K.P.A.Italia内教導院。K.P.A.S大聖堂。
そこには、三人の人影があある。
一人は、教皇総長。インノケンティウス十世。
一人は、魔人族。襲名者、ガリレオ。
そして、もう一人は小柄な少女。レベッカ・ハルバートン。
三人の前にはそれぞれ表示枠があり、そこには、英国と武蔵の会議の様子が映っていた。
「さて。英国はどう出るかな」
「武蔵が来たときは保守的な動きをしていたが、果たして」
二人はそれぞれ政治的な面から見ようとしている。
が、一人、レベッカだけは違った。
「……なんで、アイツがいるのよ」
若干不貞腐れたような顔で、そう呟く。
その視線の先には、武蔵の特務と並んで経っている白百合・葉月の姿があった。
二人は顔を見合わせ、教皇がお前が言え的な視線をガリレオに送る。
「……何故そこまで彼を敵視するのかね?」
「敵じゃないですか。今でも」
「まあ、そうではあるが……」
「にしてもお前のそれは少々過激だろうが、オイ」
教皇がそう指摘すると、レベッカはむぅと頬を膨らませる。
「……気に入らないです」
「何がだ」
「アイツです。アイツの全てが気に入らないです」
「……具体的に、どう気に入らんのだ」
「Tes.」
一息、レベッカは入れると、
「だってアイツ真剣勝負だってのに手を抜いてそれでいて私負けたんですよしかも私が死なないように風を操って態々クッションにしてしかも態度やら顔やら口調が一々気障ったらしいったらありゃしないですよ!!」
「…………」
「…………」
一気に言った。
しかも内容は殆ど葉月への罵倒だった。
これには流石の二人も呆然とするほかなかった。
「……あー。なんだ。犬猿の仲、という奴か」
「いや。これはおそらく――――」
「全く何なのよアイツは武蔵に行ってもいいことないでしょうにどうせならこっちに来なさいよね他の国だっていいけど――――」
ぶつぶつとまだ呟くレベッカ。
すると、会議が始まった。
『ではどちらから要求を?』
『どちらでも同じことだろう。結局は、武蔵を出港させるか否か。そこに集約される』
『Jud.では私のほうから』
と、正純が今回の会議での武蔵側の要求を言おうとしたその瞬間、妖精女王が、
『Tes.武蔵の要求全てを呑もう』
『…………』
これを聞いた教皇総長は、なんとも言えぬ表情を浮かべ、椅子から立ち上がり、時折唸る。
「理解不能ならば口に出しても構わないと思うぞ。元少年」
「この女は頭の中どうなってるんですかね。ただの馬鹿?」
「頭が禿げそうな発言は止めろ。ただでさえ武蔵に一人、大馬鹿の代表がいるんだ。英国までそうなら手が付けられん」
教皇総長は頭を抱える。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
……今のはなんだ?
正純は率直に疑問に思う。
何かの冗談か、それとも本気で……?
そう考えていると、妖精女王はふっ、と笑う。
「――――無論、冗談だ。一瞬期待したか?」
「え、あ、あー……」
「Tes.別に構わん。場を盛り上げるのも楽しみだ」
そういってこちらを真っ直ぐに見つめる。
……落ち着け。元々エリザベス一世は芝居好きとして有名だ。
正純は自身にそう言い聞かせ、落ち着かせる。
○べ屋:『正純惜しいよ! 今のタイミングで強引に迫れば何でも言うこと聞かせられたのに!! もう、折角の金儲けのチャンスが!!』
● 画:『そうね。もし今ので何でも英国がホイホイ聞いてくれたらきっと――――同人誌の売り上げも上がったでしょうね』
約全員:『お前ら自分のことしか考えてねえのかよ!!』
あさま:『というか皆さんもっと真面目になりましょうよ! 英国の人たち見てくださいよ! 私語してませんよ!!』
見ると、英国側『女王の盾符』は微動だにせずにただ事の成り行きを見守っているように見える。
実際は、英国は英国で色々と
「で。要求は?」
「あ、ええ。Jud.」
いかん。相手のペースに呑まれるな。交渉の基本だ。
正純は呼吸を深くし、落ち着きを保つ。
「現在武蔵は、独立した国家として大罪武装回収、及び末世の解決に向けて動いている。これは、各国の利益になることであり、武蔵の方針だ。よって、出港の許可を頂きたい」
「ダメだ」
