境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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夜中の待機者達

三征西班牙。アルカラ・デ・エナレス。

病院内。

 

そこの一室では、女性二人が、子供達にお菓子を配っていた。

 

一人は、眼鏡をかけた長髪の女性。

 

もう一人は、髪を短く切った両腕義腕の少女。

 

アルカラ・デ・エナレス。生徒会副会長兼会計。フアナ。

そして、総長連合第三特務。立花・誾。

 

「わー! お姉ちゃんありがとう!」

「慌てなくても大丈夫ですよ。まだまだたくさんありますからね」

 

子供達の喜ぶ声を聞き、フアナは笑顔になる。

その後ろでは、誾がいつもの顔でフアナを見ていた。

 

誾から見たフアナは、鉄面皮で淡々と事務をこなし、総長兼生徒会長であるフェリペ・セグンドを叱りつける。

それが、普段は浮かべない笑顔を惜しみなく浮かべている。

 

子供達に菓子を配り終えると、誾はフアナとともに病院を出る。

 

「副会長。これらのお菓子は半寿族の子たちには配らないのですか?」

 

と、誾は問う。

先ほどまで配っていたのは、人間の子供達。その前に寄っていたのは、長寿族の子供達。

だが、半寿族。人間と長寿族の間に生まれた子供たちのところには、まだ行っていない。

 

「いえ。行きますよ? そもそも、こういう提案を出したとき……あの人が、人間にも長寿族にも半寿族にも平等に与えるのが条件、ということを言ったのですから」

「総長が、ですか?」

「Tes.」

 

そういうと、再び会話が途切れる。

誾は、フアナの問いには、深い意味があることに気づく。

 

三征西班牙は、純血主義と言われている。

国内も、そういう風潮だ。

 

故に、半寿族という、どっちつかずの種族は迫害される。

半寿族というのは、見た目は長寿族そっくりだが、長寿族が体の成長は遅いのに対し、半寿族は人間と同じスピードで成長していく。

だが、精神は長寿族と同じスピードでの成長。当然、そこには肉体と精神の剥離が出始める。

 

人間からも長寿族からも迫害される彼らにとって、ここに居場所はないのだ。

 

それを察しているのか、総長であるフェリペ・セグンドは全て平等に、といったのだ。

 

だが、まだ疑問も残る。

 

「副会長。副会長はどうして、総長の事を信じていられるのですか?」

 

そう。彼女は実務、果ては先の武蔵との戦闘において、戦時の指揮なども完璧にこなす。

だが、総長のフェリペ・セグンドは、それとは対照的だ。

無気力で気弱。それが誾の評価だ。

 

だが、フアナの答えは、

 

「貴女はどうして。立花・宗茂を信じられるのですか?」

「それは……」

 

誾は一瞬言葉につまるが、答えを出す。

 

「――――生きることの意味を教えてもらったからです」

「ならば。私の答えを聞く必要はありませんね」

 

それに、とフアナは俯く。

 

「あの人は――――生きることの意味を、失っているだけですから」

「えっ……」

 

生きることの意味を、失う?

 

どういうことか聞こうとしたが、それは中断された。

 

「あ、姐さーん!」

 

と、向こうから二人がやってきた。

アルカラ・デ・エナレス総長連合第四特務。ペテロ・バルデスと、その妹。第五特務のフローレス・バルデスだ。

 

「どうしたのですか?」

「Tes.英国が、ついに武蔵に対して決断を下しました」

「英国に墜落した輸送艦の乗員が、武蔵に戻ることをまだ許可していませんが。輸送艦への物資輸送と、第四階層への上陸を認めたようです」

「武蔵との通商会議を設けたいとも言ってるそうですが。これって……」

 

フアナは二人の報告を聞くと、ふと、空を見上げる。

そこには、不自然なまでに巨大な雲があった。

 

「アルマダ海戦の再現が近い、ということですね。あの中では今。私たちの〝超祝福艦隊〟が構築されています。英国や武蔵は、サン・マルティンをどうやって見切るのでしょうね」

 

フアナがそういうと、近くの茂みが揺れる。

咄嗟に特務三人はフアナを守るように陣形を組む。

 

が、それは無用のものとなった。

茂みから出てきたそれは、エナレスの制服を身にまとった男子生徒。アルヴィスだった。

手には、何故か猫を抱えている。

 

「こらっ! 暴れるなっつの! いっててて!! 引っ掻くな!!?」

「何をやってるのですかアルヴィス」

 

