英国第二階層。『近親同好会』会場。
近親、とはついているが、正式には『近き親善のための同人誌好事会』である。
時折、R-元服作品があるかと思って寄る者もいるらしい。
そんな中、自費出版スペースにて、ネシンバラは思う。
……今頃皆どうしてるかなー。
おそらく今もどこかで他人に迷惑掛けながら外道ヒャッハー今後ともよろしく! みたいにやってることは確実だろう。
問題は、それが自分にまで被害が及ぶかどうかだ。
ネシンバラは、右手を見る。
そこには、細い光の糸のようなものが幾重にも絡まっている。
トマス・シェイクスピアの『マクベス』
その内容は、王位の簒奪。
ネシンバラに関して言えば、それは自分達の王、つまり葵・トーリの殺害に他ならない。
現に、普通に授業を受けている時でさえそのような行動を起こしているのだから。
コークスペンを削るナイフを投擲しようとして二代に止められていなければ自分の起こした行動に気づかなかっただろう。
あれ以来、トーリの身体には神耶による手製の結界、そして葉月による守護の魔法を込めた
正直、作家というか、そういうものに憧れを抱く者としてはそういう術や道具に守ってみてもらいたいものだが、今は状況が状況だ。それは後でということにしておこう。
とにもかくにも、現在のネシンバラは手持ち無沙汰で、こうして英国のイベントに出るしかなくなっていた。
周りを見ると、あちこちで様々な催しをやっていた。
「はーい。こちら火刑体験コーナーでーす。あ、安心してください。火傷とかはしませんよちょっと熱いだけですから本当――――逃げてんじゃねえぞオラ! ケツに火ぃぶち込むぞ!!」
気が狂いそうになるのでそちらを見るのを止めた。
他の場所を見ていると、やはり人気のあるところは人が並ぶようだ。
先ほども、異族なのか人間大のシーツと枕カバーが人間離れしたスピードでスペースを渡り歩いていた。
と、顔見知りが手を振ってきたので振り替えす。
自分のところには今のところ客が来ない。
本でも読んでようかと、持ってきた本を広げようとした。
が、それは叶わなかった。
何故か。それは目の前に元凶が立っていたからだ。
眼鏡をかけ、白いよれよれの白衣を着ている彼女。
「トマス・シェイクスピア……ッ」
いきなりの来訪にネシンバラは驚く。
周りに者の中にも、シェイクスピアに気づいたものは視線を向ける。
シェイクスピアは、それらの視線をものともしない。
「そこ、空いてる?」
「えっ?」
「空いてるね」
そういうと、ネシンバラが答えるより先に空いている椅子に座った。
……じゃあ聞くなよ!!
ネシンバラは内心思ったが、ここは英国で彼女のファンが居るということを思い出し、ぐっと堪えた。
売れていない同人作家のスペースに有名作家が居座る。
なんというか、これは――――
(気まずい……)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さて。
浅間と葉月を見送った喜美たちだが、神耶が飯綱を使って
しかし、かといってそればかりに注目するというわけでもない。
ここは祭の場で、自分達は極東所属。
ならばここは魅せる場だと、喜美は言う。
事実、先ほど喜美の前に一人の少年が現れて腕を無言で突き出してきた。
それに喜美は一瞬驚くも、すぐに余裕の笑みに変わり、答える代わりに自分の髪につけていた飾り布を少年の腕に巻いた。
「何かの儀式ですの?」
少年を見送った喜美に、ネイトは訊ねる。
「簡単よ。紳士を気取る子を後押ししただけ」
「はぁ……」
『まあ詰まる所。『先は長いからもうちょっと色々頑張ってから出直してきてね』って事だと思うよ』
「フフ、神耶。よく分かってるじゃない」
『そりゃ長いこと幼馴染やってないからねー』
苦労多そうですわねー。他人事ではないが。
と、空が急に暗くなった。
見上げると、そこには見慣れた赤の艦が空を横断していた。
「三征西班牙の艦!?」
「アルカラ・デ・エナレス。その所属艦ね。多分、外交のための大使派遣ってところかしら」
ナルゼがそういうと、赤の艦が通り過ぎていく。
「確か英国と三征西班牙って……」
『Jud.歴史再現。アルマダ海戦があるね』
「今の時期に来るって事は――――」
「この祭の終わりか、祭の最中にその海戦を行うって事ね」
祭の最中に戦争の決め事。なんともミスマッチというか相反することである。
出来たらそういうことは見えないところでやってほしいというのが本音であるが、歴史再現であるためあまりそういうことを表立って言うことが出来ない。
と、表示枠の中で神耶が言う。
『おっ。葉月が浅間を店に連れこんだ』
「えっ――――って、ただお昼食べに入っただけじゃないのよつまらない」
『何期待してるのさナルゼは』
「うわーアサマチ。ガッチガチに緊張してるよ」
「クククあの煩悩巫女。今頃頭の中で何考えてるのかしらねえ」
