ソードアート・オンラインー無限の蒼剣士ー 作:SHUSUKE.
2022年 11月6日
第1層 草原フィールド
自身の剣を光らせ片手用直剣スキル≪スラント≫を決め、このエリアで出る狼型のモンスター” ダイアー・ウルフ ”のHPを半分以下まで削る。
攻撃されたダイアー・ウルフは、ソードスキル発動後に存在する硬直時間を狙い噛みつこうとするが、後ろからそれを防ぐようにもう1人が剣で受け止める。
「ユズ!今のうちに決めろー!!」
「りょーかい!!」
そう応えた少年は、狼がもう1人の少年の剣に噛みついてる間に横に回りこむ。
そして今度は片手用直剣スキル≪バーチカル・アーク≫の2連撃を胴体に決め、ポリゴンの欠片とした。
「よし、レベルも上がったからさっきよりも楽に倒せるな。」
「ダイキ、絶対死んじゃだめなんだから慎重に…」
「わかってるよ。無理はしない。」
そう言いながらうっすらと笑みを浮かべ、OKと手でサインをするダイキと共にユズは、はじまりの街を抜け出し、次の村へと向かっていた。
まだ中央広場には恐怖で怯える者や、嘆いたりする者も少なからずいるが、2人は上を目指すため先へ進む。
ユズ1人だったら間違いなく中央広場から動けず、仮想世界で突きつけられた現実から怯えていただろう。こうしてモンスターと戦えるのも、上を目指そうと思えるのも、全て親友のダイキのおかげだ。
” あいつの隣だから安心できる。”
” あいつに、ダイキに救われた。”
そう思うユズは伝えるべき言葉を伝えるため、ダイアー・ウルフとの戦闘で獲得した経験値と、この世界での通貨” コル ”を確認しているダイキに話しかける。
「…なー、ダイキ…」
「ん?どうかした?」
「いや、まぁ、そのー……ありがとな。」
「…お、おう。どういたしまして。……ところで俺、ユズになんかしたっけ?」
ダイキ本人は感謝されるようなことをした憶えはないらしい。そんな天然なところが彼の悪いところなのだが、良いところでもある。
「なんでもねーよ。」
わざわざこんな奴のために、顔を赤くまでする必要はなかったと少し後悔しながらも、本当に感謝しているため心の中で2回目のそれを言うのだった。
(…ダイキ、ほんとにありがとな…)
それから少し歩いていると、後ろから足音がする。モンスターだと思い2人は振り向き剣を抜くが、そこにいたのは人だった。
背は2人よりも高い。髪が若干長くて灰色。そして背中には巨大な斧。
プレイヤーネームには” Gray ”と表示されている。
「あれ?グレイ?グレイじゃん!久しぶりだな!」
「…ダイキか。相変わらずうるさいやつだな。」
「おいおい、久しぶりだってのにそれはねーだろ…」
「うるさいもんはうるさい。」
「まあ、それはともかくグレイもやっぱりはじまりの街から抜け出してきたのか?」
「あそこ周辺は人が多くなるから、他の狩場を探しに。」
ユズとダイキも、先ほど戦闘した場所であり、現在位置でもあるこの草原フィールドは、中央広場にいるプレイヤーたちの狩場になり、混雑するため抜け出してきた。
「βテスターだから気づけるって部分かもなー」
「まあな。そんでそこにいるやつは?」
「あー、こいつは俺の幼馴染!こっちではユズって名前!」
「…ど、どうも…ユズと言います…」
「グレイだ。」
「グレイとはβテストの時に一緒にプレイしてたんだ。」
ユズから見た第一印象のグレイはあんまり良くなかった。
「ユズ、見た目も口調もこんなんだけど、悪いやつではねーから。」
「こんなんだけどってなんだ。」
ダイキが言うなら間違いないだろう。そう思ったユズは少し安心する。
「グレイ、ここから少し真面目な話なんだけど、今回の件で無茶できない状況になっただろ?だから人数が多い方がいい。それに実力と知識と経験があるなら文句はない。」
「あー。わかってる。一緒に来いってことだろ?」
「そういうこと。…ユズ、いいか?」
「うん。俺は大丈夫。」
「よし、サンキュ!なら行くか!前衛頼んだぞ、斧野郎。」
「おい、真っ二つにするぞ。」
ユズは少々不安だったが悪い人ではないと判断し、グレイも含めた3人で進むことになった。
「あのー…、グレイさん…」
「グレイでいいぞ。それに敬語なんて使わなくていい。ここではみんな同じ立場だ。」
「あー、うん。ならグレイ。ここに来るまで誰かに会ったりした?」
「うん?ユズ、他に知り合いとかログインしてるっけ?」
ユズと一緒にログインしたダイキが聞く。
「いや、そういうことじゃないんだけど。」
「1人、ソロで次の街に向かって走ってる奴を見かけたぞ。あいつも多分βテスターだろうな。」
「そっかー…」
あの状況下で1人で動けるのはすごいと思いながら、ダイキとグレイを見る。
(…この2人はすごい。俺がダメなだけかもな…)
そう思いながらユズは2人の背中を追いかけるように進む。3人は次の街まで走って向かった。
「よし、着いた!」
「案外近かったね。」
その後3人はいくつかの戦闘をこなし、次の村” ホルンカ ”に到着した。
「少し街回っていくか?」
「回ってていいぞ。寝れる所でも探しとく。」
「おー、わかった。30分後に連絡ってことで。ならユズ行くか。」
「うん。」
はじまりの街と比べると小さい村だが、やはり新鮮だ。
2人はポーションなどを買った後、小さな武器屋に寄った。ユズの装備は現在、片手用直剣。とりあえず買ったという程度なので剣の性能は低い。
