境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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無垢者の疑問

 

かって うれしい はないちもんめ

 

まけて くやしい はないちもんめ

 

たんす ながもち どのこがほしい

 

あのこが ほしい あのこじゃ わからん

 

そうだんしましょ そうしましょ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

黒嬢(シュバルツ・フローレン)で空を飛びながら、ナイトは戦場を見下ろしていた。

ほんの数十分前まで平和だった武蔵が、今では敵の攻撃に包まれている。

 

厄介なのは野球部だ。

 

ボールを投げ、または打ちながら攻撃をしている。

しかもこちらの攻撃は遠くて当たらない。

 

だったら、と、ナイトは手にしたものを握る。

それは、廃材の鉄パイプだった。

 

「そぉれいっけー!」

 

ナイトはそのまま廃材を思いっきり投げつけた。

見事にそれは次の打球を放とうとしていた野球部員の背に当たった。

 

同じく、自分と同じ魔女(テクノヘクセン)部隊も廃材を投げつけ、敵の攻撃の手を止めていた。

 

しかし、ナイトは一瞬横を見る。

本来ならそこには、自分の相方であるナルゼが白嬢(ヴァイス・フローレン)を優雅に飛ばしていたはずだ。

だが、彼女の白嬢は、先の三河の戦いで破損。現在は見下し魔山(エーデル・ブロッケン)に預けている。

 

彼女の性格は分かる。

きっと、こちらを心配しているのだろう。

 

だから、

 

――――ナイちゃん一人でも大丈夫ってとこ、ガっちゃんに見せないと!

 

ナイトはそのまま三征西班牙の、おそらく旗艦と思われるクラーケン級の艦に先行する。

 

腰のホルダーから棒金を取り出し、黒嬢にセットする。

 

「ガっちゃんの誘導はないけど――――」

 

そのまま、ナイトは狙いをつけ、

 

「これで、終わりッ!」

 

硬貨弾を放つ。

が、そのとき、

 

 

「おい隆包。これ、お前だけでよかったんじゃねえの?」

「そういうなってベラのおっさん。仕事しねえと副会長に怒られっちまうぜ」

 

 

そんな声が聞こえた。

すると、投射された硬貨弾が徐々に勢いを失い、艦に当たる頃にはまるで子供が投げたような威力しかなかった。

 

ナイトはすぐにその原因を探る。

 

すると、甲板に二人の人影が見えた。

一人は、黒髪に糸目の男。その耳は、普通の人間よりも長い。

長寿族の証だ。

 

もう一人は、小柄で、野球帽を被り、その背にはバットを背負っている。

そして、足元が透けている。つまりは、霊体。

 

ナイトは二人を見て、瞬時に判断する。

 

「生徒会書記のディエゴ・ベラスケスに、総長連合副長の弘中・隆包!?」

 

ナイトは内心、歯噛みする。

 

――まさかいきなりこの二人に会うなんて!

 

総長連合副長に生徒会書記。

奇妙な組み合わせだが、この二人なら納得がいく。

 

何故なら、二人の手には同じデザインの青と黄の剣が握られていたからだ。

 

聖譜顕装(テスタメンタ・アルマ)!?」

 

聖譜顕装。

それは、各国に存在する、旧代と新代合わせて7組14個の神格武装のこと。

その出自は不明で、30年前に各国の総長がどこからか持って来たのだという。

 

それぞれが聖譜の枢要徳に値した能力を持つ。

そして、三征西班牙のそれは――――

 

「俺の聖譜顕装〝身堅き節制(クルース・テンペランティア)・旧代〟は、相手の時間を倍に引き伸ばす――――時は金なり、ってな」

「んでもって。俺の〝身堅き節制・新代〟はよ。相手の能力を使用回数分、分割減すんだ」

 

つまり、ナイトの攻撃は隆包の旧代で速度が落ち、ベラスケスの新代で威力が落ちた。

 

「結構単純な能力だが。使えるだろ?」

「何自分の力みたいに言ってんだ。コレの力だろ」

「堅いこと言うなよ。まあ――――」

 

隆包がナイトを指して言う。

 

「節制しろよ。武蔵」

 

突如、ナイトの高度が落ち始めた。

 

「ッ、しまっ――――」

 

減衰できるのは、何も攻撃術式だけではない。

それは、自分の飛行のための重力減衰の術式や、果ては羽ばたきまでも弱まらせる。

 

このままでは、と思ったそのとき、

 

「グオッ!?」

「うわたぁ!?」

 

頭に何かがものすごい勢いでぶつかった。

 

