ソードアート・オンラインー無限の蒼剣士ー   作:SHUSUKE.

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今回からゲーム内での話となります。
それと以前よりも文字数が多めです。


第2話 デスゲーム

 2022年 11月6日

 

 第1層 草原フィールド

 

 

「せあぁぁぁーーー!!!」

 

  大きく声を出した青年は、突進してくる青イノシシに向かって、青白く光らせた剣で片手用直剣スキル≪レイジスパイク≫で突進する。

  ここ周辺でよく出る青イノシシ” フレンジーボア ”の胴体に命中し、他のゲームだとスライム相当の低レベルモンスターは、実体なきポリゴンの欠片として砕け散った。

 

「いい感じだな!結弦!この調子でガンガン倒しちゃおーぜ!」

「こっちではそう呼ぶなって言っただろー…リアルの名前はともかく、向こうのことを聞くのだけでもマナー違反なんだから。」

「言いづらいんだけどなー。まあ、慣れればどーにかなるか。なら向こうのも倒しちゃおーぜ!ユズ!」

「そうだね。そろそろレベルも上がりそうだし一気に行ってみよっか。」

 

  プレイヤーネームに” Yuzu ”と表示されている青年は、現実の結弦にはないたくましさがあった。身長も実際より若干高い。結弦本人が設定したアバターの容姿だ。

 

「それにしてもなんでダイキは名前そのままなんだよ…」

「俺の名前は現実にいてもゲームにいても変わらない!」

 

  自信満々にそう言う大樹のプレイヤーネームは” Daiki ”で、そのままだ。こちらも現実の大樹とはまったく容姿が違うのだが、持ち前の明るさはやはり変わらないらしい。

 

「いや、それはそうだけど…」

 

  呆れながらユズは周りを見渡す。自分たちと同じように、フレンジーボアを倒そうとしている赤髪と黒髪の2人組を見つけた。

  赤髪の方が突進で吹っ飛ばされるのを見る限り、おそらくユズと同じ初心者だろう。

 

(…あの人よりは上手くなったかな…)

 

  そんなことを思っているとフレンジーボアが3体現れた。

 

「よーし、やりますか!」

 

  ダイキのその声で始まった戦闘にて2人はレベルが2になる。ダイキの要望でゲームを始めてからすぐに戦っていたため、レベルも上がり、ユズも戦闘に慣れ始めていた。

 

(…モンスターとの距離が思った以上に近いなー…武器のリーチがもう少しあった方がやりやすいのにな…)

 

  などと余裕を持っているユズも自身のHPが半分ほどだったため、右手の人差し指と中指をを縦に振る。そのアクションと共に出てくるメインメニュー・ウィンドウからポーションをオブジェクト化した。

  死んでもここから東にある” はじまりの街 ”で蘇生するだけだが、もう一度歩いて狩場まで来るのは面倒なユズはHPを回復する。

 

「ダイキ、少し休まないか?」

「えーー!せっかく楽しくなってきたところなのにー!!」

「つまんないとは言ってないし、それに休むくらいはいいだろ…」

「わかったよ…なら俺は1人でもう少しイノシシぶっ倒してくるわ!」

 

  ダイキはそう言うと、安全エリアに腰を下ろしたユズに背を向けて広い草原を走り出す。

  少ししてダイキがユズの視野から消えると、そこには現実とはまた違った絶景が存在した。

 

「うわぁ!」

 

  ほのかに赤くなりはじめた空の下で、これでもかと四方に広がる草原は輝く。北には森のシルエット、南を向くと湖面がきらめいており、東には街の城壁を薄っすらとだが見ることができる。そして西には無限に続く空が広がっており、無数の雲が浮かんでいた。

 

「…ダイキ、ここにいて正解だったよ…」

 

  どれくらい時間が経っただろうか。ユズもモンスターをそろそろ倒しに行こうかと思ったところで、現在が何時なのか気になりメニュー画面を出す。

 

「もう5時20分か…」

 

  その後ダイキと合流し何分か倒した後、ダイキが早めに夕飯を済ませて夜にもう一度ログインしたいということなので、ユズもそれに合わせてログアウトしようとメニュー画面を出したときあることに気付く。

