境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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一時の幸福

 

英国の各地で相対戦が起きている中、トーリとホライゾンはデートの真っ最中だった。

 

広場に出て、噴水の縁に腰掛けていると、トーリがホライゾンに話しかける。

 

「何か食ったりするか? ホライゾン」

「――トーリ様」

 

ホライゾンはそれに答えず、己の言葉を紡ぐ。

 

「ホライゾンの感覚によれば、この倫敦。大部分が何らかの術式に覆われています」

「だろうなぁ」

 

トーリはそれを肯定するように頷く。

 

「なんか後ろから来ていた姉ちゃんたちがいなくなっているし。あと、葉月が掛けてくれた魔法がなんか少し反応したから葉月も近くに来てたんだろうな」

「確か葉月様は浅間様と別の場所でデートをしていたはずでは?」

「Jud.だからこっちに来たってことは、何かあったんだろうな」

「では。トーリ様が危険では?」

「それはねえよ」

 

自信があるように、トーリは言う。

 

「危険なら、俺の仲間が知らせてくる。そうじゃねえってことは、俺たちは俺たちのやるべきことをやれ、ってことだ」

「しかし。トーリ様とホライゾンのやるべきことというと――――」

「デートだよな?」

 

トーリは言うが、ホライゾンは淡々と述べる。

 

「ホライゾンが感情に興味を持つかどうか。それに付随してのトーリ様ご自身の判断です」

 

至って真面目な回答。

トーリはやや不満そうにする。

 

「えー? デートは?」

「本気で煩悩の塊ですね。一度浅間様に本格的に禊いでもらったほうがよろしいのでは?」

「き、キツイぜホライゾン。つか浅間はいつも禊とか言ってズドンしてくるからなー」

 

しみじみというトーリだが、ズドンされる原因が自分にあることは自覚がない。

 

……理不尽だよなぁ。今度浅間のオパーイに飛び込んで――――ダメだ。浅間に撃ち殺される以前に葉月に殺される未来が眼に浮かぶ。

 

うーん、とトーリが悩んでいると、ホライゾンは立ち上がってトーリの前に立つ。

 

「トーリ様。ホライゾンは感情に興味がありません。ですが、皆様が作ってくれた子の時間を無駄にするつもりもありません。ですので、ホライゾンとムキになってデートをしていただけるようにお願いします」

「随分真剣勝負なデートになりそうだなー。大丈夫か俺!」

 

自分の身体を抱きしめるトーリに、ホライゾンは手を出す。

 

「トーリ様」

「――ああ!」

 

その手を、トーリは取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

一方、点蔵は〝傷有り〟とのデートをしていた。

 

が、お互いにあまり話さないというか控えめな性格なため、時折会話が途切れてしまうことがあった。

ふと、〝傷有り〟が屋台に目を向ける。

 

「点蔵様? タラのフライと林檎など、いかがでしょう?」

「いいで御座るなー。あ、自分買ってくるで御座るよ」

 

先に行こうとした〝傷有り〟を引き止める。

しかし、

 

「点蔵様。英語は……?」

「……自分。別に食わずとも」

「それではお祭に来ている意味がないですよ?」

 

そういって、〝傷有り〟は屋台に買いに行った。

 

……しもうた! まさかここで致命的なミスをッ!!

無論、多少は話せる。語学も英国に来てからは少しずつではあるが学んだ。

 

しかしいきなり実践で使えるほど流暢でもないし。ましてや買い物となると絶望的だ。

 

……葉月殿なら、多分普通に話せるので御座ろうなー。

 

思えばあの葉月に出来ないことなどあるのだろうか。

否、彼もまた人間多少稀有な一族ではあるようだが、それだけだ。

 

ふと、辺りを見渡す。

 

(祭という割には、人が少ないで御座るな)

 

ここは祭りでも中心に近い部分だ。それなりに人がいてもおかしくないはずだが。

そんなことを考えていると、〝傷有り〟が戻ってきた。

 

「はい。点蔵様」

「Jud.忝い――――かなり大きいで御座るな」

「ええ。二人分ですので。一緒に食べましょう」」

 

と、優しく微笑む〝傷有り〟

 

それを受け取る点蔵だが、遠くで音がした。

 

……これは、剣戟の音?

 

忍者としての聴覚が、その音の正体を割り出す。

どうやらその音は〝傷有り〟にも聞こえていたようだった。

 

「劇か何か、行われているのでしょうか?」

「劇、に御座るか」

「ちょっと見てみたい気もしますが。でもその前に。見せたいものが御座いますので」

 

そういうと、〝傷有り〟はある場所を見る。

 

倫敦塔だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

三征西班牙。商店街。

 

情熱の借金大国である三征西班牙らしく、かなりの賑わいを見せていた。

 

そして、そんな中を歩く二人の男女。

 

「ほらほら。次行くよー」

「まだ買うのかよ……」

 

一人は、金髪を短くし、活発そうな少女。フローレス・バルデス。

一人は、菫色の髪をざっくばらんに切り、フローレスの後ろを歩く少年。アルヴィス。

 

アルヴィスの手には、フローレスによって買われた品物が大量にあった。

 

黒魔術(シュバルツテクノ)で重量を軽減しているからって、これだけ多いと流石に重いぞ」

「とかいって、まだまだ平気そうじゃん」

 

フローレスは上機嫌に笑う。

アルヴィスも、特に不満はないらしく、そのままフローレスの後ろをついて歩く。

 

ふと、フローレスがアルヴィスに聞く。

 

