境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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祭りの準備

整理期間を終え、武蔵と英国は春季学園祭準備に入っていた。

 

あちらこちらで屋台の設置や建設、物資の搬入の音が聞こえる。

 

無論、アリアダスト教導院の生徒たちもここに参加していた。

 

とりわけ、葉月と神耶があちこちで重宝されていた。

 

葉月は、精霊たちの使役と、自身の魔法により、異族系の者を中心として運ばないといけないようなものを軽々と運び。

 

神耶は、狐達の使役で、荷物の運搬のほかに、他の労働者達に休憩の飲料水などを配っていた。

 

その働きを見ていた梅組メンバーは、

 

「もうあの二人だけでいいんじゃないかな」

 

といった具合に、一部を除いて本格的なサボタージュを行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「うぃーす。角材届けに参りましたー」

「おう。すまねえな。そこに置いといてくれ」

「Jud.」

 

葉月は、担いでいた角材を地面に置き、その場を離れる。

 

他に手伝うところは無いか見たが、下手に素人が手を出したらダメな部類に入るものばかりだったので、しばらく海辺を散歩していた。

 

「学祭が始まったら、トーリとホライゾンはデート、か」

 

自分が仕える王と姫。そのデートはぜひとも成功して欲しいと願う。

ただし、肝心の王は全裸の変態で。姫のほうはセメントというどうしようもない組み合わせだが。

 

しかし、葉月にはもう一つの懸念事項があった。

 

「……俺も、行ったほうがいいんかね」

 

それは、トーリが言い出したこと。

葉月とともにダブルデートをしようという。

 

葉月からしてみれば、相手がいないのでどうしようもない。

が、先日神耶に、浅間を誘ってはどうかといわれた。

 

葉月はどうしようか、悩んだ。

 

(誘うことには問題はないんだろうな……あるとしたら。浅間自身に俺が嫌われてないか。何だよな)

 

と、ここまで思って頭を抱える葉月。

嫌うどころか好意を持っていることに気づいていないのか。それとも悲観的な思考が普通なのか。

どちらにしろ。そのせいで踏ん切りがついていない。

 

(別に俺が行かなくても……あーでも。久々に英国周りたいしなー)

 

うーん、と悩む葉月。

と、その後ろから声が掛けられる。

 

「おや? 白百合君じゃないか!」

『そんなところで一人黄昏て、どうしたのだ?』

「イトケンに、ネンジか」

 

後ろを振り向くと、そこには全裸のマッチョなインキュバス。伊藤・健二と、HP3くらいしかなさそうなスライム。ネンジがいた。

 

「別に。黄昏てたってわけじゃないさ。ちょいと考え事」

「悩みかい? 僕らでよければ相談に乗るよ」

『うむ。一人で悩んでも。解決しないことはある』

「ははっ。まあ、サンキュ。気持ちだけ貰っておくよ」

 

そういって、葉月は海を見つめる。

 

『葉月よ』

「ん? どうしたネンジ」

 

級友のスライムが、葉月に言う。

 

『何を悩んでいるのかは分からん。だがな――――後悔だけはしないような選択をするのだぞ』

「おいおい。トーリじゃあるまいし」

『左様。貴様はトーリではない――――だからこそ。後悔はするな』

 

ネンジは、葉月の隣にやってきて、葉月を見上げる。

 

『やらずに後悔はするな。やっても後悔するな。行動を起こし、それで後悔しないような生き方をする。少なくとも、我輩はそうだ』

「はははっ、僕もそうだね!」

 

珍しい奴らに説教されてるな俺。そう思いながら、言われてみて考える。

 

「後悔するような生き方はするな、か……確かにな。だからこそ。今のトーリや皆がいるんだろうし」

『Jud.どうだ? 少しは迷いは晴れたか?』

「Jud.二人ともあんがとさん」

『何。迷える友を導いただけの事。これからも、困ったことがあればこのネンジを頼るといい』

「はははっ! 僕らでよければいつでも相談に乗るよ!」

 

