守りたい?
守るんだよ。
救ってやろうじゃねえか(配点:敗残兵の救国)
武蔵。統合艦橋部。
今回、アルマダ海戦において司令塔の役割を果たす少女、アデーレ・バルフェットは指揮官席に座りながら、アルマダ海戦の流れを復習していた。
アルマダ海戦。三征西班牙と英国の海戦で。三征西班牙の衰退の節目となるものだ。
英国を一周するような軌道を描きながら、三征西班牙は撤退をしていく。
無論、実際に戦うのは自分達武蔵であるから、三征西班牙は全力で潰しにかかるだろうが。
海戦の内容を簡単に纏めると、こうだ。
1・プリマス沖にて海戦開始
これにより三征西班牙の主要艦を戦闘不能、離脱させる。
2・ポートランド沖海戦に以降
英国側はガンガン攻めていき、三征西班牙側は完全防御体制。
3・補給
三征西班牙側の補給。同じく攻める。現実は非情である。
4・カレー沖海戦
英国の火船(とにかく爆発物をありったけ積んだ船)を八隻投入させ、三征西班牙は大混乱。大打撃を受ける。
5・グラベリン沖海戦
海戦とはあるが実質三征西班牙の撤退戦と英国の追撃戦。
6・追撃終了
アルマダ海戦の終了。三征西班牙はほぼ壊滅状態。
こうなる。
史実では、このアルマダ海戦には一週間近く掛かっているのだが、英国の大きさと艦隊のスピードを考えると、ものの数時間程度で終了してしまう。
しかし、それは他所の国にも言えることで、終わりを引き伸ばして再現とするのだろう。
アデーレが全体に表示枠を操作しながら伝える。
貧従士:『――――とまあ。こんな感じです』
あさま:『向こうは損害を小さくするために早く撤退しますよね』
○べ屋:『砲弾だってタダじゃないしねー』
戦争はおそらく。この世で最も金が消費される行為だ。
無論、同じだけ生産もされるのだろうが。基本、砲弾は撃ったら終わりだし。何より終了後は艦の修復などもある。
礼賛者:『小生思いますに。なあなあで相手方とやっていくのが一番なのでは?』
白金狐:『普通ならね。でも僕達は傭兵として雇われているから。それなりの戦果見せないと英国も聖連も黙ってないし――――――何より。三征西班牙が僕たちの提案に乗ると思う?』
金マル:『確かに。だったら武蔵倒すぞー、って言いそうだよね』
そうですよねー。
内心、それも考えたが今後の武蔵のことを考えると却下せざるを得なかった。
白金狐:『……あのさ。ずーっと思ってたんだけどいいかなアデーレ?』
貧従士:『はい?』
白金狐:『何で本部名が『足りない本部』なの? どういう意味?』
貧従士:『そ、それをこの場面で言いますか不知火さん!?』
ちなみに本部の中心人物はネイトとアデーレだ。
この時点で、何も知らない人間はああ、と納得してしまうが。実際にはアデーレが攻撃系、ネイトが防御系の作戦ばかりを提案することから「互いに足りない部分を補っている」ということでつけられた本部名だ。
決して、身体のある部分が足りないというわけではない。
白金狐:『ああ納得した』
あさま:『ええっと。それより神耶君。何処にいるんですか?』
白金狐:『教導院の屋上。僕はここから全体に防御結界張るから』
金マル:『便利だよねー。ジンヤんの結界』
そう。不知火・神耶は、こと防御においては自分の機動殻『奔獣』よりも堅い。
以前。試しに特務の中でも地力の強いネイトとウルキアガが全力でぶち抜きアタックをかましたが、二人とも弾かれていた。
本人曰く「流体砲だって防げる」らしい。
……あの後、副長が『蜻蛉切』持ち出してきて、割断していく端から結界の再構築をするもんだから、最終的には全員突撃でしたねー。
そんなことを考えていると、隣に立つ〝武蔵野〟が声をかける。
「アデーレ様。そろそろかと――――――以上」
「Jud.」
今まで開いていた表示枠が一斉に消える。
それぞれの持ち場についたのだ。
