アイのままに、ワガママに~名探偵は一家団欒を望む~   作:サニキ リオ

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第44話 裏社会の情報屋

「まさにアンダーグラウンドね……」

 

 目の前に広がる景色に圧倒されたようにディアナが一歩下がる。

 

「まだ引き返せるぞ」

「冗談。ここで帰ったんじゃ何も得られないわ」

 

 ディアナは覚悟を決めたように黄泉の境界地点へと一歩踏み出した。

 

「さ、情報屋の元へ案内してくれるドライ?」

「わかったよ、ブレッド」

 

 お互いに偽名で呼び合うと、俺達は人混みをかき分けて目的地へと向かった。

 裏の情報屋がいるのは黄泉の境界地点でも一番大きいクラブ〝メアリー〟の中だ。

 店の入り口にはサングラスをかけ、スーツを着た屈強な大男が立っている。

 俺は大男に気さくに話しかける。

 

「よお、ガーゴイル。元気にしてたか?」

「ドライ、久しぶりだな」

 

 ガーゴイルはサングラスを指で上げると、強面に似合わず朗らかな笑みを浮かべた。

 

「後ろの連れはお前の女か?」

「ああ、いい女だろ。ブレッドっていうんだ」

「初めまして、ブレッドといいます」

 

 ディアナは緊張した様子でガーゴイルに頭を下げた。

 そんなディアナの姿を見たガーゴイルは怪訝な表情を浮かべる。

 

「おい、ドライ。こんな育ちの良さそうなお嬢さんどこで引っかけたんだよ」

「表にいりゃいくらでもやりようはある。お前だって、裏でさんざんいい女抱いてんじゃねぇか」

「所詮、金で繋がった仲だ。ま、裏にしか行き場がない身としちゃ十分過ぎるくらいだけどな」

 

 そう言ってガーゴイルは肩を竦めてみせる。

 厳つい風体をしているが、意外と気さくな奴なのだ。

 

「それじゃ、さっさと用事済ませて表に戻れよ。こんなとこ女連れで来るとこじゃねぇからな」

「忠告どうも」

 

 俺はガーゴイルに手を振りながら店内へと入る。

 

「今の人は?」

「この店の警備を担当しているガーゴイルだ。腕っ節だけで裏社会を生きてることで有名だ。よく闘技場でも戦ってるぞ」

「悪い人には見えなかったけど……」

「ま、裏社会の人間にしちゃまともな奴だ。ここで困ったらガーゴイルを頼る人間も多い」

 

 とはいえ、あいつも裏社会に生きる人間だ。完全に信用しては足下を掬われるだろう。

 薄暗い店内で音楽に合わせて踊る人混みをかき分け、バーテンダーに話しかける。

 

「シルバー・ブレッドをくれ。後ろの連れの分もだ」

「……少々お待ちください」

 

 カクテルを注文すると、バーテンダーはそそくさとバックヤードへ引っ込んでいく。

 

「今のも合い言葉?」

「ああ、覚えなくていいぞ」

 

 シルバー・ブレッドは魔除けや厄払いの酒として有名だ。

 こんな魔物だらけ場所に魔除けの酒など置いてはいない。だからこそ、情報屋へ繋いで欲しいときはこの酒を注文するのだ。

 

「お待たせ致しました。オーナーがお待ちです」

「助かるよ」

 

 俺はバーテンダーの胸ポケットにいくらかチップを入れてから、情報屋であるこの店のオーナーの元へと向かった。

 店の奥に入ると、無数の液晶画面を眺めている男がいた。

 

「バグベア、景気はどうだ?」

「ドライか」

 

 裏社会の情報屋バグベア。精度の高い情報を仕入れてくることで有名な男で、この店のオーナーでもある男だ。

 

 

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