境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

58 / 61
夜空の別離者

 

アルヴィスは、超祝福艦隊の中で歯噛みしていた。

しかし、それは自分達の総長の行動を知らなかったわけではない。むしろ、アルヴィスは薄々とだが、感づいていた。

だからこそ。それを止められなかった自分が死ぬほどに悔しい。

 

「ッ……」

 

拳を握り締めるアルヴィス。

だが、それもすぐに力を解く。

 

「総長。何故、俺を一緒に連れて行ってくれなかったんですか……」

 

力はある。そのために蓄えた力だ。

恩を返したい。ただその一心で。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

アルヴィスは早くに親を亡くした。身寄りがない状態で、孤児院に預けられた。

だが、そんな時期もすぐに終わり、自分が古代魔法使役士という希少な一族であることが分かった。

それを教えてくれたのは、現在の書記のベラスケスだった。

 

『オメエさんが望むなら家に戻れる。あそこなら、古代魔法使役士について分かるだろうよ――――いずれ三征西班牙は衰退する。だがよ。どうせ衰退するなら、派手に振舞ったほうがいいじゃねえか』

 

〝俺達は金があれば使ってしまう。ただ情熱に任せて、嫌なことは全部忘れる〟

これが、三征西班牙のスローガンみたいなものだった。

結局、アルヴィスは孤児院を出て、自分が両親とともにわずかに過ごした家に戻った。

家の前に待っていたのは、セグンドだった。

 

『やあ』

『……?』

『……え、えと。三征西班牙の総長兼生徒会長のフェリペ・セグンドだよ。君が、アルヴィス君?』

『……Tes.』

 

今にして思えば、かなり。というか相当無礼な態度をとっていたのだと思う。

だがそれでも、セグンドは笑みを絶やさなかった。

 

『えっとね。君、学校に入るだろ?』

『……』

『……そ、それでね。もしよければ。僕にその手伝いをさせてくれないかな。君なら一芸試験で入学できるよ』

『…………考える』

『……うん。よく考えてね――――ところでその。君、魔法は使えるの、かな?』

 

唐突だった。何故そんなことを聞くのかと。

 

『あ、いやその。まあこの歳で何言ってんだって思われてもしょうがないけど。魔法っていうのが、見たくてね』

 

その言葉に嘘偽りはなかった。

だが、今まで古代魔法使役士の勉強をしてこなかったアルヴィスに、使える魔法はなかった。

だが、それでもセグンドは「そっか。じゃあまた今度ね」といって、これからのことを考えてくれた。

そうして、アルヴィスは入学した。

セグンドは笑いながらそれを祝ってくれた。

同時に、古代魔法使役士としては基礎の基礎。物体操作の魔法を覚えたので、約束通り、セグンドに披露した。

 

『――――うん。いい魔法だ』

 

その言葉が凄く、嬉しかった。

それからも、多大な支援をしてもらった。

だから身につけた力。身につけた知識。その全てを、自分が信ずる王に捧げたかった。

なのに……

 

「俺じゃあ。まだ、力不足なんですか……ッ」

「――――そんなこたぁねえだろうよ」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

と、後ろからそんな声がした。

振り向くと、ベラスケスがいた。

聖譜顕装である〝身堅き節制〟を背負って。

 

「ベラスケスさん」

「書記か、ベラさんでいいっての。まあいいか――――んでよ。お前さん。これでいいのか?」

「えっ……」

「俺らの総長が向こうにいる。もう結構離れちまったけど、引き返して間に合わねえ距離じゃねえ。それでお前さんは、ここで拳握って愚痴ってるだけか?」

 

その言葉に、アルヴィスは迷う。

助けに行きたい。だが行っていいのか?

三征西班牙を自分も救いたい。だが自分だけでどうにかなるのか?

すると、コツンと軽くベラスケスが術式用の絵筆でアルヴィスの頭を小突く。

 

「俺らは何処に所属してるんだ?」

「え……ト、三征西班牙(トレス・エスパニア)……」

「だったら。やるこたぁ簡単だろうよ」

 

そういうと、足元が再び揺れた。

先ほどの、三征西班牙に戻るときとは逆向きの動き。つまりは――――

 

「〝俺達は金があれば使ってしまう。ただ情熱に任せて、嫌なことは全部忘れる〟、だろ?」

「ッ、Tes.」

「まあ、金は今はねえけどよ――――金の代わりに。ド派手に騒ごうじゃねえか。武蔵も英国も巻き込んでよ」

「――――Tes.!!」

 

