境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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2013年5月25日。改定


橋の上の待機者達

総長。これは軍事担当の総長連合の長である。

生徒会長。これは政治担当の生徒会の長である。

これら二つに就任することは、そう珍しいことでもない。現に、三征西班牙や英国といった諸外国にもこういった事例は存在する。

ただし、この二つの就任の場合『有能な人間』であることが選ばれる前提となる。

 

しかし。この武蔵という国は全くの逆。『最も能力の低い人間が前提』といったものだ。

これにより反抗の意思を削ぎ落とす。

自分達の居場所を自覚しろ、そういわんばかりに。

 

だが、最初は無能な傀儡のようなトップが選ばれていたが、それが次第に芸人気質のトップへと変わっていった。

聖連としては特に問題もなかったためこれを認可し続けていた。

そして、現在の武蔵のトップが葵・トーリ。聖連より与えられた字名(アーバンネーム)は〝不可能男(インポッシブル)〟という男だ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

〝品川〟での騒ぎを聞きつけた武蔵の住人が一斉に声のするほうを見る。

そこには、改造した教導院の制服を着込む少年。葵・トーリの姿があった。

 

「トーリ君……」

「馬鹿がやってきたなぁ――――この混沌としてる状況をさらに終焉に陥れるような馬鹿が……」

 

葉月が頭を抱えるように座り込むと、トーリは葉月を指差す。

 

「おいおい葉月!オメェそう俺のこと馬鹿馬鹿っていうけどな!馬鹿って言うほうが馬鹿なんだぜ!!」

「ならせめて一日一回以上全裸になるのを止めろ。そうしたら考えてやる」

「何だよ葉月!俺の全裸が見たかったのかよ!参ったな俺超人気じゃんか!!」

「どこをどう取ったらそう聞こえるのか甚だ疑問だが――――オイそこの同人屋ネタを拾って書くな俺にそんな趣味は無い!!」

 

トーリの発言を聞いてキラリと目を光らせたナルゼが表示枠越しに何かを書き始めた。

 

「つうか皆どうしたんだよ。やっぱ皆も並んだのかよ!」

「こら君。授業サボって何に並んだって?」

「マジかよ先生! マジで俺の収穫物に興味あるのかよ! 参ったぜ!」

 

そういうとトーリは片脇に抱えた包みから何かを取り出す。

それは、少女の絵が描かれており「R-元服 ぬるはち!」と大きく書かれていた。

葉月はそれを見て若干苦笑いをしていた。

 

「いやーこれ朝からスゲー人気でさ! 初回限定版だからもうSYU☆RA☆BAで危なかったぜ! でもこれで俺はまた一つ大きな山を越えたんだ! これって伝説じゃね? レジェンドじゃね?」

 

堂々と胸を張る。

その頭を葉月が杖で軽く小突く。

 

「授業サボってどうすんだよ。ゲームが欲しけりゃ通販があるだろうが」

「はあ!? バッカだなオメエ。自分の手で手に入れるのがいいんじゃねえか!」

 

これだから素人は、みたいな目でやれやれとジャスチャーをする。

と、それに便乗する二人がいた。

点蔵とウルキアガだ。

 

「左様。あの待ちに待った時が来たッ、と言わんばかりの瞬間。その目的のものをこの手にGetしたあの高揚感。アレは通販などでは味わえぬもので御座る」

「如何にも。アレこそまさに宝を手にした瞬間という奴だ。つまり拙僧たちはトレジャーハンターなのだ。この意味、分かるな?」

「全っ然分からねえし、分かりたくもないよ馬鹿」

「フッ。まだまだだな。嘆かわしいことだ」

 

とりあえず二人まとめて拳骨を入れて地面に沈めた。

そんなことはお構いなしとばかりにトーリは買ってきたパンの最後の一かけらを放り込む。

 

「あ、そうそう。皆にはもう前からいってあると思うけど―――俺、明日コクるわ」

 

突然そんなことを言った。

その言葉に、姉である喜美が反応した。

 

「フフフ愚弟。授業に遅れてコクりの予告なんて。エロゲの包み持ってる人間の台詞じゃないわね――――――コクる相手が画面の向こうにいるんじゃコンセントにチ○コ挿し込んで痺れ死ぬといいわ素敵!!」

