快晴の空に、花火が打ちあがる。
祭の準備を終え、武蔵からは正純、英国からはダッドリーによる宣言で、英国・武蔵の合同による春季学園祭が幕を開けた。
一斉にあたりは活気に満ち溢れ、術式風船が空を飛び交う。
そんな中、英国の学園祭入場門には四人の人影。
二人は、葵・トーリとホライゾン・アリアダスト。
もう二人は、本多・正純と白百合・葉月。
「いいか。夜には英国との会議だ。遅れるな」
「分かってるって」
「ま、楽しんでこいよ」
「葉月様は一緒に来ないのですか?」
「んー。まあ、な。お前らはお前らで、気楽に話しながらデート楽しんでこいよ」
「なんだよー。葉月と浅間は来ないのかよー」
「トーリ様」
ホライゾンは、トーリに耳打ちする。
「浅間様はこういったことだと自爆する恐れがあります。ここは一つ、葉月様と二人きりにしてねっちょりぬっとりさせるのが良いかと」
「おおっ、流石だなホライゾン! その最後の擬音がどうかと思うけどナイスだぜ!!」
「おーいおーい。聞こえてるぞー」
不穏以前に、精神衛生上よくない擬音が口に出されてしまった。
しかもトーリからではなくホライゾンから。
「それじゃ。行こうかホライゾン」
「Jud.」
そういって、二人は祭の中へ。
しかし、歩いて数歩もしないうちにトーリがホライゾンの尻へと手を伸ばし、しかしそれより先にホライゾンがトーリにストレートを決めた。
「……大丈夫なのか? アレで」
「Jud.まあ安心しろとはいわねえけど。あの二人はアレで通常だから」
「そうか。まあ私より付き合い長い白百合が言うならいいが。それより、お前はいいのか?」
「何が?」
「浅間と。待ち合わせてるんだろ?」
そういう正純はやや笑う。
……こういう話をすることに抵抗がないことは、私も梅組に毒されてきてるなー。
正純は内心思い、しかしそれを顔には出さなかった。
「しかし。よく思い切ったな。浅間から誘うかと思ったが」
「こういうのは男が言わないとダメだろ。それにさ――――あの後、喜美からこういわれたよ」
「なんて?」
「『誘ってなかったら目玉抉ってる』って」
「……色恋沙汰には厳しいからなぁ、葵姉は」
厳しいを通り越してるんだと思うがなー。
葉月は思うが、言うとさらに喜美が何かしてきそうなので、その場は反論せずにいた。
「さて。私も少し見て回るか」
「古本市か? 確かウェストミンスター寺院のほうだったか?」
「Jud.英国の本も興味あるからな」
「飯代も本代につぎ込むなよ」
「――――善処しよう」
「それはやる気のない政治家がよく使う言葉だからな?」
「いいか。私は悪くない。面白そうな本があるのが悪い」
「何だそのすり替え」
そういうと、正純は葉月と分かれた。
「さて、と」
葉月はその場で、浅間が来るのを待っていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あのー。変じゃないでしょうか? これ曲がってませんよね?」
「それ何度目の質問? 大丈夫よ」
浅間は、かつてないほどに緊張していた。
何故なら、自分の想い人である葉月とのデート当日だからだ。
今日のために新品同様に卸し、禊を済ませた服を逐一確認しては、喜美たちに聞いている。
その浅間の周りには、ナイト、ナルゼ、ネイト、喜美といつものメンバーが揃っていた。
「じゃあ私らはアンタたちの後ろからついていくから」
「な、何でついてくるんですか?」
「そりゃあ。同人誌の材料――――もとい。浅間の自爆っぷりを記録するため」
「言い直した意味ないですよねそうですよね!?」
「あ、葉月」
瞬間、浅間は喜美の後ろに隠れる。
が、当然葉月はそこにはいなく、代わりに喜美がくっくっ、と笑う。
「なぁに浅間。胸が大きいことがそんなに嫌なの? こぉんなに押し付けてるのに! もう大胆! そのまま葉月を篭絡すればいいわ素敵!!」
「なぁに言ってるんですかー!!」
吠えるように浅間は言うが、喜美は全く気にしていなかった。
と、ネイトがあ、と声を出す。
「葉月ですわ」
「ミト? 流石に二度ネタは通じませんよ?」
「いえ本当に」
「え?」
振り向くと、何時の間にやらゲートがそこにあった。
そして、ゲートの前では葉月が待っていた。
その服装は、いつもの制服とは違い、燕尾服を崩したようなものだった。
腰にある銀色の細い鎖は、おそらく懐中時計だろう。
葉月は、浅間の姿を確認すると大急ぎでこちらへやってくる。
「よっ」
「ど、どうも!」
あまりのことに声が裏返る。
……くぁー! い、いきなり点蔵君レベルのことやらかしましたよ!!
