境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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英国の相対戦

春季学園祭。

その祭を楽しんでいる人の群れの上を、一つの黒い風が過ぎ去る。

 

葉月は浅間を抱え、屋根から屋根へと跳んでいた。

 

空を飛ぶというのは最初考えたが、もし万が一地上に敵が居た場合、狙い撃ちにされる可能性がある。

そうなった場合、浅間を巻き込み、もしくは怪我をさせてしまう。

 

そのため、脚力を魔法で強化し、屋根伝いに喜美たちのいる場所へと急いだ。

 

「もう少しだな」

「は、はい。あの、葉月君」

「ん?」

「出来ればその、喜美たちと会う前に一度下ろしてください。絶対にからかわれます」

「あー、そうしたいのは山々だが――――スマン。もう遅い」

「えっ!?」

 

と、葉月が一瞬屋根の上で止まり、それから今までにない強烈な跳躍をし、地面に降り立つ。

目の前には喜美たちがいた。

 

「あら浅間に葉月――――――ミトツダイラ見た!? この鴛鴦夫婦遂に公衆の面前でお姫様抱っことかやり始めたわよ! 一体今まで何をしていたのかしらね! アツい、アツいわよ素敵!」

「と、智。貴女。よくそこまでの勇気を……」

「ち、違います違います! 違いますからね!? こ、これは緊急事態であってですね――」

 

浅間は葉月から降りようとするが、ナルゼに止められた。

 

「ストップ浅間! そのままでいて! 折角こんないい構図があるのに描かないなんて勿体ないじゃない!!」

「いい! いいですからそんなの後で!」

「というかヤバイ。そろそろ本格的に来るぞ!」

 

葉月が言うと、空を赤黒い雲が覆い始めた。

見ると、周りの祭の客も居なくなっていた。

 

「これは一体……」

 

ネイトは辺りを見渡す。が、客も居なくなって、いるのは自分達だけとなった。

 

と、浅間が地面に何かを指した。

それは、結界用の玉串だった。

 

すると、その玉串周辺が揺らぎ始めた。

目を凝らしてみると、それは文字列。つまり――――

 

(シェイクスピアの演劇の結界!?)

 

浅間は流れるような動作で右足の踵を踏み鳴らすようにし、拍手を一つ鳴らす。

 

「奏上――――!」

 

瞬間、浅間を中心にした結界が完成した。

 

ネイトは結界に近づこうとするが、いきなり目の前から浅間や仲間達が消えた。

 

「ッ、イリュージョン?」

 

否、違う。

これは、自分が結界に取り込まれているのだ。

 

ネイトは冷静に今の状況を分析する。

 

(ともかく。智や喜美の傍には葉月が居ましたし。ナイトにナルゼも大丈夫でしょう。問題は――――)

 

何故、この祭でこのような大規模結界を張る必要があるのか、だ。

祭の客は消え、辺りは静かだ。

 

……祭に乗じて何かを行おうとしている?

 

だが、一体何をする気なのだろうか。

 

仮に、この空間に自分だけが隔離されたと考える。

では相手のメリットは何か。

 

自分は武蔵の特務だ。

ならば、相対なのか。という思考に行き着く。

 

英国には特務といった役職はない。代わりに『女王の盾符』がいる。

おそらく特務クラスの実力者ばかりだろう。

 

もし相対を望んできても、受ければいい。

では何故このような結界を?

答えは、一般人に被害を出させないため。

 

だが、相対をして何に。そう考えたところでネイトは気づいた。

 

もし自分が負けたら、相対できる権限が上位の者に移る。

つまりこの場合は――――

 

「ッ、我が王!!」

 

総長兼生徒会長である葵・トーリだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

葉月は、結界の中で辺りを見渡す。

 

……瞬時にコレだけの結界を作れるとはな。

 

幼馴染の実力の成長振りに葉月は舌を巻く。

 

ふと、隣を見るとそこには喜美が地面に蹲っていた。

 