顔を上げた魔法使いに、迷いは消えていた。

代わりに灯ったのは、炎のような意思だった。

 

……け…………つけ

 

そんな声がした。

 

「……? あの、ベラスケスさん」

「ん? なんだよ?」

「今、何か言いましたか?」

「いんや。何も」

 

どうやら声は自分にしか聞こえないらしい。

その声はドンドン大きくなっていき、はっきりと聞こえるようになった。

 

……いつま…………話を……け…………契約をし、……

 

ふと、その一言で足が止まる。

 

(契約……? まさか……)

 

アルヴィスは、昔に読んだ古代魔法使役士の書物の一文を思い出した。

それは、精霊との契約。

基本的に、精霊界側に、古代魔法使役士たちが向かい、精霊たちと契約を交わす。

だが、ごく稀に。精霊から術者に交信(コンタクト)を取り、こちらの世界で契約を交わすことがある。

アルヴィスは、声を聞き漏らすまいと必死に集中する。

そして、その声はようやく聞こえた。

 

……いつまでも無視をするな! このうつけ、うつけ――――大うつけがああ!!

 

それは、ひときわ甲高い少女の声だった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

一方、点蔵たちは夜の英国をかけぬけていた。

途中、ネイトとウルキアガ、ネシンバラはそれぞれの相対相手の下へと向かっていった。

正純とも途中別れ。現状、英国の戦士団を蹴散らしているのは、点蔵、葉月、ナルゼの三人だ。

 

「あとどのくらい?」

「大体半分ってところだな」

 

葉月はふと、前を行く点蔵を見る。

表情は窺えないが、おそらく。メアリを想っているのだろう。

 

「……ネタの提供してくれるのは有難いけど。アンタ、マジでそういう趣味あんの?」

「何を言ってるのかさっぱり分からんが。俺はノーマルだ」

「じゃあ忍者がそういう性癖あるってことでネームを書くわ」

「い、嫌な流れキタで御座るな!?」

 

何故こうもこのクラスの人間はどんな状況でも平常運行なのだろうか、と一瞬考えたが、それも長所だとすぐに結論を出した。

思えばクセの強い連中だ。

姉好き半竜に前を行くのは金髪巨乳好きの忍者。隣を走っている同人屋に、金のことしか眼中にない商人ズ。年中馬鹿やってる総長と、同じく年中狂ってるその姉。

どうやったら、こんな濃い連中が同じクラスに一同に介すのか。葉月はふと、疑問に思った。が、どうやらその思考もすぐに終わりそうだった。

 

点蔵の両肩に付けられていた、浅間特性の飛び道具の減衰術式の符の鳥居メーターが見る見るうちに減っていくのだ。

だが、攻撃は今は受けてはいない。となるとこれは――――

咄嗟に葉月はナルゼと点蔵を抱えて路地に飛び込む。

 

「な、なんで御座るか?」

「おそらくウィリアム・セシルの荷重攻撃だ。点蔵の減衰符のメーターが下がってきてる」

「――――本当ね。地味に減っていってるから気づかなかったわ。地味忍者のせいね」

「じ、自分に罪を擦り付けないでほしいで御座るよ!」

 

うるさい。

ともあれ、葉月は二人を見る。

 

「さて。ここ先。あの二人組みがいるだろうよ。ナルゼはどっちの相手をするんだっけ?」

「あの副長。ロバート・ダッドリーよ――――ま。私一人で二人相手するんでしょうけど」

「自分思ったので御座るが。葉月殿なら抱えて空を飛んでいけるのでは?」

 

確かに。

葉月なら、翼を持つナルゼは除くとしても、点蔵一人なら抱えて飛べるはずだ。

しかし葉月は、肩をすくめただけだった。

 

「まあ、個人的感情ですごい申し訳ないんだけどさ。こういうのは礼儀っていうの? 真正面から飛び込んで。相手に相応の準備をさせるものさ――――いきなり本陣切り込みってのはな。マジモンの殺し合いにしか使わない。っていうか、空飛んで狙い撃ちされたらどうすんだよ」

「あー。それがあったで御座るな」

「気にすることないわよ。コイツが今してることだって。物凄い個人的感情だもの。っていうか欲望」

「ス、ストレートすぎるで御座る!?」

 

愕然としながら点蔵はナルゼを見るが、本人は至って涼しい顔。

葉月は呆れながらも、物陰から前を見る。

そこには、副長ロバート・ダッドリーと、副会長ウィリアム・セシルが並んでいた。

ナルゼも同じく前を見て、葉月と点蔵を向く。

 