誾がやや冷めた目でアルヴィスを見る。

 

アルヴィスはというと、たった今誾たちに気づいたようだ。

 

「ああ。こんな全員お揃いでどうしたんスか?」

「それはこちらの台詞です。何をやっているのですか」

「ああ。それは――――」

 

すると、アルヴィスの後ろから子供たちが何人かやってきた。

耳が、普通の人間よりも長い。長寿族かと思ったが、子供たちのやってきた方向は長寿族の病棟からは程遠い。

 

つまりは、半寿族だった。

 

「お兄ちゃん! 猫ちゃんいた?」

「おーいたぞ。まったく。暴れるわ引っ掻くわで。困った奴だ」

 

ほらよ、とアルヴィスが手渡すと、猫は自然と半寿族の女の子の腕に収まる。

 

「ありがとうお兄ちゃん!」

「おう。気にすんな。暇してたしな」

「お兄ちゃんまた遊んでね!」

「ああ。約束な」

 

と、一人の子がアルヴィスの後ろにいる誾たちに気づいたようだ。

それが他の子たちにも伝わり、若干怯えたような顔になる。

 

誾はどうしたものかと思い、とりあえず話そうとしたが、アルヴィスが立ち上がる。

 

「ああ。後ろの人たちはな。俺の友達なんだ」

「友達?」

「おおそうさ。あ、でも気をつけろよ。あの両腕義腕の女は恐ろしくてな。あの腕で地面砕くわ天を裂くわ。八面六臂の、まさに鬼のよぅおおおおおおおおおおおおお!?」

 

瞬時に誾はアルヴィスの背後から頭を義腕でロックする。

 

「下らないことを子供たちに吹き込まないでください。信じたらどうするのですか」

「し、信じるもなにも本当の、うおおおぉぉぉぉぉ!?」

「ハ、ハ、ハ。では手始めにこの汚いトマトを潰すことから始めましょうか」

 

しばらく逆アイアンクローを食らっていたが、子供たちが笑い出す。

 

「あはは。お兄ちゃん変な顔ー」

「見てないで助けろよ! 猫探してやったろ!」

「あ、もう帰らないと。じゃーねー」

「あ、待ていや待ってください、ってか誾! お前いい加減に力弱めろよ!!」

「…………」

「いだだだだだっ?! 弱めろっつったろ!? 誰が強くしろなんて言ったよ!?」

「人を鬼呼ばわりした罰です」

 

流石にアルヴィスが可哀想になったのか、フローレスが止めに入る。

 

「だ、第三特務。そろそろ止めたほうが……」

 

と、誾はフローレスを見、アルヴィスを見て、再びフローレスを見る。

 

武人として鍛え上げられたその観察眼は、夕焼けの中であろうと、若干、フローレスの顔が紅くなっているのを見逃さなかった。

 

(野球部は今日は練習等はなかったはず。となると――――)

 

そして、アルヴィスを離す。

 

「成程」

「え、今の何ですか? 何が分かったんですか!?」

「いえ。私ともあろうものが、他人の恋愛事情に手を出したようで。申し訳ありません。第五特務。こんなのでよければどうぞ」

「はひぃぃぃ!?」

「妹よ。どういうことか。この兄に詳しく聞かせてくれないか? なに。兄は妹の恋路を応援したいのだ」

「あ、兄貴も何言ってんの!? ちょっ、姐さんヘルプ!」

「残念ですが。私、これからまだ雑務が残ってますので」

「まさかの味方ナッシング!? 補佐! 責任の一端そっちに有るんですからね!?」

「悪い、逃げるわ」

「空飛んで逃げるな卑怯者――!!」

「いや死球(デッドボール)連発のお前に言われたくねえよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

夜。

武蔵輸送艦では、ネイトが見張りが立っていた。

 

英国国内ゆえに、襲撃という可能性はないのだが。もし万が一攻められた場合を考えている。

だが、微妙にその豊かな髪の毛が萎びて感じる。

 

「ミトツダイラ。交代だ」

 

と、後ろから正純が声をかける。

 

「あら正純。二代ではありませんの?」

「Jud.二代はホライゾンの護衛につくそうだ」

「そうでしたの。それで、ホライゾンのほうは?」

「あー。それがよく分からないんだ。『嫌気の怠惰』を食らってから、一日20時間は寝ている。ホライゾン自身にも、よく分からないらしい」

「自動人形の体というのも、大変なんですわね」

 