どどどどどうしましょう、と浅間が一人テンパる。
・賢姉様:『やらかしたわね』
・● 画:『もう一片の後悔もないでしょ』
・銀 狼:『ふ、二人とも結論早すぎますわよ! まだこれからというときに!』
・金マル:『でもミトっつぁん。この状況どうすんの?』
なにやら後ろが五月蝿いですね。
浅間が次の言葉を考えてると、葉月が手を差し出す。
「えっ……?」
「あー。まあ、なんだ。俺、英国は色々と知ってるつもりだし。案内するよ」
「あ、はい」
き、気を使わせちゃいましたかね!? と内心マジビクビクな浅間。
見ると、葉月は手を差し出したままだ。
「拙いエスコートにならぬよう、精一杯見栄を張らせていただきます」
「え、あ、いやそんなその……」
笑顔でそう言ってのける葉月。
対する浅間は、今までそんなことをいわれたことがないため、どうすればいいかわからないでいた。
「ご一緒しましょうか。今日が良き日になるように」
「は、はい!」
浅間はここでようやく、葉月の手を握る。
葉月も握り返す。
「……あれ。完全にこっちのこと忘れてるよね?」
「クククアツいわ! アツアツすぎて賢姉のメイクが落ちそうよ! でもダメ! メイク落ちると山姥みたいな顔になるのよ!!」
「っていうか。葉月は一体何処であんな台詞覚えたのよ」
「英国紳士として、ではないのですか?」
やかましい。
葉月は後ろの喜美たちに言う。
「じゃあとりあえず俺らは別ルートで英国回るから」
「Jud.何かあったら浅間のほうに連絡入れるわね――――まあでもその頃には浅間のテンションがはち切れてトンでもないことになってるわね素敵!」
「トンでもないことってなんだよ」
「わあああ! い、いいから行きましょう葉月君! この狂人と一緒に居たら正気度が下がりますから!」
「お、おう」
そういって、葉月の手を引っ張る浅間。
それを、微妙な目で見つめ温かい笑顔で見送る四人。
と、何かに気づいたかのようにナルゼが声を上げる。
「あっ! あの二人が離れちゃ同人誌のネタが確保できないじゃない!!」
「ガッちゃんブレないねえ」
「ククク安心しなさい同人屋。すでに手は打ってあるわ」
「……どういうことですの?」
ネイトが聞くと、喜美は左腕を前に出す。
すると、喜美の背から突然小さな狐が出てきた。
狐が空中を突くような仕草をすると、表示枠が現れた。
「神耶! 分かってるわね?」
『Jud.Jud.二人のデートをつければいいんでしょ?』
「喜美。貴女まさか神耶の狐に頼む気でしたの?」
「ナイス喜美。これでリアルタイムで資料が取れる!」
『でもさー。多分、葉月に気づかれるよ? 僕の飯綱たち。独特の気配持ってるから。気配消しても、多分残滓で気づかれる』
「浅間もいるしね」
「空からならバレないんじゃない?」
『んー。それならいけるかな?』
「それじゃあそれに決まりね。後で毛繕いやってあげるわ!」
『地味に気持ちいいから嬉しいんだよね。喜美のは』
そういうと、表示枠が消えて、狐は空へと飛び上がる。
「さっ。私たちはパレードで凱旋と行きましょう。英国の男共の格を見定めてあげるわ!」
「何故そう上から目線なのです……」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一方、葉月と浅間はトーリや喜美たちとは違うルートで英国を回っていた。
第二階層ともなると、それなりに雰囲気のある建物も出てくる。
特に、今は祭の期間。屋台も多く出ていて、普段より活気にあふれている。
「浅間。何か食べるか?」
「え、あ、い、いいえ! 大丈夫ですよ!」
「何そんな緊張してんだよ。いつも通りでいいだろ?」
「あぇいやはっ! ま、まあそうですよね!! えーと――――」
しかし、いくら活気にあふれていて、普段より心がオープンになる祭とはいえ――――
(うわーうわー! は、葉月君と手を繋いじゃってますよ! い、何時の間に!?)
