俺のWEB小説の感想欄に粘着してる荒らしが清楚な文学少女のはずない   作:クサバノカゲ

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【五】ついに荒らしじゃない感想をもらえた

 ──その夜。

 

 いつものように自室で机に向かい、ただし今日はスマホではなく紙の本を開く。

 読書と言えば基本はWEB小説や電子書籍な俺は、ハードカバーの存在感、めくったページの紙の手触りに、心地いい緊張感をおぼえていた。

 

 そして読み始めると、やわらかで読みやすい文章と、展開の面白さにぐいぐいと引き込まれていた。

 しかも、主人公は異世界に転移した日本の女の子。彼女と、彼女を助ける不思議な力を持った七羽の──これがまたそれぞれ個性的で魅力にあふれた──小鳥たちの物語。

 

 小難しさなど一切なくて、なんなら俺の文章のほうが、カッコつけて回りくどい書き方をしては途中で迷子になっている気がしてきた。

 ページをめくるたび、描写された景色はあざやかに脳内に拡がり、登場人物(キャラクター)は生き生きと話し動き回る。そして最後にすべてがひとつに繋がって、世界をひっくり返す快感と感動の渦──!

 

 そのまま最後まで読み切ってしまった俺は、勢いのまま、ricebirdへの返信にそんな感想を書き連ねていた。──言羽さんに感想を伝える、予行演習も兼ねて。

 

 投稿を確定して、気付けばもう夜3時近かったから、さすがに今日はもう寝ることにした。

 連日の夜更かしのせいだろう、翌朝は遅刻ぎりぎりまで寝てしまい、なろうのユーザーホームをチェックしたのは昼休みだった。

 

 

▶感想が書かれました

 

 

▼良い点

最近じゃ珍しいくらいの俺TUEEEが気持ちいい!これからも楽しみにしてます!

投稿者:まりんば

 

 

 ……!? 状況を、すぐには理解できなかった。

 待ち望んでいた()()()()()が書き込まれたという事実を。

 

 じわじわと嬉しさが湧き上がる。ブックマークもひとつ増えて5つになり、さらに最高評価である★★★★★も貰えたようだ。

 ブックマークはひとつにつき2pt、そして★もひとつ2pt、つまり五つなら10pt(!)、総合評価が12もアップして24ptになっていた……!

 い、いいんですかそんなにいただいちゃって!

 

 もし、このポイントによってランキングに入ることが出来れば、そこでより多くの読者の目に留まる。その結果としてさらにポイントが増えれば、ランキングの順位も上がり、そのぶんもっと目に留まりやすくなって、ポイントも……という好循環が、いわゆる「伸びた」という状態だ。

 

 俺の投稿しているハイファンタジーは人気ジャンルだから、日間ランキング100位に入るにも60ptは欲しい。今は夢のまた夢だけど、いつか……。

 

 そんなわけなので、もしお気に入りの作品に出会ったら、迷わずブックマークだけでもいいので付けてあげてほしい。できることなら広告の下までスクロールして、☆を★にかえてあげてほしい。俺はそうしてる。

 

 そのワンクリックが、作品の運命を変えるかもしれないのだから。

 

 ……と、話が逸れてしまった。

 

 そうだ、荒らしじゃない感想をもらったのだから、感想返しをしなくては。しかし書きたいことはあり過ぎるほどあるのに、どのくらいの距離感で何を書けばいいのかわからなかった。

 

 ……引かれちゃったらいやだしなあ……。

 

>>感想返信

ご感想ありがとうございます!これからも頑張るので楽しみにしていてください!

 

 結局、頭のなかをぐるぐる十周くらいした末に、おそろしく当たり障りのないものになってしまった……。

 こういう作者も少なくないはずなので、もし感想返信があっさりし過ぎていても、そこには十倍の感謝が詰まっていると考えていただけるとありがたいです……。

 

 それにしても、楽しみにしてくれている人がいることが目に見えると、こんなにモチベーションアップになるのか! 感想の力はすごい! はやく残りの21話分も修正して、その続きの話を書きたい!

 

 ──油断すると脳裏に浮かんでしまう言羽さんの尊顔(おかお)を、振り払うこともできるし。

 

 その日の俺は、午後の授業中も、帰宅後も夕飯中以外はずっとスマホ片手に執筆していた。

 さすがに様子がおかしいと思われたのか、藤田くんが「どうだい鈴木くん、息抜きに駅前のマックで女子高生ウォッチングでも」と誘ってくれた(それが彼の最大限の優しさなのだ)けど、丁重にお断りした。

 風呂でも湯船の中で執筆しつづけてのぼせかけながら修正を終わらせて、その勢いのまま最新話まで仕上げた。

 

 これまでで最高の一話が書けた気がして興奮している。そのまま投稿しようとして、ふと手を止める。

 

『投稿前に一晩寝かせて、三回くらい音読してみると誤字やおかしな文に気付けると思う』

 

 ──ricebirdの「一言」が、脳裏に浮かんだ。

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