俺の秘密・・・狐獣人である事を知る人間しか居ないナズナの馬車内で、少々窮屈な隠蔽術を解除し、ハルトの相手をすると 彼はキャッキャと可愛らしい反応をしてくれて、見ているコッチが癒される
特に真夏にも関わらず、私の尻尾がお気に召した様でモフモフと遠慮なくモフり続けるのは、なかなかに凄い 流石は幼児と感心してしまう
それから睡魔に負けたハルトを尻尾を抱き枕にして寝かしつけ、ハルトや幼児を相手にする時用に魔法を開発する事にし、暇つぶしをして その日の停泊地に到着したので、隠蔽術を発動してからハルトを抱き上げて馬車を下車して、ハルトの母親であるベアトリーチェへ渡すと、えらくニコニコとされてしまった
ナズナが俺に教えてくれたハルトのチカラから察するに、ハルトの母親である正妃ベアトリーチェと 彼女の娘であり ハルトの姉であるアキカは、ハルトと同様の隠蔽看破能力がある筈だ、故に 俺の正体をベアトリーチェは看破していて放置しているのだろう
まぁ俺としては、ナズナに指示されて隠蔽しているだけなので後ろめたい感情は無いし、バレた所で 特に何も思わないのだけどな?
そんな訳で、やたらハルトに懐かれてしまった私は、翌日からも道中 ハルトの子守りをして過ごし、意外に保母の才能があるかも知れない と少し自惚れ始めた頃に目的地である トリスタン領内にある別荘へと到着した
「・・・デカいですね?」
「当たり前だろう? この別荘は貴族の別荘じゃない、王族の別荘なんだぞ?」
「わけわかめ」
「わかめ? なんで わかめ なんだ?」
「気にしたら負けですよ、ナズナ殿下」
「ん? そうなのか?」
馬車を下車してから、例に漏れず寝落ちしたハルトを彼の専属メイドであるアイビーに渡して、別荘を見て呟くとナズナが理解不能な事を言ってきたので適当な事を言うと、想定外の切り返しが返ってきたので どうにか誤魔化しておく
「ですから兄さん、言葉が足りていませんよ? きちんと説明してあげて下さいね? 僕はオリヴィエと部屋へ向かいますから」
「あ、あぁ・・・すまない、カヅキ」
「いえいえ、正式な説明は お部屋についてから お願いします」
「分かった」
ユキヤに溜息をつかれて苦言を呈されたナズナは 申し訳無さそうに俺に謝罪してきたので、ナズナが滞在する部屋についたら ちゃんとした説明をしてもらう事を約束し、手ぶら のままで別荘へと入る
王城よりは小さいが、ちょっとした砦ぐらいには広い別荘内を進みナズナの部屋へ入り、キョロキョロと安全確認をする
「嫌がらせ や 暗殺の仕込みは無いですので、ご安心を 殿下」
「あぁ、ご苦労 カヅキ」
ザッと見た感じ、手入れが行き届いた部屋で少し感心していると
「さて、きちんとした説明をする約束だったな?」
「はい、よろしくお願いします」
インベントリからナズナの荷物が入った旅行鞄を取り出して床に置いていると、ナズナがソファに座り口を開いたので返事を返して、インベントリに保管していた紅茶の入ったポットとティーセットを取り出してナズナへ紅茶を淹れてローテーブルへ置く
「この別荘がデカいのは、常駐の使用人と衛兵が居るからだ。それも相応の人数な」
「常駐の使用人がいるから 別荘は大きいし、連れて来た使用人も最低限と?」
「まぁそうなるな、護衛を担当する親衛隊と騎士団も護衛対象が少ない方が負担も少ないだろう?」
「なるほど」
俺はナズナからの説明に納得しながら、メイド(俺)を召喚して片付けをさせる、一応 ナズナに用意して貰ったナズナ専属使用人の証であるラペルピンと、始めたら意外と楽しかった ナズナのパーソナルマークを刺繍してあるエプロンを装着させてあるから、変な輩には絡まれないだろう 多分
「それと有事の際には、王族の避難所や暫定 司令部としての役割もあるからな、それなりの土地と建物が必要なんだ」
「・・・なるほど」
「ちなみにだが、有事とは戦争だけではなく 自然災害も含まれるからな? 戦争ならば王都防衛を厳とするが、自然災害は どうしようも無い事もあるしな? 特に幼い弟妹にまで王族として命を散らせ とは言えないだろう?」
「そうですね」
それなりの時間を共に過ごして来た為か、ナズナは 俺の表情を見ただけで俺が何を考えていたかを察して説明を続ける
確かにナズナの言う通りだ、ハルトやアキカの様な年端もいかない幼子が、王族の責務と言って死なせるのは 流石にダメだ、そんな事は賢く無い俺でも分かる、絶対にダメだ
「それに最悪、ユキヤかハルトが生き残る事が出来れば ブリリアント王家は断絶を回避は出来るし、リスク分散は大切だろ?」
「それはそうですが、私が居る限りは貴方を死なせませんから安心してください」
「はは、それは頼もしいな? だが、死に際まで付き合う必要はないぞ?」
「仕事を全うしなければ、私はセンセイに叱られてしまいますから」
「そうか?」
「えぇ、そうなんです」
そう、俺が居る限りナズナは命に変えても守り切る、それが今 俺に与えられた仕事だ
死ぬ気は、ささらさらないし そう簡単には死ぬ事もないだろうしな?