「……何やってるんだ?」

「コレは夢コレは夢コレは夢コレは夢……」

 

どうやら辺り一帯の客や、他の仲間が消えてホラー現象だとでも思っているのだろう。

葉月はやれやれと、喜美に事情を説明する。

 

「ほら立て。これはシェイクスピアの起こした演劇結界。ちゃんとした術式だ」

「術式でこれだけ大規模な結界は中々お目にかかれませんけどねー」

「ほら! ほらやっぱり! これはもう異世界召喚よ! 厨二病眼鏡作家がすきそうな展開よ! ああそうよきっと私はこれからハーレム男と巨乳巫女とでエロい物語の始まりなんだわ!!」

「よーし浅間。コイツだけこの結界から出してくれ」

「そうしたいのは山々ですけど無理です。もう結界内に入ってますから」

「フフフ何よ浅間ここで何をイれるって!?」

「おい喜美いい加減正気に戻れ」

 

そういうと、喜美は立ち上がり若干おどおどしながらも髪を整える。

 

「今のところ。結界に取り込まれているのは。ミト、ナイト、ナルゼ、正純とウルキアガ君の五人。ハイディとシロジロ君、二代とアデーレ、鈴さんは結界の外ですが、通神が途絶されています」

「役職者ばかりか……間違いなく相対狙いだろうな。となると。この状況で今一番危ないのは――――」

「正純ですね。彼女、攻撃用の術式符も持っていませんから。走狗も、まだ幼いままですし」

「ならそっち優先だな」

 

葉月が言うと、浅間は地面に刺さった玉串を引き抜く。

浅間が操作すると、玉串の上に小さな走狗が二人現れた。

それらはハイタッチすると消え、玉串は二つに増えた。

 

その一つを喜美に渡す。

 

「……何これ? くれるの?」

「話一切聞いてないですよね? あ、待っててください。葉月君のも今作ります」

「ああいいよ。俺にはこれがある――――」

 

そういって、葉月は首の辺りをさする。

が、そこにあるはずのものがなく、やや顔をしかめる。

 

「……しまった。ナイトに貸しっぱなしだったな」

「何をですか?」

「俺の水晶。アレ、任意で術式を無効化に出来るんだよ。ただ、古代魔法使役士以外が持つと、効果がやや弱体化するけど」

「ナイトが取り込まれたのはそれですか」

「というか、任意ってことを知らせていなかったからだと思う。悪いが浅間。俺にも頼む」

「Jud.」

 

そういって、浅間は複製した玉串を葉月に渡す。

 

「でも一番危険なのはトーリ君たちですよ。間違いなく最高位の相対者として狙われてます」

「そうねぇ」

 

と、立ち直ったのか、喜美は考え込む。

 

「超素敵な私が行ったら楽勝だけど。相対のルール無視だと愚弟に迷惑かけるわよね」

「でも全員、二人のデートの意味は分かってるはずだ。なら俺らは俺らで出来ることをするか」

「Jud.」

 

そういって、三人は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで浅間。アンタお姫様抱っこなんてやって。一体何をしていたの?」

「うぇ!? い、いえその……ふ、普通ですよ? 普通の、で、で、デートを……」

「喜美。今度お前の部屋に悪霊一式送りつけるぞ――――ああ分かったから気絶しようとするな面倒な」

「葉月君も十分梅組に感化されてますよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

ナイトは周りと隔絶されてからも普段の調子を失わなかった。

 

「うーん。ナイちゃん思うに。これは演劇空間で。皆は隔離状態、かな」

 

箒の先端を操作し、魔術陣を出すナイト。

彼女の箒は、ナルゼの術式ペンと共鳴しあう。故に、離れた場所でもお互いの位置が分かるのだが、この空間に限ってはそれも不可能だった。

 

「大丈夫かなガッちゃん。結構強がるし」

 

心配そうに呟く。

ナイトは箒を構えると、そのまま黒嬢(シュバルツフローレン)へと成る。

 

空から探そうと飛び上がるナイト。

だが、それはすぐに阻害された。

 

空へと飛び上がると突如、水の中へと入ったかのように水圧が圧し掛かってきた。

否、これは本当に水の中に飛び込んだのだ。

 

「――――ッ!」

 

ナイトは翼を広げ、抵抗を大きくしすぐに停止をかけた。

 

(泳ぐための仮想海!?)

