境界線上のホライゾン~王のための剣と盾~   作:Koy

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武蔵の騎士

本多・正純は悩んでいた。

昨夜の三河での松平・元信公の言葉。

 

自分とともにいた、そしておそらくこの武蔵で一番打ち解けている相手。P-01s、ホライゾン・アリアダスト。

そのホライゾンの魂に大罪武装『焦がれの全域』があるなんて、夢にも思わなかった。

 

極東の大量破壊兵器所持は違法。教導院に通わなくても、皆、それくらいは周知の事実。

 

故に正純はあのとき、連れ去られるホライゾンを引き止めず、抵抗しようとしたトーリを蹴り飛ばした。

だが、それでよかったのだと正純は自分に言い聞かせる。

 

あのままトーリを放っておいたら、聖連によって処罰が下されていた。

結果として正純は、トーリを救ったことになる。

 

それに、ホライゾンの引責自害はこちらにもメリットはある。

 

そう。これでよかったのだ。

だが、

 

「……なんだか。心が苦しいな」

 

正純は教導院へと向かう道すがら、そんなことを呟く。

暫定議員である父のおかげで、自分だけは権限を奪われずに済んではいる。

 

そしてその父親からは、今日は教導院に行くなとも言われた。

 

おそらく、皆と結託するのを防ぐためだろう。

だが、ここで予想外のことが起きた。

 

一般生徒による叛乱。自分に対する不信任決議だった。

実際のところ、正純はそのことを失念していた。

そして父から、行って止めてこいと言われた。

 

このとき正純は、何をやってるんだ、とも思い一方で、やっぱりか、とも思っていた。

 

何しろ自分達の長が異例中の異例の馬鹿なのだ。

何をしても驚かない。

 

と、正純は教導院に向かう途中、クラスメイトの直政とネイトに出会った。

 

「あら、正純」

「ミトツダイラに、直政か」

「やっぱ教導院さね?」

「ああ。お前らもか?」

「「Jud.」」

 

ネイトは騎士階級の代表として。直政は機関部代表として。教導院側と相対するようだった。

自分も含めて三人。

 

「まあ。なるようになるか」

 

そう、正純は呟く。

 

そうして三人は教導院についた。

そこには既に、三年梅組の生徒全員が揃っていた。

 

そして、白い何かを担いだシロジロが一歩前に出る。

 

「元会計、シロジロ・ベルトーニだ。よく来たな」

 

その白い何かを床に叩きつける。すると、その白い何かは「あひん!」という気持ちの悪い声を出した。

 

「この臨時生徒総会で、今後の武蔵の方針を決めるという同意を既に全生徒から得ている」

「つーかなんだい。そのトーリみたいなものは。春巻?」

「今は餃子だ」

 

と、白いものからトーリの顔が出てきた。

 

「馬っ鹿違ぇよ! 今は巻寿司だよ! 海苔が白いからライスペーパー―――」

「黙れ!」

 

シロジロが思いっきり蹴り飛ばした。

そのまま巻寿司トーリは転がっていき、やがて白いカーテンが全部剥がれた状態で正純の足元に転がった。

 

全裸だった。

 

正純は無言でトーリを蹴り飛ばし、梅組生徒にトーリが向かっていった。

 

「うわぁー!」

 

梅組生徒が全力でトーリを避けた。

 

「お、オメェらそこで止めるとかそういうことねえの!?」

「トーリが全裸なのが悪いと思うな。僕」

「つーか存在が病原体みたいだから触ると馬鹿移るだろ」

「ひ、酷いわ! そんな風に俺を見ていたのね!」

 

と、しなを作って女座りでへなへなとへたり込むトーリ。

それを見た葉月は、背負った杖を抜いて再び校舎側に叩き込んだ。

 

「すまんシロジロ。続けてくれ」

「Jud.で、だ。シンプルに行こう。そちらが聖連側。こちらが武蔵側ということだ。そちらが勝てば、武蔵の移譲。こちらが勝てば、ホライゾン救出だ」

「Jud.それでいい」

「んじゃ、相対始めましょうか」

 

