境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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「読者の皆さん! Kyoをボコボコにするんだ!! これ以上嫉妬を生んではいけない!!」

「いいや! 限界だッ! 投稿するねッ! 今だ!!」


風呂場の捥がれ人2

 

白百合・葉月は魔法使いだ。

古代魔法使役士と呼ばれる特殊な一族であり、武芸もそれなりだという自負はある。

 

過去に武蔵を離れ、幾人かの王に付き。その生き様などを見てきている。

その途上で、斬った張ったの小競り合いもあった。

 

そんな危険から王を守るのも彼の役目である。

 

だが、そんな修羅場を潜ってきた葉月でも。今のこの状況は経験していなかった。

それは――――――

 

 

 

 

 

「あ、あの。それじゃあ。契約、しましょうか」

「……Jud」

 

 

 

 

 

幼馴染である少女と共に風呂にいることである。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

事の始まりは数十分ほど前に遡る。

契約の準備が出来たといわれても、どこに行けばいいのかさっぱり分からない。

 

とりあえず葉月は、浅間を探すためオクスフォード教導院内を探した。

まだ解散してそう時間は経っていない。ならこの近くにいるのでは。そう思った葉月だったが、中々見つからない。

英国内、とりわけオクスフォード教導院は葉月にとって自分の遊び場でもあったため、中の様子は手に取るようにわかる。

 

葉月は、迷いやすそうな場所を重点的に見ていったが何処にも浅間の姿はなかった。

 

「あ、いました。白百合さーん」

 

ふと、後ろから声がする。

振り向くと、そこには金髪を束ね、眼鏡をかけた小柄な少女。アデーレがこちらに向かっていた。

 

「どうしたんだアデーレ。向井の護衛はもういいのか?」

「Jud.それでですね。浅間さんが契約をしたいから来てくださいとのことです」

「ああもう外に出てたのか。Jud.何処にいけばいい?」

「Jud.お風呂場です!」

 

意気揚々と言うアデーレ。

その言葉に、現実を見失ってしまった葉月。

 

目を閉じて、その言葉を頭の中で反芻し。やがて口を開く。

 

「……あのさ。俺、生きて帰れるのかな?」

「いきなり何を言い出すんですか」

「――――スマン。ちょっとテンパった」

 

ふう、といって自分を落ち着かせる葉月。

 

「まあ仕方ないですよね。梅組オパーイ最上位の浅間さんとお風呂なんですから――――梅組最上位の浅間さんですからね」

「何故二回言ったんだ」

「だって男子って皆オパーイ好きなんですよね?」

 

そういって葉月を見るアデーレ。

その言葉に詰まる葉月。

 

「あのー。自分ちょっとした興味なんですけど」

「……何だよ」

「白百合さんって、同性愛趣味ですか?」

「断じて違うと言っておこう」

 

そんなのが好きなのは一部の人間と、同人書いてる奴らくらいだろう。

アデーレはそれ以上は追求してはこなかった。

 

「あー。で。点蔵が建てた風呂場でいいのか?」

「Jud.あ。安心してください。覗いたりはしませんので。存分にご堪能を!」

 

そういうと、アデーレは去っていった。

一人残された葉月は頭を抱えつつも、浅間が待つという風呂場に向かう。

 

途中、見覚えのある腕が飛んできて一蹴し、後ほど拳骨を決めると決意する。

 

しばらく飛んでいると、『睡蓮の湯』と書かれた簡易的な湯屋の前に浅間が立っていた。

葉月は高度を落とし、着地する。

浅間も、葉月に気づいたのか慌てて葉月に駆け寄る。

 

「悪いな。待たせたか?」

「い、いえ! 私も準備の確認していたところでして」

「そっか――――あー。ところでその。本当に風呂場じゃないとダメなのか?」

「え、えーっと……ま、あ。一応」

 

ここで、浅間はとあることを思い出す。

それは、葉月が来る前。表示枠越しに喜美に言われたことだ。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

喜美は、非常に機嫌がよさそうに言う。

 

『いい浅間? 妖精女王まであの去勢予定のハーレム男に惚れてるんだとしたら。アンタは一歩遅れてる状態なの。分かる?』

「そこでどうして葉月君が去勢されることに繋がるのか皆目検討がつきませんがね」

 

その言葉を聞き流し、喜美が続ける。

 

『浅間。アンタ葉月の契約をするんでしょ? だったら正純と同じお風呂でしなさい』

「いきなり何言ってんですか!?」

 