「おいおい姉ちゃん。いい空気吸ってんなぁ」

「……で、トーリ。相手は誰?」

「おっ。神耶気になる?」

「うん。だって――――トーリが告白した後、その子泣いちゃうかもしれないから。主に変態に告白されたってトラウマから」

「あー。それはあるな。よしトーリ。その相手の名前を言え。カウンセラー誰か知らないか?」

「お、オメエらマジで容赦ねえな」

 

そういうと、一息入れてトーリは言う。

 

「ホライゾンだよ」

 

その瞬間、全員の空気が止まった。

先ほどまで、本気か冗談か分からない会話を繰り広げていた葉月と神耶も口をつむぐ。

再び喜美が苦笑交じりにトーリに言う。

 

「馬鹿ね。あの子はもう十年前に死んだじゃない。墓碑だって、父さん達が作ったじゃない。アンタの嫌いなあの〝後悔通り〟で」

「分かってるって。もうそのことから逃げねえよ」

 

ただ、とトーリは区切る。

 

「コクった後、皆に迷惑かけるかもしんねえ。俺、何も出来ねえしな」

「フフ、じゃあ愚弟。今日は最後の普通の日?それで準備の日?」

「安心しなよ姉ちゃん。俺、何も出来ねえけど高望みだけは忘れねえから」

「…………とりあえずトーリ」

「おっ、何だよ神耶。お前も興味あんのエロゲ? それとも応援してくれんの?」

 

そういって笑顔で神耶に近づくトーリ。

……神耶がひっそりと拳を握っていることに気づかず。

案の定、トーリは無言で神耶に吹っ飛ばされた。

そのままトーリは吹っ飛び、ヤクザの事務所に大穴を開けながらさらに後ろの倉庫へとめり込んでいった。

 

「――――神耶駄目よー。私がぶっ飛ばそうとしたんだから」

「アンタも同類かよ!!」

 

神耶を諌めるかと思いきや自分がやりたいとのたまったオリオトライ。

周りにいたってはもう見慣れた光景なのかやれやれといった具合に解散を始めていた。

葉月はため息をつきながら、とりあえずトーリの回収でもしようかと考えたそのとき、

 

「あ、ヤベッ……」

 

葉月が急に膝をつき、その場に座り込んでしまった。

 

「荷重符の限界時間?」

「Jud.先生ー。ちょいと休んでから行きますー」

「Jud.じゃあ皆。教室帰ったら座学ね」

「Jud.!」

 

そういって葉月――それとトーリを残して、梅組は来た道を戻る。

葉月が仰向けに寝転がると、一人の少女が葉月に近づく。

浅間だ。

 

「あの、葉月君大丈夫ですか?」

「あー、へーき。いつものことさ」

 

そういって葉月はひらひらと手を振る。

荷重符。使用者に一定の付加をかけ、それによる肉体の強化を目的とした鍛錬のための符。

ただし、葉月のは少し特殊で、疲労を常人より遥かに多く受けてしまう。

この間なんかは普通に道を歩いていただけで時間が来て息切れを起こし、たまたま傍を通りかかった堕天墜天に自身が経営する喫茶店の無料券と引き換えに送ってもらったほどだ。

故に葉月はいつも必要最小限の動きを心がけながら生活している。幸い、疲労が来る限界時間についてはこちらで設定が出来るため、そこだけが唯一の救いだ。そのおかげで、喫茶店の開店中は問題なかった。

そんな葉月を、浅間は心配するように声を掛ける。

 

「辛かったら言ってください。疲労軽減の禊も出来ますから」

「Jud.でもいいさ。それに禊なんてやったら聖連に何言われるか……」

 

そうして大の字になる葉月。

ちょうど、神耶に吹っ飛ばされたトーリが戻ってきた。

 

