その後、ブリジットと他愛ない会話を続けながら
「ブリジットさん、狐面ですよ?」
「へぇ〜 これカヅキさんが目尻や目頭に紅を入れていた様にしているんですね?」
「なんでしたか・・・確か、隈でしたかね? 名称は」
「なるほど」
アサガオ柄の日傘を差して人にぶつからない様にしながら商店街っぽい通りに差し掛かったので、のんびり と眺めていると お面を売っている店の前を通りかかったので足を止めてブリジットと会話をして、私の うっすい知識を口にする
いやはや、本当 薄過ぎて何の為にもならない知識だと思う
「せっかくですし、幾つか買って行きましょうか。 リューネでは手に入るか分かりませんし」
「そうですね? あ、お土産にするのは どうでしょう? ナマモノでは無いし、飾るにも場所を取らないので」
「良い考えですね?」
お面屋に並ぶ お面を眺めつつ何気なく言うと、ブリジットが提案して来たので賛同し、お土産用も購入する事に決める
ブリジットが言う様にナマモノを お土産にするのは通常憚れるが、私はインベントリを使えるので問題無い
しかし、お土産は幾ら有っても良いと思うし、吾妻でしか入手出来ない物だろうから、ヨシとしよう
「んーー・・・コレとコレと・・・」
「カヅキさん、こっちにクマ モチーフの お面もありますよ? こっちは顔上半分のタイプ」
「大分 種類がありますね?」
両手を使う為に尻尾に日傘を畳んでインベントリへ収納して お面を手に取って吟味していると、ややテンション高めのブリジットが私へ報告してくる、年相応の反応で良いと思うし 妹が出来た様で悪くない、ほら 私って大抵 妹枠な扱いされるしさ?
まぁ実際 元三男として弟扱いされて来たから慣れてはいるけどね?
そんな訳で吟味に吟味を重ねて、自分用 複数と お土産用に複数、ブリジットの分も纏めて購入し、問答無用にブリジットへ お面を押し付けて舌先八丁で言い包めて黙らせる
たまには パッと使って経済を回さないとね?
そんなこんな商店街を練り歩き海鮮物を扱う店で新鮮なシジミやアサリを発見して衝動買いをしてしまったが 仕方ない、仕方ないのだ だってリューネ王都では入手出来ないのだから
だから、仕方ないのだ
今日一日で結構な衝動買いをしてしまったが、まぁヨシとしよう たまにね?
それから
「カヅキ、戻ったぞ」
「おかえりなさいませ、貴方様」
「あぁただいま」
半分程 読み進めた頃、ナズナが帰宅し栞を挟んで本を閉じてから彼へ目線を向けて返事を返すと、少し顔が赤らんでいて少々 酒気を感じ ナズナから部屋の外へ眼を向けると、すっかり暗くなっている事に気付く
本を読んでいて気付かなかったが、陽が沈んでいたらしい
「お酒を飲まれた様ですね?」
「む? 分かるか? 酒類の取引をしたいと言う事で 試飲をしたんだ。そんなに飲んだ訳ではないのだがな?」
「私の鼻が良過ぎるだけですよ、貴方様」
「そうか、それなら良かった」
私が尋ねるとナズナは少し不思議そうにしつつ理由を説明してくれたので、適当な説明をする
別に飲酒を責めるつもりで言った訳ではないからね
「夕食の前に湯浴みをされて来ては如何でしょう?」
「そうだな、風呂に入れば酒も抜けるだろうしな?」
「ふふ、そうかも知れませんね?」
今日一日 交渉事で疲れただろうと思いナズナへ提案すると すんなり了承して頷き、客間を出て浴場へと向かっていく
私も昨日味わったが、この暁邸の客間が有る離れには内風呂と露天風呂が有って 天然温泉掛け流しなので、疲労回復は段違いだと思われる訳だ
私やナズナが お風呂を使っている時は 入り口にはルルやブリジット、親衛隊 隊員が立ってくれるから安心仕様なのである
私は別に見られても何とも思わないけれど、ナズナが憤怒の化身となってしまう可能性が高いからね、うん
「今、ナズナ様の背中を流しに行ったら驚きますかね?」
「普通に大変な事になると思うので辞めてくださいね? カヅキさん」
「そんなにですか?」
「そんなにです、婚前交渉したら ナズナ殿下の小指が無くなるんですよね?」
「そうですね? 場合によっては薬指まで詰める事になるかもです」
「うん、やめましょう。 カヅキさん、大人しく座っていてくださいね? さもなくば・・・ターニャさんへ鳩を飛ばします」
「くっ・・・卑怯なっ」
ナズナを見送って暫くして ふと思いついた事を口にすると、ブリジットが止めてきたので理由を尋ねると、答えてくれ 私を脅してきたので少々オーバーリアクションを取る
まぁ普通に茶番なやり取りなので、私も本気でナズナの背中を流しに行くつもりはないのでね?
その代わりに、ブリジットには湯浴みに同行して貰おうかな? 自前の尻尾が多くて洗うの大変なんだよねぇ