そういうと二人は去っていった。

 

葉月は手を振り、見送る。

 

「――――――さて」

 

葉月はイトケンたちとは別の方向に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

梅組の半数ほどが手伝いと称してサボっている中、浅間は表示枠の操作をしていた。

その後ろには喜美もいる。

 

「うーん。やっぱり戦闘系ならタケミカヅチやオオヤマツミ辺りなのでしょうが。イマイチ葉月君の戦闘スタイルに合ってない気が」

「ねえ浅間。何でアンタが葉月の術式契約選んでるの? そういうの、普通自分でやらせない?」

「いっつも私任せな喜美にだけは言われたくないと思いますよ葉月君も。あと、これは葉月君からのお願いでもありますし。いくつかリストアップして、最終的には葉月君に判断してもらいます」

「フフフ完璧にかーちゃん属性巫女ね。なりたいのは葉月の母親? それとも恋人? そ・れ・と・も――――」

 

思わず握った拳を見せると二、三歩ほど離れていった。

 

すると、向こうから葉月がやってきた。

 

「お、いたいた。浅間!」

「あ、はい! なんでしょうか?」

「フフフこのハーレム男。まずは攻略が簡単そうな浅間から落とす気ね! でも浅間に迫るともれなくズドンの選択肢が有るから気をつけるのよ!」

「一秒で無視だ。で、今。平気か?」

「え、あ、Jud.大丈夫です」

 

良かった、と葉月は安堵する。

 

「あのさ、その……」

 

いつもはっきりと物言う葉月にしては珍しく、歯切れが悪く、しかし、こういった。

 

 

 

「良かったら。祭りの初日。一緒に回らないか?」

 

 

 

「――――――ぇ」

 

一瞬、浅間は普段はしないような呆けた顔をする。

 

一秒後。顔が紅くなり始めた。

 

追加で一秒後。一気に顔全体が紅くなる。

 

さらに追加で一秒後。幻覚か、はたまた本当に存在しているのか、顔から湯気が迸っていた。

 

それを見ていた葉月と喜美は、

 

「……俺のせい、だよな?」

「ククク流石ねハーレム男。でもさっさとしないと答えを聞きそびれるわよ?」

「あの状態を俺にどうにかしろと?」

「とりあえず話しかけてみれば?」

 

そう喜美が言う。

葉月もこのままでは話が進まないので、浅間を正気に戻す。

 

「おい、おーい。浅間」

「――――――」

 

浅間は顔を俯かせて、何かを呟いている。

葉月が近づいて耳を澄ませてみる。

 

「…………既成、………………監、」

 

なにやら不穏当な単語が聞こえてきたので正気に戻すことにした。

 

「おい、おーい浅間」

「…………あ、はははははい!」

 

急に呼びかけられて驚いたのか、浅間は顔を上げる。

その顔は、未だに朱に染められたままだった。

 

「えっと。それで、どうかな? あ、忙しいなら別に構わないから」

「い、いいいえいえいえ! とんでもないです! 逆に暇なくらいです暇!」

「そ、そうか」

 

慌てて否定する浅間。

その後ろでは、表示枠が大量に出現していた。

 

その一つ一つをハナミが処理している。

 

「あー。で。どうかな?」

「は、はい! 勿論行かせてください!」

 

それを聞くと、葉月は戸惑いながらも笑顔で安堵したように息をつく。

 

「良かった。じゃあ祭りが始まったらゲートのところ、でいいか?」

「はい! Jud.!」

「そっか。じゃ、その。また後で」

 

そういうと、葉月はそのまま飛んでいってしまった。

浅間はそれを見送る。

 

