蓮の懐柔作戦なのか、本当にリンの遺言なのかは分からないが浴衣は有り難く頂戴する事にして、私は朝から本格的な和食を食べる事が出来て上機嫌になる
そんなこんなで朝食を済ませて少し ゆっくりしてから
「カヅキ すまないが 俺は叔父上と登城してくる、夕方までには戻れると思う」
「はい、いってらっしゃいませ 貴方様」
「あぁ、それと部屋で1人も暇だと思うし、少し街を見て来てはどうだ?」
「そうですね? そうします」
「気をつけろよ?」
「ふふ、貴方様こそ」
寝間着から着替え ビシッと正装を決めたナズナの言葉に相槌を打つと、軽く笑んで街の散策を提案され了承する
これはナズナの私が暇をしない様に、と言う気遣いと 暗に
実際の所、蓮の甥であるナズナは
対して私は吾妻では 一切 情報が露出していないから、霊狐族の観光客とか その程度の認識でスルーされるだろう、多分
そんな訳で2尾分身メイド(仮名 トゥビー)をナズナに同伴させる、建前だとナズナの専属従者で秘書兼任だからね、うん
客間でナズナを見送り ほうじ茶を啜り 玄関でナズナと蓮に遭遇して変な空気になるのを回避する時間を稼いでからブリジットを伴って
いやはや、草履まで用意されていて いたせり尽せりだなぁ
「私、吾妻くるの初めてです、リューネと建築様式が全然違いますね?」
「リューネはレンガや石造りが多いですが、吾妻は木造の漆喰造りのようですね」
「へぇ、これ漆喰って言うんですね」
「えぇ、とはいえ私も そこまで詳しい訳ではないですが」
暁邸を出発して すぐ、ブリジットが立ち並ぶ建物を見て感想を漏らす
いわゆる日本家屋の建築様式を用いられている建物群の説明をうろ覚えの知識で彼女にすると、特に疑う様子もなく聞いている
因みにブリジットの服装は、いつもの護衛服では目立つので 動きやすい私服に帯剣している状態だ
目に映るモノ全てが物珍しい様子のブリジットに和みつつ街を散策していた訳だが、温度一定化の術式を使用しているとはいえ 直射日光による継続ダメージは防げないので、目に入った和傘の店で足を止め
「日差しを甘く見ていましたね、焦げそうです」
「ははは・・・カヅキさん、熱吸収率 高いですもんね?」
「全く持って、その通りです・・・さて、日傘を買いたい所ですが・・・そういえば吾妻の通貨に換金していませんでしたね」
「そういえば、そうですね」
和傘屋の軒下へと入り避難して日傘を購入しようとして、吾妻の通貨へ換金していない事を思い出して、どうしたものか考える
ワンチャン リューネ通貨で買えたりしないかな? と淡い期待を抱きそうになるが、そんな事は無いだろう
そんなこんな考えていると
「いらっしゃいませ、どうされましたかな?」
「あぁ失礼しています、実は日傘を購入しようと思っていたのですが 吾妻の通貨へ換金するのを忘れていまして、リューネ通貨しか手持ちにないので、どうしたモノかと」
「ほうほう、それは お困りでしょう。そうですね・・・幾らか換金の手間賃を頂戴できれば 日傘をお譲りいたしますよ?」
「良いんですか? 助かります」
「いえいえ、商いをする者として 臨機応変は当然の事にございます」
人の良さそうな番台が奥から出て来て、ワンチャンの淡い期待が成就する
多少の心付けは必要だが、どうせ換金する時も手数料を取られるだろうし、構わないだろう と結論づけ 私は一眼見て気に入ったアサガオ柄の日傘を購入する事にし
「すみません、コチラのアサガオの日傘を下さい」
「はい、そちら銀20、リューネ通貨だと・・・銀貨で えー 30程になります」
「そうですか、金貨1枚で お釣りは結構です」
「いやいやいや、多すぎますよ お嬢様? 」
「私は貴方の心遣いに感動しました、それにコレをとても気に入ったので」
「あ、ちょっっ」
アサガオ柄の日傘を購入し動揺している番台を放置して私はブリジットと共に店を出て、光学迷彩を使い姿を隠して人混みの中へ紛れる、これでまける筈だ
「さ、換金屋へ行きましょうか ブリジットさん」
「カヅキさん、流石に やり過ぎでは? 変にトラブルになったりしません?」
「大丈夫でしょう、彼の対応に感銘を受けた事は事実ですし、手間賃が多いだけです」
「もしかしてカヅキさんって、お金に執着しない系ですか?」
「あまりしませんね? 貯金も死蔵している分がありますし、使う時は惜しみなく使え と言われていますから」
「は、はぁ・・・そう言う割には贅沢品、特に貴重品は買いませんよね?」
「アクセサリー類に興味がないですし、私には この2つで充分です」
和傘屋から充分に距離が離れたので光学迷彩を解除し、換金屋へ向かいながらブリジットと会話する
実際、私は 別に贅沢生活に興味がないし、宝石類にも興味がない
質が良い物は高いが、高品質だから買うだけで贅沢したいから買う訳ではないのである
ほら、ナズナには安全な物を口にして欲しいしね? うん