「分かりますか! オクスフォード教導院船舶部の訓練用大型即席プールです!」

 

声がした。

見上げると、水着に水泳帽の男が手に持ったジェット噴射器付きの三叉槍によってこちらに近づいてくる。しかもバサロ泳法。

いや泳法はいいのだが、フォームがムカつくほどに綺麗なためどうにも変態的だ。穿いている水着の種類がさらにそれを増長させている。

普通ならここで変態、と大声を上げてもいいのだろうが、生憎アレ以上の変態が武蔵にはいるためそれは叶わなかった。

 

思考切替。

 

おそらくアレは、『女王の盾符』だろう。

 

以前に授業で英国の人物については一通り学んだ。となるとアレは――――

 

「船舶部水泳班班長! 『女王の盾符』の5-2! ホーキンス!」

 

そして、そのすぐ横に表示枠で現れた人物が居る。

人魚だ。

 

『船舶部補佐『女王の盾符』5-3! キャベンディッシュです!』

 

マズイ、ナイトは本能的に察する。

二対一。だが数の上では戦うのは一対一。

 

しかし、相手にはサポートにキャベンディッシュがついている。

 

「さあ! 今日は泳ぎで勝負です!!」

 

猛然とした勢いでホーキンスがくる。

 

……ガッちゃん。

 

ナイトは、相棒の事を思いながらも、目の前の戦いに集中する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

ナイトが心配する一方で、ナルゼも自身の相対者と遭遇していた。

 

自分よりも体格の大きい、半狼(ハードウルフ)

よくこの体格の英国の制服があったものだ。おそらくオーダーメイドだろうが。

 

半狼は口を開く。

 

「船舶部『女王の盾符』5-1、ドレイクだ」

「第四特務。マルガ・ナルゼよ。英国の海の英雄が一体何用?」

 

ドレイクは無言で移動する。

そこは、カフェテラスだった。

 

椅子に座ると、ドレイクはナルゼにも座るように促す。

 

ナルゼはしばし警戒していたが、やがて椅子につく。

 

「奢るぜ」

「……コーヒー」

「俺は牛乳だ。成分無調整の奴」

 

程なくして、コーヒーと牛乳が空中を滑りながらやってきた。

 

ドレイクはジョッキを掴み、一口飲む。

 

「牛乳は血の転化だ。吸血系の異族も愛用するぜ」

「狼系の異族は食人の習性があるって聞いたけど。私も食べる気?」

「同意の上ならな。騎士だから紳士なんだぜ」

「ならば食べないって選択肢を追加すべきね。騎士なら。我慢もできるでしょ」

「そいつぁ無理だ。いつかは敵になるしな」

 

そういって笑うドレイク。

ナルゼもコーヒーを飲む。

 

ドレイクは饒舌に話してくる。

 

「俺、嫁がいるんだけどよ」

「いきなりリア充宣言? 別に気にしないけど武蔵の連中がいる前では止めたほうがいいわよ」

「何でだ?」

「多分、この世界のどんな種族でも嫉妬に狂ったアイツらには勝てないから」

「みっともねえなあ。男は黙って惚れた女に食いつきゃいいんだ」

 

そうしみじみと語るドレイク。

ナルゼはその言葉に眉をひそめる。

 

「嫁を、食べてるの?」

「自分が傷つけられることで、この世に生きているという実感がわく人間もいるんだ。それに、俺自身も嫁に対して躊躇ってる暇はないんでね」

「そう。アンタの嫁は殺人鬼なのね」

「バラしてないと自分をバラし始めるんでな」

「プロポーズの言葉は?」

「極めて普通。肉を食いつつ『俺は君が好きだ。付き合ってくれ』『ジャンジャンどうぞ!』」

「夫婦円満ね」

 

