オリヴィエと軽く言葉を交わして魔導剣を構えると、彼女は応じた様に魔導剣を正眼の位置で構える、その姿には隙は見えない
「始め!」
「行かせて貰います? 開け根の国 アイデース」
「おっと、これはマズイですね」
俺がアイデースを発動させて影から腕を生やしながら沼が広がる様に領域を拡大していくと、オリヴィエは察したのか後ろへ大きく飛び退き俺から距離を開けて呟く
「ナズナ殿下から聞き及んでいましたが、本当に闇属性の使い手なのですね?」
「えぇ、何か問題が?」
「いえ問題は有りませんが、闇の適性を持っている方は希少ですから」
「そうなんですね?」
俺の周りにアイデースを展開しまくり黒い腕が咲き誇る魔境が出来上がり、その領域を少しずつ増やしていく中、オリヴィエと会話をすると彼女は早口で俺には聞こえない声量で何かを呟き
「貫け、ウィンドジャベリン」
「中級の風魔法、ですか・・・速いですが まだ足りませんね」
「私の使用出来る風属性の中でも最速の魔法をこうも容易く防ぐとは・・・これは困りましたね」
ウィンドジャベリンをアイデースで掴み防御すると、オリヴィエが困った様子で言い苦笑する
「では次は私の番ですよね? 影識神・騎獣 影狼」
「これは・・・本当にマズイかも知れませんね」
「行け、我が眷属 眼前の敵を打ち払え」
影狼を4体程 生成してオリヴィエにけしかけると、魔導剣と魔法を使い迎撃し、風魔法特有のスピードで回避と攻撃を両立させて影狼の猛攻を凌ぎ斬り払う、しかし元が俺の影である影狼には痛覚がある筈もなく斬られようと動きが鈍る事はなく、受けたダメージは時間経過で再生していく
正直に言って、オリヴィエに逆転は かなり厳しいと思う、俺を倒す為には影狼の猛攻を掻い潜り数多の腕が生えたアイデースを突破しなけれざならない
オリヴィエが辺り一面を焼き払える系の高火力の範囲魔法を使えるなら話は別だが、オリヴィエの適性は風の様なので恐らく対象は可能な筈だ
「厄介ですね・・・斬っても斬っても向かってくる上に、直ぐに回復して纏わりついてくる」
「その子達は私が魔法で創り出したモノですから、私の魔力が底つかない限り再生しますよ」
「・・・4体の意味はありますか?」
「ないですね、何となくですよ?」
「なるほど・・・ユキヤ様には申し訳なく思いますが、私では貴女を試す為には役不足だった様ですね? 降参です」
「そこまで!!」
俺へ質問してきたオリヴィエに答えると、神妙な表情をして そんな事を言い両手を上げ降参の意をしめしたので影狼への指令を取りやめて、俺の所へ戻し その背中に座り、アイデースも解除する 座り心地は まずまずだ
そんな具合に影狼を椅子にしたりして侍らせていると、少し慌てた様子のユキヤがオリヴィエに駆け寄ってきて、彼女の心配をしだす
こりゃ普通の護衛との関係性ではなさそうだぞ?
「ご苦労、よく実力を示してくれた」
「この程度の労力なら、まだ我慢できますので」
「あぁ助かったよ」
影狼を椅子にしている俺にナズナが寄ってきて労いの言葉を掛けてきたので、本心を隠さずに返事をする
「カヅキ、貴女の実力を認めます」
「そうですか」
「応接間に戻って契約について詰めるぞ」
「はい、ナズナ殿下」
椅子代わりにしていた影狼から降りてから消して、魔導剣をプレセアに手渡して応接間へと戻る
「それでは契約内容の協議を始めたいと思います、ナズナ君 そちらからどうぞ」
「あぁ、俺からの提示は まず契約期間だが学園に所属する約3年間、内容は 専属護衛、場合によってはメイドを兼業して貰う事になると思う」
「メイドも、ですか?」
「あぁ、可能な限り学園へ連れて行く人数は少なくしたい、カヅキには俺へ媚を売る理由もないしな」
「なるほど?」
ナズナは真剣な表情をして契約内容を口にする、専属護衛 兼 専属メイドをしてほしいと告げられ、ナズナの説明を聞き理由を察する
ナズナは王太子だ、第1夫人にはなれなくても第2・第3の席に座れれば王家との縁が出来て生家の名は箔がつくし、ある程度は自由気ままな贅沢生活を過ごす事が可能になる訳だ
それ故にナズナへハニトラしてくる輩を身近に置かない為に、権力に興味が無い俺に護衛兼メイドをして欲しいと言う事なのだろう
まぁそもそもメイドが本業で護衛は、たまたま強いからなんだろうが
「契約更新の話し合いは、学園卒業後に場を儲けるつもりだが、あくまでもカヅキの意思次第と宣言しておく」
「分かりました、君の要求はね? 次は我々・・・カヅキの条件を提示します」
「まず1つ目、夜伽はしません」
「ぶほっっお前なにを・・・」
「私は貴方の人となりを表面的にしか知らないので、一応明記しておこうかと」
俺が空気を読まずに初っ端からブチ込むと、真剣に聞いていたナズナが吹き出して苦言を呈してきたので、俺は悪びれもせずに言う
元男の俺にとっては割と重要な事なんだ、今は男に抱かれるなんて想像しただけでもゲロを吐きそうになるぐらいに拒否感があるからな