境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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身分違いの恋愛者

 

英国。夜。

第四階層の丘の上で、一人と一羽は第一階層を見つめていた。

 

一人は、極東。武蔵アリアダスト教導院所属。総長連合第一特務。点蔵・クロスユナイト。

一羽は、英国。無所属。ミルトン。

 

「行くのか? 小僧」

「Jud.そういうミルトン殿も?」

「Tes.受けた恩を返すのが当然。山中の奴も、何故妖精女王なんぞに……」

 

やれやれといわんばかりに、頭を振るミルトン。

山中・幸盛。尼子十勇士の生き残りであり、今では英国の『女王の盾符』の1であるウオルター・ローリーを名乗っている。

 

「……ミルトン殿。察するに、貴殿も尼子十勇士の?」

「Tes.尼子十勇士が生き残りの一人。横道・兵庫助と申す。〝傷有り〟様に拾われて以降はミルトンを名乗っておるがな」

 

点蔵の肩に留まり、そう話すミルトン。

点蔵はこれから自分がなすべきことのために、地図を広げる。

 

「……どうする気なのだ小僧。英国の戦士団。如何に特務の貴様といえども、この数相手では」

「元より無茶は承知の上で御座る――――それに自分。頼まれたで御座るからな」

「頼まれた?」

「Jud.」

 

点蔵は思い返す。

それは、今日の夕刻。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

点蔵が自室にてメアリの救出の策を纏めていると、扉がノックされた。

開いていることを告げると、現れたのは葉月だった。

 

「珍しいで御座るな。葉月殿が自分の部屋に来るのは」

「いや何。惚れた女を救いに行くトーリ二号を、見に来ただけだよ」

 

トーリ二号。微妙に、いや思い切り不名誉な綽名で御座るな。

若干苦い顔をする。葉月はそれを見て苦笑しながら座る。

 

「点蔵。お前、メアリは救いたいか?」

「いやその――――――Jud.」

 

最初ははぐらかそうと考えたが、自分を真剣な眼差しで見てくる葉月に対して、そんな気持ちはなくなった。

葉月も、点蔵が正直な気持ちを言ったのが伝わったのか、そっか、といって表情を崩す。

 

「アイツに、惚れたか?」

「……Jud.」

「そうか。なら点蔵。お前に頼みがある」

「……? Jud.なんで御座ろう」

「メアリを救ってやってくれ」

 

そう、葉月は言った。

 

「俺も昔は、どうにかしてメアリを救えないか考えたんだよ。けど、結局無理だった」

 

でも、

 

「お前なら。やってくれるんじゃないかな、って思えてよ」

「自分、一介の忍者に御座るよ」

「だから頼むよ。アイツに惚れてるお前が――――お前じゃないと、メアリは救えない」

「葉月殿……」

 

葉月の目は真剣だ。

求められれば応える。それが忍である己の本懐。

点蔵は迷わず、Jud.と応えた。

 

「俺さ。本当に力任せな解決方法しか思いつかねえんだ。でも、それだと今後武蔵は「武力で物事を解決してしまう危険な国家」として見なされてしまう。それも、力の象徴である古代魔法使役士を使って」

 

交渉をした末の戦闘ならばまだいい。

だが、最初から交渉も何も無しの、力による蹂躙ではダメなのだ。

 

「しかし。自分も似たようなもので御座るよ?」

「そこはまあ。問題ないだろ。正純が考えてる」

「正純殿が?」

「Jud.」

 

少し嬉しそうに葉月は言う。

 

「なんかさ。正純って俺らと過ごしている時間が短いだろ?」

「確かに。去年三河から来たので御座ったな」

「だから皆と壁を感じてるんじゃないかってな。でももう大丈夫みたいだな」

「まあ、あのクラスにいれば必然。開放的になるかと……」

「…………そうだな」

 

新たな外道が生まれなければいいが。

二人の話の終着点は、奇妙なところだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

話を聞いたミルトンは神妙に頷く。

 

「成程な。〝傷有り〟様が時折話してくださった小僧はそやつか――――その小僧の話をするときは、〝傷有り〟様も歳相応の子供のようであったな「頼れる兄」だと……」

「葉月殿は面倒見いいで御座るからなあ」

 

あの外道クラスの中で最も良識を持ち、苦労を分かち合えると信じている級友。

思えば、クラスではパシリの連続であった。

いや。それはまだいい。訓練の一環と割り切れる。

 

