アナザーストーリー タイプ エフ   作:銭湯妖精 島風

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2話 転性の時 来たれり

 

 

 

意識が浮上して気付けば対岸が薄っすらとしか見えない程、大きな湖のほとりに立っていた

 

 

「なんか、頭と腰辺りが重いな・・・ん?」

 

 

寝起き(仮)で本調子じゃないのだろうとか自己完結しつつ独り言を呟き、自分の声に違和感を感じ、自分の喉を触り

 

 

「生麦生米生卵・・・逆声変わりか?」

 

元厨二病罹患者の男子高校生16歳だった筈の俺は、とっくの昔に声変わりして喉仏があった筈なのに、幼少期の中性的な声に退化している事に気付き戸惑う

 

恐らくこれが対価だろう、多分

 

 

「なるほどなるほど、対価の1つが肉体年齢の退行なんだろうな、多分」

 

 

肉体年齢退行で喉仏が消滅した程度の対価なら安い方だろうと安心し、今のうちに現在の自分の状態を確認しておく事にした

 

「やっぱ頭重い・・・って髪なっが・・・肩超えてりゃそりゃぁ重いわなぁ・・・つか、うん? なんか色々とおかしい様な・・・」

 

 

視界の端に映る髪をつまみ観察し髪の色は元々の色である黒と判明したが、長さが数百倍ぐらい伸び肩を越している事が分かる

 

そして髪を触った時に見えた袖を見て、見覚えと違和感を抱き、焦る気持ちを抑えてよくよく見る

 

「なんで俺はセーラー服着て・・・いや、下スカートだし靴はブーツだし、なんか尻尾有るし・・・ん? 尻尾生えてるぞ?俺」

 

 

もしかしてとんでもない対価を徴収された様な気がして来て、我ながら面白いぐらいに混乱している

 

 

純人間種から亜人種へ種族が変わっている様だ、人間卒業してしまったのか俺は

 

 

「落ち着け俺、パニクっても何も解決しない、そう危機的状況の時こそ冷静に、そうセンセイも言ってただろ。深呼吸だ俺」

 

 

そう自分に言い聞かせて深呼吸をする、湖のほとりで周りが森林に囲まれているおかげで、物凄く空気が良く気持ちが良い

 

なんか鼻が前より効く様になった気すらするぐらいだ

 

 

「よし少し落ち着いて来た・・・上から順番に、だな」

 

 

両手で頭頂部を触ると髪の感触と明らかに元々存在していなかった場所に人間のソレでは無い獣の耳らしき物が存在している、触り心地は悪くないが、少しくすぐったいので手を止め、胴体へ移り触診を続け全身くまなく調べた結果

 

 

「女になってる・・・相棒は使う前にさよならか・・・さらば、相棒」

 

 

俺は見事に対価で性転換していて尚且つ、狐・・・それも9尾の狐の獣人へ種族変換されてしまった様だ

 

さらに言うと、元々170オーバーだった身長もだいぶ縮んでいる様で、転生前より地面を近く感じる

 

 

「こりゃ少し準備運動が必要だな・・・背も縮んでるし尻尾まであるし」

 

 

深呼吸をして、実家が営んでいる古武術道場で習った型を1つ1つ丁寧に確認しながらやり、身体に再度思い出させる

 

 

2時間程時間をかけて確認したおかげで、だいたいの重心を覚える事が出来たので

 

 

「さてと、次は人里に行かんとな、流石に転生初日から森で野宿は現代日本人の俺にはハードモード過ぎるしな、うん」

 

 

幸いまだ陽が高い位置に居るのを確認したので、俺は添削されていない事を祈りつつ、アニメとかに良くあるVRMMOでステータスやらの画面を空中に表示出来る奴を試す為に利き手である左手で所定の動作をすると、音もなくホーム画面が表示される

 

 

「よしよし、順調だな。まずは人里へのルート検索をして移動しながらステータスと魔法の使い方を見る感じにしよう」

 

 

見やすく操作がしやすいUIに感心しつつ検索機能を呼び出し追加で表示されたキーボードを打鍵してマップと案内を視覚に反映させる

 

 

「よし、行くか」

 

 

ゲームの様にルート指示に従い歩きながらステータスを確認すると、軒並み能力値がSと表示されていて、レベルが1となっている

 

ステータスを見る限り俺の要望はおおよそ通った様で、余程の事がないと死なないだろう事がわかった

 

 

[警告 敵性生命体の接近を感知]

 

 

「うぉ!? ビックリした、初心者に優しい仕様だな、ありがとうヴェスタ」

 

 

急に聞こえた危険を知らせるアラートと表示に驚きつつ、視界端に映るマップに表示された赤点を確認する

 

おそらくこの赤点が敵だろうと勝手に自己解釈し、自分が素手な事に気付き、どうするか考える

 

 

[攻撃魔法の使用を推奨、推奨属性は水・土・風等の出火 及び 延焼の可能性のない物]

 

 

「なるほど、ご丁寧にどーも」

 

 

どうやら魔法名を言うだけで自動でエイムしてロックオンしてくれる様で、本当に素人に優しい仕様な事に感謝する

 

 

[適性生命体、来ます]

 

 

「あれは・・・狼、か?」

 

 

なぜか分からないが、俺に直進し突っ込んでくる狼系のモンスターをまっすぐ見据え深呼吸し

 

 

「シャドーランス」

 

 

左手を狼に向け魔法名を発すると、周りの木々の影が槍状に隆起し狼を滅多刺しにし、声を上げる間も無く絶滅させる

 

 

「こりゃ、すげーな・・・」

 

 

俺はポリゴンが散る様に消えて行くシャドーランスを見ながら呟く、日本だったら間違いなく出会う事のない猛獣を一撃で絶命させられる程の魔法を使う事が出来た高揚感と僅かな危機感を抱く

 

 

これは、かなり魅力的だ。厨二病の残火が燃え上がる程に、気を抜けば取り憑かれてしまいそうになる

 

これは気を付けなければ、人の道は踏み外したく無いからな

 

 

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