エリザベスはにべもなく断る。
「大罪武装は破格の威力を持つ武装だ。それを各国から回収してしまえば、歴史再現に遅れ、あるいは再現にない苦戦を強いられて国内はボロボロになる。つまり、戦力バランスが崩れてしまう。それに。歴史再現に任せておけば、ヴェストファーレン会議は自然と発生する。そのときに、各国が大罪武装を持ち寄ればいいだけの話ではないか」
○べ屋:『うっわ超正論ハラ立つー!』
あさま:『いやあのそれ。悪党の台詞だと思うんですけど!?』
だが、正純も負けていない。すぐさま反論を返した。
「しかし、我々はその提案には同意できない。何故なら、三河騒乱以降。姫ホライゾンを君主として主権を有した独立国家を名乗っているが、その本人であるホライゾン・アリアダストは己の感情を大罪武装の材料とされている。つまり、大罪武装の回収は末世解決と共に、君主の不備をなくすためである。そして、各国と対等の位置に着くのが、ヴェストファーレンの場だ」
「ほう。では極東は各国の暫定支配を覆すつもりでいるのか?」
すると、妖精女王はやや目つきを厳しくして、正純に告げる。
「それも――――160年前の重奏統合争乱を忘れて、か」
重奏統合争乱。
それは、160年前。重奏領域が崩壊し、土地不足から発展した戦争。
しかし、南北朝戦争に疲弊していた神州側は早期に降伏。以後は極東と改める。
そして極東は各国に暫定支配されている現状が続いている。
だが、それでも正純は平気な顔をしていた。
「Jud.――――最早極東は、各国の暫定支配を解除することを厭わない」
瞬間、あたりがざわめいた。
この会議は全国に流れている。おそらく、今もどこかで息を呑むものがいるだろう。あるいは怒号をあげるもの。
しかし、正純は笑った。
「何故なら、私たちの長がもう決めてしまったからです――――――誰が一番強いのか、やってみようじゃないか。と」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
この発言を聞いた教皇総長はいきなり立ち上がる。
「全世界に対する宣戦布告、それも公の会議の場でか!? やってくれたなあオイ!!」
「若干嬉しそうに聞こえるのは何故かね。元少年」
ガリレオに指摘され、ゆっくりと椅子に座り頬杖を突く。
「……やってくれたなあオイ」
「無理に取り繕うよりありのままのほうが良いと思うぞ」
「というよりなんでそんな変わり身早いのですか教皇総長……」
「素だ、素」
そういってあしらい、再び表示枠を見始める。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
正純は両腕を広げ、説明する。
「全ての教導院は教導院間抗争というシステムがある。これは、武蔵も同じだ。ただ暫定支配によって使用していなかっただけだ。そして、戦争行為は開戦権と交戦権とからなる」
開戦権。つまり、戦争の宣言。宣戦布告のようなものだ。
一方交戦権は、相手と戦争を行い、それを持続させる権利。
この二つを以って、戦争という行為を発生させることが出来る。
そして、
「武蔵は戦争に関して殆ど初心者だ。故に、我々は大罪武装回収まで、開戦権を封印する!」
つまり、これで自発的な戦闘行為は出来なくなった。
が、あくまで戦闘行為に限るため、交渉などは行うことが出来る。
そうなってくると、他の大罪武装保有国にとっては面倒だ。
何しろ、今の時勢は歴史再現、とりわけ戦国の世を再現している。
当然、戦争行為に発展している国もあるだろう。
しかし、武蔵が来ることにより、そちらにも人員を割かなければならなくなる。
戦争行為で一気に潰したほうが楽なのだ。
正純はさらに続ける。
「武蔵は大罪武装を返還した国や持たない国の味方となり、勢力均衡の崩壊を無くす。つまり、武蔵自身で戦力を補填する」
つまりは埋め合わせ。
大罪武装がなくなれば確かに国力が弱体化するだろう。
しかし、それを武蔵自身で補うことにより、一方的な弱体化を防ぐというわけだ。
正純はエリザベスにこの同盟の第一相手になってほしいと、手を伸ばす。
が、
「断る」
そう切り捨てた。
印鑑子:『えー断っちゃうの!? 面白そうだよ!!』
