2013年。7月8日改定。
さて。
トーリが泣く泣く葉月の夜食を諦めさせられて。幽霊探しが始まった。
前もってトーリが作っていた籤による組み合わせは、
東・トーリ・シロジロ・ハイディ
浅間・直政・アデーレ・鈴
葉月・ペルソナ・ネシンバラ・喜美
点蔵・ウルキアガ・ナイト・ナルゼ
イトケン・ネンジ
となった。
残ったハッサン・御広敷・ノリキはカレー作成班に回った。(ノリキは御広敷がロリコン罪で捕まらないように念のための見張り)
それぞれの階を担当し、終わったら外に出てくると言う単純なもの。
だが、あのトーリが主催で仕込みなのだ。
絶対に何かある。そう全員の脳裏によぎったのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「よし!」
「いやよし、じゃないですよ!?」
ここは浅間を筆頭にした除霊組。
今しがた、廊下の奥に浅間が何かを感知して矢を射ったところだった。
矢に当たった何かは光を残して消え去った。
「……いつも思うんですけど。何で撃つときはあんなにハキハキしているのに。白百合さんの前だとあんなになるんですかね?」
「アレでもまだアサマチが女だってことだろうさ――――辛うじて、な」
「なん、か。可哀想……」
……なんか一発撃っただけでこの言われようなんですが。あとマサ。辛うじてってなんですか辛うじてって。自分で言うのもなんですけど。これでも結構女の子してると思いますよ。
浅間は歩を進めながら、時折弓を撃ちながら思考する。
(大体。葉月君も少しは気づいてくれてもいいと思うんです。そ、それはまあお互いに一仕事ある関係上時間の都合とかは付きませんけど――――でも時々神社の掃除とか手伝ってくれるんですよね。しかも私より手際良いって、あれ完全に主夫ですね――――主夫……)
となると私が稼ぎ? いえいえ。葉月君立派に店を切り盛りしているじゃないですか。そうなってくると、神社との両立? え、二人で一緒に? 嫌ではないですけどどうしましょうえへへ…………
「あ、あの浅間さん。ものすっごいイイ笑顔で矢を番えないでくださいよそこらの怪異より怖いです!!」
え? と浅間が口元に手を当てる。
形で大体分かるが、物凄いにやけた笑いを浮かべていた。
「ま、大方葉月のことでも考えていたんさね」
「うっ……」
当たっているから反論が出来ない。
何とか口元を戻そうとするが、一度始めた妄想による副作用は中々収まらなかった。
仕方ないので、何もないが向こう側の空間に一発矢を撃ち込むことによって精神を安定させた。
「……霊視も何もないけど。今の一撃は絶対にいらないと思うんだがねえ」
「い、いいですから! はい! つきましたよ図書室!!」
浅間は会話を中断させるべく手を叩き、目の前の部屋に意識を向ける。
そこには図書室と書かれていた。
「私達はここで終わりでしたっけ?」
「ええ。まあトーリ君のことなんで何かしら絶対に仕込んでいますけど」
「そこで断言する辺り、微妙に信頼が見えなくもないですね……」
嫌な意味での信頼ですけどね。
浅間たち一行は図書室の前で止まる。
そして二回拍手の後、一礼をして浅間が扉を開ける。
そこには足の生えた、謎の絵が描かれたシーツと抱き枕がいた。
「………………」
沈黙が場を支配する。
すると、抱き枕の方に書かれている絵からほんのりと何かが滲む。
「だ、大丈夫? 大丈夫?」
「ん、大丈夫だコニタン。ちょっと鉄分が外に出ただけ」
シーツが抱き枕を心配する。
そんなカオスの只中で、浅間は全てを投げ出したくなるのを必死に堪え、目の前の相手を分析する。
……確か、あの絵は
かなり歪に、しかしそれと分かる最低ラインを残している部分から絵を判別する。
聖連への嫌がらせなのか。はたまた本気で受けると思って作っているのかは定かではないが、主人公であるバンゾックが皮を剥ぎたがりの生贄大好きというどうしようもない設定のキャラのアニメ。人気があるのは、アニメでのバンゾックが可愛いからだろう。
バンゾック、らしき絵を描かれたシーツと抱き枕はしばらくその場で蠢いていたが、やがて体勢を立て直すと、
「新しい、価値観――――!!」
突っ込んできた。
直後、浅間が無表情で矢を撃った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
葉月たちの階でも、浅間の禊の術式を込めた矢を放つ音や、ナイトとナルゼの
「あー。やってるなぁ」
「これ、後で修繕費回ってこないかな」
「その場合馬鹿に任せようぜ」
「Jud.それが一番だね」
葉月とネシンバラはこれが終わった後の始末を考えていた。その後ろではマッチョの巨体にバケツを被ったペルソナが周りを見ながら後を追う。
では残った喜美は?
