境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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2013年5月12日。改定。


境界線上の整列者達

この日、疑いようも無く晴天。

大空という海原を行く航空都市、準バハムート級航空艦『武蔵』は、いつもと変わらない日常を送っていた。

 

「はーい!三年梅組集合ー!」

 

そんな声が、『武蔵』中央後艦〝奥多摩〟から聞こえてきた。

ここ〝奥多摩〟には学生達の学舎、武蔵アリアダスト教導院がある。

その教導院の前の橋の上。一人の女性がクラスの生徒を前にしてにこやかに立っていた。

だが、その笑顔とは裏腹に背には不釣合いなほどの長剣が存在していた。

 

「これから体育の授業を始めます――――先生これから〝品川〟の先にあるヤクザの事務所に殴りこみに行くから。それについてくること。そっから先は実技ね」

 

遅れたら教室掃除でもしてもらおうかな、というが。生徒の大半は戸惑いから来る怪訝な表情になっていたり、顔が引きつっている者もいた。

当然だろう。平和な体育の授業なのに、何故か授業内容がカチコミなのだから。

返事は、と聞くと全員「Jud.」と返ってきた。

とここで、一人の少年が手を上げた。腕には『会計 シロジロ・ベルトーニ』とある。

 

「教師オリオトライ。体育とヤクザと、どのような関係が?――――――金ですか?」

 

その言葉に、隣にいた少女が補足をする。

その腕には『会計補佐 ハイディ・オーゲザヴァラー』とあった。

 

「ほらシロ君。先生この間地上げにあってビール飲んで壁ぶち抜いて教員科にマジ叱られたから」

「中盤以降は全部自分のせいだと思うのだが。報復ですか?」

「あはははー。報復じゃないわよ。ただ腹立ったんで仕返しに行くだけ」

「同じだよ!」

「せんせー」

 

そう間延びした声を出したのは。美少女という分類に間違いなく入る、白く長い髪の毛をゆったりと垂らし、寝ぼけ眼のような黒い瞳で前を見つめる少年(、、)。不知火・神耶。

 

「はい。何、神耶?」

「何人までならブッチKILLオーケーですか?」

「コラコラ。先生にどんな質問してるのさ君は――――私の管轄外でならいくらでもいいわよ。あとちゃんと証拠は消すこと」

「そこは止めろよ!!」

 

オリオトライと呼ばれた女性は笑いながらそういうと、生徒全員が呆れ気味に言う。

 

「さてと。それじゃあ誰か休んでる人いる?ミリアムは仕方ないとして。あと、東が今日の昼に戻ってくるとして。他は?」

 

と聞くと、一人手を上げる少女。

黒い三角帽に背には六枚の翼。腕には『第三特務 マルゴット・ナイト』とある。

 

「ナイちゃん見るに、セージュンとソーチョーがいないかな。あ、あとハヅっち」

 

その声に答えるように隣にいた黒髪で背には同じく六枚の羽を持つ少女。

腕には『第四特務 マルガ・ナルゼ』とある。

 

「正純は今日は午後から酒井学長と三河に降りるから自由出席のはず。総長、トーリについては知らないわ。あと葉月に関しても同じく」

「んじゃあトーリと葉月について知ってるのは?」

 

すると、今度は後ろのほうにいる少女が答えた。

 

「フフフ、皆うちの愚弟のトーリについて知りたい?知りたいわよね?だって武蔵の総長兼生徒会長の動向だものね――――――でも教えないわ!」

 

テンションを振り切らすように答えるのは、ゆるいウェーブの掛かった茶色の髪を飾り布で所々結び、豊満な胸を腕で支えている少女。葵・喜美だ。

 

「だってこのベルフローレ・葵が朝八時に起きたらもういなくなっていたんだもの」

「お前テンション高いのに起きるの遅ぇよ!!」

 

全員から言われるが、当の本人は何事も無く、訳の分からない自信に満ち溢れていた。

すると、ナイトが喜美に聞く。

 

「あのー、喜美ちゃん。また芸名変えたの?」

「ええそうよマルゴット。だから私のことはベルフローレ・葵と呼びなさい!いい!?」

 

すると喜美はナイトのところまで行き、ナイトの肩をがくがく揺らしながら言う。

 

