気付けば俺は、地平の先まで白い床と天井の続く空間に立っていた、正直白以外の色がなくて長時間居たら気が狂いそうだ
先程まで俺は定期的に通院している病院で薬を貰った帰りに本屋に寄って、寄って?
「そう、俺は・・・車に・・・うっ」
あの日の後悔がフラッシュバックし、急速に口内が乾き脂汗が滲み目の前が歪んで、俺は倒れ込む様に膝を付き震える手で常時持ち歩いている薬を取り出して飲み込む
「あれれ? ごめんね〜? 遅くなっちゃったかな?」
「誰だ、あんた?」
薬を飲んで少しずつだが発作が落ち着き始めたタイミングで、いつの間にか正面に人が立っている事に気付き、顔を上げて見る
そこにはブーメランパンツのみ身につけたスキンヘッドのボディビルダーが立っていたので、名を尋ねる
「僕? 僕はヴェスタ、いわゆる神様ってヤツさ」
「これはご丁寧に・・・いちいちポージング決めないと喋られない呪いかなんか掛かってる? 絵面が暑苦しいんだけど」
「見よ、我が肉体美!!」
「いや、会話してくれよ」
スキンヘッドボディビルダーことヴェスタは、名乗りながらキレッキレのポージングを決めてくるから、物凄く気が逸れて話がしにくいと感じたので、苦言を呈すが全く聞き耳を持たずにキレッキレのポージングを決めてくる
いや、ナイスバルクだと俺も思うけどさ? ねぇ?
「んで・・・ヴェスタ、さま? 此処は何処なんすか?」
「敬語は不要だよ、気楽に行こうじゃない?あと様もいらないよ? さて此処は
「・・・やっぱり俺は死んだ訳か」
「うん、君の勇敢な行いで幼き命は救われた、未来において文字通り世界を救う技術を産む少年を君は世界のバグから見事に救ったんだ」
「そうか、俺は・・・今度は救えたんだな、良かった・・・本当に良かった」
ヴェスタの説明を聞き俺は自分が死んだ事に気付く、そして命を対価に少年の未来を救えた事に歓喜し、両手を強く握り達成感を抱く
「本来なら僕が修正しないとダメなんだけど、少し手間取ってる間に君が救って代わりに君が死んじゃったんだ、だからせめてのお詫びに君を剣と魔法の世界に転生させる事にしたんだ、因みに上司の許可は得てるから安心してね?」
「何が安心材料が全く分からないけど、分かった」
シリアスな話をしている筈だが、ヴェスタのポージングを決めながら喋る行為は続き、何というか気が抜けてしまう
「ある程度までなら僕の裁量で君にチカラを与える事が許可されているから、要望を言って?」
「なら・・・俺を その世界で最強にしてくれ、目の前の誰かをまた守れる様に、そして無茶しても死なない様に、怪我の治りが速くて病気とかにならないと助かる、あぁその異世界の言語と読み書きに不自由すると面倒だから、その辺りも頼む」
「カヅキくん、急に喋るじゃん。ん〜聞き漏らしがあると上司に怒られて筋トレ禁止になっちゃうからねぇ、書き出して貰おうかな?」
「すまねぇ」
ヴェスタの説明に俺の内に眠る
「今から要望を書いて貰うけど、レギュレーションがあるから丸々全てを採用出来ない事、超過分は対価が自動的に発生する事、場合によっては転生後 対価に伴う奉納義務が発生する事、その事を理解してね? 不要と判断したら二重線で訂正してね、記入を始めた段階で契約に同意した、と判断されるからそのつもりで」
「わかった」
相変わらずポージングのせいでイマイチ内容が入って来ないが、大体は理解した、だが俺の願いを妨げる程 重要な事ではない
対価で奉納義務? 善神っぽいヴェスタへの奉納なら悪の討伐やらモンスター素材とか金銭とか善行だろうし、大丈夫だろう
これは逆に戒めとして足を踏み外さない為に利用出来るまである、多分
故に俺は不治の病が指し示すがままにノートへ要求事項を書き連ねる
俺だって男、ヒーロー願望を持ってるんだ、仕方ないじゃないか
読みやすく書きつつも細かく要望をビッシリ書き連ねたノートとヴェスタに渡すと
「うわぁ・・・」
と、ヴェスタはアレだけ喋る時に取り続けたポージングを辞めてドン引きした表情でノートを見て声を出す、やり過ぎたか? いや、どうせなら振り切る方が面白いだろうし、大丈夫だ、うん
「多分大半は叶うと思う、でもね? 対価の徴収が99.9%発生すると思う、良いのかな?」
「構わない」
「そう、僕はキチンと意思確認したからね? 後で文句は無しだよ?」
「分かった、文句も言わないから」
「そう、なら・・・この扉を潜って? その先が君が転生する世界のリューネと言う国、初回ボーナスで少々都合の良い様になってるから」
「了解、ありがとう」
俺はドン引きのヴェスタの指示を聞き、ヴェスタの示した扉を開けて潜る、すると意識が薄れて行く
これから俺の新しい人生が始まるのか、楽しみだ