だが自分を弄り対象にするのは。挙句それで同人誌とかを書くのは如何なものか。やはり真性の外道共はやることなすこと常識では図ってはいけないので御座るな。

 

最終確認のため、地図に記された印をなぞるように見つめる点蔵。

すると、横から手が伸びてきた。

 

「あ。麻呂がここで紅茶買ってきて欲しいってよ」

「うーむ。既に店は閉まってると思われるで御座るぞ。トーリ殿」

「大丈夫大丈夫! 紅茶好きすぎて葉っぱから食ってるって言えば愛が通じるって!」

「それはむしろ紅茶を冒涜しては御座らんか?」

 

トーリ殿、と点蔵は隣に立つトーリを見る。

互いにしばらく沈黙した後、ミルトンとともに驚きの声を上げる。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

な、なんでここに!?

 

「オメエ重大発表するっつってんのに。どっか行っちまってよー。何がしてえんだよ。アレか? 驚嘆(ドッキリ)か、そうなんだな!?」

 

ホライゾンからの一撃を受け、全裸が英国の夜空を駆けていったが、すぐに戻ってきた。

よく見ると、その後ろに全員が揃っていた。

 

「な、何でこんなに? ――――――――ハッ! さては自分が失敗する様を見て笑うつもりで御座るな!?」

「ああ!? 何言ってんだよ! 俺らがそんな酷いことをするような連中に見えるのかよ! 仮にそうだとしても止めると思ってんのかよ!!」

「本当に最悪で御座るな!?」

 

しかも後ろは後ろでトーリ殿のパクリとか、失恋記録増やして何が楽しい、とか……

そんな中、ふと点蔵は気づいた。

 

「そういえば。葉月殿と神耶殿がおらん御座るな」

「んぁ? ああ。神耶は武蔵で待機。あ、そうだ。神耶から伝言だってよ。『目一杯格好つけていけ』だってよ」

 

ああ。まだまともなことを言ってくれる御仁がおったで御座るッ……

 

「んで。葉月は――――」

「ここにいるぜ」

 

と。背後から突風が吹き荒れた。

見ると、葉月が精霊達を従えてこちらに来ていた。

 

だが、その雰囲気がいつもと違っていた。

 

まるで――――――そう。まるで、今まで大人しかった動物がはしゃいでいる。そんな感じに見えた。

 

「葉月殿。自分。これからメアリ殿を救いに行くで御座るよ」

 

点蔵が言うと、葉月は笑顔でそっか、といった。

 

「なあ点蔵。オメエよ。〝傷有り〟救いに行くのはいいけどよ――――ただの勘違いなんじゃねえの?」

 

そう、トーリは言う。

例え救いに行っても、邪険にされればそれで終わり。

点蔵が感じているメアリからの好意。それは全て、点蔵の勘違いなのではないか、とトーリは言っている。

 

だが、点蔵はそれでも行くという。

 

「トーリ殿――――自分。本気でメアリ殿に惚れてしまったで御座るよ」

 

そう話す点蔵の声は、しっかりとした力強い声だった。

すると、ホライゾンが一歩前に出る。

 

「――――点蔵様?」

「な、何故疑問系なので御座るかホライゾン殿!?」

 

まあまあ、とホライゾンが諌める。

 

「トーリ様と同じような問いになってしまいますが。メアリ様を救いに行っても。それはメアリ様は望んではいないと。ホライゾンは思います」

「Jud.――――しかし自分。メアリ殿が失われるのは、悲しいので御座るよ」

「誰かを失うことが悲しい、と?」

 

Jud.と点蔵は頷く。

ホライゾンはしばらく考え、Jud.と返す。

 

「ならばいつか。ホライゾンが誰も失わずに済む世界を作ったのなら、ホライゾンは悲しみの感情を動かさずに済むのでしょうか?」

「――――――Jud.」

 

数瞬の間を置いて点蔵は答える。

が、とても思いつくようなことではなかった。

 

トーリは世界征服を謳い。

ホライゾンは世界の平和を謳う。

 

相反する考えを持つ者が王になってしまったのだ。

 

ホライゾンは自分なりの答えを見つけたと、トーリに報告。

トーリも、満足げに頷いた。

 

すると、快活な笑い声が夜空に響く。

葉月だ。

 

「よっし! 答えも決まったみたいだな点蔵!」

「Jud.!」

「ん。なら俺も行こう――――といっても。俺が用があるのは妖精女王のほうだがな」

 

そういって、杖を抜き払う。

 

「最初で最後の大喧嘩。キッチリ決めてこねえとな」

「ならば。私も行きますわ」

 