しかし、その背後では――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

・賢姉様:『三年梅組! 全員心して聞きなさい! あの葉月が浅間をデートに誘ったわよ!』

・約全員:『な、なんだってー!!?』

・● 画:『ちょっと喜美! それ本当なんでしょうね!? 嘘だったらアンタを同人誌に出すわよ! 』

・賢姉様:『ククク安心しなさい同人屋。何しろ私が目の前でその光景を目撃したのよ! アツかったわよ! ええ最高にゲキアツよ!!』

・○べ屋:『映像は!? 映像どこ!?』

・● 画:『喜美! アンタのことだからどうせ録ってあるんでしょ! 分けなさいよ! さもないとマジで触手系同人誌に出すわよ!?』

・金マル:『ガッちゃん容赦ないね!』

・ウキー:『というより。葉月から誘ったのか?』

・賢姉様:『Jud.一瞬この賢姉でも疑ったくらいよ――――で肝心の動画だけど』

・約全員:『…………』

・賢姉様:『――――いきなりのことで録れなかったわ! 賢姉大ミス!』

・約全員:『ちくしょおおおおおおおおおお!!』

・銀 狼:『何ですのこの一体感……』

・労働者:『分かってるなら言わなくていい』

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

自分の仕事を終えた浅間は、第四階層の海を見ながらぼんやりと先ほどのことを思い返していた。

 

……葉月君と、お祭りで、デート…………

 

思えば学園祭にしても学校関連行事で葉月を誘う機会などいくらでもあった。

 

が、自分の元来の性格と、周りの外道共がいるせいで、ついに誘えずじまい。

しかし、今回に限ってはそんな事はなかった。

しかも、相手である葉月から誘ってきたのだ。

 

これで舞い上がらないはずがない。

 

すると、ハナミが肩を叩いてきた。

 

「あ、何ですかハナミ?」

『ふく どうする?』

 

と、ハナミが言うと、今まで顔を紅くしていた浅間がいきなり青くなった。

 

服。つまりはデート用であり、式典用の服。

極東式のものとなると、着付けもあるが、それはいつもの事なのでこの際放っておく。

 

それはそれとして。

 

浅間は今の自分を見る。

そこには、極東式の制服を着用した自分。

 

式服はあるにはある。

が、それでデートというのも。などと考えていると、後ろから声がした。

 

「クククいい感じに乙女ってるわね乙女巫女」

「な、き、喜美!?」

 

そこには幼馴染で永遠の狂人の葵・喜美がいた。

彼女はいつものように謎の自信に満ち溢れた笑みを浮かべて、浅間に近づく。

 

「ねえ浅間?」

「な、何ですか?」

「まさか。制服デートでいっかー、なんて考えてないわよね?」

「……」

「ククク図星ね。図星なのね! でも制服デートはある程度付き合った仲じゃないとドン引かれるわよええもう一気に二人の仲は絶対零度! ああ哀れ淫乱巨乳巫女!!」

「誰がいん――――うおおわああ! あ、危ないところでした。もうちょっとでヨゴレ発言を……」

「で。結局どういう感じで攻めるわけ?」

 

こっちの話きいちゃいねえですよ。と、内心で丁寧語を華麗に組み合わせた言葉で悪態をつく。

一方の喜美はというと、浅間に寄りかかって耳元で囁く。

 

「ひょっとしたら――――浅間が期待していることが起こるかも♪」

「な、なにを言ってるんですか」

「え、そりゃ勿論子づく――――」

 

握り拳を見せるとそれ以上は言わず、いつものように回り始めた。

しかし、それもすぐに止める。

 

「で。アンタマジでどうすんの?」

「ど、どうすると言われましても……」

「まあ初日はすぐに英国との会議だし。あの歴オタが使えない以上は誰かを代理書記とするわね。多分、アンタになるんじゃない?」

「まあ、おそらくは」

「だったら式典用で行きなさい。色は、そうね。赤がいいかしら」

 

表示枠を操作する。

そこには、英国の地図が載っていた。

 