「葉月。アンタは一人でも平気よね。なら点蔵。私がアンタを前に行かせる。多少強引だけど」

「しかし。それではナルゼ殿が……」

「いいわよ別に。もう押しつぶされるのには慣れたわ。後で十倍返し+同人の資料になってくれることでチャラにしてあげるから」

「こんなときでも最悪で御座るな!?」

「何言ってんのよ。こんなときだからこそネタの宝庫なんでしょう」

 

いいから、とナルゼが強引に話を切り上げる。

 

「いい? 私がサポートするなんてマルゴット以外にいないのよ? 本来なら泣いて土下座して自害するくらいの誠意を見せるところだけど今は省略でいいわ」

「ハードル高いなお前のサポート」

「無視するわ。だから点蔵」

 

点蔵に指をつきつけナルゼは言う。

 

「彼女。三分で掻っ攫ってきなさい」

「――Jud.!」

「よし。んじゃ行くか!」

 

三人が物陰から姿を現す。

同時に、ウィリアム・セシルからの荷重がかかる。

葉月は自身の水晶の効果により、術式を無効にしている。が、ナルゼと点蔵はそうは行かない。

すぐに、点蔵に荷重がかかり足が鈍くなる。

しかしそれも一瞬だった。見ると、自分の頭上を黒い翼が覆っている。

ナルゼだ。この荷重の中、自分の翼を屋根として、点蔵に掛かる荷重を防いでいるのだ。

 

「ななななんて強引な!」

「……っ!」

 

だが、元々上から下へとかける荷重攻撃。翼を上げるのにも相当の力が要る。

長くは持たない。

だからナルゼは、点蔵に発破をかけるように、あるいはさっさと行ってほしいからかもしれないが、それでも送り出す。

 

「さっさと行け忍者! 翼の借りは、百倍返しね!」

「承知申した!!」

 

一気にスピードを上げて、先を行く葉月と併走する点蔵。

だが、それを見逃すダッドリーではなく、己が聖譜顕装〝巨きなる正義・旧代〟の能力、武器操作を使い、アーバレストの矢を発射する。

武器操作により、矢は一直線に葉月と点蔵目掛けて飛んでいく。

葉月がそれを確認する。後ろを振り向き、手をかざす。

 

風楯(デフレクシオー)!」

 

瞬間、葉月の発生させた風の楯によって、矢は一本残らず弾かれる。

葉月と点蔵はそのままスピードを上げつつ離脱した。

ナルゼはそれを見送ると、力を抜く。

途端、セシルの荷重を食らい、地面にへたり込む。

 

「ぐっ! お、おおおおのれ小癪な!!」

「ハンッ! 馬鹿じゃないの! アイツらは忍者と魔法使いよ! バーカバーカ!!」

「う、ううるさいわね!! そ、そそそその減らず口がいつまで持つからしらね!! セシル!!」

「つぶすのー」

 

再び、重みが増した。

耐え切れず、地面に倒れこむナルゼ。

重い。ひらすら重い。まるで巨大な重石を体の上から乗せられているかのような感じだ。だが、ここで時間を稼げばあの二人が後は何とかしてくれる。

……何とかできなかったら同人誌にしてストレス発散でもしよう。葉月に至っては今後全商品をタダで食べさせてもらおう。それくらいのことはしたのだから。

掛かる重さに五体投地のような体勢になった。

 

(さっさと、彼女。連れてきなさい……同人誌のネタには、してあげるから)

 

自分はここでリタイアだと、そう思い目を閉じる。

が、ふいに掛かる荷重が消えた。

いつもの重さに戻る。それが不思議で上を見上げる。

すると――――

 

「あら? 何を見上げてるの? 私が賢姉だから? そうねそうなのねええきっとそうに違いないわ素敵!!」

 

クラスメイトの狂人が立っていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

英国海洋上では、アルマダ海戦が続いていた。

武蔵の両側を陣取るように、小型艦が車輪陣を組んでいた。

この陣の特徴は、装弾の隙がなく、無限に撃ち続けることが出来る。おまけに向こうはこちらの攻撃を防御するので手一杯で、こちらが一方的な攻撃をすることが出来る。まさしく、攻防一体の陣だった。

しかし――――

 

「くそっ! なんだあの堅い壁みたいなのは!!」

 