「智……」
神耶の一言で一気に戦争から身近な人物達への恋愛話に転換した。
このクラスの人間。良くも悪くも外道である。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ネシンバラは変わらず気まずい雰囲気の中に居た。
何故彼女がここに、というか目的は何だ。様々な質問が頭を中を縦横無尽に飛び交うが、答えは出なかった。
仕方ない。そう割り切って、聞いてみることにした。
「――――ねえ」
「こっちを向かないでくれる?」
シェイクスピアは切り捨てるように言う。
あ、ダメだコレこっちの話聞く気ねえや。
ネシンバラは内心ため息混じりに視線を元に戻す。
すると、シェイクスピアは読んでいた本から顔を上げる。
「そう。それでいい。どうせ君は、僕の『マクベス』で何も出来ない」
すると、彼女の髪の間から文字列が流れ出た。
それらは地面へと垂れていき、やがて、二人の周りから客が居なくなった。
「ッ、何をした!?」
「舞台を用意したんだよ。今回の僕の役目は、それの一点に尽きるからね」
「……客に、呪いをかけたのか?」
「違うよ。失敬な。言っただろ。僕の役目はこれ。舞台の設定さ――――喜劇『空騒ぎ』」
文字列はドンドン流れ出て、あたりの空間が異質なものへと変貌していく。
それはまるで、舞台の上で開幕の時が上がるのを待っている状態のようだった。
「この祭自体が罠だったってことかい」
「罠じゃないさ。交流だよ――――相対という名の、ね」
相対。その言葉を聞いて、ネシンバラは理解した。
「僕達の役職者と相対して、葵君への相対権限を得るつもりか!!」
通常。相対というものは挑まれれば受けなければならない。
が、自分の役職と同等か、それ以下、または近しい役職者でなければ相対の権限は得られない。
また、その役職者に勝った場合、より上の役職者への相対権限を得ることが出来る。
トーリのそれは、総長と生徒会長。つまり最高位だ。
トーリへの相対をするならば、副会長の正純。もしくは副長の二代と相対し、勝利する必要がある。
シェイクスピアは、ネシンバラが立ち上がったことに毛ほどの関心も寄せず、淡々と話す。
「ああ。言っておくけど。ソッチの総長に知らせようとしたら、迷いなく演劇空間に取り込むから」
「くっ……!」
「まあどの道。『マクベス』がある限り、それは出来ないけどね」
つまり、英国の判断は『武蔵を英国に留めておくことで、聖連との交渉カードにする』ということだ。
シェイクスピアの結界は、更に広がっていった。
そして、
「さあ。座長が命じよう――――――開演だ。諸君」
発動した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
点蔵は、遠く離れたところから祭の行われている第二階層を見ていた。
その隣には、〝傷有り〟がいた。
「先ほど三征西班牙の艦が英国に向かっていったで御座るな」
「Jud.きっと。アルマダ海戦のことでしょう」
「すると」
「――――おそらく。この祭の終わりには、メアリ・スチュアートは処刑されます」
そう、〝傷有り〟はいった。
点蔵は、何も言わず、ただ〝傷有り〟の言葉を聞いていた。
「点蔵様」
「Jud.」
「点蔵様は、この処刑について。どう思われますか?」
そう、〝傷有り〟は聞いてきた。
……どう答えたものか。
歴史再現。しかも戦争を左右するほどのものとなると、迂闊には答えられない。
自分の発言一つで国家間の問題が起きたら事だ。
何よりあの外道共は生涯死ぬまでそのネタで弄り倒すだろう。
ふと、それに気づいたのか〝傷有り〟は優しく微笑んでくる。
「大丈夫ですよ。ここでは個人の会話だけですから」
「Ju,Jud.二人だけの会話、で御座るな」
「あ、Ju,Jud.はい! 二人っきりの会話です」
そういって、顔を俯かせる〝傷有り〟
また何かやらかしたか! などと点蔵は思っているが、このまま黙っててもしょうがないので、自分の考えを述べた。
「処刑、といっても。何か別の形で解釈と成すので御座ろう?」
「あ、Jud.メアリ・スチュアートは――――〝救われます〟」
「それは良う御座った――――いや。失敬。過ぎた言葉に御座る」
点蔵は自分の発言に気づいて、頭を下げる。
〝傷有り〟はそんな点蔵を見て微笑む。
「あ、そうだ。点蔵様。これからお祭に行きませんか?」
「はっ? 祭、というと」
「Jud.見せたいものとかあるのです」
そういう〝傷有り〟は嬉しそうに笑う。
と、
「つ、つまりそれはデートということに?」
「え……あ、え、えーと!」
点蔵の呟きを〝傷有り〟が聞くと、〝傷有り〟は顔を紅くし、慌てはじめる。
「そ、その! 対外的に見れば確かにそうなりますね! はい!」
「そ、そうで御座るな!」
「Jud! あ、でも…………嫌ですよね。こんな傷だらけの女とデートだなんて」