 

「あれっ。」

「どーした?」

「ログアウトボタンがないんだけど。」

「ログアウトボタンの位置もわかんねぇのかよ。えっーと、ログアウトボタンは……、あれっ、ない。」

 

  1時にログインした直後にはあり、βテスト時もそこにあったログインボタンがなくなっていた。

 

「ダイキ、他にログアウト方法はないの?」

「えっーと……ないな。βテストのときもメニュー開いてからログアウトしてたし。」

「うーん、ここから出られないんじゃ困ったなー…」

「ま、サービス初日だしこんなこともありえるだろ!そのうち運営が気付いて出れるようになるでしょ。」

「それならいいけどログアウトできないってかなりの問題だよね。運営もとっくに気付いてると思うんだけど…」

 

  突然、大きな鐘の音がなる。

 

「うわっ!」

「なんだろう…」

 

  驚くダイキと若干不安なユズは鐘がなっている最中に、自分たちが青い光に包まれていると知り、それぞれの思いはさらに何倍にも膨れ上がった。

  その中でダイキはβテストで養った知識を発揮する。

 

「ユズ!これはテレポートだ!テレポート時に出る光りだ!!」

「テレポート⁈いったいどこにだよ!」

 

  このゲームにはテレポートが可能なアイテムがあり、そのアイテムを使う際このような現象が起こる。だが2人ともそのようなアイテムは使用してない。

  ダイキの驚きが若干の不安に変わりはじめ、ユズの頭の中は不安を隠せない状態になったところで2人の姿は消え去った。そして2人の姿は広大な草原の上ではなく、広大な石畳の上に出現した。

 

「ここは………はじまりの街?」

 

  2人が立っているそこは、はじまり街の中央広場である。

 

「なんでテレポートされたんだ?それに他の人もここにテレポートされてるみたいだな。」

「そうみたいだね。人数からしてプレイヤー全員っぽいよ。」

 

  すごい数の人がここ中央広場に集まる。ログアウトできないことを知ってるプレイヤーも多く、

 

「ふざけるなー!」

「はやくログアウトさせろよー!」

「GMはなにやってんだー!!」

「これでログアウトできるの?」

 

 などの文句も少なくない状況になり始めた頃、突然空が真っ赤に染まった。

  そして数メートルはある、巨大な赤いローブをまとった”なにか”が現れる。顔がなく中は空洞で、不気味な雰囲気を持ち合わせる巨大なアバターは、たった数分で約1万いるプレイヤーに信じられないくらいの衝撃を与えることになる。

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。』

 

  そんな第一声から始まった赤いローブの言葉が次に発せられた時、中央広場が驚愕に渦に包まれた。

 

『……私は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。』

 

  量子物理学者にして天才ゲームデザイナー。そしてSAOの開発ディレクターである茅場昌彦。

  そんな若き天才の口からさらに衝撃的な発言がされる。

 

『……プレイヤー諸君は、既にメインメニューウインドウからログアウトボタンが消滅しているのに気づいているだろう。

 だが、これは” ソードアート・オンライン ”の本来の仕様だ。

  諸君らは、この城、アインクラッドの頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることは出来ない』

 

(…茅場昌彦?ログアウトできない?こいつはいったい何を言ってるんだ?だってこれはゲームだろ?それに…)

 

  ユズはこの赤いローブの言葉を信じていなかった。いや、信じたくなかった、というほうが正しいだろう。ゲームの演出が激しいだけだとそう思おうと必死だった。

  茅場を名乗るアバターは続ける。

 

『……また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止或いは解除もありえない。……もしそれが試みられた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる。』

 

 ” 生命活動を停止させる。”

 

「さ、さすがに演出が過剰じゃねーか?」

 

  ユズの隣にいるダイキがそう言うが彼もユズ同様、この状況をありえないと思いたいんだろう。

  広場も徐々にざわついてきたが茅場が口を開くと、そのざわつきも収まる。

 