怪異。お化け。心霊現象。そういったオカルトに耐性がゼロを通り越してマイナスな喜美が夜の校舎をマトモに歩けるはずもなく、これでもかとばかりに目を力いっぱい瞑り、両腕で葉月にしがみつきながら進んで――――否。引きずられていた。
「お前頼むから自分の足で歩いてくれ。歩きづらくてしょうがない」
「仕方ないよ白百合君。葵姉君は、こういったことにマジ耐性ないから」
「ならなんで外にいなかったんだよ。少なくともここより人は多いぞ」
「な、何言ってんのよアンタ。外に出たら出たで賢姉の美しさに引かれて大量のお化けやら怪異やらが寄ってきちゃうじゃない!」
「それはここにいても変わらないと思うがな」
「いいわ! いいわよ! つまりは賢姉であるこの私が全てなのね! さあやってきなさい幽霊共! 来たら来たで私はソッコ気絶するけど!! だから来ないで!」
「挑発してるのかビビり宣言しているのかどっちなんだ」
「深く考えると狂っちゃうから考えないほうが良いよ――――まあそんなこと言うとあっちこっちから寄ってくるかも」
「ドンとカ――――ム!」
それじゃあドンと来いと言ってるのか、来るなと言ってるのか判断つかんぞ?
葉月はいつものように奇行奇声を上げる狂人を放っておこうとしたが、制服の裾を相変わらず掴まれており、結局ズルズルと引っ張っていくはめになった。
葉月たちはそのまま担当の場所まで進んでいったが、特に何もなく。クラスメイトが外に出るのを感じて自分達も出ることにした。
が、ここで一つ問題が出てきた。
葉月たちの目の前に青白い火の玉が現れたのだ。
「アレって――――」
「ひいいぃぃぃぃ! 鬼火よ鬼火! 人食ってヒャッハーしたあげくに現世からコンニチワよ!!」
「意味わからんしアレは鬼火じゃなくて狐火。神耶の奴。いないと思ったらトーリの方につきやがったな……」
「ああ。やっぱり」
葉月は火の玉に近づくと、背負っていた杖を抜き払いまるで野球選手がバッティングをするように杖を振るう。
杖にぶち当たった火の玉はそのまま慣性に従い、一直線に飛んでいった。が、途中で何かに当たったらしく、その火が消えた。
「そこにいたか。神耶」
「……葉月、酷い」
そんな声が近づいてきた。
窓から入ってくる月明かりに照らされているのは、本格的な和装をしている不知火・神耶だった。
しかし。
「尻尾焦げるかと思った……」
そういって、神耶はおそらく火の玉を防ぐために使用したと思われる金毛の尻尾を撫でる。
不知火・神耶は人狐と呼ばれる異族だ。
文字通り、狐が本性なため性格もそっちに寄っている。
――――思考が物騒なのは別に関係なく、ただ純粋であるが故。周りの空気に過剰に毒されやすいのだ。
涙目になりながら神耶は葉月を睨む――――その姿でさえも可愛いと認識してしまうので効果は皆無なのだが。
「そう睨むな。つうか暇ならコイツなんとかしてくれ」
そういって、喜美を指差す。
神耶はため息を付き、苦笑しながら喜美を背負う。
「もう苦手どころか弱点って言っていいのに。何で参加するのかなー喜美は」
「フフフ神耶。この賢姉に弱点なんて存在しないわ! ええそうよ! ただちょっと歩き疲れただけだから!」
「そっかー。ところで喜美。肩についている血みどろの落ち武者についてなんだけど――――」
ガクンッ、と首が外れるのではないかと思われる速度で喜美は気絶した。
「お前も大概酷いな」
「んー。まあでも皆よりマシだよ」
「お前が一番酷いんだよ――――ってかお前。先生と一緒じゃないのか?」
「先生には言ってあるし。今は宿直室でお酒飲んで寝てるんじゃないかな?」
「あの人は……」
確か今日は最近怪異が多発しているからとか言って宿直入れてるとか言ってなかったか? あの時一瞬でも尊敬した気持ちを返してほしいんだが。
