境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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月下の入浴者達

 

「デートしようぜホライゾン!」

「頭に蛆でも涌きましたか? 浅間様。禊をこの全裸馬鹿に一つ。お願いいたします」

「ソッコで結論出されたYO! ってか待て待て浅間マジで待って」

 

焼肉が終わり、いつもの面子が集まったことを確認した正純は、今後の武蔵の在り方をトーリに委ねた。

そのトーリがいきなりホライゾンとデートをしたいといい始めたのだ。

元から狂ってるとはいえ、これではどうしようもないだろう。

 

そんな疑問をネイトも持ったのか、トーリに聞く。

 

「何故今になってホライゾンとデートを?」

「ん? ああ。んー。ほら。今までよく二人で話とか出来なかったろ? 色々と話してみてえんだ。ホライゾンと」

「話し、というと。何を?」

 

そういうホライゾンに、トーリは言う。

 

「あのさ。ホライゾン。感情に興味無い、って思ってね?」

 

ホライゾンはそう問われ、しばらく思案する。

 

「……結論を申しますと――――――不要を感じます」

 

その言葉に、場の空気が張り詰める。

特に、ネイトは心配そうに両者を見る。

 

トーリの術式は、奉納に喜の感情を持つことにある。

しかし、悲しみの感情を得ると、死んでしまう。

 

故に、自分の愛する女性に、自分のしてきたことを無駄と言われるのは、どうなのだろうか。

咄嗟に会話をずらそうと思うが、声が掛かる。

 

「ミトツダイラー。炒飯食べる?」

「……はい?」

 

喜美が突然炒飯を盛った皿を差し出してくる。

そんなことをしてる場合じゃ、とも思うが、

 

「んー。やっぱそうだよなー」

 

トーリはいつもの調子で言う。

その様子にネイトはほっとする。

 

「でもさ。俺は取り戻すって決めててさ。お前が帰ってくる前から、何とかして八つの大罪武装集めて、それをオメエに見立てて供養しようって思ってたんだ」

「――――では。ホライゾンは元々不要だったのですね」

「そうじゃねえよ」

 

そう、ホライゾンは言う。

だが、それをトーリは否定する。

 

「感情奪還の理由付けに、ホライゾンが必要なのですか?」

「そんなんじゃねえって」

「そうだとしたら――――お止めください。ホライゾンのせいで、皆様が争ったり。傷ついたりしてしまいます」

 

そういうと、ホライゾンは顔を背ける。

 

「……別に、ホライゾンなど。いらないではないですか」

 

その瞳からは、涙が流れていた。

 

自動人形としての最善の判断が、自身を不要と断じる。

だが、『悲嘆の怠惰』を取り戻し、悲しみの感情を手に入れたことにより、その判断を悲しいと思って、涙を流しているのだ。

 

と、ネイトはトーリに言う。

 

「総長。何かして差し上げたら……」

 

トーリはふむ、と考えると、ホライゾンの涙を拭う。

 

「……なんですか?」

「泣き顔を 慰め覗く 乳谷間」

 

その瞬間、涙に濡れていたホライゾンの顔が一瞬で冷め、拳を握る。

 

「痴漢撃退 正義執行」

 

そのままトーリは吹っ飛ばされた。

 

「な、ナイス返歌ホライゾン!」

 

しかし、トーリは即座に走りホライゾンの下に戻る。

 

「デートしようぜホライゾン! 俺とデートして、色々見たり、食ったり、遊んだりして! 感情ってのに興味が向くか、試そうぜ!」

「試して、どうなるのです」

「興味が向いたら、俺と一緒に大罪武装取り戻そうぜ!」

 

そういうトーリに、ホライゾンは淡々と言う。

 

「危険な発想です。感情が欲しくなったら、世界と戦争を起こすのですか」

「おいおい。世界征服は俺の分野だぜ? オメエは平行線で、違うことをすりゃいい。だからまず。デートしようぜ」

「人形を外に持ち出すつもりですか」

「違うさ」

 

トーリはホライゾンの手を取る。

 

「手を取って、外に連れて行くんだ」

 

ホライゾンは、少し驚いたように握られた手を見る。

すると、正純がパンッと手を鳴らす。

 

「まあ、極東の継承者が同意なら。逢引での決定もアリだろう。では。この会議終了する!」

「あのー。ちょっといいですか?」

 