御 鞠:『んなことで同意するわけないだろうに』
エリザベスは表示枠を見ながら頷く。
「確かに。武蔵が戦力均衡の崩れを無くすために自身を使う。その案に魅力があるのは認めよう。だが逆に言えば、それは武蔵の危険性を示すことになる。
高空を自由に飛翔し、強力なステルスシステムを有した武蔵は非常に危険な存在だ。その力で以って神州を支配し直すつもりならば、この場で武蔵を殲滅させる――――構えろ諸兄」
その瞬間、『女王の盾符』が身構える。
同時に、武蔵も戦闘態勢に入る。
が、それを正純が諌める。
「では一つ問おう。英国は私掠船が主力を担っているが、武蔵に対して有巧打を持っていない。更に、主力であるドレイク卿たちは現在偵察に出ていて居ない」
と、大気と地面が振動し始めた。
英国勢は予期せぬ振動に若干慌てる。
「あ、あああなた何かしたわね!?」
「Jud.武蔵を出港スタンバイ状態にした。まだ武蔵には燃料が残っている。IZUMOまで十分に間に合う量がな。今偵察に出ている部隊を引き戻しても間に合わない」
白金狐:『うわー。久々に見たよ『荒鎮波』の起動。綺麗だよね学長先生?』
左遷男:『Jud.綺麗だよ。俺、コレ見栄えもいいから好きでね』
武 蔵:『お二人ともありがとうございます――――以上』
「英国がこの同盟を結ばないというのであるならば、武蔵は英国を出て、他国と同様の交渉を行っていくだけだ」
と、不意に妖精女王が立ち上がる。
「不敬だぞ! 歴史に残らぬ身軽人よ!!」
すると、徐々に妖精女王の周りが明るくなっていく。
傍で控えていたダッドリーが頭を抱え地面に伏せる。
「ふ、ふふふ伏せ――――!!」
次の瞬間、莫大量の光が妖精女王の背から放たれた。
蝶、否。ここで言うなら、妖精の羽根か。
その光翼は凄まじい勢いで噴出しながら、辺りを威圧していた。
妖精と人の間に生まれた子は、莫大な内燃拝気を宿す。
おそらくこれはその表れだろう。
しばらくして光翼が止み、妖精女王は告げる。
「虚仮脅しは通じんぞ」
その顔には、再び笑みがあった。
「ここが何処だか忘れたわけではあるまい? 妖精の国。精霊達の港。英国だ。そして、我はそこを統べる妖精女王だぞ――――まあ、精霊を統べるのは武蔵にもいるようだがな」
そういって、視線を移す。
そこには、葉月の姿がある。
一方の葉月は、嘆息一つだけだった。
○べ屋:『さっきから思ってたけど。妖精女王。ハヅっち気にかけてない?』
● 画:『何? まさかの平民と王族のベッタベタなストーリー?』
金マル:『ダメだよガッちゃん。そんなことになったらアサマチ泣いちゃうから』
あさま:『どういう意味ですかそれ!?』
そのままの意味だろう、と正純は表示枠を見ながら思う。
さらに妖精女王は続ける。
「『
すると、英国側。『女王の盾符』のハワードが一歩前に出る。
「女王陛下。阿蘭陀の航空艦隊を一つ買収致しました」
「Tes.ハワード。交渉で虚仮にされた分は返したな」
更に、正純の前に一つの表示枠が開く。
〝武蔵〟だ。
『正純様。南東より所属不明艦が接近しつつあります――――以上』
「囲んだぞ。武蔵。どうする?」
そう問う妖精女王。
その顔は楽しそうな、まるで子供のような笑みだった。
正純は一つ息を吐く。
そして、葉月を見やる。
葉月も、正純の視線に気がつくと、小さく頷いた。
正純はそれに応え、妖精女王に向き直る。
「妖精女王。武蔵は英国との敵対を望んでいない。英国もまた、同じはずだ」
「ハ、馬鹿な。他国への要請が冗談だったのであるならば、英国はただ恥を晒すだけだぞ?」
「他国に対しては本気なのでしょう。しかし、英国自身が武蔵を撃沈することは許していない――――何故なら、武蔵撃沈の賞賛を、他国に譲りたいからだ」
この言葉に、妖精女王は無言になる。
英国は三征西班牙との歴史再現、アルマダの海戦を控えている。
が、その前に武蔵と交戦することになると、どうしても国力が減る。
英国の勝ちが約束されている歴史再現だが、無駄な疲弊は避けたい。
そこで、他国への要請がある。
他国へ武蔵撃沈を要請することによって、英国は国力を温存できる。
が、ここで問題が起こる。
それは、他国からの懐疑の念。
何故英国は武蔵への攻撃に参加しなかったのか?