落ちそうになる帽子を被りなおし、見ると、それは、

 

「ハヅッち!? どうしたの!?」

「いてて。なんつー馬鹿力してんだよあの野郎……ん? ナイトか」

 

それは、自分の級友の白百合・葉月だった。

彼は、黒嬢に手をかけ、自分の体を支えながら飛んでいた。

 

「いやー。向こうで戦ってたはいいけどさ。力負けしてここまで吹っ飛ばされた」

「うわー。マジで凄い。ハヅッちが力負けとかどんなの? 異族?」

「いや人間」

 

ただし、と付け加える葉月とナイトの前には、三征西班牙の古代魔法使役士、アルヴィスがいた。

 

「俺と同じだ」

「何でもありだねー。ってかハヅッち。大丈夫? 今ここらへん聖譜顕装の効果範囲内なんだけど」

「ん? ああ。言ってなかったな。これだよ」

 

そういうと、葉月は首から下げている水晶を取り出す。

 

「これ、解除の魔法が掛かってるから。発動している間、弱い術式程度なら無効化できる。聖譜顕装みたいなタイプの神格武装なら余裕で無効」

「何それズルイよー」

「言うな。これ、魔法には効かないんだ。ほらよ」

 

そういって、葉月はナイトに渡す。

 

「俺ら以外が持つと効果が弱まるけど。まあ、普通に飛ぶ分には問題ないだろ」

「Jud.ありがとハヅッち」

 

と、空から風を切るような音が聞こえてきた。

葉月は上を見ると、一つの赤いものが降りてくるのを確認した。

 

「来たか直政!」

「Jud.! ネシンバラに言われてね!!」

 

ズンッ、と三征西班牙の艦に重く響く着地音を響かせたのは、赤の武神『地摺朱雀』と直政だ。

 

「武蔵第六特務、直政。行くよ!」

 

『地摺朱雀』は腰の巨大なレンチを投げる。

 

聖譜顕装によって減衰しているとはいえ、武神は元々十トン級。減衰しても人間相手なら十分脅威の威力になりうる。

 

狙いは、副長――――ではなく、書記のベラスケスだった。

 

「おいおい。文系の俺にこれは無理だろ――――つーわけで。まあ、頼むわ」

 

レンチがベラスケスに届く直前、何者かがそれを掴んだ。

 

それは、同じく武神。しかし、三征西班牙製の猛鷲(エル・アゾゥル)ではなかった。

 

白。混じりけの無い白の武神が、『朱雀』の投げたレンチを掴んで、へし折った。

そして、その肩には一人の女性が乗っていた。

 

「陸上部部長の、江良・房栄かい!」

「Tes.っと」

 

そして、白の武神は身をかがめ、飛び出す体勢を整える。

 

「GO! 『道征き白虎』!」

 

そのまま、『道征き白虎』は進み、『地摺朱雀』に突撃する。

普段なら、避けたりいなしたりするものだが、

 

「ああったく! こっちは速度と威力の減衰してるってのに!」

 

いつもよりも負荷の掛かった状態での戦闘のため、受け流しが上手く出来ないでいた。

と、ここで三征西班牙の艦に一人の女性が乗り込んできた。

 

槍を回し、構え、唱える。

 

「結べ。『蜻蛉切』!」

 

瞬間、今までこの空域全体を覆っていた聖譜顕装の効果範囲が割断された。

 

「武蔵アリアダスト教導院副長。本多・二代」

 

やってきた女武者は名乗りを上げる。

 

「二代か! ありがたい!」

「Jud.では。こちらも」

 

というと、二代は隆包に向き直る。

 

「いざ!」

 

二代は『蜻蛉切』を隆包に繰り出す。

が、向こうも聖譜顕装を背に回し、代わりにバットを構えて、二代の槍を弾く。

 

二代はそれでも再び突きを出すが、全て同じ場所に当たり弾き返されてしまっていた。

ならば、と二代は大上段からの振り下ろしを試みる。

が、それもやはりバットで防がれる。

 

隆包は、防ぎながらにやりと笑う。

 

「俺はな。どんなボールだろうと正しくバント処理出来るんだよ――――そうすりゃ。他の奴らが点を入れてくれる」

 

そういって、『蜻蛉切』を弾き、距離を取る。

 

「これが俺の副長の在り方だ!」

 

しかし、二代の方も再び槍を構える。

その顔は、闘志に燃えていた。

 

「成程。今年度の全国総長連合白書で見たとおりで御座るな」

 

ならば、と二代は己の加速術式、カザマツリ系加速術『翔翼』を展開する。

 