顔に似合わず幸せそうに語るドレイク。

牛乳を煽り、再び喋りだす。

 

「なあ。お前んとこの騎士はそういうのねえのか?」

 

そう問われ、ナルゼは思考する。

おそらくネイト・ミトツダイラのことだろう。

 

「ちなみに聞くけど。どうしてここでミトツダイラの話が?」

「その前に、だ。お前『聖なる小娘(ジャンヌ・デ・アーク)』を知ってるか?」

「一応ね。でもなんで? どんな関係があるのよ」

 

まあ落ち着け、とドレイクは手で制す。

 

「知っての通り。『聖なる小娘』は火刑に処された――――が、実は密かに生きていたんじゃねえかって話だ」

「……どういうこと?」

「Tes.まあ、アレだ。百年戦争。これが切欠だ」

 

百年戦争。

それは、英国が六護式仏蘭西に侵略し。しかし一人の少女とその部隊を以って侵攻が止められた。

 

「まあ史実通りに『聖なる小娘』がルーアンで火刑に処されると、六護式仏蘭西の勝利の歴史再現が一気に進む。それを止めたくて、英国の非正規部隊が密かに救い出していたんじゃないかって話だ――――ちなみに俺の爺さんがいた部隊だ」

「ちょっと待って。仮にその話が本当だとして。こんなところで話して大丈夫なの?」

「Tes.つうか信じる奴はいねえよ。俺の爺さん曰く〝俺は聖譜越境部所属の騎士〟らしいぜ」

 

そういって肩をすくめるドレイク。

 

聖譜越境部。

それは各国から集められたエリート集団。

世界のどこかで危難や問題が生じたとき、歴史再現などを無視して駆けつける集団。

 

だが、

 

「アンタの言葉を全部否定するようで悪いけど。聖譜越境部なんて、ただの三問芝居のネタよ? 出自は曖昧。否、存在自体も疑わしい。第一、英国のために『聖なる小娘』を救うって、反則もいいところよ」

「ところがどっこい。英国だけじゃないんだなあコレが」

 

そういって、また牛乳を飲む。

ナルゼはしばし考え、ふとある一つのことに思い至る。

 

「六護式仏蘭西にもいたのね。『聖なる小娘』奪還に協力しようっていう、おそらく。仏蘭西の聖譜越境部が」

「Tes.その通り。事実、アルチュール・ド・リシュモーンの戦士団が火刑前日から行方不明だ」

 

そういって、一度ジョッキを見つめる。

 

「爺さん達は信じたわけだな。六護式仏蘭西(向こう)にいる連中を。だから、ひょっとしたら、向こうの連中に救われたんじゃないかって」

 

だが、

 

「結局、『聖なる小娘』は火刑に処された。どうやら奪還作戦のとき、内通者がいたらしくてな。こっちの作戦がバレていたらしい。俺はそのとき爺さんに何度も言ったさ」

 

何故六護式仏蘭西の連中は加勢に来なかったんだ。と。

しかし、ドレイクの祖父は笑いながら仕方ねえ、といったらしい。

 

「そりゃあ仕方ねえよな。向こうを信じていたんだからよ。否、信じるしかなかったんだ」

「で。それをミトツダイラに聞いてほしいわけね」

「Tes.そういうこった」

 

ナルゼは記憶を探る。

過去にそんなことを言っていたか。しかし、

 

……昔過ぎて思い出せない。

 

仮に言っていたとしても覚えていないだろう。

 

「まあ、後でミトツダイラに聞くことだけね。出来ることといえば」

「Tes.ありがてえ。ああ、それともう一つ」

「何?」

 

ドレイクはジョッキを掲げる。

 

「おそらく『聖なる小娘』奪還には、もう一つ。関わってる奴がいる」

「誰よそれ」

「正確には関わっている一族だな」

 

一族。

ここ最近で、その言葉に該当するのは一人だけだ。

 

