内心ヒヤヒヤしながらベルファさんの執務室へ辿り着き、深呼吸して住まいを正して扉をノックすると、いつもの様にベルファさんの落ち着いた優しげな声で入室が許可され入室する
「呼び立ててしまいすみませんね? おや? 不安にさせてしまいましたか」
「いえ、大丈夫です ベルファ様、どの様な 御用件でしょうか? 私、ナニかしてしまいましたか?」
相変わらず少し胡散臭い笑みを浮かべたベルファさんが自分の執務机で書類仕事をしていて、俺の方へ目線を向けて その目線が顔ではなく少し上へ向いて、そんな事を言ってきたので誤魔化すが、多分 また狐耳の制御が出来ていなくて、ヘニョってたんだろう・・・不覚
「ふふ、本当に貴女は可愛らしいですね? ターニャがお気に入りにする理由も分かります」
「ベルファ様?」
「おっと、すみません。ターニャへ告げ口されては敵いませんから本題に移りましょう」
ベルファさんは、元々胡散臭い笑みを更に胡散臭くして微笑み、絶対 俺を呼び出した理由と関係ない事を口走り始めたので、彼の名前を呼び用件を言う様に促すと戯けた様に言い肩をすくめる
悪い人では無いのだけど、本当に胡散臭いなぁ・・・某神を食うゲームのペイラーなにがし と同じタイプなんだけどもね?
「貴女を呼び付けた理由ですが、テスタロッサ領は領都以外にも幾つかの街と村・町があるのは知っていますね? 実は隣領と隣接している街を任せている代官から貰った書類に不備があったので、修正と訂正を行って貰う為に書を輸送と回収をお願いしたいのですが、実は急ぎの案件でして明後日には決済しなければならないのですよ」
「緊急事態で有れば転移門を使うのが良いのでは?」
「それなのですが、タイミング悪く10年に1度の再設置中でして、物理的に向かうしか無いのですよ」
「あー・・・なるほど」
経緯を説明し俺の指摘にベルファさんは肩をすくめて言う、兎に角 スピードを重視すると少数精鋭での強行軍をするしかないが、大体領地の中心に有る領都から どの方向の街でも通常の馬だと3日掛かる道のりなので、時間が足りない、それ故に俺の出番な訳だ
俺なら三日三晩程度なら無休で活動出来るし、リミッターが掛かっているとはいえ、馬より速く走れる
「少し無茶を言いますが、明日の日暮れまでに修正された書類を持って帰って下さい」
「かしこまりました、場合によっては多少荒事になりますが、良いでしょうか?」
「まぁそれは仕方ありません、野党等は始末しても咎めませんので」
「ありがとうございます」
「ターニャに貴女の旅支度は お願いしてありますので、この書類を持って正面玄関で荷物を受け取る様に」
「はい」
なんとも無茶な事を言ってくるベルファさんに、少し鬼畜だなぁ と思いつつ書類を受け取りストレージへ格納し、軽く彼に頭を下げてから正面玄関へ向かうと、センセイが少し不満そうに立っていた、今日は分身を出して無いからかな?
「支度は出来ています、この鞄に一式入っていますので安心してください。全く旦那様もカヅキが適任とはいえ、まだ遠出をさせられる程ではないと言うのに・・・」
「センセイ、私なら大丈夫ですから。すぐに戻ります」
「気をつけて行くのですよ? ただでさえ貴女は幼く見えるのですから」
「それは大きなお世話ですよセンセイ、割と気にしてるんですから」
「外は寒いですから、この外套を使いなさい。貴女には少々大きいですが、デカくテスタロッサ家の家紋が刺繍されていますから」
「あ、聞いてねぇや」
なんというか、噛み合ってる様で噛み合ってない会話をセンセイと交わして彼女から渡された外套を纏うが、センセイの言う通り俺には少し大きくて地上まで1〜2㎝ぐらいしか隙間がない
なんか過保護なセンセイに2尾分身を押し付けて脱出して旅行鞄をストレージへ格納して、寒空の下で警備してる門兵へ労いと挨拶をして出発する
「んじゃ行きますかね、いでよ我が僕
闇系統の魔法と相性が良過ぎる俺は約半年の研究・開発の結果、アイデースの派生で影を物質化して色々と作り出す事に成功した
だって俺ってば厨二病罹患者だし? やるよね、能力開発とか拡張
そんな訳で時間も限られているので、魔法で生成した体高2mぐらいの影狼に跨り毛を鷲掴みして合図を送ると馬の非ではないスピードで掛け始める
「馬で3日掛かる道をを1日以下で着く方法、それは馬の3倍以上の速度を出せれば良い、そう平均 時速250㎞以上で走れば間に合う」
それが影識神のメリット、毎秒魔力を消費するが生物と違い息も上がらないしトップスピードを維持し続ける事が出来る
その上で文句1つ言わずに命令を遂行してくれるのだから最高だ
まぁ俺が自分の影を魔力で物質化して術式を組んで作成しているから、意識と呼べるモノなんて、そもそも存在しないのだけど
流石に
俺は、割と豆腐メンタルなんだ