ダメだこの狂人。早くなんとかしないと。浅間が心の中で、どうやれば武蔵の外道空気が除去されるのかを考えていると、表示枠の向こうで喜美の横からトーリが出てきた。

 

『おーい浅間! オメエ葉月と風呂入んの? オパーイ揉ませてやるのか? そうなんだな!?』

 

ひとまず適当に狙いを定めて発射。直後、向こうでトーリだけが上手い具合に吹っ飛んで、画面外にログアウトしていった。

 

『ククク。でも愚弟の言ったことも一理あるわね。もういっそその凶暴なまでのオパーイに葉月を挟み込んでやればいいわ!!』

「な、何を言うんですか! そんなことできるわけないでしょう!? ――――だ、第一! 葉月君が私をどう思ってるか……」

『どうも思わない相手をデートに誘う?』

 

そう言われるとどうにも言葉が出ない。

 

英国に来てからの、デートの誘い。しかも葉月自身からだ。

 

ズドン中毒かつ自覚症状無しの外道な浅間だが。やはり歳相応に少女であり、意中の相手から誘われるという行為に、少なからず期待してしまうものがある。

実際、デートの最中は自分に都合のいい妄想が展開されていた。

 

『……フフフ。いい感じに乙女ってるわね。アツい! アツいわ!! 見てるこっちが溶けそうなくらいに!! 秒読み段階よねもうそうよねステキ!!』

 

表示枠の向こうで狂人が自分の体を抱きしめながら何か戯言を言っているが。少なくとも、葉月は自分のことを好いている――――――と、思う。

 

「……と、とりあえず契約ですねっ! ノルマの達成もありますし!!」

『誤魔化さなくてもいいのよ! 素直に『私の体を好きにしていいよ!』って言っていいのよ!?』

 

穢れが移りそうなので手刀で表示枠を叩き割った。

傍ではハナミが何か表示枠の操作をしているが、きっと契約の準備をしているのだろう。仕事熱心な自分に似ていて、よく出来た走狗だと浅間は思う。

間違っても「ヨゴレメーター(個人用)」といった文字は見えてはいないし、見てはいけなかった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

そして冒頭に戻るのである。

 

ちなみに二人とも湯着を着用しているので、健全である。

 

「…………」

「…………」

 

しかし。例え着物を着ているとしても、年頃の男女が一緒に風呂場にいるこのシチュエーション。限りなく、そう。限りなく18歳未満お断りな状況になる。

 

浅間はもう心臓が破裂しそうな勢いで鼓動バクバク。脳内沸騰。

 

(ど、どどどどどどうしましょう!? つい勢いにのせられてここまで来ちゃいましたけど!! で、でも葉月君も嫌がる様子はないですし……い、いいいやいや! わ、私は浅間神社の巫女! 神聖なる役職――――――のはずです!!)

 

否定する一方で、自分に都合のいい妄想を再び繰り広げる辺り、期待しているのだろう。

 

しかし、葉月もまた同じ状況になっていた。

 

(う、嘘だろオイ。嘘だといってくれよトーリィ……いや。アイツは逆に煽ってくるからダメだ。じゃなくてこ、この状況でどうしろと!? つうかもうどうしようもなくねえ!? 別にイヤってわけじゃないけどさあこの状況! 確かに男としては嬉しい限りかもしれねえけど相手が相手だからすっごい気まずい!!)

 

チラッ、と葉月は浅間を見る。

こちらの視線に気づいたのか、顔を両手で覆いながら、指の隙間からこちらを見ていた。

 

(ヤバい。つか、もう。あれだ――――――――可愛すぎる)

 

ようやく素直な結論に達したところで、葉月は覚悟を決める。

 

(とにかくささっと済ませるに限る。浅間も浅間でこの状況を気まずく思ってるはず。俺が何もしなければただの新規契約の手続きというだけで済む。以上! 終わり!!)

 

同じく、浅間から声がかかる。

 

「で。では! は、始めますね!!」

「は、はい!!」

 

思わず敬語で答えてしまった。

 

……何やってるんだ俺は!?