と、アデーレが手を上げる。

 

「今ちょっと聞いたんですけど――――『悲嘆の怠惰』がどっかいったらしいですよ?」

 

瞬間、皆の間に旋風が巻き起こる。

が、それもすぐに止んだ。

 

「狐たちに、武蔵の全域を探すように命じたよ」

「俺の方も、精霊たちに今伝えた」

 

と、オリオトライを尻尾の枕で寝かせている神耶と、皿を置いた葉月が言う。

 

「行動早いなー。お前ら」

「まあな。さて。とりあえず大罪武装は神耶の狐と俺の精霊に任せるとして。トーリ」

「ん?」

「お前デートどうすんだよ。ノープランは最悪だぞ」

「おう。だからネイトとか姉ちゃん頼むわ」

「わ、私ですの?」

 

ネイトは声を上げるが、喜美はノリノリのようで笑みを浮かべる。

と、

 

「あ、そーだ! なんならダブルデートってことでよ。葉月も誰か誘って行かね?」

「――――――はぁ?」

 

馬鹿が提案した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

点蔵と〝傷有り〟が風呂を出た後、梅組の女性人の一部が風呂に来ていた。

 

その中、浅間が不思議に思う。

 

「あれ? おかしいですね」

「どうかしたのか浅間」

「ええ。点蔵君と〝傷有り〟さんが入った後なので、穢れがあるはずなんで浄化しようと思ったんですけど……」

 

と、湯に玉串を挿している浅間。

本来、穢れがあると色が変わるはずのそれは、無色のままだった。

 

「変ですねぇ。故障でしょうか」

 

そういって、浅間は自分の頭に挿す。

すると、見る見るうちにピンク色に染まった。

 

「あれ、あっれー!?」

「どういうことさね。ピンクの穢れって」

「多分。さっき総長が言っていたダブルデートでハヅッちのこと妄想してたんじゃないのかな?」

「ありえる、ってか。それしか原因ないわね」

「な、何を言ってるんですか! は、葉月君とそんなデートだなんて……だ、第一葉月君が行くかどうかも分からないのに……」

「でも頭の中では都合のいい妄想が膨らんでるんだろ?」

 

と、直政は聞く。

浅間は、熱気とは明らかに違う原因で顔を紅くしている。

 

「でもきっと。白百合さんならきっとOK出すと思いますよ? それに。武蔵でも少ない英国出身者ですし」

「だが、白百合は赤ん坊の頃に武蔵に来たと言っていたぞ?」

「でも結構英国の事詳しかったりしましたよ? 多分、夏休みかそのときに里帰りしてたんじゃないですか?」

「あ、の。あさま、さん。デート。がんば、って?」

「あの鈴さん私まだデートするって決まってるわけじゃないんですけど……」

 

そういうと、浅間を除く女子全員が見て、

 

「――――え?」

「な、なんですかその反応は!?」

「だってぇー。アサマチ、総長がダブルデート発言したとき、すっごい表情が変わってたよねー?」

「そうね。百面相が面白かったから、動画に録らせてもらったわ」

「ど、同人誌ですね? そうなんですね!?」

「まあでも結局。笑顔で収まった、か」

「あとは葉月次第さね」

「ああもう! いいですから! 今は正純の契約が先です!」

 

あれ? なんか私逃げる口実にされてないか?

そう思う正純だが、既に浅間は後ろにいて準備をしていた。

 

「あー。本当にするのか? 契約」

「ええ。走狗がないと何かと不便ですし」

「うーん。今のところ不便は感じてないんだがなあ」

「副会長。浅間さんの話題逸らしに付き合ってあげないとダメですよ」

「……アデーレ?」

 

浅間はアデーレを振り向く。

その顔は笑ってはいるが、背後に漂う気配が尋常じゃなく黒い。

 

それを察知したアデーレははいと返事をすると湯船に沈んだ。

 

「では。始めます」

 

そういうと、正純の頭から桶に入った湯をかける。

 

「まずは、正純の三河での契約を一時解除します」

「産土契約は?」

「あ、三河の産土神とは提携しているんで大丈夫です」

「そう、なのか?」

「はい。ただ正純のは携帯も持たない出生時契約のままでしたから、加護が弱いんです。いつも餓死しそうになっていたのは。そのせいかと」

 