「イテテ……神耶ってマジで人間辞めてるんじゃねえの?そこんとこどうよ浅間に葉月」

「いやあの。神耶君は単に先生と同じリアルアマゾネスなだけで人間辞めてるわけではないと思いますが」

「浅間。それ結局同じ意味だから。あとトーリ。よくあの状況でエロゲを守れたな」

「エロゲの前なら俺は無敵化するんだぜ? 知らなかったのかよ葉月!」

「その行動力を、何でもっとほかの事に生かせないんだよ……」

 

なんか疲労さらに増えた気がする、と葉月は心の中でぼやく。

 

「んじゃ俺先に行ってるから。ああもう早く家に帰ってやりたいぜー! あ、アンケートも書かねえと! うおぉぉ、俺の益荒男ゲージが溜まるぜ!」

 

そういって、トーリも教導院の方に向かう。

残されたのは、浅間と葉月。

 

「……お前も帰れば?」

「え、いや、その」

「大丈夫。後から追いつくって」

「…………ちゃんと来て下さいね?」

 

そういって、浅間もトーリの後を追う。

残された葉月は空を見つめる。

ゆっくりと雲が流れ、鳥の囀りも聞こえてきそうだった。

 

「…………空、青いなぁ」

 

呟きながら、先ほどのトーリの発言を思い出す。

 

「ホライゾン、か」

 

葉月の脳裏に思い出されるのは、黒髪の少女。

いつもどこか一線を引きつつも、トーリとだけは素で接していた少女。

 

「もう、十年か」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

その後、葉月がようやく荷重符の疲労が取れ教導院に戻ると、向こうから二人、やってきた。

一人は、黒髪を後ろで一つに縛っている少年。

もう一人は、杖を持ち王冠を被っている西洋系の男性。

帝の子息、東とこの武蔵を統べる武蔵王にして武蔵アリアダスト教導院の教頭をしているヨシナオだった。

 

「むっ。葉月君、遅刻かね?」

「あー。まあそんなもんです。体育の授業中に荷重符が来まして」

「ああ、なるほど」

「やあ白百合君。久しぶり」

「おう。ようやく全員揃ったな」

 

葉月が微笑んだその瞬間、梅組から歓声のような大声が聞こえた。

 

「な、何であるか一体!」

 

ガラッ、と扉を開けるヨシナオ。

するとそこには、全裸のトーリが教卓の上に立っていた。

それに気づいたオリオトライはすぐさま扉を閉め、中では何かを破砕する音が聞こえてくる。

心なしか、隣のクラスの担任、三要・光紀の悲鳴もセットで聞こえてきた。

東は乾いた笑いを浮かべる。

 

「ごめん。なんか疲れてるのか、全裸の葵君が見えたんだけど」

「大丈夫だ。お前の目は正常だ――――――そしてこのクラスも正常だ。他のクラスにしたら異常なんだろうが」

 

と、扉が開き、中から冷や汗を浮かべつつ愛想笑い張り付けたオリオトライが出てきた。

 

「ああどうも教頭! あ、東はあとで部屋割りするから教員室ね!」

 

そういいながら、オリオトライは隣のクラスに入っていく。

隣のクラスの担任で、オリオトライの後輩である三要は未だに悲鳴を上げていて、それをオリオトライが宥めている声が聞こえてきた。ついでに再び破砕音と、トーリのような何かの悲鳴も。

 

「……ヨシナオ教頭」

「……なんであるか」

「こんなクラスでスイマセン」

「いやいいのだ。君はよくやっていると私は思っている。頑張りたまえ」

 

そういって、ヨシナオはそそくさとその場を離れる。

目頭を押さえながら、葉月はその場に膝を着く。

 

「東。頼むからお前はああなるなよ。神耶が泣く」

「あ、うん。よく分からないけど分かったよ」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

『準バハムート級航空艦〝武蔵〟が、三河に着港しました』

 

そんな艦内アナウンスが流れる。

極東にて唯一自治が許されている土地。それが三河だ。

松平・元信が治め、武蔵では許されていない武装を持った三河警備隊が存在する都市。

 

だが基本的に、武蔵の住民が三河に下りることは出来ない。

物資の輸送などの一部例外を除いてだが。

トーリたちも三河には降りず、むしろ明日のトーリの告白の方が気になるようで、教導院前の橋で対策会議が設けられていた。

 