 

誰がどう見ても典型的なテンパり方。おそらく点蔵ですらこんなことにはならないだろう。

そんなことを考えていると、お湯が頭から降り注いだ。

 

「では。始めます。葉月君は正純と違って武蔵で初期契約をしているのでそのままでいいとして」

 

浅間が葉月の背中越しに表示枠を出した。

そこには、いくつかの神の名前とその特色について纏められていた。

 

「葉月君の特色に合わせるとこんな感じになりますが、どうでしょう?」

「い、いやその。浅間……」

「……? はい」

「…………当たってます。すんごい」

 

現在、浅間は葉月の背後にいる。

そして、その背中側から葉月に表示枠を見せている。

その際、体が密着してしまうというのは至極当然の流れである。

 

が、そうなると当然。女性のある部位が葉月の背中に当たるわけである。

 

それに気づいた浅間は一気に距離を取る。

 

「……すみません」

「いや。なんかゴメン」

 

一度持ち直した空気が再び悪化。

浅間は葉月に近づき、今度は押し付けないように細心の注意を払う。

 

「え、と。どうでしょう? この中で選びますか? それとも別のに?」

「……なあ浅間」

「何ですか?」

「トーリの――――」

「ダメです」

 

即答された。

 

「いや。まだ何も言ってないんだけど」

「トーリ君のウズメの加護はダメです。ただでさえ葉月君は無茶しているのに。これ以上無茶の内容を増やされてはたまりません」

「い、いやそこまで無茶というほどは――――」

「学校終わったらお店を開店。そのまま夜の十時まで開けて。早朝は五時に早期開店。七時にお店を閉めて、神耶君と手合わせしながら登校――――――疲労でぶっ倒れてもおかしくないんですけど?」

「いや。そこはほら。古代魔法使役士特有の魔法薬で、さ」

「薬で誤魔化してるんですか!? もっとダメですよ!!」

 

浅間は葉月に詰め寄る。

怒っているのだが、如何せん先ほどのことが思い出されて葉月はただ赤面するばかりだった。

 

「わ、分かったよ」

「いいですか? 今後はその……わ、私も手伝えるときは手伝いますから」

「あ、うん。はい」

 

神社の仕事があるんじゃないのか、といった疑問はこの際口にしなかった。

一通り目を通した葉月は、ある項目を指差す。

 

「これ、大丈夫か?」

「えーと……はい。問題ないですね。術式の代演とかはどうしますか?」

「そうだなあ」

 

しばらく、その選択した神の項目を見つめ、代演内容を告げる。

それを聞くと浅間が少し嬉しそうに、はいといって内容を許諾。

 

『拍手―』

 

ハナミが拍手を一つ。

申請内容が受理された。

 

「では後は走狗ですね。汎用走狗なんですけど。いいですか?」

「Jud.」

 

では、と表示枠を操作し再びハナミが拍手。

すると、正純と似たような箱が現れた。

 

浅間が開けると、桃色の髪をした人型の走狗が眠っていた。

走狗は目を覚ますと、いきなり目の前に現れた二人にびっくりしていた。

 

浅間が優しく微笑むと、走狗は浅間に近づいていき、手のひらに乗る。

そのまま葉月に手渡す。

 

「はい。これで契約完了です」

「Jud.ありがとう浅間」

 

葉月は手の中の走狗を見る。

走狗も自分を見上げている。

 

「……これからよろしくな」

 

葉月の言葉を理解しているのか、ぴっと手を上げる。

その後、浅間に簡単にレクチャーを受け、走狗をハードポイントに収める。

 

「じゃあこれで終わりか。なんか呆気ないな」

「まあそんなものですよ。意外に地味な作業ですから」

 

そういって浅間は笑う。

葉月も釣られて笑おうとしたが、一瞬で顔を逸らした。

 

さて。ここで思い出して欲しい。

風呂場というものは、総じて湯気が生じる。例え風呂に入ってなくても肌が濡れているものだ。

そして、二人は湯着を着ている。そう白い湯着を。

 

白という色は、総じて濡れると向こうが透けやすくなる。

 

結論。

 

「あ、浅間!」

「はい?」

「そ、それ。透けてる……」

 

浅間の胸部を指差す葉月。

そこには、うっすらと肌色の双丘が見えていた。

 

「ッ、〇#$☆∞■*!?」

 

おおよそ人間が発せられる言葉ではない言語を発し、慌てふためく浅間。

と、湯気で床が濡れていたのか、浅間は足を滑らせて、派手な音と共に風呂の中に入っていった。

 

「ッ、浅間!!」

 

迷わず、葉月は風呂の中に入る。

この風呂、かなり広く、ナルゼとナイトが翼を広げても大丈夫なくらいだ。

さらに、若干深めに造られている。

 

