貴方に視て欲しくて 作:カフェかわいい
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『おおっとぉ! 日本の無敗ウマ娘! バ群に飲まれてしまった! ここから抜け出すのは厳しいか!?』
異国の言葉の実況が響く。それをどこか他人事のように聞き流している自分がいる。
いつも通り無表情な、けれど苦渋を浮かべる彼女から視線を逸らす。
空を見上げれば日本と変わらない青空がそこには広がっていた。
思えば、遠くまで来たものだ。
勝って、勝って、勝ち続けてやってきたのは世界最高峰のレース。
多くのウマ娘が夢を見て、望み、そして散っていった世界の果て。
正直ここまで来れただけでも十分だと思うし、これ以上望むのは酷だろう。
いや、そもそも自分は彼女に何かを望んだことなどあったのだろうか。
請われた。だから手を貸した。
彼女が勝利するのは嬉しかったし、誇らしかった。
でもそれだけだ。
彼女を鍛えて能力値を上げ、ベストコンディションになるように調節し、最良の状態でレースに出場させる。
与えられたトレーナーとしての仕事をしているに過ぎない。
人を人として見ていない。ただの数値の集まりとしか認識していない異常者。
それが自分だった。
結局自分はこの世界では異物でしかないのか――。
どれだけ他人の能力、才能を
能力値、才能が他者より高くとも、コンディションが最高であっても、勝てない勝負はある。
レースに絶対はないのだから。
――目を背けないで。
不意に声が聴こえた。彼女
視線をレースに戻す。遥か遠くを走るはずの彼女と目が合った。
最初に驚き、次に悲しみ。そして――怒り。
レース中、彼女の感情がここまで揺れるのを見るのは初めてだ。
どうしてそんな顔をするのだろう。
初めての敗北、その事実を受け入れられないからか。
それとも自分のような異常トレーナーが彼女の担当だという事実を今さらながら後悔したからか。
残念ながら本心を知ることはできない。
自分には心の声を聴く能力はなく、人は数値だけでは理解できないのだから。
彼女が瞳を閉じる。それは一瞬の出来ことだったはずなのに、とても長い時間に感じた。
目を開けると先ほどまであった感情は全て消え去りこちらへ何かを呟いた。
――
そう言った気がした。
レースも終盤。位置取りは最悪。
最後尾付近にいる彼女がここから巻き返すのはほぼ不可能だろう。
しかし彼女は諦めてはいなかった。
その瞳に宿るのは――覚悟。
いつも以上の闘気を身に宿し、彼女は身体を深く沈める。
漆黒の猟犬が、立ちはだかるバ群を喰い破った。
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ウマ娘プリティーダービー新時代の扉を映画館で視よう!