「はい。じゃあ本日の議題は『葵君の告白を成功させるゾ』会議です。では葵君。どうぞ」

「なあ点蔵。告白ってどうやるの? お前回数だけはこなしてんだろ? 回数だけは」

「いきなり自分の半生を全否定で御座るか!?」

 

まあまあと、トーリにどうすればいいか聞かれる。

トーリの言葉にまだ納得できない部分はあるといった顔だが、点蔵は懐から筆記具を取り出し、トーリに手渡す。

 

「トーリ殿は告白初心者故。ここは無難に手紙作戦などいかがで御座ろう」

「ほえ? 手帳と、ペン?」

「Jud.前もってコクりたい内容を紙に書くので御座る。それを渡せば相手も即答しなくてすむといった気遣いが充分に――――」

「オメエそれやって失敗してんだろ? 大丈夫かよそんなんで」

「聞いておいてそれで御座るか!?」

 

愕然とする点蔵。この中では一番告白の回数は多いが、ここぞというときに失敗するため経験も豊富だ。

すると、喜美が会話に加わってきた。

 

「まあエロゲ犬忍者にしては方法はいいわね――――方法だ・け・わ」

「おいおい姉ちゃん! 点蔵のこと悪く言うなよ! 確かに犬臭くて語尾に「ゴザル」つけてキャラ付け狙っても結局地味なのか派手なのかよく分からねえキャラになっちまった中途半端キャラだけどよ!」

「本当にこの姉弟最悪で御座るよ!!」

「今に始まったことじゃないだろ。諦めろ点蔵」

 

落ち込む点蔵に対しやや哀れみのこもった声をかける葉月

そんな点蔵を無視してペンを持ってトーリは考え込む。

 

「んー。でもさ。好きとか嫌いってうまく言葉に出来る自信ねえなぁ」

 

そういって手帳に書き込んでいく。

 

『顔がすごく好みで上手く言葉に出来ない』

『インナーがパンツみたいに見えて上手く言葉に出来ない』

『腰のラインがすごく好みで上手く言葉に出来ない』

 

ここで、一度ペンを休める。

 

「んー。やっぱり難しいな」

「随分すらすらと書いてるで御座るよ! しかも即物的!!」

「待て待て待て」

 

そう待ったをかけたのは、白く大きな体躯の航空系半竜。ウルキアガだ。

 

「トーリの好意には不可解な点がある。――――――貴様。オッパイ県民の癖に相手の胸への言及がないのはなぜだ?」

 

その言葉に、一同改めて気づく。

 

「いつも連呼しているトーリ君が……」

「実は好きな相手にはヘタレ?」

 

そう囁く声が聞こえる中、トーリはカッと眼を見開き再び書き始めた。

 

「オッパイは 揉んでみないと 分からない…………季語どうしよ」

「ハァ……」

 

結局、馬鹿は馬鹿のままということだ。

ふと、トーリは後ろを振り向いて葉月に言う。

 

「そうだ。葉月も試しに書いてみてくれよ。それ参考にするから」

「待てオイ。何故俺を巻き込む」

「バッカオメェ。巻き込んでねえよ!ただオメェの好みがどんなんか気になるだけだよ」

「それを巻き込んでるっていうんだ」

 

葉月がそう返すと、今度は喜美が乗ってきた。

 

「フフフ。葉月。アンタ色々愚弟に言うけど、まさか自分の好みも書けないの?愚弟以上の愚かさよ!」

「うっせえ喜美。こんなん書いて誰が得するんだよ」

 

鼻で笑う葉月だが、その後ろで小さく手が上がった。

浅間だ。その顔には「私、興味あります!」といったことがありありと書かれていた。

だが葉月からは当然見えず、隣にいたナイトとナルゼが葉月に書くよう促す。

 

「まあとりあえず書いてみなよハヅっち。ちょっと興味あるから」

「書かないと、アンタが実は男色趣味っていうことで今後の同人誌は書くわ」

「ははは。んなことしてみろ……神耶向かわせるぞ」

 