引っ込み思案もいいところな浅間が葉月と手を繋いでいる状態で何が出来ると。
ついでに言うなら、葉月が浅間の歩きペースに合わせて隣に立っていることも相まって、乙女思考回路がショート寸前だった。
(えぇと、ゲートのところで待ち合わせてからソッコで喜美たちと別れたところまでは覚えてるんですが――――ってその時点もう手を繋いでますよ! どうしたんですか!? 私どうしたんですか!? め、迷惑じゃないですよね?)
ちらっ、と浅間は葉月を見る。
その顔は楽しそうに笑っている。
と、浅間の視線に気づいたのか葉月が浅間を見る。
「どうした?」
「い、いえ! 何でもありません!!」
「そ、そうか? っと」
どうやら中心部に近くなってきたようだ。人が段々と多くなってきて、手を離したらはぐれてしまいそうだった。
すると葉月は、浅間と繋いでいる手を更に絡め、尚且つ、自分のほうへと寄せた。
二人の距離はもう0になっていた。
時折、浅間の豊満な母性の象徴が葉月の身体に当たるが、葉月はどうやら人ごみを避けるので気づいていないらしい。
「すまん。もうちょいでいい店があるんだ。まあK.P.A.Italia寄りのパスタなんだが。平気だよな?」
「ひゃ、ひゃい……」
「なら良かった――――ひょっとして今のこの体勢嫌か? だったら言ってくれよ。少し危ないけど。空飛んで行こう」
「い、いいいいえ! そんなことはありませんよ! む、むしろ役得――――」
「は?」
「な、なんでもないですよー! あ、あの、出来ればこのままで」
「――フフッ。了解」
葉月は笑うと、優しく浅間をエスコートしている。
(ああ、なんかもう。夢見てるみたいです……ってこれは現実! でも絶対に何かありあそうですよね! なにかこう――――そう外道的な展開が待っていそうな気がします! だから今のうちに葉月君の胸板を、じゃなくて!! 葉月君とのデートを楽しみましょう!! な、何もやましいことないですよー? 本当ですよー?)
「ああ、そうだ」
「は、はい! なんですか!?」
「いや。その服、似合ってるって言おうとして。可愛い」
「――――――は、葉月君も。その服。カッコいいです」
「ぇ……あ、うん。ありがとう……」
「い、いえ。こちらこそ……」
……なんだか微妙な空気になっちゃいましたよ!? こ、コレどうしたほうがいいんですか!! 教えて神様!!
と、浅間の横に表示枠が小さく出てきた。
『当たって砕ける:by神』
……ぬああああ神道ガッデム!! っていうか砕けることは確定なんですか!?
再び葉月を覗き見る浅間。
葉月は、先ほどよりも顔を紅潮させ、少し照れくさそうにしていた。
(は、葉月君が照れてる!? 写真、写真に、って今出したらダメですってば! ぬおおあああ! なんというジレンマ!)
その後、葉月が店に案内されるまで、悶々としていた浅間だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一方神耶は、その様子を表示枠越しに見ていた。
わざわざ大画面スクリーンにまでして。
(良かった。浅間と葉月。上手くやれてるみたい)
二人の幼馴染でもある神耶は、是非ともこのデートを成功させて欲しかった。
ふと、視線を武蔵に移す。
「これより。異端審問会を開く。被告人。白百合・葉月。罪状。おにゃのことイチャイチャしている。判決。とにかく死刑!」
「死刑!」
「死刑!」
「死刑!」
「よろしい。満場一致で死刑決定!!」
「うおおおおおおおおおおおおっ!!」
いやまず被告人いないし。弁護士いないの? と神耶は思わず思った。
(これは帰ってきたときが大変そうだ)
まるで他人事のように表示枠を見つめる神耶だった。
どうもKyoです。
HAHAHA! 点蔵モゲろ回は次回以降に回すのさ!
とりあえず葉月は爆ぜろ。爆ぜて消えろ。
そして浅間さんのヒロイン力が。ヒロイン力ががががが(ry
FFF団は何処にでも現れます。現在同士募集中。
最後に。コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。