アイのままに、ワガママに~名探偵は一家団欒を望む~   作:サニキ リオ

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第4話 依頼人の情報

「どういうことだ?」

「人が犯罪に手を染める理由は様々よ。貧困、快楽、復讐、利益、性欲……どんな理由だろうと許されないこと。だから犯罪者は逮捕され、裁かれる。世間だって許してはくれない」

「まあ、そうだな」

「でも、ベオウルフは違う。彼は世間から賞賛され、まるで正義のように扱われている。逆に警察や政治家は闇が暴き出されたことで世間からの風当たりも冷たいわ」

 

 ディアナの言葉を聞いて俺は納得する。

 ディアナは警察官であり、同時に正義感の強い人間でもある。

 だからこそ、怪盗ベオウルフが多くの人から称賛されている現状が我慢ならないのだろう。

 

「今、彼を止めなければベオウルフに続く人間が出る。そうなればもうこの国はめちゃくちゃになるわ」

「警察も政治もまともに機能しなくなるってか。実際、バーシル街の治安は悪いからな」

 

 一日に検挙される犯罪件数なんて目を覆いたくなるくらいである。他の街の三倍はあるのではないだろうか。

 

「理由はわかった。それじゃ依頼の話に入ろう」

 

 俺はそう告げると、ディアナに目を真っ直ぐに見据える。

 

「まず、依頼内容の詳細を詰めて料金の見積もりを行う。アイ、頼めるか」

「はーい!」

 

 元気よく返事をしたアイは来客用のカップに紅茶を入れて持ってきた。

 

「ディアナさん、紅茶です!」

「ありがとね、アイちゃん」

 

 それから徐にノートパソコンを立ち上げると、高速でキーボードを叩き始める。

 

「依頼者、ディアナ・モンド。ブランニュイ市警察刑事部第二課知能犯捜査係警部。元捜査一課で殺人事件の担当をしていたが、要人の警護に失敗し殺し屋〝鮮血鬼カーミラ〟も取り逃がす。それ以降、キャリア採用でトントン拍子に進んでいた出世コースから外れ、現在の部署へ転属。優れた身体能力を持つが、度々捜査中に周囲の物を壊すため始末書をかなりの頻度で書いている。最近では警部からの降格の話も上がっており、焦り気味。二十七歳独身。彼氏募集中、っと」

「ぶふっ!? けほっ……げほっ!」

 

 アイが読み上げた個人情報にディアナは紅茶を吹き出して激しく咽る。

 

「えっ、なっ……!」

 

 いきなりとんでもない個人情報を暴露されたディアナは、慌ててアイのパソコンの画面を覗き込む。

 すると、そこにはディアナの顔写真と詳細なプロフィールが表示されていた。

 どうやら、俺に調査を依頼した時点で既にアイはある程度調べられていたらしい。

 ディアナは恨めしげな視線をこちらに向けると、口をパクパクさせる。

 しかし、言葉にならないのかすぐに諦めたように肩を落とした。

 俺はそんなディアナの様子を気にも留めず話を続ける。

 

「依頼内容についてだが――」

「待って待って! 何この子!?」

「アイは俺の娘だ。パソコンが得意だからこうして助手をしてもらっている」

「違う、そうじゃない」

 

 ディアナが疲れ切ったような表情で首を左右に振る。

 

「どうしてあたしのプライベートな事情も知ってるのよ!?」

「SNSのアカウントとか特定して情報を集めました!」

「怖っ!」

 

 ディアナは本気でドン引きしているようだ。

 確かに、普通に考えたらかなり怖い。

 アイには探偵助手の仕事関係なく、人の情報を勝手に集める癖がある。

 こればかりは直らないので、別に気にしていなかった。

 むしろ、便利に使っているくらいである。

 

「というわけで、依頼内容の詳細を聞かせてくれないか?」

「よくこの状況で普通に話を進められるわね……」

 

 ディアナは呆れたようにため息をつく。

 それから仕切り直すように表情を引き締めると、静かに告げた。

 

「私の依頼は怪盗ベオウルフの正体を突き止めることよ」

 

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