その瞬間、ゾクッという謎の寒気に襲われたナルゼ。

だが周りを見渡しても妙な気配を出しているものはおらず、ましてや言葉に出てきた神耶も今はオリオトライと一緒に食堂にいるはずだった。

 

「ったく。まあ同性愛趣味と思われんのもイヤだし。えーと――――」

 

そういって、ペンを片手に書き始めた。

 

『家庭的な女性』

『常に周りを見渡して気配りできる女性』

『髪の長い女性』

 

「……こんなところか」

「バッカオメエ何真面目に書いてんだよ! ここは『巨乳! 巨乳がいい!!』とか書くべきだろ!!」

「誰もがテメェみてーな頭してねえんだよ。あと俺に書けって言っておいてその言い草はなんだよ」

「クククこの女子力男。そこらの女より料理上手いくせに自分より料理上手い女捜してどうすんのよ」

「だーからただの一例だって。実際好きになった人からの料理とか食ってみたいだろう」

「おおっと! 珍しくハヅっち素直だね! もう一回言って! 録音して売るから」

「本当にブレないよなあハイディも。あと言わねえよ? そして俺はいつも素直だろうが」

 

口惜しそうに渋々座りなおすハイディ。

と、ナイトが手を上げる。

 

「ナイちゃん思うに。アサマチとかどう? 家事全般上手だと思うし」

「そうね。髪も長いし――――二番目が当てはまってるかどうかは甚だ疑問だけど」

「な、なんでですか!? 自分で言うのもなんですけど、私他の人より精神年齢は高いほうですよ!」

「クククさり気無く自分をアピールしたわね。いいわよ浅間。ナイス根性!」

「ちち、違いますよ! そ、そういう意味で言ったんじゃなくてですね――――」

 

弁解しながら浅間はちら、と葉月を見る。

葉月はしばらく手帳を見つめ、やがて持っていた手帳とペンをトーリに渡す。

 

「まああくまで一例だ。手紙で渡すにしろ直接言うにしろ。お前の偽らざる気持ちが大切だろ」

「真面目だなあ。ボケが入らねえよ」

「お前はいつも馬鹿やってるだろ。だったら一生一度くらい、死ぬ気でマジになってコクってみろよ。案外上手くいくかもだぜ」

「うんうん。さり気無く会話から外そうとしているけど、アサマチはどうなのかなハヅっち?」

「いや。別に話を逸らしているわけじゃないんだがな。それで。えーと何。浅間はどうなのかって?」

「そうそう。そこんところ実に聞きたいから。あと音声を売りたいから」

「本音を隠せ商人――――どうも何も。幼馴染だろ」

 

しれっと答える葉月。

周りはあー、といったなにやら呆れたような雰囲気。すぐ後に浅間に生暖かい視線を送る。

 

「……たまにわざとやってるんじゃないかって思うわよね」

「アレが俗に言うDON☆KANという奴なので御座ろうな」

「だ、大丈夫ですよ! 浅間さんならいい人すぐに見つかりますって!」

「すぐ矢を射る性癖あるけど?」

「…………ファイトです!」

「というか性癖ってなんですか!? 私そんな特殊なもの持ってませんよ! 私は矢を撃つことが好きなんじゃなくて。的に当てるのが好きなんです!」

「お前考えて喋れよ!!」

 

あれどこで間違えましたかね?

すると、後ろから声がする。

 

「こんなところで何をやってますの?」

 

ネイトだった。

呆れ顔で一同を見る。その後ろには学長の酒井の姿も見える。

 

「あらミトツダイラ。酒井学長と三河に降りるの?」

「いえ。ただ降りる際の書類手続き等で一緒になっただけですわ」

「学長先生三河に行くのかよ。よく許可降りたなー」

「ははっ。まあ昔の仲間からお呼びがかかってね。それより聞いたぞ。お前さんコクるんだってな。誰だい? そんな危険な行為に及ぶ相手ってのは」

「あり? 聞いてないの? ――――――ホライゾンだよ」

 

そういうと、酒井は空を仰ぐ。

 

「あの子かぁ……あれ。やっぱお前さんもそう思う?」

「学長先生だってそうだろ?」

「そりゃぁ……でも他人の空似ってことも」

「分かってるって。ただ、あの子がホライゾンでなくてもさ。何でも出来ねえ俺だけど、一緒にいてくれねえかなぁ、って」

「いつ思った?」

「今朝だよ」

 