「葉月――――古代魔法使役士もその奪還作戦に参加していたの?」

「さあな。そこまでは分からん。だが既にそのときから古代魔法使役士は存在していたらしい。お前は古代魔法使役士についてどのくらい知ってる?」

「殆ど、知らないことだらけよ。葉月。秘密主義徹底しているほうだし」

「……やっぱりなぁ」

 

そういって、一度、ジョッキを置くドレイク。

 

「古代魔法使役士は、その出自を辿れば殆ど、この英国から生まれている」

「ああ、アイツ。英国が故郷だったわね。でも残念ながら、百年戦争時、アイツもアイツの両親もいなかったはずよ」

「Tes.そりゃそうだろうよ。まあ長命な異族なら話は変わるが。だがな。一つの可能性があるんだよ」

「可能性?」

「あいつは記憶保持者(メモリホルダー)の可能性が高い」

「記憶、保持者?」

 

聞きなれない単語にナルゼは疑問顔になる。

ドレイクは若干驚く。

 

「おいおい。まさかそんな事も知らされてねえのか?」

「Jud.だから言ったでしょ。秘密主義だって」

「にしてもなぁ。まあいい。早い話が、別の人間の記憶を持ってるんだよ」

「別の、人間の?」

「Tes.古代魔法使役士は、それぞれ記憶が宿っている。まあでも、今生きている魔法使いは全員持ってるだろうな。まあそれはそれとして、だ」

 

再びジョッキを持って話そうとするドレイクを、ナルゼは止める。

 

「いい。その先は」

「あん? いいのか?」

「Jud.後はあの無自覚ハーレム男を問い詰めて聞くわ」

「そうかい。ま、余裕あったら聞いてくれ」

 

そういって、ドレイクはジョッキに残った牛乳を一気に飲み干した。

 

「ッかぁ――! この一杯のために生きてんだよな俺」

「飲み終わったら本題、ってことでしょ」

 

ナルゼがそういうと、ドレイクは無言で右腕を掲げる。

それは、白い大手甲だった。

 

「英国の聖譜顕装……!?」

「ダッドリーの持つのが左手。俺のが右手。『巨きなる正義・旧代』だ。効果は、英国の正義に仇名すものは必ず失敗する」

 

そういって、お互いに立ち上がる。

 

「結構面倒だぜ。正義ってよ」

「なら。その正義を刺せばいいのね――――魔女(テクノヘクセン)の仕事だわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

ウルキアガは、何が起きているのか分からなかった。

 

……ありのままに今起こったことを話すと、頭のおかしい奴と思われそうだな。

 

否、それは仕方ないことか。

何しろ所属しているクラスからして頭のおかしい連中ばっかりなのだから。

 

全裸か女装の総長にその姉の狂人。厨二病を発症している書記。果ては人を射抜き殺すのが趣味の巫女と来ている。

この中では、拙僧もおかしいものと見られてしまうだろう。だが拙僧は至ってまともである。旧派パワーという奴だ。今度姉モノのエロゲと共に崇め奉らねば。

 

どうやら客や周りの仲間が距離を取ってこちらを見ている。ぼっちなう、といったところだろう。

 

「うほほほぉー! ウッキー! ウキ、ウッキー! こっち向いてー!」

 

そう叫ぶ声がある。

見ると、御広敷が腕を振り上げこちらに応援らしき声を送っている。

 

この声で、ウルアキアガは判断できた。

 

「……何かの洗脳であるか」

 

普段から生命礼賛という名のロリコンを謳っている御広敷からすればありえない。

となるとこれは敵の術中――――

 

「わあ! 僕の相手は怪獣かー! きゃーこわーい!!」

 

今度は別の方向から声がする。

顔を正面に向けると、そこには中世的な顔立ちをした少年がこちらに向かって走ってきた。

 

その手には、巨大なハンマー。否、

 

「――――印鑑!?」

「『女王の盾符』の8! ニコラス・ベーコンいっきまーす!!」

 