葉月たちが外に出ると、そこには既にトーリを除いた全員が集まっていた。
「結局。こうなったか」
「あ、葉月君。大丈夫でしたか?」
「Jud.こっちには何も出なかったし。そっちは?」
「え、ええと。出たといえば出たんですが。非常に形容し難い生物でして……」
「は?」
「い、いいえ! なんでもないです!」
やや挙動がおかしかったが、まあ日常の範囲内だろう。葉月は特に気にしなかった。
隣では神耶が気絶している喜美に対して起きるように揺さぶっているが、それだと首が危ないので止めたほうがいいのではないかと考えていた。
すると、突然怒号が響いた。
武蔵王ヨシナオの登場だった。
「これは何事であるか! 麻呂の管轄でこんな騒ぎ! 主犯は誰であるか!!」
葉月は面倒そうに頭を掻く。
元は
やや高圧的ではあるが、正義感の強い人であり。この武蔵一外道なクラスの被害者となっている人だ。
冷静に話せば分かり合える人ではあるが、如何せん騒ぎの原因が自分達のトップなのだ。どう説明していいものか分からない。
が。そんな葉月の懸念はすぐに吹き飛んでしまった。
鈴が武蔵王の声に驚いて泣き出してしまったのだ。
視力がなく、その代わりに聴力が人の数十倍は優れている鈴。故に、突発的な大声や爆音は彼女にとって不意に驚かされているようなものだ。
武蔵王のすぐ近くに鈴がいたのも災いした。
そして、葉月がどう収拾つけようか悩んでいるとそれらを全て払拭する存在が校舎の窓からこちらを見下ろす。
トーリだ。
「うおっっと武蔵の貴重な前髪枠が泣かれているぞ! あ、あそこに麻呂のコスプレした馬鹿がいるぜ! あいつが犯人だな!」
「コラァー!! 我は本物の武蔵王ヨシナオであるぞ!」
「はぁ? 知らねーの? 麻呂は友達いないから今頃一人でマインスイーパやってんだぜ?」
「貴様―――――!!」
「ひゃあぁ…………ぁ」
ヨシナオとトーリが互いに声を張り上げ、その声でさらに鈴が泣いている。という悪循環が生まれてしまった。
が、不意に鈴の泣く声が止まり、鈴はある一点をさした。
「あ、あれ……」
そこを全員が見ると、山の方から煙が上がっていた。
「何さね。あれ」
「あそこは聖連の番屋があるところだよ。今は三征西班牙がいるはずだけど……」
ネシンバラが場所の当たりをつける。
と、シロジロが表示枠を開き商工団と連絡を取ろうとしていた。が、
「……おかしい。通神が繋がらない」
表示枠には相手の呼び出し中のままだった。
全員が全員、急に起きた出来事を把握しきれずにいた。が、トーリがいつもと同じ口調で解散を促すと、全員がそれに従っていく。
武蔵王も不承不承ではあったが、現状の優先順位を変えたらしい。帰っていった。
葉月は未だに煙を上げている場所を見つめる。
すると、鈴が去ろうとする皆を止めて、再び指差した。
そこには東がいた。
「……余が、何?」
「あっ。東後ろに」
「え、後ろって……」
見ると、そこにはかなり幼い少女が東の服の裾をつかんでいた。
だが、透けていた。
つまり――――
『……ぱぱ いないの まま みつからないの』
正真正銘。本物の幽霊だった。
「で、出た――――――ッ!!」
「…………ん」
「あ、喜美。今起きないほうがいいよ」
「……あら神耶。何? 何が――――」
「ああもう。また気絶しちゃったよ」
どうもKyoです。
ようやく次回からは三河のあの人が出てきます。
ダっちゃんは……無理かなぁ。出したいけど。
あと調子乗って原作三巻買ったらなぜか四巻も全部買ってしまったという。
あれ、おかしいなぁ。財布が寂しくなっていくなぁ。
最後に。これを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。
それでは。