この世界の人々がつけているハードポイント。

それは、つけている人に最低限度の生命維持の加護を齎すものだ。

 

ただし、契約をしていないと、その加護は弱まる。

 

「あと。肌荒れ対策と日焼け止めの加護もサービスしておきますね?」

「え、あ、いや。そういうのはあんまり……」

「後は――――走狗契約の前に、信奏したい神と個人契約が出来ますけど、どうします?」

「後で、っていうのは出来ないか?」

「出来ますよ。ウチでしてくれるなら」

 

その瞬間、風呂に入って魔術陣でネームを書いていたナルゼが立ち上がる。

 

「『裸の浅間は正純に言った。「ウチでしてくれるなら」と』――――よっしゃ次回ご期待!」

「ガッちゃんさっきから五年分くらいネーム切ってないかな?」

 

一瞬、正純はそちらを向いたが、おそらく何を言っても無駄だろうということを悟る。

浅間も同じ事を思ったのは、話を続ける。

 

「いずれ個人契約するなら。専用走狗が必要になりますから。今日のところは汎用走狗にしますか。まあ、汎用といっても結構値が張っちゃうんですけど」

「安くはならないのか?」

「あ、だったら天恵契約がオススメですよ。走狗がランダムで選ばれるんです」

「そんなので大丈夫なのか?」

「ええ。大抵は数の多い犬や鼠、狐や鳥が来ますよ。稀にレアな走狗を引くこともありますからお得ですよ」

 

そういうと、浅間は一枚の紙を出してきた。

そこにはハナミの絵と円形のボタンみたいな模様があった。

 

正純は少し考えたが、やがてその部分に触れる。

 

『拍手ー』

 

すると、突如大きな箱のようなものが現れた。

浅間が近づき、箱を開ける。

 

「あら。あらあら」

「な、なんだその反応は」

「さてここで問題です。何の走狗でしょうか?」

「分かるわけ無いだろう!」

「ではここでヒント。動物です!」

 

動物。といわれてもその種類は多種多様。

とりあえず先ほど数が多いといわれたものから言ってみることにした。

 

「狐?」

「残念。次のヒント。「あ」行で始まる動物です」

「「あ」行?」

 

正純は「あ」から始まる動物を探す。

尚且つ、先ほど浅間が言っていた数の多い動物で「あ」行だと……

 

(あ、あー。い……犬? ああ、犬か)

 

犬ならばいい、と思った正純は浅間に箱を開けるように頼む。

 

「じゃーん。答えはオオアリクイでした」

「何の詐欺だコレは!!」

 

そこには巨大なアリクイと小さなアリクイがいた。

どうやら親子らしく、親のほうは去っていった。

 

「IZUMOは最近、九州や新大陸でも活動していますから」

「だ、だからってアリクイかぁ……」

 

残った子供のアリクイを正純は持とうとするが、怯えているのか体を丸めてしまった。

 

「ちょっと幼すぎるのが来てしまったみたいですね。どうします? 別の走狗にしますか?」

「そうだな……」

 

正純はアリクイを優しく包むようにして持ち上げる。

手の中では震えが直接伝わってくる。

 

「……多分、外の世界を知らないで怯えているだけだろう」

 

すると、アリクイがそっとこちらを見上げてきた。

その目には涙があった。

 

「大丈夫だ」

 

と、あやすように正純は言う。

 

「いいんですか?」

「Jud.」

「ははっ。これで正純も子持ちか。あとアタシらのクラスで契約していないのは……」

「ハヅッちだね」

「白百合も契約していないのか?」

「あ、ええ。まあ、その……色々あって」

 

と、浅間が目を泳がせながら言う。

 

「白百合の契約はしないのか?」

「実は英国に来る前に、葉月君から契約したいと言われましたので」

「葉月の場合。戦闘系の能力は要らないでしょ。となると、正純みたいに通神専用?」

 

ナルゼがそう聞くと、浅間は首を振る。

 