しかし、とネイトは羽織っていた毛布を取る。

 

「この二週間。思わぬアバンチュールでしたわ」

「最初はどうなるかと思ったがな。サバイバルが得意な奴と料理が得意な奴がいて助かったよ」

 

すると、後ろから声を掛けられる。

振り向くと、そこには点蔵がいた。

 

「ここにいたで御座るか。では。今から自分が見張りに立つで御座る。女衆は明日に備えて早めに寝るといいで御座るよ」

「ああ。すまないなクロスユナイト。助かったよ」

「いやいや。お礼なら葉月殿にもで御座るよ」

 

そういうと、点蔵は空を見る。

そこには、葉月が自分の杖に乗りながら辺りを警戒していた。

 

と、こちらに気づいたのか、葉月が降りてくる。

 

「どうした。なにかあったのか?」

「ああいや。なんでもない。この二週間。二人ともよく働いてくれたな、って礼を言いたくてな」

「なんだそんなこと。いいよ。俺だって重い資材運んだり、飯作ってただけだし」

 

葉月は苦笑しながら言う。

すると、ネイトがあることに気づいた。

 

「葉月。あなた髪の毛の色。変わってません?」

 

見ると、葉月の普段の髪の色よりも、赤みが強くなっていた。

 

「ん? ああ。これか。待ってる間ずっと暇だったからな。幻術系の魔法を使ってそう見せてるだけだよ」

 

そういうと、葉月の髪の色が見る見るうちに変化していく。

 

青。紫。黒。金。まるで絵の具で次々と塗りつぶされていくかのようだ。

 

「面白いで御座るなぁ」

「お望みとあらば、声や姿も模倣できるぜ。例えば――――」

 

と、葉月がパチンッと指を鳴らす。

すると、葉月の姿が変わっていき、それはやがてトーリの姿をとった。

 

「どうよ!」

「うっわまさしく葵だ。これであの変態さがあればもうどっちがどっちだか分からなくなる」

「いや流石にそういうことしねえよ。俺もアイツの変態具合には悩まされてんだから」

「うん。分かった。とりあえずその姿は止めてくれ。葵の姿でため息つかれると蹴りそうになる」

「お前も十分武蔵に順応してきているよなー」

「それ。女性にも化けられるので御座るか?」

「勿論」

 

そういうと再び指を鳴らす。

すると今度は正純の姿になった。

 

「いやなんで私なんだよ」

「いやー。つい?」

「つい、ってお前……」

「しかしこれは見事な変装ですわね。性格まで完全に真似たらどっちがどっちか分からなくなりそうですわ」

「確かに。いっそ女性姿で接客してみてはどうで御座るか?」

「あっはっは。絶対に嫌だ」

 

そういうと、葉月は元の姿に戻る。

と、上空の武蔵から馬鹿でかい声が聞こえてきた。

 

『おーい! ホライゾーン! 聞こえるかー?』

「……この声」

「あの馬鹿だな」

「で、御座るな」

「何をしているのでしょうか」

 

どうやら教導院の放送施設を使っているようだが、如何せん全体放送なので英国にも駄々漏れ。

おまけにボリュームを最大限にしているのか、あちこちから消えていた明かりがつき始めている。

 

『えー、ではー。今夜は武蔵と英国、く、く、くにまじり、あい、ぎ?』

『フフフ流石ね愚弟。でもそれ国交会議よ?』

『おおーっ! すげぇな姉ちゃん天才だ! でも俺。くにまじりあいぎの方がエロくて好きだなー。く、国交じっちゃうの? 交じっちゃうの!?』

 

直後、何かが爆発するような音が聞こえ、それ以降何も聞こえなくなった。

 

「浅間だな」

「浅間殿で御座るな」

「浅間以外ないな」

「み、皆さん爆発音だけで智と決めるのは――――――でもやっぱり智なんでしょうねぇ」

 

あ、と葉月は何かを思い出したかのように手を打つ。

 

「そういや点蔵。あの長衣の奴と結局どうした?」

「ああ、Jud.実はアレ以来話しては御座らんよ。時折こちらから確認できるで御座るが」

「そうか」

 

と、葉月は少し面白そうに言う。

 

「知り合い、なのか?」

「んー。どうだろな。まあ知り合いだったら。面白いかな」

 

そういって、点蔵の肩を叩く。

 

「まあアイツが俺の予想通りだったらさ。仲良くしてやれ。ちょっと内気なとこあっからよ」

「Jud.分かり申した」

 

