アイのままに、ワガママに~名探偵は一家団欒を望む~   作:サニキ リオ

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第20話 たった一つの答え

 浮気調査も終わり、スタンリーさんへの報告の日がやってきた。

 インカさんは白。浮気ではなく、スタンリーさんへのプレゼントを購入するために、昔メイドとして働いていたときの主である財閥令嬢に宝石を見繕ってもらっていたという内容を報告した。

 

 報告の際、事件の話は伏せさせてもらった。

 自分のせいで奥さんが罪を着せられそうになったなんて知らない方がいいからな。警察が事情聴取に来たら意味はないかもしれないが。

 

「そうか……妻を疑ってしまった自分が恥ずかしいよ」

 

 話を聞いたスタンリーさんは苦笑いを浮かべる。

 

「どんなに信頼し合っている夫婦でも不安に思うことはありますよ。その不安を払うための探偵なんです」

「はははっ、それもそうだ」

 

 俺がフォローを入れると、スタンリーさんは納得したように微笑んだ。

 

「ありがとう、ライアン君。また何かあったときは君を頼らせてもらうよ」

「はい、これからも御贔屓に」

 

 事務所を出るスタンリーさんを見送り、姿が見えなくなったところで事務所へと戻る。

 すると、そこには呆れ顔のアイが立っていた。

 

「パパ、どうして調査結果を全部教えてあげなかったの?」

「何言ってんだ。浮気調査に関して全て話したぞ」

 

 そう浮気調査に関して必要な話は全て話した。そこに嘘は一つもない。

 

「でも、パパもわかってたんだよね。ロゼミさんがインカさんと血の繋がった実の娘だってさ」

 

 アイの言葉に俺は肩を竦める。

 

「そりゃ、二人並ばれたら厚化粧しててもわかるだろ」

 

 奥さんの厚化粧は浮気のためじゃない。

 ロゼミと会ったときに親子と気づかれないためだ。

 周囲の人はもちろん、ロゼミ本人にもだ。

 

「浮気じゃないが、世界的に有名な財閥の現会長と愛人関係にあったなんて旦那のスタンリーさんにだけじゃない、誰にだって隠したいことだろ」

 

 だから今回の依頼ではこの真実を話す必要はないと判断した。それだけだ。

 

「探偵の仕事は真実を暴き出すこと、ね。よく言うよ」

「浮気をしていないって真実なら暴き出しただろ。それ以上は割増料金もらわなきゃな」

 

 俺がニヤリと笑うと、アイは先ほどの俺のように肩を竦めた。

 

「それにインカさんはロゼミにも気づかれたくなさそうだったからな。あそこはインカさんの気持ちを汲むべきだろ」

「でもロゼミさん、たぶん気づいてると思うよ」

「えっ、気づいてるって?」

 

 アイがさらりと言った言葉に思わず聞き返す。

 疑問符を浮かべている俺を見て、アイはため息をついて自分の推理を話し始める。

 

「だって、ロゼミさん〝この髪と瞳の色は母から受け継いだ宝物〟って言ってたでしょ。瞳の色はネットで見たクロサイト夫人と同じだけど、髪の色は違う。つまり、あれは髪も瞳の色も同じインカさんを母親って理解した上で言った言葉なんじゃない?」

「おいおい、インカさんの髪色は灰色だろ」

「気づかれたくないから染めてたんだよ。髪をまとめて帽子を被ってたけど、うなじの部分の根元の色がロゼミさんと同じ〝赤みがかった茶色〟だったからね」

 

 アイの指摘に俺は舌を巻く。

 こいつは事件の真相だけでなく、インカさんとロゼミの関係にも俺より深い真実に辿り着いていたのだ。

 思えば、どんなにベオウルフに宝石を盗まれようともまるで動じないロゼミがあんなに取り乱していたのは、インカさんが実の母親だと気づいていたからだったんだろう。

 まったく、俺もまだまだだ。

 

「相変わらずお前はたった一つの答えを見つけ出すのが得意だよな」

「ふふん! 私は解答を見つけるのが得意分野だからね」

「ああ、よく知ってるよ」

 

 俺は自慢げなアイを見て苦笑する。

 本当に、この子には敵わないな。

 

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