「いえ。戦闘の補助系の加護があればと、言われてましたので」

「アイツ。あれ以上強化してどうする気さね」

「強キャラ通り越してチートキャラになるつもりかしらね」

「アサマチも大変さね。将来の旦那に今から尽くしてるんじゃ」

「だ、誰が将来の旦那なんですか!」

「葉月」

「い、いいですかマサ! 葉月君とはその……お、幼馴染でそういう関係なのであって――――」

「幼馴染でそういう関係!? 何よその発言! いただきね!」

「わあああああ! 地雷! 地雷踏みましたよね私!」

「落ち着け浅間。いいように遊ばれてるぞ」

「違うよセージュン。これはね。いつもいつも遠くでハヅッちを見ていて、中々手を出せないアサマチを応援しているんだよ」

「例えて言うならそうね――――葉月を見つけたはいいけど、柱の影に隠れて色々頭を抱えながら悶えている。そんな状態の浅間を応援しようとしているのよ。建前上」

「今建前っていいましたね!? っていうかどこでその情報を知ったんですか!!」

「あのーそれよりも鈴さんがのぼせてるんですけどー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

場所は変わり、英国第四階層の森林。

その中には、周りを明るい炎がいくつも浮かんでいて、周りを照らしていた。

 

その中心には温泉があった。

 

そして、その中に入っている二人の人間の姿があった。

 

一人は、長い白い髪の毛を後ろで一つに束ねている少年だ。

女性似の顔立ちのせいか、非常に艶やかで、本当に女と見間違えてしまいそうだ。

 

もう一人は、赤みがかった茶髪の少年。

その少年の目の前には、本が一冊、ほんのりと白い光を宿しながら浮かんでいた。

 

神耶と葉月だ。

 

葉月が、あの後一人森林のほうに行くのを神耶が見つけ、後を追っていった。

すると、そこには立派な温泉があった。

 

「まさかこんなところに温泉があるなんてねー」

「昔にここに来たことがあってな。そのときに見つけたんだ」

「もしかして、ホライゾンが死んだときから中等部二年の間に?」

「Jud.」

 

それ以上は神耶は追求せず、別の事を聞く。

 

「ねえ葉月。どうするの? トーリが言ってたあのデート」

「ダブルデートか? お前行けば? 先生と」

「僕はいつでも行けるから。でも葉月ってこういうことに興味ないの?」

「こういうことって?」

「女の子とのデート」

 

そういうと、葉月は落ちかけた手ぬぐいを頭に載せる。

それから、空を仰ぐ。

 

「……別に。そういうわけじゃないんだよ」

「じゃあ、どういうわけ?」

「相手がいない」

「――――浅間とかは?」

 

と、神耶は葉月に近づき言う。

 

「あのさ。ひょっとしてだけど。浅間のこと、嫌い?」

「いや。好きか嫌いかで言えば好きだよ。まあ、あくまで友人間っていう意味でだがな」

「じゃあ、いいんじゃないの?」

 

そういうと、葉月は頬を掻く。

 

「あー。ほら。なんつーかさ。迷惑かけたくねえんだよ」

「迷惑って判断するのは葉月じゃないでしょ?」

「そりゃあ、まあな」

「じゃあ、言ってみなよ。言いづらいなら。僕が間に入るから」

「……ああ。ありがとよ」

 

そういうと、葉月は目の前の本に集中する。

 

「……ふやけない?」

「魔力でプロテクト」

「把握。で。何の項目見てるの?」

 

と、神耶が本を覗き込む。

が、その瞬間、バチッ、という音と共に神耶は弾かれた。

 

神耶は、目と頭を押さえている。

 

「これはッ、結界? それも認証者にしか開かない拒絶抵抗型の」

「Jud.古代魔法使役士にしか開けないし、見えない」

「いじわる」

「……お前。時々自分が男だってこと忘れてないか? んな可愛い子ぶりっ子ポーズやっても無理だぞ」

「チッ」

「腹黒」

 

葉月が呆れるように言うと、読んでいた項目を神耶に教える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Pactio――――仮契約の項目だ」

 




どうもKyoです。

ネギまといえばこれでしょう。ということで仮契約です。
といってもまだやるとは決まっていません。あくまでその可能性だけ。

……方法知ったら浅間さんが大歓喜。

と。ここで募集を行いたいと思います。

葉月の術式についてなのです。
ぶっちゃけ。火力はもうあるので、何か補助をしたいなと。

何かありましたら感想、またはメッセージにしてお願いします。

最後に。これを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

さあ。次回はデート回。
点蔵はモゲろ。葉月はどうなるか。トーリは、まあ。うん。頑張れ。

では。
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