そして、武蔵を覆うように六角形の透明なパネルのような神耶の防御結界が展開されていく。
ただこの防御結界。防御は完璧だが、内側から攻撃を行うとなると、一度結界を解除しなければならないらしい。
じゃあダメじゃん、とトーリに言われた時の神耶は、
「で、でも防御は凄いんだよ! 本当だよ!!」
と、まるで子供の弁明のように必死だった。
その際、涙目が可愛かったので動画に録ろうとしたが、自動人形たちの割り込みよって無に帰した。
そろそろ三征西班牙の艦隊と接敵する。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
三征西班牙。『超祝福艦隊』内部。
船室の中で、フアナはため息をついていた。
このアルマダ海戦が終われば、三征西班牙は一気に衰退の一途を辿る。
歴史再現で決められていることとはいえ、得心行かないものもある。
が、まだわずかに希望はある。
それは、武蔵の撃沈である。
現在、聖連に真っ向から喧嘩を売っている武蔵を撃沈すれば。たとえここで負けたとしても、後のヴェストファーレン会議での発言権も上昇する。
それにはこちらも同等の損害を受けることにもなるかもしれないが、目先の勝利より未来の国だ。
ふと、傍らに置いてある、書きかけの手紙に目が行く。
それは、自分が総長、フェリペ・セグンドに向けて書いている手紙だ。
何故、手紙という手段なのか。
「……総長」
と、フアナは足元から来る振動を感知した。
それは、英国へ向けての針路から、三征西班牙へと戻る方角へ転進していた。
フアナはこのような指示を出した覚えはない。慌てて外へ出る。
が、扉の前で護衛をしていた兵士に止められた。
「ッ、誰の指示でこんな艦隊運動をしているのですか!?」
「それは――――」
兵士が答えるより先に、通神で声が聞こえた。
それは、
『えっと。聞こえているかな?』
それは、聞きなれた声だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
武蔵にの大型の表示枠に、一人の初老の男性が映っていた。
『三征西班牙の総長兼生徒会長。フェリペ・セグンドだよ。ええっと。今からアルマダ海戦の歴史再現を行うよ』
アデーレは立ち上がる。
「何故、超祝福艦隊を下げたんですか!?」
三征西班牙の艦隊の内、大半は三征西班牙に向かって撤退をしていた。
英国に向かってくる艦は、最早数隻しかいなかった。
これでは歴史再現が行えない。
『いや。下げてないよ』
しかし、セグンドがアデーレの言葉を否定する。
『僕のこの旧式艦と、これから集まる艦隊が本当の超祝福艦隊なんだ』
見てごらん、とセグンドは促す。
アデーレが表示枠に映った海洋の地図を見る。
すると、先ほどまではなかった『未確認』を示すマーカーが現れていた。
「大型の漁船程度の反応です。おそらく波間に隠れていたものかと――――――以上」
「え、でも。これって……」
その数は徐々に増えていき、辺りが赤くなるほどまでに埋め尽くされていた。
それは、確かに〝武蔵野〟の言う通り、漁船を改造したものだった。
小型の砲を載せてはいるが、どれもこれも旧式艦ばかりだった。
だが、武蔵の上で待機している陸上部隊の一人が艦を見ながら叫ぶ。
「あれは――――レパントの海戦で使われた艦じゃねえか!!」
レパントの海戦。
それは、二十五年前に行われた歴史再現。
実質、三征西班牙側の敗北のような戦いだった。
それで使用された艦を補修し、さらに改造。
とはいっても、その数が膨大すぎる。
セグンドはそれを見て安心したように頷く。
「Tes.そう。その通り」
すると、次々にセグンドの許に表示枠が現れる。
そこに映っているのは、二十五年前。自分と同じ場所にいて、セグンド自身が救い上げた者たちだ。
『よお! 来たぞ!!』
