センセイに証拠集めの依頼をし、寮に帰還してからナズナへ釘をさしてから暫くの時が経ち6月に突入した今日この頃、ナズナは気乗りしない表情で馬車に揺られながら窓の外を眺めている
「気が進みませんか?」
「全く進まんな、本来なら親父がする事だしな?」
「・・・そうですね」
窓から空を見上げて溜め息をつき俺の質問に答える、気乗りしないだけではなく少々機嫌が悪そうにも見える
まぁ俺には どうしようもないんだけども
そんな訳で俺達は 仕事をしない国王の代わりに王都近郊にある領地へと視察する為に馬車に揺られている訳だ
ナズナとしてはバカ親父の代理で仕事をしないと行けないだけでイラつくのだろうが、その視察先がマージンと言う下位貴族の領地である事も彼の機嫌を悪くしている要因だろうか?
「はぁ・・・親父の名代でなければドタキャンも出来ただろうが、そうも行かないな・・・あぁ帰りたい、会いたくない」
「ナズナ殿下、お気を確かに・・・薄いですが、胸を貸しましょうか?」
「・・・カヅキ、嫁入り前の女性が そんな事を言う物じゃないぞ? 」
「私は貴方を信用していますから」
「そういう所だと思うぞ?」
「はて?」
本気で行きたくなさそうなナズナに軽い冗談のつもりで尋ねてみると、割とマジトーンで注意されてしまったので、本心で言うとよくわからない言葉が帰ってきて首を傾げる事になった
いや、ほんとに分からない
そんな訳で朝早く学園を出発して昼前にマージン領へと到達し、親衛隊隊員の合図で俺が先に降り周辺警戒をしつつ、ナズナへ合図すると彼は不機嫌そうな表情のまま馬車を下車する
「ナズナ殿下、ようこそ我がマージン領へ 謹んで歓迎させていただきます」
「あぁノルベルト、久しいな? 本来ならば親父がくるべきなのだが、体調が良くないらしくてな 俺が名代だ」
「いえ、王太子である あなた様で有れば、誰も文句を言いませんとも」
「そうか、では被害現場へ案内してくれ」
「はい、ただいま」
如何にも小物な中年のオッサンがナズナに挨拶して、ナズナは冷たい視線でオッサンを見ながら喋り、オッサンの隣に立ってニコニコしているテカテカお嬢様ことヴィオレッタの事を一切見ない
そういや前に会ったの使用人がメイドから執事に変わっているのは、たまたまだろうか? 否 なんとなくだが たまたまでは無いと俺の勘が囁いているから、多分 この執事が浮気相手だろうな うん
凄い度胸だな、まさに浮気がバレ無い自信がある様だ、馬鹿なのかな? いや、浮気している段階で馬鹿か
ナズナの言葉にオッサンは頷き、周りの部下に命じて移動の号令を出し、ナズナを案内し始める
「ナズナ殿下、大変恐縮ではございますが、私は復旧工事についての協議がございまして、娘を名代とさせていただきたく思います」
「よろしくお願いしますわ、ナズナ殿下」
「・・・分かった、状況が分かれば 誰でも構わないしな、仕方ない。ヴィオレッタ、乗れ」
「はい、失礼します」
オッサンはテカテカお嬢様を名代にする旨をナズナに言い、これは仕事と割り切った様子で馬車へ乗る様に促し、さっさと馬車に乗り込む
そんなこんなで私も馬車に乗り込みナズナの隣へ座るとヴィオレッタが何かコチラを睨んでくる、何でだ?
それから王族用の馬車で4人乗っても広々としている馬車に揺られて十数分が経ち
「先日の魔獣災害により、南門 及び 周辺の城壁の一部が損傷していて今は人員を割いて警備をしています」
「天候操作をする上級だったらしいな?」
「はい、たまたま居合わせた上級冒険者が討伐しています・・・ですが中級・下級冒険者に少なくない死傷者が出ています」
「そうか」
馬車を降りて現場へ徒歩で近づき崩れた城壁を見ながらナズナはヴィオレッタに質問し、彼女は答える・・・が、なんとも嘘臭い
確かに城壁は崩れているが、魔獣が壊したにしては綺麗過ぎる過ぎるし、何よりヴィオレッタの声に嘘の感情が乗っている様に感じる
と言うか、天候操作が出来る魔獣相手に物理的被害が少なすぎる、城壁は崩れているが、その先の民家等には被害がない様に見えるしな?
これは胡散臭いと確信し、俺は密かに影識神を使い 辺りの捜索をしておく
城壁の付近から徐々に捜索範囲を広げて確認するが、天候操作出来る程の魔獣と戦闘したと思えない程に城壁から外側の大地は荒れていない
街から相当離れた場所からの流れ弾 と言う可能性も考えて影識神の量を増やして、かなり離れた場所まで捜索してみたが、戦闘の痕跡が見当たらない、つまりは詐欺の可能性が出て来た
まぁ私と同等の能力を有している上級冒険者が、戦闘後に綺麗に修復した可能性はゼロではないが、それが出来る程の強者ならナズナが目を付けている筈だから、多分ないな うん
ん? 天候操作が出来たなら、主戦場は空の可能性もあるか? なら街全体+周辺一帯を調べなきゃダメか?
本来は俺の仕事ではないが、個人的にはヴィオレッタは気に入らないので、徹底的に調べ上げてナズナの味方をして、このテカテカお嬢様に吠え面かかせてやるぜ