「こ、この間はジョゼフィーヌじゃなかったかな……」

「あれは三軒隣の中村さんが飼い犬に同じ名前をつけたからナシよ!いい!?」

「はいはい。じゃあ葉月について誰か知ってる?」

 

そう聞くが、誰も答えない。

仕方無しに、オリオトライはある人物を見つめる。

 

「浅間。何か知らない?」

「え、い、いえ何も聞いてないですけど?」

 

答えたのは赤と翠の瞳を持ち、長い黒髪と長身。さらに、先の喜美をも越える胸を持った少女、浅間・智だ。

 

「浅間が知らないんじゃあ、誰も知らないか」

「あ、あの。何で私が基準なんですか? 葉月君の情報限定で」

 

すると、周り全員が互いに顔を見合わせ、浅間を見る。

 

「――――え?」

「な、なんですかその反応は!? だ、大体ですね! これで動向とか色々知っていたら私完全にストーカーじゃないですか!!」

「昨日の放課後。葉月は何してた?」

「えっ? えーと、確か学校終わったらすぐに買出し行ってお店開けてましたよ?」

 

ぽんっ、と浅間の肩に喜美の手が優しく置かれた。

 

「――――期待を裏切らないわね」

「へっ? …………あっ、やっ、ち、違いますよ!? 別に後をつけていたとかそんなんじゃないですからね!? 偶然商店街で会って話しただけですからね!?」

「はーいじゃあ程よく纏まったわねー」

「先生! まだしばらく纏まりには時間が掛かります! 主にこのクラスメイトたちの誤解を解くために!!」

 

必死になって浅間が抗議するが、オリオトライは無視して表示枠を操作している。

 

「んじゃ。葉月は多分、遅刻ね。んでトーリは無断欠席、っと。しかしまあ、武蔵の総長兼生徒会長が立派に私事で遅刻とは。こりゃいかんねぇ」

 

オリオトライがそういうと、今度は眼鏡を掛けた少年が呟く。

腕章には、『書記 トゥーサン・ネシンバラ』とあった。

 

「もう160年もずっとそうだものね。こっちはあっちこっち移動しっぱなしで権力骨抜きで。各国の学生の上限年齢は無制限なのに、武蔵じゃ18を超えたらもう政治も軍事も出来ないんだから」

 

そう諦め口調に、しかしその言葉の裏にはどこか力が満ちて、話す。

 

この世界には『校則法』というものがある。

簡単に言えば、軍事・政治は学生任せ、というものだ。

そのため、教導院といえば事実上の国家である。

教導院には、軍事担当の総長連合と政治担当の生徒会がある。

総長連合は、総長を筆頭に副長と第一から第六の特務があり、それぞれが役割を担っている。

生徒会は、生徒会長を筆頭に副生徒会長・書記・会計とある。

 

そしてその下に委員会や部活などがあるのだが、これらはあまり干渉してこない。

各国の教導院の上限年齢は無制限、つまり年老いていようが学生であれば政治・軍事を行える。

が、武蔵は違う。上限年齢が18と決められている。

これにより、各国よりも不利な立場にあるのだ。

ネシンバラの言葉を注意するように、今度はやや太めの少年が言う。

 

「小生思いますに、あまりそういうことを言っていると危険ではないかと」

「心配ないよ。連中、僕らの言葉を拾ってる暇はないだろうから。何しろもうすぐ三河圏内だからね」

「あらま。大人ぶっちゃって」

 

彼らの発言に苦笑しながら言うオリオトライ。

 

「でもま。君ら、学生最後の年だけど……これからしたいこと、やりたいこと。分かってる?」

 

そういって腰を落とし、戦闘体勢に入る。

その瞬間、特務を含めた戦闘系技能を持つ全員が雰囲気を変えた。

それを見てオリオトライは内心、嬉しく思う。

 

「いいねぇ。戦闘系技能を持ってるんなら、今ので来ないとね。それじゃ、〝品川〟に着くまでに先生に攻撃当てられたら……」

 

と、オリオトライがここで片手を目の前に広げる。

 

「出席点五点プラス。分かる?五回サボれるの」

 

教師の発言じゃねえ、と誰しも思うが、思うだけである。

誰でも、授業というものはサボりたいものである。

すると、点蔵が手を上げる。

 

「先生!攻撃を『通す』ではなく『当てる』でいいので御座るな?」

「戦闘系は細かいわねぇ。それでいいわよ。手段も問わないわ」

 