『来たぞ大将!』
『約束通り救いに来たぞ――――我らが隊長!』
「Tes.皆、よく来てくれたね」
セグンドはそれに応える。
元々、大勢の前に出ることに慣れていないセグンド。現にこうしている今も、足元が震えている。
が、その胸には、微かではあるが、高揚があった。
……古臭い、使い古した言葉だけど。こういうの。いいよなぁ。
敵は経験浅く未熟な、しかし決して油断することの出来ない巨大な艦。
対するこちらは、漁船を改造したかつての海戦の残党の寄せ集め。
しかし、前に進むため。セグンドは宣言する。
「これより。アルマダ海戦を始めるよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
表示枠からセグンドは告げる。
『これから僕達は、全力で武蔵の撃沈にかかる。でも、歴史再現で三征西班牙は負ける』
つまり、傭兵として雇った武蔵ならば、例え撃沈してしまっても問題はない。後に控えている英国の艦隊によってこちらが撃沈されれば歴史再現の通りになる。
しかし、
『でも。これだけは覚えておいてほしい。ここで僕らが負けても。三征西班牙には、超祝福艦隊を残した艦隊が無傷で残る』
もしこれで武蔵を撃沈すれば、ヴェストファーレンの場での三征西班牙側の発言力が上がる。
撃沈できなかったとしても、「武蔵はその程度の戦力しか持たない」と判断されて、傭兵業は出来なくなり、信用が落ちる。
その言葉を、点蔵に表示枠を出させて様子を見ていた葉月は舌打ちする。
「レパントの敗残艦隊を超祝福艦隊として解釈すんのかよ!」
「でもこれってアリなの?」
「余所でもやってることだ。問題はない」
が、
「この総長。武蔵がやろうとしていた案を、先に構築していたのかよ!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「僕は、妻も子供も守れなかったんだ。だから総長に選ばれたとき。ああ、僕には死に場所が用意されているんだなあ、って思ったんだ」
セグンドは自分の手を見る。
「あ、はは。やっぱりね。ほら。震えてるだろ。やっぱりこういうの、向かないんだ。僕にはね」
でも、とセグンドは手を下ろし、いつもの柔和な笑みを浮かべる。
「それでも。この手で僕達の国を――――三征西班牙を守ったって、いいと思うんだ」
弱々しく、しかし。それは確実な決意の下、口に出された言葉。
すると、一つの表示枠が武蔵側から開いた。
『フェリペ・セグンド総長。いきなりの通神失礼します。武蔵アリアダスト教導院一般生徒。不知火・神耶と申します』
神耶は軽く頭を下げる。
『一つ。問います』
「Tes.なんだい?」
『――――武蔵には、古代魔法使役士がいます。そして私も、単純な火力なら負けるつもりはありません。それは、三河の時にお見せしましたね?』
「Tes.」
無論、セグンドとて承知だ。
古代魔法使役士の白百合・葉月。八卦と飯綱を組み合わせて使う独特の術式者である不知火・神耶。
この二人は、セグンドにとって最も警戒すべき対象であり、同時に。一番戦闘に来てほしくない人物だった。
『まあ二人揃えば大艦隊と同じ火力だと自負しています――――率直に言います。死ぬ気ですか?』
「死ぬ気じゃないよ。これは――――決死だ」
そう、セグンドは返した。
決死。即ち、死すらも決意し、それでも前に進もうと足掻く。
セグンドの周りに開かれている表示枠の向こうでは、力強い笑みを見せてくる仲間がいる。
「僕達は無駄に死ぬつもりはないし。武蔵を撃沈させるつもりで行く。君たちが攻撃に参加しようとしまいと。それは変わらないよ」
『もしそれで。死んでもですか?』
そうだなあ、とセグンドは頭をかきながら苦笑する。
「うん。まあその。なんだ。出来ること沢山、精一杯やったなら――――悔い、残るかもしれないけど。いいんじゃないかな」