「ねえアルヴィス」

「なんだ?」

「古代魔法使役士って、どういうものなの?」

「また随分と漠然とした質問だな」

 

そういいながらも、アルヴィスは答える。

 

「そうだな――――強いて言えば、守護者的な存在か」

「それって、正義の味方ってこと?」

「ははっ。まあ、そんなところだ」

 

苦笑するアルヴィス。

フローレスはそれで満足したのか、ふーんといって再び歩き出す。

 

「じゃあアルヴィスもそういう正義の味方を目指しているの?」

「いや。俺はそういうのにはなれないさ。どっちかっていったら、革命者のほうだろう」

「革命? どういうこと?」

 

そう聞くと、アルヴィスは頷き、表示枠を操作する。

 

「古代魔法使役士の中には、記憶保持者と呼ばれる連中が存在する。俺も、その一人だ」

「それってどういうもの?」

「Tes.」

 

すると、表示枠の中に『初代』と書かれた人型と『二代』『三代』と書かれた人型が現れた。

 

「例えば、初代の古代魔法使役士が死ぬと、その初代の記憶と魔法の性質が次の魔法使いに引き継がれるんだ」

「ゲームでデータを引き継ぐみたいな感じ?」

「そうだな。大体それが近い。で。二代目が死ぬと、初代と同じく次の奴へと引き継がれる。ただし、今度は二代目の記憶も一緒にな」

「へぇ。じゃあ今はアルヴィスは何代目辺り?」

「そうだな――――――四代目ってところか」

「短いねえ」

「そりゃあそうだよ」

 

そういって、さらに表示枠を操作する。

 

「何しろ身体がその性質に適応しないとダメだからな。一種の憑依みたいなものだよ。条件が合えばその通りの性質を得られるが、合わないと一生未覚醒のまま人生終えるからな」

「厳しいなぁそれ」

「だからここまで人数が減っちまったんだよ。まあ身内同士の殺し合いも少なからずあったんだろうがな」

 

そういうと、フローレスはそっかと軽く流す。

表示枠を閉じ、アルヴィスは荷物を担ぎなおす。

 

「さて。次はどこだ?」

「うーん。どこにしようかなー」

 

と、自身の表示枠を開き、店を選んでいるフローレス。

ふと、表示枠から顔を上げ、アルヴィスを向く。

 

「……? どうした?」

「あのさ。近くにアルマダ海戦あるのは知ってるよね?」

「Tes.俺も出るがな」

「じゃあさ」

 

フローレスは体ごとアルヴィスを向く。

その眼は、何かを訴えるかのように真剣だった。

 

「もし。私が死にそうだったら、守ってくれる?」

「Tes.」

 

即答だった。

アルヴィスは普段とは違う、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「つうか。死にそうになる前に救ってやるよ。お前だけじゃない。お前の兄貴や、ベラさん。皆、守ってやるよ」

 

そういって、空けた左手でフローレスの頭をやや乱暴ではあるがくしゃと撫でる。

 

「――――そうやって死亡フラグ立てて。知らないよ?」

「元はお前が振った話だろうが」

「そうだっけー? まあいいや」

「本当に。軽い奴だな」

 

呆れ気味にいいながら、アルヴィスは荷物を持つ。

フローレスは普段と変わらない様子で、前を進む。

 

「ねえ。アルヴィスは第三特務のこと好きなんでしょ?」

「いきなりだなオイ」

「襲名とかしようとしなかったの?」

「したよ。したさ。だけどなー。アイツ強くて。ガルシアの奴も執念だったよ。ま、俺は執念負けしたわけだ」

「情けなーい」

「うるせえよ」

「だから補佐の位置にいるわけ?」

「――――Tes.つかもういいだろ!」

 

若干顔を赤らめながら先へと進むアルヴィス。

 

「……よくないから聞いてるのに。アルのばか」

 

その後を追いかけるように、フローレスも続く。

 

 

 

 

野球男:『がぁ――――! ったく焦れってえなあ!』

陸上女:『でも二人とも初々しくてまだ可愛いわよね、と』

妹の兄:『ふっ。妹よ。ファールの連発だけでは、相手には勝てないぞ』

野球男:『何のアドバイスだ何の』

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

英国。オクスフォード教導院。

その玉座が座する間に、一人の女性が居た。

 

妖精女王、エリザベスだ。

 

彼女の目の前にはいくつもの表示枠が展開されていた。

 

そこに映っているのは、現在倫敦で行われている相対戦の様子だった。

 

「――――ふむ。葉月はやはり外れたか。まあ、役職者ではないから当然か」

 

と、頬杖をつき、つまらなさそうに呟く。

しかし、それも束の間。すぐに立ち上がる。

 

「さて。そろそろ余興も終わりか。なら――――」

 

そういって、表示枠を消していくエリザベス。

だが、一つだけ、目の前に残っていた。

 

そこに映っているのは、〝傷有り〟と点蔵だった。

 

「……」

 

そう呟くエリザベス。

だが、その顔からは感情が読み取れなかった。

 

 

 

 

 

「せめて楽しいときを過ごせ。それが――――私に出来る精一杯だ」

 




どうもKyoです。

今回はやや短めです。

これ以上皆様をお待たせするのもどうかと思いまして。

何故か一気にモチベーションが下がってしまいまして……

さて。次回はかなりすっ飛ばします。
具体的に言えば、相対戦を。

そうしないと、もう話数が……ものすごいことに……

原作読んでいない人だと分からない話の流れになっちゃいそうですが。

最後に。コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。
では。
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