ブリジットから貰ったリンゴのシードルを飲みながら、ブリジットの意向を聞くのを忘れていた事を思い出したので、私の座るソファの横に姿勢正しく立つ彼女に尋ねてみる
「時にブリジットさん、とうとう卒業した訳ですが この先は どうします? 」
「どうする とは? すみません、質問の意図が理解出来てません。カヅキさん」
「あぁすみません、私の専属護衛は学園卒業までですよね? この先は契約更新になるでしょう?」
「え? いえ、違いますよ?」
「え?」
「え?」
主語を抜いて質問してしまいブリジットを混乱させてしまったので、今度はしっかりと質問内容を提示し尋ねると、どうやら勘違いしていた様で2人で顔を見合わせてしまう
「え? 待って下さい、なんで専属護衛が学園卒業までって認識なんですか?」
「なぜ?って・・・私がナズナ様の専属護衛の契約を結んだ時は、そういう契約だったので、てっきりブリジットさん も同様だと」
「あーー・・・ なるほど、そう言う事ですね? 理解しました」
ブリジットは私との認識のズレを正す為に質問をして来たので、素直に答えると どうやら合点がいった様で そんな事を言い
「えーっと・・・私とカヅキさん の認識のズレなんですけど、カヅキさん と私では 大前提が違いますよぬ?」
「大前提? なんです? 大前提って」
「まず所属が違う事です、カヅキさん は 当時 テスタロッサ家の使用人でしたよね? だからナズナ殿下が学園を卒業するまでの期間限定で テスタロッサ家から使用人を借りている状態だった訳です」
「そうですね? 故に 学園卒業後は 契約更新するか否かの面談する予定でしたね」
認識のズレを正す為にブリジットは私に質問しつつ分かりやすい様に説明をしてくれる、ありがたい
「そんなカヅキさん と違って、私は親衛隊の隊員です」
「ん? あぁなるほど 私は外注、貴女は社内移動だったから、私と違い 期間限定ではなかった、と?」
「その通りです」
「なるほど、理解しました」
ブリジットの説明を聞いて 認識のズレを理解する、元々 王族の警護任務を主とする親衛隊は ナズナ達が自由に動かせる人材で、その任期は 外注扱いの私とは違い 期限が無かった訳だ
「では改めて、この後は どうしますか? 私は 貴女の意志を尊重しますよ? 原隊復帰するも良し、寿退社するも良し、このまま続けていただいても構いません」
「学園を卒業したので カヅキさん の居城は王城に移りますし、ひとまず 現状維持ですかね? 寿退社するにしても相手が居ませんし」
「そうですか、分かりました。では今しばらくよろしくお願いします」
「はい、こちらこそ」
私の質問に真っ直ぐ答えてくれたブリジットに微笑みながら言うと、彼女も微笑み返してくる
いやはや 意思疎通ってのは大切だね、全く
そんなこんなブリジットと友好を深めていると、卒業生総代挨拶中にも関わらず 私の方へ 歩み寄ってくる 不届者の足音が聞こえ、ブリジットから 其方へと目を向けると、チャールとは違い 本当に遊んで居そうなチャラ男が なんか甘い匂いを放つカクテルを持って コチラに歩み寄ってきていた
壁際の休憩用ソファには まだまだ空きが有るから、休憩ではなく 私 或いは ブリジットに用が有るのは確定だろう、多分
「ナズナ殿下の総代挨拶、ご婚約様の晴れ舞台を最前列で見なくても宜しいのですか? カヅキさん」
「私は ご覧の通り 背が低いのに幅は取りますから、皆さんの迷惑になるでしょう? なので 此処で座っているのですよ、それに私は識神が使えますし」
「識神・・・あぁ 確か
「えぇ、実は そうなんです」
なんとも軽薄な薄ら笑を浮かべるチャラ男の質問に、とりあえず適当に話を合わせてやる
私が狐の獣人である事は見たら分かるし、リューネで霊狐族は珍しいが 存在が隠蔽されている訳でも無いので、知っている者は居る筈なので 別に驚く事もない、どうせ コイツの目的はナンパだろうし
「バースペースに 珍しいカクテルが有りましたので、宜しければ」
「せっかくですし頂戴します、えーっと・・・ニコラウスくん?」
「おしい、僕の名前はニコライです。 カヅキさん」
「これは失礼しました」
「いえいえ」
ニコライから甘い匂いを放つカクテルを貰い、軽く観察してみる
カフェオレの様な色合いで、チョコやココアに違い甘い匂いがしてなんだか美味しそうだな と思いつつ一口飲む
シードルとは違い、圧倒的に感じる酒気、これを卒業パーティーで出すのはダメな気がするぞ?
あー でも アレか? 酒は呑んでも飲まれるなって教訓を得させる為とか
「甘くて美味しいですね、これは飲み過ぎてしまいそうになりそうです。ニコライくん、これは何というカクテルですか?」
「アレキサンダーと言うカクテルです」
「アレキサンダーですね? 覚えておきます」
愛想笑いで味の感想を言いカクテルの名前を聞くと、軽薄な笑みを浮かべてニコライは答える
コイツ、度数の高い酒を私に飲ませて 介抱を理由に休憩室に連れ込む算段なのかもな?
なんとも古典的な手法だが、私はザルだ 残念だったな?