それを聞いた周りの面々も同じく釣られて笑う。
『おいおい大将。そりゃあねえぜ』
『こっちは救いに来てんだぜ? ――――全部をよ』
『それを大将。死ぬこと前提に話すんじゃねえよ』
「あ、はは。ほ、ほら。僕、気が弱いから」
『自分で言ってちゃ世話ねえぜ!!』
そういって、楽しげな笑い声が聞こえてくる。
今度はセグンドが釣られて笑う。
神耶は納得したように、頷く。
『Jud.分かりました。お時間を取らせてしまい、申し訳ありません』
「Tes.いいよ。このくらいは」
『総長!』
神耶の表示枠が閉じると同時に、新しい表示枠が開いた。その声は、いつも耳にしている。頼りに出来る、三征西班牙の副会長。
……ああ。君にはいつも迷惑ばかりかけていたね。
でも、これで最後だ。とセグンドは目を閉じる。
表示枠からの通神は続く。
『私は! 私の意思はどうなるんですか!!』
フアナは、心の中を吐露していた。
自分を救ってくれた人が行ってしまう。
今度はもう、取り返しのつかない場所に。
『置いていっちゃいや……』
だから、フアナは思いを込める。
『おじさん!!』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
……今のは。
セグンドは愕然となる。
フアナは普段、自分を総長と呼ぶ。そしてその呼び方をする人物に一人、心当たりがある。
セグンドはふと、傍らに持ってきた手紙に視線を落とす。
フアナは兵士に抑えられながらも、涙を流しながら叫ぶ。
『ゴメンなさい……ずっと、嘘ついて、ゴメンなさい…………だから、置いていかないで!!』
その瞬間、セグンドは自分の表情が揺れるのが分かった。
……そうだ。
両腕で顔を隠す。
……守るんだ。今度も。今度こそ。
「えっと……フアナ君。なんていうのかな」
だから今は、
「……あの子のフリを、しなくて、いいよ」
腕を下げる。
果たしてそこには、いつも通りの笑顔があっただろうか。
「えーと……帰艦隊司令官?」
『Tes.』
と、表示枠に房栄が出た。
「どうやら。僕が助けた少女は、半寿族だったらしいんだ。それで、えと。フアナ君は、僕みたいなのを引き止めるために、嘘をついているんだ。だから――――無しにしてね。今の」
『Tes.フーさんは長寿族ですよ。私が保証しますよ、と』
ありがとう、と返す。房栄はいつも通りの笑みを浮かべながら、表示枠を消した。
後に残るは、自分がかつて助けた少女。
ああ。これが最後だな。そうセグンドは思う。
何か言うことがあるかな。何もないということはないが、それでも急には……
と、そこまで考え、ああ。と笑う。
……今までの感謝を、伝えきれるとは思えないけど。でも。
言わなければならない。
自分が救い、自分を救ってくれた少女に。
それは、
「フアナ君」
まるで、
「――――立派になったなぁ」
優しい父親のようだった。
表示枠が、消えた。
どうもKyoです。
うーむ。普通に投稿ペースがまちまちすぎる。
そしてそろそろネタを入れたい……
というかもう他の二次創作を書きたくてしょうがない。
緋弾のアリア
IS
遊戯王
とある系
あとホライゾンの別物。
誰か、誰か書いてほしい! 設定とか代理で考えます!(ォィ
まあとにかく今はこれを書くこと。
……合間にCCCやっても、いいよね?(エルシャダイネタが出てきて爆笑した作者
では。コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。
次回はアルマダを少しと、メアリのほうを。
ちなみに現在は英国編終わった後の嫉妬団とコラボ小説の同時進行もしております。
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