おう、というと葉月は再び空に上がった。

 

正純は、点蔵に聞く。

 

「なあクロスユナイト」

「何で御座るか?」

「ああ……その……」

 

正純は歯切れ悪く、しかしこういった。

 

「――――――お前。ホモなのか?」

「……エ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

三征西班牙。アルカラ・デ・エナレス。

夜のエナレスは、人気も無く、どこと無く不気味な雰囲気を醸し出している。

 

そんな夜の教導院内を歩く一人の姿があった。

 

髪の毛は白髪交じり。どことなく引けた腰。

顔にはいくつもの皺が刻まれているが、覇気が無い男性。

 

三征西班牙。アルカラ・デ・エナレス総長兼生徒会長。フェリペ・セグンドだ。

 

彼は、辺りを探るようにキョロキョロとしながら、手に持った紙袋を抱え部屋の前に立ち、扉に手をかける。

が、その前に声を掛けられる。

 

「総長」

「うわっ!?」

 

危うく、手に持った袋を落とすところだった。

寸でのところで袋を抱え直し、セグンドは後ろを見る。

 

そこには、誾がいた。

 

「な、なんだ立花君か」

「Tes.総長。こんな遅くまでどこにいたのですか?」

「え、ええと……」

「ひょっとして愛人の下ですか?」

「いや違うよ!?」

 

なんてストレートな物言いをするんだろうか。

セグンドが否定すると、誾は頷く。

 

「え、えーと。立花君は僕に用があるのか、な?」

「Tes.フアナ様が総長宛の手紙を持っていますので」

「あ、ああ。そうか。ありがとう」

「――――時折届くあの手紙は、愛人からのものですか?」

「ち、違うよ! っていうかまだそれ疑ってたの!? 誤解だよ!!」

 

この子は、とセグンドは思う。

 

「アレは長寿族の孤児からの手紙だよ」

「長寿族からの?」

「Tes.あの子を救うことが出来たのは。レパントでの僕の唯一の戦果だよ」

 

レパント。その言葉を聞いて、誾は思い出す。

 

――オスマン帝国と旧派連合軍の海戦でしたね。

 

セグンドは力なく笑う。

 

誾はそれ以上は追求せず、一礼しその場を去る。

セグンドは扉を開け、部屋の中に入る。

 

すると、奥にはフアナが座っていた。

こちらに気づく気配が無いため、セグンドは彼女の前に回る。

 

すると、耳には符が巻かれていた。

 

「圧縮睡眠の符……しかも四倍って。中々起きれないだろうに」

 

呟くと、フアナの体を支えている回転椅子がセグンドに向く。

すると、フアナが持っていた手紙の束が床に落ちる。

 

セグンドは一度机に紙袋を置くと、それらを拾い始める。

 

が、目的の手紙が無かった。

 

そして顔を上げると――――――フアナの股の間に手紙があった。

 

「――――ファッ!?」

 

思わず大声を上げそうになるが、堪えた。

 

(お、落ち着け! そっと、そぉーっと……)

 

ゆっくりと手を伸ばし、手紙を掴む、

と、

 

「すいません忘れ物を――――」

 

扉が開き、誾が入ってきた。

そしてそのまま、セグンドと誾の目があった。

 

「ああ、いや! これは――――」

「――――まさか総長が八大竜王のフアナ様に寝たふりさせた上で開脚を土下座で頼む男だとは。これはまさに快男児(マスチモ)。宗茂様にもそこら辺の技が欲しかったところです。では御機嫌よう」

「帰ったらダメだよ誾君!」

 

セグンドの制止も聞かずにそういって、扉を閉めて出て行った。

と、先ほどまで挟まっていた手紙がフアナが少し身動ぎしたため下に落ちる。

 

セグンドは仕方なく、それを拾うも。これも目的の手紙ではなかった。

 

まさか、と思い再びフアナを見上げると、そこには、ちょうどフアナの豊満な胸に挟まれた手紙があった。

 

「――――――ファッ!?」

 

だが先ほどよりかは取りやすい――――が、こんなところを見られたら社会的に死ぬ。

いかに自分の襲名したフェリペ・セグンドが三征西班牙に衰退を齎す名だとしても、こんなところで自分の名を衰退させたくはない。

 

「……普通、神の試練って一回だよなぁ」

 

そう呟き、手紙を掴む。

が、抜けなかった。

 

何度引っ張っても、抜けない。

 