オリオトライがそういうと、直政が一歩前に出た。

 

「それじゃ、あたしが最初に出ようかね――――――接続(コンタクト)

 

直政が義腕の右腕で表示枠を出し、それを割ると、空から何かが降ってきた。

それは、赤と黒を基調とした武神だった。

 

「重武神『地摺朱雀』。あたしが地上にいた頃、壊れた武神のパーツの寄せ集め。今じゃ機関部一さね」

 

『地摺朱雀』を見上げる梅組。

 

「直政殿、随分と本気で御座るな……」

「というかこれ。本気で死ねますよ」

 

点蔵と御広敷がそれぞれ唖然としている中、トーリが戻ってきた。

 

「よし。ならシロ。お前行け!」

「ちょっ、トーリ殿!? 何故に生粋の会計であるシロジロ殿をあんなやる気全開の直政殿にぶつけるで御座るか!? 何か策でも!?」

「決まってんじゃんか点蔵――――――私怨だよ」

「さ、最悪! 最悪で御座るよこの御仁!!」

「だってー。コイツいっつも俺のことを馬鹿にするし! たまには酷い目に会って、自らの行いを反省してください!」

 

それを聞くと、シロジロはため息を一つついた。

 

「つまり勝てば私の言動は正当化されるわけだな。安い買い物だな」

「あれ? なんかお前やる気になってない?」

「当然。リスクは高いが見返りも大きい」

 

そういうと、シロジロも前に出る。

ふと、神耶の耳がぴくっ、と動いた。

 

「おわっ! 神耶! お前いつの間にケモナー大喜びモードになったんだよー!」

「ついさっき。ちょっとテンション上がってね。それよりも、さ」

 

ふと、神耶は左を向く。

 

「……」

「どうかしたのか神耶」

「……いや。何でもないよ。多分ね」

 

そういって、神耶は前を見る。

 

「始まるね。武蔵の今後を決める一戦目が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

一戦目が終了する頃、ホライゾンを乗せたK.P.A.Italiaの艦を表示枠越しに見つめる二人の人。

 

西国無双にして、三征西班牙の第一特務。立花・宗茂。

そしてその妻であり、同じく第三特務の立花・誾。

 

二人は、ホライゾンを見ている傍ら、武蔵アリアダスト教導院の臨時生徒総会も見ていた。

 

「宗茂様。この臨時生徒総会が終わる頃には、姫の自害は終了しているのですね」

「Tes.」

「でももし。戦争になったら……」

「心配ありませんよ」

 

と、宗茂は言う。

 

「しかし、極東には神奏術がありますからね。それは要注意です」

「神奏術?」

「Tes.先ほども見たとおり、神に何かしら奉納することで全ての術式を使えるようです」

 

と、宗茂は自分の見解を述べる。

 

「それに」

 

宗茂は梅組生徒にいる二人をアップにする。

すると、誾の顔がやや寂しいものになった。

 

「宗茂様……こちらの男子生徒はともかく、女子生徒は……ま、まさか……!」

「あ、あの誾さん? 何か勘違いしているようですが、この子は男ですよ?」

「―――」

 

驚愕と絶望が入り混じった、といった顔だ。

 

「……ま、まさか禁断の―――」

「誾さんそれ以上はいけない!!」

 

首の後ろ当たりに冷や汗を掻きつつ宗茂は即座に否定する。

その背後では、

 

「嘘だろ……俺、ちょっと胸にキュンて来たじゃねえか……」

「そんな、理不尽よ……あんな髪サラサラそうで、肌がプニプニで男なんて……」

「やべぇ俺ちょっと衆道に目覚めてくるわ」

「よしちょっとそこ動くな」

 

グワシャァ! と約一名鉄拳制裁を受け正気に戻った。

宗茂はそれをよそに説明する。

 

「こちらの男子生徒。先ほど教皇総長から連絡がありまして」

「教皇総長から?」

 

Tes.と宗茂は返事をする。

 

「『何しでかすか分からんから何かあったら手を出すな』と」

「……? 何かあったら、手を出すな?」

「Tes.その方が被害がない。とのことです」

「はあ……それではこちらの……」

 

