アイのままに、ワガママに~名探偵は一家団欒を望む~   作:サニキ リオ

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第50話 怪盗と名探偵の勝負

「ねぇ、パパ。ちょっといい?」

「どうした」

 

 ディアナがその場からいなくなると、アイが俺の服の裾を掴んで小声で話しかけてきた。

 

「せかっくだから勝負しないの?」

「勝負?」

「怪盗と名探偵の勝負だよ。怪盗に勝ち逃げされたままっていうのは名探偵の名折れじゃん」

 

 アイは挑発的な笑みを浮かべてそんな提案をしてくる。

 普段なら笑って一蹴するところだが、今回に限ってはちょうど勝負をしたい気分だった。

 

「いいぞ、今回ははっきりと白黒つけようじゃねぇか」

「怪盗に逃げられたら名探偵の負け、宝石を取り戻したら名探偵の勝ちだよ」

「捕まえなくていいのか?」

「……それはアイも望んでないもん」

 

 少しだけ表情に影を落とすとアイはそう呟いた。

 アイもベオウルフが捕まることは本意ではないらしい。まあ、そりゃそうだ。

 

「大変よ!」

 

 俺とアイが小声で話していると、慌ててた様子のディアナが展示室へと入ってきた。

 

「事務員の女性が倉庫で拘束されていたわ!」

「あら、変ですわね。ベオウルフ様は女性に手荒な真似はしないというのに」

 

 いつもと違う手口にロゼミが怪訝な顔をする。

 ベオウルフは怪盗紳士と言われており、女性に対して乱暴な真似はしないことでも有名だ。

 

「所詮は犯罪者だ。どんな手を使ってもおかしくはないだろ」

 

 そう口では言いつつも、いつもの手口ではないことも理解していた。

 今回は今まで通りのベオウルフではない。

 真実を盗むためならば、無粋な真似もするということだ。

 

「とにかく、ベオウルフは今その人に変装してるってことか」

「でも、さすがにもう変装を解いているんじゃないかな?」

「ディアナが女子トイレで見つけることも計算済み。そう考えれば、一番怪しいのはディアナだな」

「えっ、あたし?」

 

 ディアナは呆けた表情で自分を指差す。

 あまりの緊張感のなさに不安しかない。

 

「状況的に考えてお前が一番怪しいだろうが」

「あー、それもそっか。ライアン、もう一度身体検査お願いできる?」

「あいよ」

 

 こうして俺は再びディアナの身体検査を別室で行い、何の異常もなかったため、展示室へと戻ってきた。

 

「身体検査、問題なかったぞ」

「お騒がせしました」

「では、ディアナさんも生体認証の登録を行いましょう」

 

 無事ディアナの疑いも晴れたことで、ディアナの生体認証の登録をヴィクトルが行う。

 

「うーん……」

 

 そんな一部始終を見ていたアイが難しい顔をして首を傾げていた。

 

「どうした? やっぱりディアナが怪しいと思ってるのか」

「いや、そんなわけはないはずなんだけど……何か違和感があるっていうか」

 

 アイは混乱したように俺とディアナの間で視線を動かしている。

 

「ねぇ、パパ。ベオウルフって女性に変装してたことあったっけ?」

「そりゃ何度もあるぞ。条件は限られるけどな」

 

 ベオウルフが女性に変装していたことは過去何度もあった。

 条件としては、変装相手がスカートを履いていることだ。

 これは身長を調整するために足を内股にする必要があるからだ。

 ベオウルフの性別は不明と言われているが、十中八九男性だと警察関係者は予想している。

 

「いや、でもなぁ……」

 

 アイは難しい顔をして唸ったままだ。

 ディアナは今日もパンツスタイル。もしベオウルフが男だった場合、変装するには不適切だ。

 

 

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