力制限を解除させて頂きました」

「……は?」

「葉月様。つい昨日まで魔力を封印状態だった貴方がいきなり全開の魔力では戦えませんよ。体が爆発しますから。内側から」

 

ゾッとしない話をにこやかな表情で話す。

それを聞いていた約一名はやや顔が青ざめていたが。

 

「……で?」

「はい。体に魔力が慣れるまで全体の半分程度の魔力まで、身勝手ながら抑えさせていただきました。疲労符があってよかったです。魔力抑制の術式が思いのほかスムーズに行きました」

「あー、じゃあなんだ。今の俺は?」

「はい。超全力全開状態です」

 

そういって、微笑むルーキス。

やや呆気に取られる葉月だったが、やがてトーリを見る。

 

「前言撤回。どうやら出来そうだぞ。敵殲滅」

「オメェ言ってることが物騒だなぁ」

「まあな。剣ってのは、物騒なもんだろ。振り回さないで済むならそれでいい」

「じゃあ武蔵の剣は飾りのままで終わるの?」

「強そうでよくね?」

 

神耶とトーリは言うが、葉月は笑って首を振る。

 

「どっかの王様が、世界征服宣言しちまったからな」

「あはは。おかげで盾は大忙しだったね」

「お、オメェらマジで容赦ねえな。ホライゾン救うためなんだよ!」

 

トーリがそういうと、葉月と神耶は顔を見合わせて笑う。

 

「んじゃ。改めて聞くがどうすりゃいい? 王様」

「ああ――――ちょっと皆助けてくれね?」

「Jud.仰せのままに、ってね」

 

そういうと、葉月は振り向き、影の軍勢を見つめた。

 

その後ろをルーキスが付き従う。

 

(ああ。ようやくだ)

 

ようやく、彼のための剣となれる。

 

葉月は〝武蔵野〟の艦橋ギリギリまで歩き、そしてさらに一歩を踏み込んだ。

しかし、葉月は落ちず、空中に浮かんだままだ。

 

そして、杖を掲げて宣言した。

 

「来いよ!」

 

その瞬間、葉月とルーキスの周りに再び、あの少女達が現れた。

皆、一様に笑顔で葉月を見る。

 

「うひゃー。万単位でいますねー」

「……面倒」

「心配ない心配ない!」

「あ、あの私後方にいますので」

「刎ね飛ばしでOKですのね!?」

「一人血の気の多い奴がいまーす」

「――は」

「皆さん挨拶くらいはしましょうよ……」

「お前ら自由すぎるだろ!!」

 

まあいい、と葉月は前を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺と、俺の王の敵を倒すため――――――行こうぜ、皆!」

 




どうもKyoです。

Q.八人全員女の子?

A.Yes

もうこの時点でハーレムですよねー
だがこの子たちはハーレムには入らん!

そして次回こそは葉月の活躍で……
最近忙しくて執筆時間が取れないのでさらに不定期になりそうです。

まだ文章が安っぽいですね。本当、川上氏を見習いたいです。

最後に。これを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

それでは。









ああ。クリスマスまでもう少しか。
ネタ考えとくかなー……
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