その理由としては、正純が言ったとおりだ。
だが、それを英国から言えばもう一つ、別の疑念が生まれてくる。
英国は、自分達を疲弊させて国力を温存したのではないのか、と。
しかし、それを武蔵自らが言うことで、英国は聖連への忠誠心を示したことに出来るからだ。
正純は続ける。
「さらに。英国の新造艦隊はまだ阿蘭陀に所属している。現行の艦隊も偵察に出ていて、今から戻っても間に合わない。そして陸上部隊。アルマダ海戦が近い今、沿岸部全域に展開している。つまり、この倫敦が最も警備が手薄になっているのではないか?」
と、今度は武蔵から一歩前に出た者がいる。
副長の二代だ。
「足音から察するに約500人程度。『女王の盾符』はともかくとして、その程度。拙者一人で問題なかろう」
正純は了承を示すように頷く。
「――――さらに。妖精女王。貴女は先ほど、『王賜剣二型』があるといったが、今使えばメアリの処刑に差し障りがあるのではないか?」
それを聞いた妖精女王は、一瞬表情が変わる。
平静を装ってはいるが、正純は内心冷や汗ものだった。
……白百合とバルフェットから情報を貰っていなかったら危なかったよなー。
それはちょうど、会議が始まる前。葉月が会議で使えそうな内容を正純に予め言っていたのだ。
それを近くで聞いていたアデーレが付随するような形で色々付け加えていた。
「確かに。メアリ処刑の歴史再現に必須。だがここで無理に使用して、万が一のことがあれば、歴史再現に抵触しかねない」
「私を諭す気か?」
正純は恭しく礼を取る。
そして、武蔵は英国を攻撃しないことを改めて告げる。
妖精女王は何かを考え、
「Save you from anything」
そう誰にも聞こえないよう呟いた。
そして、正純を見据える。
「ならば聞こう。英国を同盟を結ぶ。ならばその見返りは何だ?」
「Jud.貿易です」
その一言で、全てを理解した。
……成程。そう来るか。
つまりは貿易による利益にて外界への開拓を行うということだ。
無論、他国にも向かうであろう武蔵はこの条件を出して交渉をしてくるだろう。
そうなってくると、貿易による利益が均一化してしまう。
が、最初に貿易同盟を結んでいれば、他国よりも有利に立てる。
そして外界を開拓すれば、極東に居る必要もなくなる。
「成程な」
正純は、妖精女王へと手を伸ばす。
「妖精女王。この世界の正しき道をつける第一歩として、前に進んでくれないだろうか」
しばし、その時が流れた。
妖精女王が応えようとしたその瞬間、広間の扉が開いた。
「あー。ちょっと待ってくれねえかな?」
その声は広間全体に響き渡る。
「三征西班牙。アルカラ・デ・エナレス所属。第三特務。立花・誾」
「同じく。書記のベラスケスだ」
ベラスケスは武蔵と英国を両方見つめながら話す。
「外交官としてこの会議に、物言いつけるぜ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
英国の廊下を歩く一人の人物がいた。
否、歩くとはいったが、その足は透けていた。
つまりは、霊体。
顔つきは精悍と柔和を足して二で割った、青年だった。
そして、その人物の肩には走狗ほどの大きさの、これまた霊体の少女がいた。
歩く青年は穏やかに笑顔で、肩の霊体の少女に話しかける。
「賑やかになりそうだね」
肩の少女は一回頷いた。
その青年は、歩く。
「そろそろ出番だね。まっちゃん」
どうもKyoです。
原文まんまなの、結構注意してもダメですねコレ。
どうしても原文を引用してしまう……才能ないんですかね。私。
もう完全にストーリーぶっ壊してオリジナルにしてやろうかと何回思ったことか……
そして妖精女王の本性まであと少し……長かった。
では。コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。
次回は、色々介入。そして、女王性格ブッコワレー。
私は絶望しているヒロインが救いの糸を掴もうとした瞬間に握りつぶして更に絶望する様を見たいだけなんだ! 私は変態じゃありません!(ドヤァ