「め、滅相も御座らん! むしろ自分、〝傷有り〟殿以外とはデートなど考えられぬで御座るよ!!」
「え、あの、それはその……」
今日の自分、まるで浅間殿みたいな自爆発言連発で御座るな。
点蔵はごほん、と咳払いをする。
「〝傷有り〟殿。自分でよければ。是非」
「あ、はい! ではちょっと着替えてきますね。ゲートのところで落ち合いましょう」
「Jud.」
そういうと、〝傷有り〟は離れていく。
それと同時に、点蔵は不穏な空気を英国本土から感じ取った。
「……何かの術式の気配?」
この感じからするに、おそらく結界の類だろう。
だが、どんな効果があるのかが分からず、とりあえず〝傷有り〟にそのことを言おうとして、止めた。
(いや。いざとなったら自分が前に出て〝傷有り〟殿を守ればいいだけのこと。あれだけ楽しそうな笑顔の〝傷有り〟殿は初めて見るで御座る)
その彼女の笑顔を台無しにしてはいけない。
点蔵は心に決めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一方、浅間と葉月は昼食終え露天商を見ていた。
「綺麗ですねー」
「この辺りの店は凝った装飾が多いからな。浅間が気に入るのもあるだろうぜ」
そんなことを話しながら、浅間は時折葉月を見る。
そして、その手には小さく表示枠が。
「あ、あの。葉月君」
「ん?」
「わ、私の我侭なんですけど……ちょっと行きたいお店が、ありまして」
「へえ。珍しいな。何処だ? ついでだ。俺が代金持つよ」
「い、いいえ! そんなことまでは!!」
「気にするなって。何処の店――――」
そこまで言って、葉月の顔色が変わった。
何かを警戒するような、そんな目になっていた。
「浅間」
「は、はい? え、ちょっ、な、なんですか!?」
葉月は浅間を路地裏に引き込む。
浅間の脳内はもうパンク寸前だった。
(え、え、ええぇぇぇぇ!? は、葉月君ってこんなに大胆、いいい、いや! 不味いですよ、これをもし他の誰かに見られていたら! い、今のところそういう類の術式はないようですが、って葉月君近いです! 顔近いです!! わ、私このままここで!? は、葉月君が望むならそれもありですけどぉ……)
「浅間。気づいているか? この気配」
「やっぱりこういうことは順序を――――――へ? 気配?」
「Jud.英国を包むようにしている気配だ」
浅間も、葉月に言われようやく冷静になれた。
すると、確かに術式の気配がした。
「はい。おそらく結界のようなものかと」
「やっぱりか。クソッ! 浅間。悪いがデートを一度中断する。喜美たちと合流しよう」
「Jud.」
そういうと、葉月は浅間を抱えあげる。
お姫様抱っこだ。
「え、えっと葉月君?」
「飛んでいったほうが早いぞ?」
「そ、そうじゃなくてその……」
「ん? ――――あ、ああ。すまない。嫌だろうが、少し我慢してくれ」
「い、嫌じゃないです!」
「そ、そうか。なら、もうちょいしっかりと捕まってくれ」
「こ、こうですか?」
「Jud.」
浅間が葉月の首に手を回し、身を寄せる。
(こ、これって本当に伝説のお姫様抱っこ上級者じゃないですか!? は、ハードル高いですねいきなり!!)
「しっかり捕まってろよ。飛ぶぞ!」
「あ、はい!」
その瞬間、葉月は空へと飛び上がった。
どうもKyoです。
点蔵、そして葉月よ貴様らは許さん。
今日アニメイト行きました。
まんだらけ行きました。
メロンブックス行きました。
Fate/Apocryphaがあるではないか!!
電撃購入。だって表紙にジャンヌとアストルフォがいるんだもの。買わざるを得ない。
そして期待の召喚シーン。
アストルフォのシーンだと、
中世的な顔立ちの少年。
中世的な顔立ちの少年。
中世的な顔立ちの少年。
おい。何で一目で男と分かった。
分からないだろ! もしかしたら女の子かもしれないんだぞ!
というか初見で私は女だと普通に思ってました。
女でいいじゃん! むしろ女にしようぜ!!
みたいなノリでずっと読んでました。
おかげさまで妄想が膨らみに膨らんで――――Fateの二次創作やっちゃったよ……orz
だから執筆がここまで遅くなりました申し訳ないです……
さて。では。コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。
ちなみに。以前に言った浅間さんの台詞はこうです。
「い、いきなり誘ってきましたよ!? ここれは夢!? いえ現実です? な、ならどうしましょう! い、いつの間にか既成事実作られたりとカしちゃいますかね!? え、な、何でここで鎖が? か、監○プレイ!? い、いけませんいけません! そんな倒錯的な趣味は!」
でした。
ヤンデレ浅間だと思った? 残念ドMな浅間さんでした(アイマシター
ア、ストル、フォ、をヒロイン、に……(ここで文字が途切れている