ちらっ、と表示枠に映る神耶を見る。

 

「――――――少女のような男子(オトメン)生徒は」

「さり気無く新しい単語を生み出しましたね誾さん。流石です」

「宗茂様……」

 

誾は宗茂に熱い視線を送った。

直後、周りが下敷きなどで互いに冷却しあっていた。

 

「この生徒。名前を不知火・神耶というらしいんですが。どうも不可解で」

「不可解、とは?」

「今までの足跡がまるで分かりません。出身はおろか、出生までも」

「それは……」

 

確かに。これは不可解、というより異常だ。

普通、この世界に生まれたものは当然ながら出生届を出される。

稀に、ホライゾンのように隠し子的なものもいるが、それにしたって出生届は出される(偽名が多数だが)

 

だが出生までも不明となると、最早不確定因子でしかなかった。

 

「……宗茂様」

「Tes.なんでしょう」

 

と、誾は宗茂の手を握る。

 

「負けないでくださいね」

「……Tes.」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

一戦目はシロジロが勝った。

空いた物権を買い取り、普通なら障壁でガードされるところだったのだが、シロジロの所有物になったため、障壁が働かずに朱雀は撃沈した。

 

「これで一勝、か」

「次は……」

 

ダンッ、とネイトが背負っていた黒柱を橋の上に置いた。

 

「次は私ですわ。騎士銀狼(アルジョント・ルウ)、ネイト・ミトツダイラが問いますわ。主無き今。一体何を持って、私達騎士を従えるんですの?」

 

そういうネイトの眼光は鋭い。

 

と、梅組全員がスクラムを組んだ。

 

「で。どうする?誰行くよ」

「可能なのは、点蔵、ウッキー、ノリキ……」

「流石に無理だ」

「じゃあノリキ除外で。あとは神耶と俺か」

「あ、あの葉月君? 葉月君は疲労符ありますから無理なんじゃ……」

「戦えるよ。俺も」

 

と、隣でスクラムを組む神耶にはその力が伝わる。

 

「あのさ。一つ疑問いい?」

「どした神耶?」

「うん。多分、ネシンバラも思ってること」

「ああやっぱり?」

「どういうことだ?」

 

葉月が聞くと、ネシンバラが答える。

 

「騎士って普通に考えて一般人よりも地位が上なんだよ? それなのに相対するのはおかしいでしょ。だって騎士は民を支配出来る側なんだから」

「……ああ。そういうことか」

「えーと……ネイトは俺たちより偉い。普通なら俺たち守る。だよな?」

「……トーリにしてはよく出来たね。偉い」

「神耶に言われるとなんか普通に馬鹿にされるよりも傷つくぞ……」

「で。まあ、そこが変だよな。つまりネイトは何か理由あってここにいるんだ」

 

全員がネイトを見る。

いきなり視線を振られて流石にたじろぐネイト。

 

「な、なんですの?」

「今から相対の相手決めるから待っててね」

「あ、えー……Jud.」

 

再びスクラム。

 

「じゃあその理由クリアすれば、ネイトはこっちの味方なんだよな?」

「Jud.そうなるね」

「よかった。だってネイトと敵対するの。嫌だもんな」

 

と、トーリは言う。

それに葉月はふっ、と笑う。

 

「んじゃ。ちょいとばっかし、ネイトには反省してもらわないとな」

 

そういって、トーリはネイトに相対するものを見る。

 

「頼むわ」

 

その者はスクラムから抜け出て、ネイトの前に立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあよろしく頼むぜ。武蔵アリアダスト教導院所属。白百合・葉月が相対をしよう」

 




どうもKyoです。

ベルさんちょっとお休みで。

そして最近五巻を買いましたが高い高い。財布のダイエットにはちょうどいいですねちくしょう!
でもまさかあの五巻下の表紙が……ねぇ。

あとやっぱり男の娘枠が出てましたね。片桐君。頑張れ超頑張れ。

最後に。これを読んでくれている全ての人に無上の感謝を。

それでは。

次回で臨時生徒総会は終わりにしたいなぁ。
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