純サンクロード民には少々耐え難い空間に居る義祖父母との挨拶もソコソコに、私は新郎側の親族席に戻り 先に着席していたナズナの隣に座る
「ターニャの両親に挨拶していたのか?」
「はい、これから正式に家族となるのですから、挨拶ぐらいはしなければ失礼でしょう?」
「それもそうだな? 俺も軽く挨拶だけして来よう」
「貴方様、それはお控えください。 流石に侯爵家当主を始めとした貴族に囲まれて、その上で王太子にまで挨拶されたら祖父母がキャバオーバーで泡を吹いて倒れてしまいます」
「・・・不本意だが、それもそうかも知れないな?」
「えぇ、それに挨拶をする機会は すぐに来ますよ」
「ま、そうだな? 」
私が義祖父母への挨拶をしているのを見ていたらしいナズナの言葉に答えると、なら自分も と立とうとしたので軽く制止して理由を述べると納得してくれた様で、座り直してくれる
ナズナが義祖父母に挨拶をするのは今で無くても大丈夫だ、何故なら この後は義祖父母もタウンハウスに宿泊する事になっているからだ
幾ら転移門でテスタロッサ領と王都を直通出来るとはいえ、彼等は平民 手に職が有る以上は簡単には休業する事が出来ないから、ギリギリの工程になったので 昨夜は王都の宿に宿泊して貰っていたので、私と彼等は今日まで面識が無かった、まぁ存在を失念していた というのも理由の1つではあるけれど
さて、願わくば センセイの親族に侯爵家の親戚になったからと 増長してセンセイに迷惑をかける馬鹿が居ない事を祈るばかりだ
係員が義祖父母の所に行き 義祖父に声を掛けて聖堂の外に案内していくのが見えたので、そろそろ結婚式が始まる事が分かる
義祖父よ、緊張はわかるけれど 新婦父としての役目は頑張って果たしてくれ、多分 平民は こんなに仰々しい結婚式を挙げないっぽいけれども
現代日本産まれの私からすれば 今の状況は当たり前の結婚式だが、よくよく考えたら 明確な階級社会であるリューネでは そうはいかない
結婚式は金がかかる、現代日本の様に銀行が信用して借金をさせてくれる訳では無いし、この世界にはクレジットカードとか言う大人のカードなんて存在しないのだから
なので基本はヴェスタの前で誓いを宣誓し、名簿に名前を記すぐらいで参列者も貴族の様に大量には来ないし、ウェディングドレスも 着れないかもしれない
「これは頑張って国を豊かにしなければ」
「ん? どうかしたか?」
「いえ、なにも」
「そうか?」
「はい」
思わず漏れた独り言をナズナに聞かれてしまったので適当に誤魔化しつつ決意を決める
私が1人勝手に決意をしていると、聖堂に備えつけてあるパイプオルガンの演奏が始まり雑談でざわめいていた聖堂内が静かになる、流石は貴族 タイミングの見極めがしっかりしている
そんな事を考えていると 緊張で重心がブレている男性と、威風堂々と 全くブレの無い足音が聞こえてきたので振り返ると、義祖父がセンセイをエスコートしてバージンロードを歩く姿が目に映る、やはり今日のセンセイは綺麗だ
「だいぶ緊張しているな? 大丈夫か? 」
「危なかったら私がコッソリとサポートしますよ、何せ私は
「お前の場合、闇魔法が得意なのではなく 苦手な属性が無いだけだろう?」
「そんなそんな、苦手な属性は有りますよ? ただ苦手の意味が違いますが」
「流石の俺も今の流れなら意味がわかるぞ? どうせ『手加減が』 とか言うつもりなのだろう?」
「流石は貴方様、その通りです」
「全く、お前と言う女は・・・」
見るからに緊張していて心配になる様子の義祖父にナズナが呟いたので答えると、ナズナは軽く呆れた様子で肩をすくめる
そんな漫才めいた事をしている内に、バージンロードを歩き終えた義祖父とセンセイはベルファさんにセンセイを託し新婦親族席に戻って行く、ひとまず大仕事 ご苦労様 義祖父
さてさて、義祖父が倒れないか心配だったが杞憂で済んだので、次は結婚式の妨害に備えないとね?
ベルファさんは多大な功績を幾つも打ち立てている、だから友好的な貴族が沢山居る反面、ベルファさんの事が気に入らない人間も沢山居る
まぁ普通に不正や詐欺紛いの事をしてベルファさん の不興を買った馬鹿も居るけど、そう言う馬鹿は大抵 逆恨みするからね、うん
結婚式が始まって1尾分身を派遣する理由は無くなったが、未だ私が3尾状態なのは馬鹿の横槍に備えてだったりする
ナズナや称号持ちクラスの実力者が襲撃してきたら1尾では少々荷が重いが、そう簡単に居る人材では無いので大抵は大丈夫だろう 多分
そんな訳で横槍の備えは1尾分身に任せる事にして、私は目の前のセンセイの晴れ舞台を目に焼き付ける事にしようとか考えていると、早速 招かざる客の気配を感じ、軽くため息を吐く
『やっぱり来たか』 と言う安心感と、『来るなよカス』 と言う感情が入り混じり少し情緒不安定になってしまう
ひとまずはナズナは兎も角、主役であるセンセイと ベルファさん に知られる前に処理をしてしまう事にしよう
とりあえず適当にボコってから軒先に吊るして置くか?