そういうトーリはしっかりと前を見つめる。

否、正確にはある方面、〝後悔通り〟だ。

 

「明日で十年なんだ。ホライゾンがいなくなってから。そしたら自然とそう思えてさ」

「そうか。じゃあ、頑張りな」

 

その後、正純と合流する酒井に対しトーリは今日午後八時に教導院で騒ぐが来れるかどうか聞いて欲しいということ、シロジロが三河の流通を見てきて欲しいということを頼んだ。

 

「Jud.Jud.んじゃ。行ってくる――――っとそうだ。葉月」

「……? 何です?」

「俺の昔の仲間からの伝言があるんだ」

「伝言?」

 

葉月は首をかしげる。

酒井・忠次の仲間。そう考えてパッと出るのは、松平四天王と呼ばれる者たち。

それぞれ、本田・忠勝。酒井・忠次。井伊・直政。榊原・康政の四人。当然、葉月は面識などあるはずもなく、あったとしても相当昔のことなので覚えてもいない。

そんな人物から自分に伝言とは。

 

「なんて伝言です?」

「ただ一言。『迎えてやれ』だってさ」

 

そう意味ありげに笑う酒井。葉月はそれを聞いて一瞬言葉の意味を探り、やがて気づいたように頷く。

 

「Jud.美味い飯たくさん作って待ってます。って返しておいてください」

「Jud.お前さんの料理は美味いからねえ」

 

そういって、酒井は立ち去っていった。

葉月の顔には、嬉しそうな、けれどどこか複雑そうな表情を浮かべていた。

周りは集まって話し合う。

 

「……アレ。絶対に女よ女。間違いないわ」

「姉ちゃん姉ちゃん。その自信がどっから来るのか毎回分からねえけど、今回は俺も同意するぜ」

「一体何人の女性を落とせば気が済むので御座るか……ッ」

「泣くな点蔵。アレはああいうものなのだ。どうせそのうち女に多数に囲まれ背後から刺されるのがオチだ。その時、拙僧はこう言おう――――nice Musashi、と」

「智。強く、生きるんですのよ」

「な、何がですか? べ、別に私は気にしてな、なんかいませんよ」

 

一同を見ながら浅間は言うが、その顔には不安が隠れずにいた。

とりあえず。一同は葉月に向き直る。

 

「この節操無しめ」

「いやその理屈はおかしい。大体。これ。トーリの告白のための会議だろうに。俺のことを話題にするならトーリの事を考えてやれ」

「白百合君。やる前から100%結果が見えてることをあーだこーだ話し合うのって時間と酸素の無駄だと思わないかい?」

「こ、コイツ俺が失敗する前提で話してやがるな! よーし。俺が全力出したらすげえってところ見せてやるぜ!」

 

自信満々にトーリは宣言する。

そこで、ネイトに頼んだ辺りから葉月は「あ、これ終わったな」そう確信した。

その十数秒後。ネイトの胸を揉んでトーリが吹っ飛ばされた。

 

「うん。やっぱお前は底抜けの馬鹿だよトーリ」

「れ、冷静に言うけどな一つ俺から言わせて貰うぞ!…………抜けなくなっちったテヘッ!」

「なあ。コイツ殺していいよな?いいよな!?」

「おいおいおい結論早ぇだろ!あ、ちょっ浅間お前何葉月に言われるがまま弓構えんだよ!え?穢れを祓うために?いやいや俺が穢れだって証拠がどこにあるんだよ!言っとくけどな…………他の皆の方がヨゴレてんだぞ!!」

「お前にだけは言われたくねえよ!!」

 

教導院に埋まったトーリがズドンされ、さらに奥深くに埋まったのは言うまでもない。

 




どうもKyoです。
もうKyoで行きます。

ちなみに私は男性キャラならノリキ、女性キャラなら浅間がダントツで好きですね。
次点では、男性キャラはペルソナ君。女性キャラは誾さんですね。

最後に。これを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

それでは。
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