「ナズナ殿下、折角の海ですし 少しは海水に触れた方が良いと思います」
「・・・そうだな、テラスで怠惰に過ごすよりは建設的かもな」
「そうですね、デスクワークばかりでは身体にも悪いですしね?」
「それはそうだな」
私の言葉にナズナは頷きパラソル下の椅子から立ち上がり、砂浜へ降りる為にサンダルへ履き替え、テラス脇にある砂浜へ降る階段を降りていく
俺もナズナに続き砂浜へ降りる、まぁ普通にブーツのままなんだけどな?
「海ですね」
「そうだな」
緩やかな階段通路を降りきり砂浜へ到達し、俺は何となく呟く
砂浜に足を踏み入れたのは、いつ振りだろうか? ナツキが死ぬ前だったから そんなに昔ではない筈だ、せいぜい3〜4年前の事のはずなのに、遥か昔の様な気がする
「
「カヅキ?」
「あぁ、申し訳ありません」
「いや、構わないが・・・大丈夫か? なんか泣きそうな眼をしているが?」
「・・・大丈夫ですよ、ナズナ殿下」
晴天空の青と海の蒼が地平線の先で交差している風景に、思わず足を止めてしまい感傷に浸ってしまった俺に気付いたナズナに名前を言わばれ、少し早歩きで彼の隣まで歩み寄る
ナズナは兄妹が多いだけあって、人の表情を読むのが上手い様でなんだか見透かされている気がして少し恥ずかしい
「アサトとは誰だ? 友人か?」
「幼馴染の名前です、もう会う事は無いでしょう」
「・・・そうか」
ナズナからの質問に苦笑気味に答えると、彼は麻人が既に故人的な勘違いをした雰囲気を漂わせてきたが、勘違いしたままでいてもらおう、説明するには長い話をする事になるしな
そんな具合に何か居心地の悪い空気の中、砂浜を ゆっくりと散歩していると、急に悪寒を身体が走り周りを見渡し 悪寒の原因の居場所を見つけ
「殿下、私のつまらない身の上話は置いておいて、ご報告が有ります」
「急に どうしたカヅキ? 何やら表情が険しいが・・・ おい、お前は 何処を見ているんだ?」
ナズナを左手で制して言うと、ナズナが俺の表情と目線の先を見て 少し取り乱す
なんと言うか、犬猫が虚空を見つめているのを見た時の様な取り乱し方だ、すまぬナズナ
「単刀直入に・・・この地点から前方100m深度600mの位置に、良くないモノの気配を感じます・・・」
「良くないモノ? それはなんだ? 」
俺は影魔法でポイントに分かりやすいマークを立ててナズナへ位置を知らせて言う
「詳細までは分かりかねますが・・・そうですね、怨霊や悪霊 と言った生者を憎み妬み害をなす存在、と推測いたします」
「・・・そうか、お前が言うならば そうなのだろうな? 対処は可能か?」
ナズナに尋ねられた事への返答を返すと、対処可能かを尋ねられる
そりゃ当然の流れだわな、発見できたら対処可能か聞くのは当然の起結だろう
「申し訳ありませんが、気配だけでは分かりません、実際に目視で確認しなければ・・・」
「そうか、そうだな。すまない」
「いえ、お気になさらず」
俺は万全を期する為に安易に対処可能とはナズナへ言わないでおく
恐らく9割5分 対処可能だとは思う、なにせ俺は この世界最強(暫定)の転生者だからだ
転生ノートに書き連ねた内容が完全に反映されているならば、悪霊や怨霊、呪霊に負けたり祟られたり呪われたりしない筈だ、でも万が一 の場合も想定をすべきだろう
下手うってナズナやユキヤに呪霊の被害が出たらダメだしな、うん
「・・・少々危険かも知れませんが、私が単身で目視出来る距離まで近寄り確認して対処法を検討するのが最善かも知れませんね?」
「カヅキ、お前の気持ちはありがたいが 流石に お前の職務範囲を逸脱するぞ? 構わないのか?」
「危険物を放置して、二次被害等が起こった時の方が面倒になりそうですし、今回は仕方ないでしょう」
「そうか?」
「状況に合わせて臨機応変に対応する、そうセンセイから教育されていますので・・・散歩の途中ですが、メイドと共に別荘へ帰還して下さい、そしてメイドが消滅したら、私は死んだ物と判断し 別荘を放棄して退去を」
「・・・分かった、だが 必ず戻れ」
「御意」
肩をすくめナズナへ返事を返し、ダメだった場合は 全てを捨てて王都へ帰還する様に言うと、ナズナは少し渋い表情をして そんな事を言ってくる
俺としても、死ぬ気は無いので返事をしてメイド(俺)を召喚して、ナズナには別荘へと帰って貰い、ある程度 距離が離れるまで背中を見送ってから、マークの付いている地点を睨み
「全く、せっかく良い気分だったのに台無しだ・・・絶対に許さないからな? 待ってろよ?」
砂浜を進みマークの上に立ち眼を閉じて、転移門が作れそうな位置を探り、魔力に物を言わせて無理矢理 転移門を形成して侵入する
報復開始だ