答えは簡単。圧力が強いのだ。

元々の胸の大きさが三征西班牙の中でもトップクラスのフアナ。そして、三征西班牙の制服がその大きさを強調するように押し上げているからだ。

 

セグンドは自分を落ち着かせ、ゆっくりと手紙を引き抜こうとする。

 

が、

 

「総長。やはり熟考したところ。総長のような大人の男性が、フアナ様のような真面目女教師系の方にそのようなこと――――」

 

そして再び、二人の目が合う。

 

「……」

「……」

「あの」

「Tes.――――そういうことにしておきましょう」

「早ッ! 展開早ッ!!」

 

セグンドが事情を説明しようとしたが、先に誾に閉ざされた。

 

「今度は八大竜王のフアナ様に寝たふりさせた上で乳挟みキャバレーごっことは。これまさにダブル快男児(ドプレマスチモ)。やはり宗茂様にもそこら辺の趣向が欲しかったところです。それでは御機嫌よう」

「うわあ、もうツッコまないぞ! ってだから帰ったらダメだって!」

 

と、誾が部屋から出ると同時に、手紙が抜けた。

しかし、その瞬間、フアナの制服の前面が一気にはだけた。

 

セグンドはすぐさま毛布を持ってきて、彼女にかける。

 

そしてそのまま手紙を持って、部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

『おじさんへ

 

おじさんは元気ですか? 私は元気です。

おじさんは知っていますか? 今あの大きな雲の中で沢山のお船が作られています。

 

教導院のみんなは、「戦争だ」「戦争だ」って言っています。

 

私はおじさんに救われました。

もし戦争になったら、また、救いに来てくれますか?』

 

セグンドは、手紙を抱きしめるように、胸に当てる。

 

「勿論。おじさんは助けに行くよ――――――でも。今の大将はどうなんだろうね」

 

そう。誰とも無く呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

誾が教導院から帰ろうとすると、ふと、どこからか風を切る音が聞こえた。

 

……剣?

 

誰かが剣を振っている音だということが、一発で分かった。

音のする方向に行くと、そこには、大剣を振るうアルヴィスの姿があった。

 

西班牙のジャージを着て、おそらくは数百回はやったであろう素振りの結果として、汗が垂れていた。

 

「……」

 

誾はその様子を物陰からじっと見ていた。

やがて、振り終えたのか、大剣を地に置く。

 

「いつまでそこで見ているんだ。誾」

 

と、こちらにも聞こえるような声でこちらを向く。

隠れる理由もないので、誾は物陰から出る。

 

「熱心ですね」

「Tes.そうじゃないと。お前らに追いつけない」

「貴方の技量は最早特務クラスと判断しますが?」

「それじゃあダメだ」

 

ばっさりとそう切り捨てるアルヴィス。

 

「アイツに勝てなかった」

「アイツ……? ああ。武蔵の古代魔法使役士、ですか」

「Tes.まさか連結刃の機動をああも容易く見破るとは思わなかった」

 

と、アルヴィスは誾を見る。

 

「お前、こんな時間まで何してんだ?」

「Tes.総長を見つけましたので。とりあえずの伝言を」

「――――ああそうか。これから帰るのか?」

「Tes.貴方も早く帰って休んだほうがいいですよ」

「……そうすっかな」

 

そういうと、アルヴィスは持っていたタオルで汗を拭き、大剣を背負う。

 

見ると、誾は既に帰ろうとしていた。

 

「誾」

「……? はい。なんでしょう」

「あ、えっと……」

 

呼びかけたアルヴィスだが、言葉を探しているようで、指を空中でクルクルと回していた。

 

「……? 何も無いなら、私はこのまま帰りますが」

「あ、ああ――――気をつけて帰れよ」

「Tes.」

 

そういって、誾は帰っていった。

 

後に残されたアルヴィスは、地面を強く一回蹴る。

その顔は、自主練とは別に紅くなっていた。

 

「ああくそっ! …………やっぱ言えねえよ」

 

と、自分の頭を乱暴に掻くと、アルヴィスもそのまま帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〝好き〟って言葉。マジで複雑……」

 




どうもKyoです。

ということでまさかの誾さん好きな男の子発生。

でも普通にいてもおかしくないと思うんですよ。アレだけ美人でねぇ……
その愛を勝ち取った宗茂さんマジで男。

次回こそ、点蔵モゲろタイムにしたい。

最後に。コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

それでは。



余談ですが。「Hello,Good-bye」というゲーム知ってる人いませんかね。
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