『……残念ながら現時点で、プレイヤーの家族、友人などがが警告を無視し、ナーヴギアを強制的に解除しようと試みた例が少なからずあり、その結果213名のプレイヤーがアインクラッド及び、現実世界からも永久退場している。』

 

  その言葉が終わると同時に茅場が左手を上げると、アバターの周りにテレビのニュース画面などが映し出される。

 

『……ご覧の通り、多数の死者が出たことも含め、この状況をあらゆるメディアが繰り返し報道している。よって、既にナーヴギアが強制的に解除される危険は低くなっていると言ってよかろう。諸君らは、安心してゲーム攻略に励んでほしい。』

 

「ふざけるなー!!はやくログアウトさせろー!!!」

 

  誰かが広場のどこかでアバターに向かって叫ぶが、それに対しての反応はない。無情にも茅場はその長い台詞の続きを坦々と続ける。

  その言葉で説明された事実は1万人を絶望の中へと放り投げた。

 

『……しかし、十分に留意してもらいたい。今後、ゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。HPがゼロになった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し……同時に、諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される。』

 

  ユズのパニック状態はこの言葉を聞いた時にはすでに限界を迎えていた。そんなユズはダイキの声で正気を戻す。

 

「おい、ユズ!ユズ!…結弦!!大丈夫か⁈」

「……え、あ、うん、大丈夫。少しぼけっとしてただけ。」

 

『それでは最後に、諸君のアイテムストレージに私からのささやかなプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ。』

 

  約1万人のプレイヤーは一斉にメニューを出し、アイテムストレージを確認する。

  ユズとダイキも例外ではなかった。

 

「…手鏡?」

 

  そう小さく呟いたユズはプレゼントされたアイテム” 手鏡 ”をオブジェクト化する。

  鏡には自分のアバターの顔が写っている。それは当然だ。

 

「うぁっ!」

 

  ダイキが声を上げる。見るとダイキの体は光に包まれて、周りを見渡すと他のプレイヤーもそうなっていることに気付く。

  自分も光に包まれ、またテレポートされるのか、と思ったのだが、さっきの青い光とは違う。

 

「ユズ、大丈夫か?」

「う、うん、大丈夫そう。」

「そうか……って結弦⁉︎⁉︎」

「あれ⁉︎ 大樹⁈」

 

  手鏡をもう一度見ると、そこには現実世界の蒼波結弦の顔があった。

 体も現実世界そのままのサイズだ。

 

「……なっ!これ俺じゃん!」

 

『……これでソードアート・オンラインのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の検討を祈る。』

 

  現実の顔になった驚きと、初めて感じる” 死 ”への絶望が重なり、今まで経験したことのない、なんとも言えない状態に陥ったその時、震えながら無意識に口を開いていた。

 

「ねー、大樹、無理だよこんなの…ここで死んだら現実の自分も死ぬんだよ…そんなの、もう、どうすれば…」

「結弦…俺も怖い。怖いよ。でも死ぬのが怖くないやつなんていないさ。ここで生きていくしかないんだ……俺は行く。一緒に行こう。」

 

  現実の顔のため、いつのまにか現実の名前で呼び合い話し合う2人は、広場の人混みから外れ、狭い路地に出た。

 

「…行くってどこに?」

「上だ。上を目指す。そんでここから出る、必ず。」

「そ、そんなこと言ったって、途中で死ぬかもしれないじゃん…」

「いや、それはねーよ。結弦、お前は絶対死なない。俺が守るからな。」

 

  大樹は強い。

  約1万人が絶望に浸っているにも関わらず、上を目指すと言いきった。

  状況を飲み込めず、恐れて震えている人が広場に大勢いるが、その中でも大樹は、このデスゲームから脱げ出すと言いきった。

  結弦と同じ立場にいるにも関わらず、安心させようと不自然だが笑みを浮かべ、俺が守ると言いきった。

 

「…ほんとに?」

「あー、約束だ。」

 

  親友で幼馴染であり、親友の大樹……ダイキが、今度はいつもの曇りのない笑顔でそう答えたのを見て、結弦……ユズは、絶望の中にも微かな希望を見出したのだった。

 




ここから本格的に始まっていきます。
早くキリト達と絡ませたい!!
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