すると、点蔵は急に両手で何も無い虚空を揉み始めた。

 

「では、先生の体のパーツでどこか触ったりすると減点されるところあり申すか?」

「またはボーナスポイント出るようなところとか?」

「あっはっは――――授業始まる前に死にたいんはアンタら二人か」

 

と、オリオトライは背の長剣を点蔵とウルキアガに向ける。

 

「先生」

「ん?何、神耶」

「出席点いらないから。今度、一緒に出かける」

 

そういう神耶。

明らかにデートの誘いである。

オリオトライは一瞬驚くも、すぐに笑顔に戻る。

 

「あっはは。まあ私に攻撃当てられたらね」

「……よし。頑張る」

 

神耶が眠気を取り払うように背に抱えていた巨大な錫杖を手にした。

丈は三メートルはありそうな長さのそれは、何かの封印の術式があるのか、包帯で巻かれていた。

その後ろでは、クラスメイト達が集まって話していた。

 

「……いつもいつも思うので御座るが、神耶殿はあのバーバリアn、もとい先生のどこがよいので御座ろうか」

「可能性としては、弱みを握られているが一番高い気がするな。そこで金を取らない当たり、最悪な感じがするな」

「会計は金を取らないと最悪と感じるんですね……」

「で、でも先生見てくれはいいですからね。普通に神耶君の好意という可能性もありますよ? …………万が一の確立ですが」

「最後で台無しだよ!」

 

浅間がフォローらしい言葉を吐くが、どうにも締まらなかった。

神耶は特に気にしてないらしく、自分の身の丈以上もある錫杖を軽々と振り回していた。

それじゃ、とオリオトライは言うと、橋から飛び降りた。

 

傍から見ればただの投身自殺にしか見えないが、戦闘能力はおそらく武蔵の中でもトップクラスの人間。くるりと一回転をし、着地した。

 

「ほら。遅いわよ!」

「くっ!追え!!」

 

ウルキアガが一喝するがごとく言うと、全員が走り出した。

 

オリオトライは〝後悔通り〟と呼ばれる通りを走っていた。

ふと、目の端で一つの墓碑を捉えた。

 

『1638年 ホライゾン・Aの冥福を祈って 武蔵住民一同』

 

オリオトライはそれを見て少しだけ微笑む。

 

(ホライゾン、か……きっとあの子達にとって、全ての始まりになる名前でしょうね)

 

さて、と地面を一回蹴り、宙へと飛ぶ。

そろそろ先頭集団が来る頃だ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

左舷一番艦〝浅草〟

その艦橋部分に、一人の少年が空を見上げていた。

赤みがかった茶髪を少し長めに伸ばしながら、その赤い瞳は青い空を見つめていた。

すると、後ろから声が掛かる。

 

「葉月様。授業はよろしいのでしょうか? ――――――以上」

「――――〝浅草〟さん?」

「Jud.〝浅草〟です――――――以上」

 

少年が振り向くと、そこには一人の女性型の艦長式自動人形〝浅草〟が立っていた。

 

「うーん。一応点数足りてるから問題はないんだけどね」

「つまりサボりなのですね――――――以上」

「そう言われるとそうとしか返せないかな」

 

そういいながらも、葉月と呼ばれた少年は立ち上がる。

 

「まあでも。今日はちょっと行ってみるよ。疲労符の限界来ない程度に」

「ルートから行って、本日の梅組の皆様の到達予定場所は〝品川〟だと判断します――――――以上」

「〝品川〟――――確かヤクザの事務所なかったっけ? あそこ」

「Jud.そしてオリオトライ様に番屋から要請が入ってます――――――以上」

「ああ。ストレス発散につき合わされてるわけね……」

 

葉月はそういって、傍らに置いてある大杖を取る。

それは、まるで何かを押さえつけているかのように、封印の術式が汲まれた包帯で巻かれていた。その先端には持ち主の名前のプレートが付けられていた。

その場で何度か屈伸をした後、杖を背負い足に力を込める。

 

「それじゃあ。白百合・葉月。行ってきます」

「行ってらっしゃいませ――――――以上」

 

次の瞬間、葉月の姿が消えた。

 




どうもKyoです。

ホライゾン二次だと、前書きに何か書くべきなのでしょうが。残念ながら私の貧困な頭では考え付かないので無理です。

最後に。これを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

それでは。
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