三征西班牙側の砲撃は全て神耶の結界によって武蔵に被弾はおろか、神耶の結界に傷一つつけることはできていなかった。

しかし、それでも砲撃は止まなかった。

 

「どうなってやがる!! 新手の障壁か!?」

「解析完了した! ありゃあ術式による防御壁だ!!」

「術式だと!? こんな馬鹿でかいの誰が出来んだよ!!」

 

術式検知で発生の出所を探ろうとする。

やがて、セグンドの乗る艦がそれを見つけた。

 

「あれはさっきの……」

 

そこに映っていたのは、先ほどセグンドに対し通神を繋げた少年。不知火・神耶だった。

彼は教導院の屋上で錫杖を構え、そこから淡く白い光を出して、結界を維持していた。

セグンドの下に表示枠が現れる。

 

『大将! 次どうする!?』

「大丈夫。あれが術式なら、そのうち内燃拝気が切れる。そう長くは持たないよ――――結界が切れたとき、一気に砲弾を撃ち込んでくれ」

『よぅーし! お前ら聞いたな!! 弾ケチってんじゃねえぞ!!』

『応よ!!』

『任せろ大将!!』

 

だが、三征西班牙は諦めなかった。

如何に無駄と分かっていようと、砲撃を止めず、武蔵に一方的な防戦を強いていた。

結界を維持しつつ、神耶もまた考えていた。

 

(うーん。流石に諦めてはくれない、か)

 

この程度で諦めるならそもそも超祝福艦隊を下げたりはしなかったんだろうな。

神耶は自分なりに分析しつつ、表示枠を一つ開いた。

通神先はアデーレだ。

 

「アデーレ聞こえる? 砲撃のパターン解析は出来た?」

『Jud.! すみません不知火さん! 防御ありがとうございます!!』

「Jud.Jud. ――――じゃあ、解くよ」

 

瞬間、今まで武蔵を覆っていた神耶の障壁が消えていく。

相手は好機とばかりに撃ち込んでくるが、神耶の消えた防壁に代わって、武蔵の航行用の仮想海の水柱が砲弾を防いでいた。

そして、今まで待機していた攻撃隊が砲撃を開始した。

その様子を見て、神耶はほう、と少しため息にも似た吐息をもらす。

 

「……ゴメンね。卑怯っぽいよね。この守護結界」

 

でも、

 

「武蔵をやらせるわけには。いかないんだ」

 

三征西班牙の車輪陣に砲撃が加えられた。

整備も改造もしてあるとはいえ、元々は二十五年も前の旧式艦。こんな大規模戦闘に耐え切れるほど頑丈な造りには残念ながらなってはいなかった。

そのうち、車輪陣を形成する艦が数艦沈み始めた。

 

「ちくしょう! 車列が切れた!!」

『すまん!!』

「謝んな! 生き残れ!!」

「次の砲撃来るぞ!!」

 

次々と武蔵側から放たれる砲撃。だが、三征西班牙も負けじと撃ち返す。

神耶の結界が作用していない今、仮想海による守りに転じている武蔵。それは防御の低下も意味している。

パターン解析をしようとも、防げない砲弾もある。

アデーレは統合艦橋部から指示を繰り出す。

 

「攻撃隊! 敵の陣形を完全に断ち切ってください!! それを以って、プリマス沖の海戦に決着(ケリ)をつけます!!」

 

だが、三征西班牙の火はまだ消えていなかった。

それどころか、激しく燃え上がるように勢いづいていた。

 

「武蔵が前進するぞ!!」

「逃がすなあ! 車列を組み直せ!! こっちも前進して大将たちと合流するぞ!!」

「応ッ!!」

 

アルマダ海戦は、まだ始まったばかりだ。

 




どうもKyoです。

サンライズの超過駆動。まさしくその通りだと思いますね。

アニメで見て三征西班牙側のモブたち見て熱くなったのは私だけじゃないと信じたい。
軽く涙腺まで崩壊しかけましたからね。

あと。ようやくアルヴィスに契約フラグ。
この台詞で分かる人は分かるでしょう。誰が来るのか。

これを書きながら、アニメを見て、やっぱりホライゾン二次増やそうぜ! とか思ってしまった。
これ以上の連載は正直避けたい……避けたい……避け、たい……

書いちゃったよネタ帳の彼をorz

まだここに載せてはいませんが、Wordに保存してあります。
プロローグみたいな形ですけどね。

では。コレを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

次回もメアリ救出&アルマダです。








Fate/EXTRACCCセイバールート完了……やってくれたなきのこ!(褒め言葉
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。