「その在り方、崩させてもらう!!」

「上等ぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「ナイト。ぶつかっておいてアレだが。ここは危ない。先に戻っていてくれ」

「Jud.」

 

ナイトが離れるのを確認すると、葉月は再び詠唱を始める。

が、それより早くアルヴィスの連結刃が飛んできた。

 

「チッ! 近接特化の古代魔法使役士(マギ)かよ!」

 

葉月は詠唱を途中で止め、連結刃が織り成す空間から離脱する。

 

(しっかし妙だ。さっきから詠唱をしてこない。魔法の射手(サギタ・マギカ)も使ってこないのは何故だ)

戦いの歌(カントゥス・ベラークス)

 

葉月は自身に肉体強化をかけると、今度は自ら連結刃に飛び込んでいく。

 

「血迷ったか!? 武蔵の魔法使い!!」

「ところがどっこい! 違うんだよなぁ!!」

 

葉月は、迫り来る刃を紙一重で避けながら、アルヴィスの懐に入り込んだ。

 

「クッ!」

解放(エーミッタム)! 白き雷(フルグラティオー・アルビカンス)!!」

 

アルヴィスがその場から離れようとしたが、葉月のほうが一瞬早く、腹に手を当てると白い雷がアルヴィスを貫く。

 

「――――――ッ!!」

 

アルヴィスは一瞬苦悶の表情を浮かべるが、歯を食いしばり、葉月の手を払って距離を取った。

 

「ぐっ…………えげつないな」 

「どっちがだよ。連結刃なんて。普通使わねえよ。相手の肉削ぎ落とす気かよ」

「違うな。抉り落とす、だ」

「余計に性質悪いわ」

 

まあいい、と葉月はアルヴィスを見る。

 

「お前の弱点、っていうか致命的なことに気づいたからよしとする」

「――――弱点、だと?」

「Jud.」

 

葉月は、アルヴィスに杖を向ける。

 

「お前、詠唱が出来ないだろ。いや、違うな。お前は、精霊との契約を結んでいない」

「――――」

 

古代魔法使役士は、最初から常人離れした力を身につけているわけではない。

精霊界にいる精霊を呼び出し、契約を果たす。このときの契約内容は精霊によって変わるが、殆どの場合『時々契約者の魔力を渡す代わりに、力を貰う』といった感じである。

 

この契約は何があっても切れるものではないし、途中で破棄も出来ない

 

しかし、このアルヴィスという少年は、それをしていない。

 

つまりは――――

 

「お前のそれは魔法じゃない――――――魔法寄りの魔術(テクノ・マギ)だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

一方で、ここは武蔵アリアダスト教導院の寮内。

 

そこでは、ナルゼが術式作成した拡声器を持って飛んでいた。

 

「『避難命令が出るまで、表には出ないように』!」

 

と、ナルゼは向こうからやってくる人影を見つけた。

それは、彼女と一緒に注意喚起をしていた東だった。

 

「東、そっちは終わったの?」

「Jud.余はこれから部屋に戻ってミリアムとあの子を見てこないと」

 

あの子、というのは、例の幽霊祓いで見つけた青い幽霊少女だった。

以来、東に懐いてそのまま二人の部屋で預かることになったのだ。

 

「まったく。子守の経験も無いのによくやるわ――――まあでも。施設に預けないだけマシね。武蔵の施設の大半は、御広敷家がスポンサーやってるから」

 

御広敷・銀次。梅組のクラスメイトであり、『生命礼賛』を謳う――――ロリコン。

意外にも、彼は御広敷家の御曹司だ。

 

東はそれに苦笑する。

 

「ま、アンタが預からないっていったら。私達のところで預かろうと思ってたけどね」

「え、君たちのところ?」

「Jud.やっぱ子供って欲しいものよ。同性で付き合ってると特にね――――今の技術なら互いの子供をセックスなしで作れるけど。それとは違った嬉しさがあるし」

 

ナルゼはここまで話すと、東が不思議そうな顔をしてこちらを見ているのに気づく。

 

「……どうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セックスって、何?」

 




どうもKyoです。

いやー。葉月のところで区切ろうかと思ったんですけどね。
せっかく今後大問題になるようなシーンですからね。ここで区切りました。

……区切りの最後がこれって、どうなんだろうか…………

そして――――――わーい相変わらず戦闘シーンショボいよー(涙

誰か上手く書けるコツを伝授してください。

今ならもれなく神耶君の超ギリギリ写真あげますから。

最後に。コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

次回こそ。次回こそは正純のスベリを……
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