集団から、ネイトが前に出る。

 

「騎士は傭兵に身を落とせませんもの。それに、英国の番犬にお礼参りも出来ませんしね」

「なら。私も行くわ。あの痩せ女も出てるでしょうし、ね」

「拙僧もだ。旧派である三征西班牙とはことを構えられんからな」

「私も残ろう。誰かが終戦宣言をしないと問題だ」

 

ナルゼ、ウルキアガ、正純の三人も名乗り出た。

すると――――

 

『僕も混ぜてくれないか?』

 

表示枠が現れた。

そこには、ネシンバラがいた。

 

少し離れたところから、マクベスが暴れないよう通神で話しているようだ。

 

トーリはネシンバラを見ると笑う。

 

「おう。久しぶりだな――――――俺が送ってやったお前の昔の超大作。読んだか?」

『Jud.我ながら。自分の才能が恐ろしいね――――――昔から僕は天才だったんだから』

 

すると、ナルゼはナイトを振り向く。

 

「じゃあマルゴット。行ってくるわ」

「うん。気をつけてねガッちゃん。無茶しないように」

「……やば。その気遣いだけで私英国の戦士団の同人誌100冊書けるわ。相手は全部点蔵か葉月ね」

「何でだよ!?」

「何故で御座るか!?」

 

憤慨する男二人。

ナルゼはいつもの何処吹く風だ。

 

そして、もう一人。

 

「あの。葉月君」

 

浅間だ。

一歩前に出て、葉月を見つめる。

 

お互いに色々思うところがあるのか、頬を染める。

 

「……何。何この空気!? くぁー! なんで私はあの時覗かなかったのよ!!」

「ガッちゃんいつも通りすぎるね」

 

やかましい。

ともあれ。浅間は伝えたいことだけを伝える。

 

「……き、気をつけてください」

「お、おう。Jud.」

「クククなぁに浅間。アンタそれだけでいいの? もっと言わなくていいの?」

「な、何ですか喜美」

「べーつーにー」

 

この英国に来てからウザさがハンパなく上がってる気がするのは気のせいでしょうか。

拳をぐっと握りながら睨んだような笑を浮かべる浅間。

 

「……トーリ。貴様風呂場で何があったのか聞いてないのか?」

「それがよー。姉ちゃん教えてくんねえの」

「しかし浅間様の反応を見るに――――成程」

「ほホ、ホライゾン!? 何ですかその納得した顔は! あっ、なんで親指上げてグッジョブやってるんですか!?」

 

思わず弓を構えてしまう。

その反応に皆はわーわー言いながら散っていく。

 

いつもの光景、と葉月は笑っていた。

 

「この風景に、メアリも入れたいな」

「いやー。自分。メアリ殿には純粋なままでいてほしいというかなんというか……」

「無理だろ。このクラスにいれば大なり小なり染まっちまう」

「というかなんでこの忍者は告白成功前提なのかしらね。今までの撃墜数忘れたのかしら? ――――――身の程知らずめ」

「き、厳しいで御座るな!?」

 

まあまあと葉月がとりなす。

トーリを見る。

 

「そっちは任せるわ」

「おう。オメエらもちゃんと帰って来いよ?」

『フラグにしか聞こえないから止めようか葵君』

「コ、コイツ締めようと思ってんのにまだ続けんのか!?」

「さっさと終われよ!!」

 

全員からツッコまれた。

 

そして、トーリたちはアルマダ海戦に。

点蔵たちはメアリ救出に向かった。

 




どうもKyoです。

かなり遅くなりました。

……Fate/EXTRACCCやっていたからとか、全然そんなことないですよー?
誰かぱっつぁん呼んでこい。ツッコミが足りんわ。
あとアンデルセン。貴様の声はどっちかといったらマクスウェルだろう。
というか絶対狙ってるだろうTYPE-MOON。ジョジョネタも多いし。
そしてキャス狐は私の嫁――――異論したら同人誌。

さて。次回からようやくアルマダです。
全く。点蔵のくせに一話丸々使うとかどういうことなの。そんなに爆ぜたいの?

そして。ここからは個人的な悩みというか。

……葉月に襲名させるとしたら誰になるのかな。みたいな。

私、歴史に疎いもので。中高で習った範囲くらいしか知らないです。
よくこんなんでコレ二次創作書こうとしたな……

では。コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

次回は絶対にアルマダ書いてやる……ッ

そして英国編終わったら葉月と点蔵に神罰を……
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