ちょうど仰向けの状態で飛び込んでしまった浅間。縁を掴もうにも、手が届かなかった。おまけに足は縁に乗せられたまま。

葉月は浅間を掬い上げる。

 

「おい浅間、大丈夫か!?」

「けほっ、けほっ……Jud.」

 

お湯が器官に入ったのか、咽返る。

葉月はそのまま浅間を湯の中に立たせ、一度落ち着かせる。

 

「あ、ありがとうございます」

「大丈夫か? ……いや、まあその。俺が原因なのは謝るから」

「い、いえ。私のほうこそ。変に慌ててしまって」

 

と、浅間は葉月を見る。

風呂の中には、当然だが湯が張ってある。そして、その湯に全身浸かった葉月の湯着もまた、透けていた。

 

肌に着物が密着し、素人目にも鍛えているということが分かり、普段より逞しく見えた。

男子にしては珍しく肌も白い。けれどもどこか頑健な雰囲気を漂わせている。

 

一方で、浅間も同じような状態だった。

 

豊満すぎるといって過言ではないその肌色の双丘は、着物が密着しているせいなのか、普段より押し上げられているような気もする。

その白い肌も湯に反射した光のせいで色っぽくなり、うなじが見える。

 

お互いがお互いの状態を確認してしまっていた。

 

「…………」

「…………」

 

二人はしばし顔を、紅潮というにはあまりにも赤くしすぎていた。

 

「……あの」

「ッ、わ、悪い!」

 

浅間の声に我に返った葉月。

慌てて浅間から離れようとするが、浅間自身の手によって止められる。

 

「あさ、ま……?」

「………………葉月、君は」

「……?」

「葉月君は、妖精女王のこと。どう、思ってますか?」

「どう、って」

 

突然の質問に面食らう葉月。

しかし、それでも浅間の顔は真剣だ。

 

「……どうも何も。アイツとは、ただの昔馴染みさ」

「でも。向こうは、葉月君の事を――――」

「あー。まあな。なんか知らないけど。一方的にな」

「……そうですか」

 

そういうと、葉月は苦笑する。

 

「全く。俺なんか好きになったって何もないだろう――――」

「そんなこと、ないですっ…………!」

 

ぐいっ、と着物の袖を強く引っ張られた。

浅間は顔を俯かせていて、表情はよく分からない。

 

「葉月君。沢山いいところあります」

「そうか? 自分じゃ気づかないものだけどな」

「……分かる人には、分かるんですよ」

 

顔を上げる浅間。

顔が濡れていたが、少し笑っていた。

 

浅間は、葉月の顔を見つめながら。

 

「……」

 

押し黙ってしまった。

しかし、その両腕は葉月の背中に回されていた。

葉月は、浅間を見る。

赤と緑の目が、熱を帯びたように葉月を射抜く。

 

自然と、葉月も浅間を支えるように腕を回していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァーイ! ここで賢姉の登場よ――――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、全ての色が失われた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

賢姉様:『あ、ありのままに今起こったことを話すわ。私は浅間と葉月の様子を見に行こうとしていた――――』

 

ヒュン、パァン。

書き込もうとしていた喜美の表示枠が砕け散った。

 

見ると、浅間が顔をトマトもかくやという具合に赤くし弓を構えていた。

 

「な、な、なななななん!!」

「あー。本当、これは流石の賢姉もびっくりだわー」

「ち、ちちちちち違いますって!!」

「いいのよ隠さなくて。私は分かってるから」

「絶対に分かってませんよね!? お願いですから話聞いてください!!」

「頼む喜美。マジで弁明させてくれ。いやさせてくださいお願いします」

 

この後二人は、土下座して喜美に弁明をしたそうな。

そして浅間は、一心不乱に瞑想に一昼夜費やし、葉月も葉月で神耶と戦闘訓練を繰り返していたそうだった。

 




どうもKyoです。

前書きが微妙に荒ぶっているのはご了承ください。

……これ書いているときに壁を何度も殴りそうになったのは秘密。
あー。というか大丈夫かなー。浅間、思いっきり葉月に肌見せてるけど(正確には着物越し)

ちなみに湯着というのはお風呂で着る着物みたいなものです。
普通ならそんな簡単に透けたりはしないのですが。まあ、この方が書きやすいのと。久々の浅間×葉月だったので。

……おいおい誰だよこのヒロイン。

コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

では。









FFF:『――――(行軍中)』
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