振り上げた印鑑をウルキアガに叩きつけようとするニコラス・ベーコン。

だが、直線的な攻撃は特務であるウルキアガにとっては余裕で避けられる代物だ。回避行動を取る。

 

直後、外した代償として地面を叩いた印鑑によって、大地が抉れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

正純は現在、8割の満足感と2割の後悔があった。

 

満足感は、新たな本を買えたことへの充実。

それによる、自分の知識欲の充実である。

 

後悔は言うまでもなく、今月の生活費の何割かを本代に割いてしまったこと。

 

これでしばらく極貧生活だろう。

 

(マズイ。白百合に話したら本当に呆れられる。クッ、い、いや私は悪くない。そう、面白そうな本があるのが悪いんだ! 私は悪くない!)

 

白百合に言った台詞をまさか自分に使うことになるとは。正純は本を抱えながら思う。

ふと、辺りが異様に暗くなっていることに気づく。

まだそこまで時間は経っていないはずだ。

 

それに、

 

「……何故皆こちらを見ているんだ?」

 

祭の客から店の店主まで、一様にこちらを見ていた。

 

この寺院で何か催しでもあるのかと思った矢先、後ろで扉が勢いよく開く音がした。

正純は驚きそちらを振り向く。

 

「レディィィィィィィィィス、エェェェェェンッ、ジェントルメェェェェェン!!」

 

そこには、白骨化した人物が長衣型の英国制服を着ていた。

 

……動白骨(リビング・ボーン)

 

「ハバナイスデース! 大法官! 『女王の盾符』の3!! クリストファー・ハットン君――――デス!!」

 

カカカカカカッ、と流暢に喋りながらハットンは正純に近づく。

戦闘系ではない彼女にとって、急な接近に一瞬呆けてしまった。

 

ハットンは正純の肩を掴む。

 

「二年.三学期期末テスト。保健体育の点数は?」

「――――は?」

 

いきなりテストの点数を聞かれ一瞬面食らうが、今の状況下だと下手に相手を刺激するのはマズイ。

そう判断すると、点数を思い出す。

確か、

 

「……87点」

 

正純が答えると、ハットンは口をあんぐりと開け、叫ぶ。

 

「サッチア高得点! ならばエロの罪で死刑――――デス!!」

「それ語尾が言いたいだけだろ!!」

 

直後、地面が揺れた。

正純が前を見ると、そこには、今までいた客たちが動白骨や動死体になり、槍を振りかぶって襲い掛かってくる。

 

逃げ出そうとしたが、ハットンの動きのほうが一瞬早く、正純をガッチリとホールドした。

ハットンの首に掛けられている骸骨の数珠が光り始めた。

 

『爆発スルデス。成仏スルデス』

「い、いや待て! 危うく流されそうになったがそれは成仏じゃなくて消滅だ! というか大法官! 貴公も巻き添えになるぞ!!」

 

正純は言うが、寺院のほうから、ハットンと全く同じタイプの動白骨が現れた。

それはハットンの首だけを持ち去っていく。

 

「す、すげ替え可能か!?」

 

必死に抜け出そうとするが、正純の筋力は平均的な女性と同じか、下手をすればそれ以下なのだ。

特務クラスのものたちならば抜け出せるのだろうが、彼女は非戦闘系。抜け出せるはずもなかった。

 

槍を掲げてくる動白骨たちは大きく跳躍し、

 

踊り成仏(ダンス・レボリューション)!!」

 

正純に向かって槍を突き出した。

 




どうもKyoです。

遅れてしまい申し訳ないです。
しかしネタは溜まってしまう一方。

何なんだろうかこれは……

そして次回。おそらく完全デート回。
点蔵と〝傷有り〟、そしてトーリとホライゾン。

うん。ぶっちゃけ前者はともかく。後者が、ねぇ。
……ちょっとだけ態度軟化のホライゾンを入れるべきかどうか悩んでます……

では。コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。







・十ZO:『何故自分、モゲろ言われるので御座ろうか?』
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