「愚弟にも言われてデートコース探すついでにアンタたちのも見ておいてよかったわ」

「い、いつの間にそんなことを……」

 

と、浅間の目の前に一つの表示枠が現れた。

それはハナミが開いたもので、そこには英国のある店の情報が表示されていた。

 

「あら。これは?」

「あ、ちょっ、ハナミダメですって!」

 

表示枠を消そうと、慌ててハナミを引き戻すが、それより早く喜美が表示枠を引き寄せた。

 

しばらくその表示枠を見ていた喜美が、にんまりと笑う。

 

「クククなぁに浅間。この店」

「こ、これはですね。と、トーリ君のためにちょっと調べていたものでして……」

「へぇ、ふぅん……」

「な、なんですか」

「べっつにぃ~」

 

コイツ、と再び拳を握ろうとするが抑えた。

 

喜美はそれを見て更ににやける。

 

「客のどんなニーズにも応え、簡単な指輪からウェディングリングまで揃えてる指輪専門店『ソロモン』――――用意周到ねえ」

「くっ、べ、別にいいじゃないですか」

「悪いなんて誰も言ってないわよ? ただ、愚弟に知らせるんでしょ?」

 

ん? といった感じに聞いてくる。

無論、知らせるつもりもある。が、ぶっちゃけこれは自分用だった。

 

……もし行くことが出来たら二人でここでお揃いのを…………

 

などと考えていた。

 

それを察したのか喜美は離れていく。

 

「まあいいわ。愚弟には黙っておいてあげる。そういうのは自分で調べなきゃ意味ないものね」

「……いいんですか?」

 

と、浅間は聞く。

喜美は振り向きながらに答える。

 

「悪いとも良いとも言わないわ。ただ、アンタがこれでいいって思うんなら。そうなさい。ただでさえ、我侭とかいえない立場なんだし。こういうときくらいは、旦那に甘えなさいな」

「だ、旦那って……」

「デートの結果は聞かせなさい。それが条件よ」

 

そういうと、軽く手を振り喜美は行ってしまった。

浅間はその場に残され、ただ、

 

「……ありがとうございます。喜美」

 

そういって、笑顔になった。

 

「さて。とりあえずはデートと式典ですね」

『しあわせ いっぱい 拍手ー』

 

ポンッ、と軽く音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

喜美は、浅間から離れ、祭りの準備を横目に見ながら武蔵のほうを向いた。

 

おそらく武蔵内でも祭りの準備は行われているのだろう。

 

そんなことを考えていると、後ろから声がする。

 

「おー姉ちゃん! どうしたんだそんなところで」

「フフフ愚弟。それはこっちの台詞よ? ホライゾンは?」

「んー。今はネイトが服を見繕ってくれてるとこ。母ちゃんも一緒に」

「大丈夫なの? ミトツダイラはともかく、母さんの歳じゃあセンスも違うわよ」

「それ言ったら姉ちゃん後でお仕置きだぜ?」

 

と、トーリも武蔵を見る。

 

「姉ちゃんは誰かと行かねえの?」

「愚弟? この賢姉が誰と行くのよ」

「誰って、なあ」

 

トーリはやや困ったように頭を掻く。

喜美は武蔵をもう一度見ると、そのまま武蔵へと戻るルートを進む。

 

「姉ちゃんどこ行くんだー?」

「ええ。ちょっとね」

 

ふぅ、と一息つく喜美。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諦めつかない自分に、ちょっと嫌気が差してるだけよ」

 




どうもKyoです。

次回は完全デート回。
トーリ&ホライゾン。葉月&浅間。そして点蔵&傷有り。

さてどうなることやら……

ちなみに。文章中で浅間が呟いた言葉を完全に聞きたい方。次回までお待ちを。
あとがき辺りに書きますので。

最後に。コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

いやーしかしこれ書いていると浅間さん原作のヨゴレ具合何処に行ったんでしょうn(アイマシター
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