SAOでは武器を手に入れる方法は大きく3つある。
まず1つ目はNPCから買うこと。これは1番容易だが剣の性能が低いことが多い。
そして2つ目は鍛治スキルを上げているプレイヤーから買ったりオーダーメイドを注文する方法。これはプレイヤーから買うため値段なども高いが、作成者の鍛治スキルが高ければ高いほど武器の性能が良くなる。
最後に3つ目はモンスタードロップだ。これはモンスターを倒したときに出るもので、倒すモンスター強いほどドロップ品もレアな物となる。
まだゲームがはじまったばかりなので、鍛治スキルなど上げているプレイヤーはいないが、そのうち出てくるだろう。
鍛治以外にも料理、裁縫、釣り…などいろんなスキルが存在する。
「うーん、はじまりの街とたいして変わらないな。」
ダイキは自身の片手用直剣とステータスを比べてる。そんな彼にユズは、ゲームが始まって以来思ってたことを口にする。
「ねー、ダイキ。俺さー今使ってる武器、リーチが少し足りない気がする。モンスターとの距離が近いんだ…だから俺、今の武器売って槍とか使ってみたいんだけど…」
「うん!いいんじゃねーか?ユズが好きなようにすればいいよ。ユズの自由だよ。」
「よし。ならこれにするか。」
ユズは店頭にあった槍を購入する。両手用長槍というカテゴリーに含まれる武器だ。
(…ってことは槍だけで見ても他の種類とかもあるのかな…)
そんなことを思っているとダイキにグレイからメッセージが来たので、指定の場所に向かう。
フレンド登録すれば可能になる機能としてメッセージがある。ユズもグレイとは既にフレンド登録済みだ。
「ユズ、槍にしたのか?」
「うん、元々リーチが欲しいって思ってたから。」
その後3人はパンを食べながら宿に向かっていた。所持金の問題上、安い味気のないパンしか食べられない。
「金がないからしょーがねーけど、味くらい付けてくれてもいいよなー。」
「今さら言ってどーする。」
「いや、でもよー…」
乾燥して味のついてないパンに文句を言うダイキと、それに呆れるものの不味そうな顔をしているグレイが会話している間に、突然ユズが入り込んだ。
「…ねー、槍を試してみたいんだけど、少しでいいからフィールド行かない?」
「…俺はいいけど、グレイは?」
「いいぞ。βテストのキレがなくなってるからな。」
そして3人は街を出てすぐにダイアー・ウルフ2体と遭遇した。
まずグレイがそのうちの1体に両手斧スキル≪グランド・ディストライク≫の一発を食らわせる。片手用直剣ではとうてい出せない強烈な一発が、ダイアー・ウルフの頭部に叩き込まれ、まともにくらった狼は後ろによろめく。
ユズはそのチャンスを見逃さない。
「せいいっ!やぁあっ!!」
無防備な相手に向かって、先ほど少し練習した両手用長槍スキル≪ツイン・スラスト≫の2連撃を気合いのこもった声とともに放つ。
その間ダイキは、ユズとグレイが戦いやすいように、もう1体を相手している。
「相手のHPも少ないし俺にやらせて!グレイはダイキの援護頼む!」
「わかった。無理するなよ。」
ユズは槍の戦闘に慣れたいと思い、自らを追い込む。
2連撃をくらった狼はユズに向かって口を大きく開き、飛びついた。ユズはそれを避けたが腕に牙が掠り、HPが若干減る。だが受けた本人はそれに構わず、もう一度≪ツイン・スラスト≫のモーションに入る。それと同時に狼も自身の牙をむき出し、ユズに突っ込む。
「ガルルゥゥ!!」
「はぁあああっー!!!」
持ち前のその長いリーチから放たれた2連撃は見事に頭部に命中し、相手のHPを0にした。
(…さっき見た戦闘とは違う…剣から槍に変えて、自身の中で何か吹っ切れたのか?)
グレイはユズが見せた戦闘内でのセンスと積極性が先ほどとは違うことに対して疑問を抱いたが、この3人の中だとずば抜けて天然な少年が、グレイが聞こうとするのを無意識に妨げる。
「ユズ、お前よくあの小さな狼の頭に2発も突こうとするな。」
すでにもう1体のダイアー・ウルフを倒していたダイキだ。ダイキの方はグレイのように疑問を抱いている様子はなく、ただただ感心しているだけなのだが。
「なんか突く感じが少しガンゲーと似てるような気がするからかな?…まっすぐ伸びて一直線に相手に向かう感じが。」
「それならユズはやりやすいだろうな。そんでまだやってく?」
「いや、もう大丈夫。付き合ってくれてありがと。」
グレイは彼のガンゲー好きの話を既に聞いたため、それが答えだろうと自分で理解し、その疑問を頭の奥底にしまった。
(…リーチがあるせいかな?ガンゲーと似てるせい?なんか周りが良く見えるし、しっくりくる。うん。いい感じ…)
ユズはこのときデスゲームになって始めて、怒りや悲しみ、絶望といったマイナスの感情でない、槍で得た達成感や嬉しさを、少しではあるが感じていた。
それが、ユズが槍を自身のものとした瞬間でもあり、槍が作り出す真っ直ぐな軌跡に魅了された瞬間だった。
オリキャラ追加です。
灰崎新(はいざきしん)
大樹がβテスト時に知りあった人物。当時も斧使いで大樹とはパーティーを組んでいた。
現実では大学生の19歳。
オリキャラはもう少し増やす予定ですが、一定以上行くと原キャラとの絡みが増えていくと思うのでしばしお待ちを。笑
なお、次話の投稿は遅くなりそうです。すいません。