貴方に視て欲しくて 作:カフェかわいい
ウマ娘プリティーダービー新時代の扉を映画館で視よう!
◆
世の中、何が起きるかわからない。
会社がいきなり全焼したり。
友人に愚痴るため飲みに行ったはずが怪しい勧誘会に連れていかれたり。
そこから脱出する際に階段から落ちたり。
――気が付いたら赤子に転生していたり。
知らない天井。
ここはどこかわからないが知らない場所なのは間違いない。
とりあえず考える時間ならいくらでもあるので、今は眠気に負けるとしよう。
◆
この世界はおかしい。
新な生を受けて数年。目の前の映像に理解が追い付かなかった。
剣と魔法のファンタジーの世界というわけではない。
自分のよく知る現代社会とそう変わらない、技術的には2000年より前程度の世界だが一点だけ大きく異なるところがある。
それは――。
『伸びる伸びる! 最終直線で後続を突き放し進んでいく! その差は3バ身!』
ブラウン管テレビから実況が響く。
そこには人が走っている映像が流れていた。
いや、厳密には人ではない。
獣の耳と尻尾を生やした獣人のような生物がレース場を駆けていた。
「なにこれ?」
思わず声がこぼれた。
「リュウちゃんはウマ娘のレース視るの初めてだったわね」
今世の母が子供に言い聞かせるように話してくれた。
ウマ娘。それは走ることを宿命付けられた存在。
曰く、走ることが生き甲斐。
曰く、誰もがレースで一番になるために走っている。
曰く、それは世界で最も有名な競技。
聞いてて思った。それただの競馬やん、と。
でもお金とかはかけないらしい。よくわからない。
「リュウちゃんはレースに興味ある?」
優しく声をかける母に対して。
「いや、全く」
ばっさりと切り捨てた。
前世からスポーツというものが苦手だった身としては何もそそられるものがなかった。
新しい生で前世を引きずるというのも女々しい気がするが仕方がない。
延長するスポーツ中継、潰されたアニメ。
運動部活こそが学生の清く正しい青春活動であり、漫画やアニメなど薄汚いと蔑まされた時代。
受けた差別というものは一生消えないものなのだ。
社会人になってからもまったく興味がなかったため世界大会など世間を賑わせていても何も感じなかった。
「……そう」
どこか悲しそうに眼を細める母を見ると罪悪感が沸く。
目を背けるようにテレビの画面を見つめる。
一位になったウマ娘が嬉しそうに手を振っていた。
◆
今世の自分の名前だ。
文字数は少なくていいが名前の漢字を書くのが若干面倒だ。
そんな自分だが、なんというか不思議な力があった。
一つは――
「あの人は空間認識能の才能あるのか。建築家とか向いてそうだな」
人の能力、才能が見える力だ。
スピード、筋力、パワーなどなどRPGでよくあるステータスの項目とその数値、才能なのかスキル的なものが見える。
無論、自分のも見える。トレーニングとかすると数値が上がるのでちょっと楽しい。
スポーツ嫌いだがこうしてわかりやすく数値化され、その値が伸びていくのを見ると楽しいものだ。
RPGのレベル上げやスキル上げ作業は嫌いではないので性に合っているのだろう。
――最も鍛えないとその分下がっていくのでゲームと違ってずっと上がり続けるわけではないのだが。
そしてもう一つは。
『アソビマショ? アソビマショ?』
変なのが見えることだ。
他の人は全く気にも留めない、明らかに見えてはいけないものが見えている。
そして転生の影響なのか、この手の存在によく纏わりつかれる。
……もしかして、同類と思われてるのか?
ウネウネと黒い煙が体にまとわりついて鬱陶しい。
これが金髪巨乳美少女なら大喜びしたのだが、明らかに化け物のそれである。
なので。
「……散れ」
『アッ、アッ……』
力を込めて振り払う。それだけで化け物もどきは消え去った。
よくわからないが、この手のものは一方的に払える。ありがたい話だ。
またケガの治療にも使えるので医者いらず。
将来は住職やマッサージ師に就くのもいいかもしれない。
「将来、か……」
小学校低学年。本来であれば叶わない夢を語り、やりたいことを遊びつくす年頃。
だが自分は知っている。身の丈を、分というものを。
「ま、薬剤師とかでいいかな。給料いいし」
幸いなことに赤子のころから動き回り、頭を働かせ続けたおかげか身体、頭脳のスペックはとても高い。
覚えようと思ったものはすぐ覚えられるので知識勉強では困らない。
自分一人でそこそこ生きていくのに困らない生活を送れるようになろう。
そんなことを考え、日々を消費していくうちに出会った。
漆黒の髪をなびかせ、黒い影に追い縋ろうと必死に足掻く一人のウマ娘と。
◆
ウマ娘プリティーダービー新時代の扉を映画館で視よう!
ウマ娘プリティーダービー新時代の扉を映画館で視よう!